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  • わたしにください-十八と二十六の間に-

わたしにください-十八と二十六の間に-

watashi ni kudasai juuhachi to nijuuroku no aida ni

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表題作わたしにください-十八と二十六の間に-

森尾祐樹,高校生(18)〜建築家(26)
崎田路,高校生(18)〜児童施設職員(26)

その他の収録作品

  • あとがき&描き下ろし

あらすじ

傷つけ合いながらも、ようやく距離を縮めることができたはずの路と森尾だったけれど、それぞれの恋情はこじれたままだった。
路への強い想いを自覚しながら、路を激しく傷つけた自分が許せず、再び想いを伝える資格がないと思い悩む森尾。
そんな森尾を追い詰めるかのように、後輩・臼井が路から「退け」と森尾に迫り……。
「わたしにください」のその後、多感な高校時代を経て、大人になるまでを描いた続編登場。
切な痛い恋と葛藤が胸を揺さぶる衝撃作!!

作品情報

作品名
わたしにください-十八と二十六の間に-
著者
樋口美沙緒 
イラスト
チッチー・チェーンソー 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784592877486
4.1

(92)

(57)

萌々

(16)

(6)

中立

(5)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
17
得点
372
評価数
92
平均
4.1 / 5
神率
62%

レビュー投稿数17

両片思い萌えまくる

ネタばれです。

余りに健気で、ひたむきに攻めを思う受けちゃん。
勇気を振り絞って、自分を嫌いだと思い込んでいる攻めに告白します。
読者からしたら、攻めの留学を、前にやっとやっと両片思い解消か、と期待するところが、自分の過去を許せない攻めは、受けちゃんの思いを『受け止められない』と返してしま。攻めの言葉がたりなすぎて、受けちゃんは、実は攻めが自分を好き過ぎる事実すら知れずに、攻めと離れてしまう。
二度と会わないつもりであることを感じさせて、ただ受けちやんはのことは『忘れない』とだけ言って留学してしまった攻めが、遠いところから限られた手段だけでとってくる連絡を、受けちゃんは本当に見事に前向きに受け止めて、攻めの幸せを願いながら、自分の人生にも真摯に向き合う。
攻めもまた、恵まれた資質を極限まで伸ばして自分を鍛えて、そしていつも受けちゃんの幸せを願っている。何でも忘れっぽかった攻めにとって、『忘れない』と伝えることは、ある意味最愛の告白のように思います。
このストイックな二人が結ばれる迄の長さ、切なくてじれったくて、途中で止まれない。
両片思いと健気な受けちゃんが大好物ですが、この二つのポイントを本作品はかなり押しまくってくれました。
樋口先生の他の作品も読みたくなりました。

0

ファンタジーかな?

 すっっっごいすれ違い。すれ違いランキング一位に入れるほどのすれ違い。
 というか相手の為とか言っておきながら、全部自分の都合のいいように処理してる。
 勝手に相手の気持ちや、俺といると幸せになれないとか決めつける。
 一悶着後に路が森尾に告白したときの森尾の返答が、地雷返答すぎてイラァします。愛する愛されるに資格なんてねーんだよ! って言ってやりたくなる。
 いくら相手を好きでも8年も待つって気が長すぎる。8年は長い。海外に逃げるのも姑息だし、連絡もなしに日本に戻ってくるのもひどいな。森尾、身勝手にも程がある。
 ストーリーの展開上仕方ないとは思うけど、重要なことを口に出さなすぎでは……。加味すると10年以上は本心隠したまま。現実的じゃなさすぎて、段々ファンタジーかな、1つ年を取るのに5年くらい掛かる世界なのかな、って思えてくる。

 ほとんどが「路はこう思ってるはず(決めつけ)」「森尾はこうしたそう(決めつけ)」で完結してしまう二人。
 黒田の「お前はどうしたいの?」がベストアンサーすぎる。
  完璧人間なのかな。自分を許す許せないって常人にはない感覚だ。

1

新ジャンル:【報われ】を提唱したい一冊


「わたしにください」続巻です。
路が変われたことに嬉しくなったり、二人のすれ違いで悲しくなったり…まるで感情のジェットコースターでした。

さすが樋口美沙緒先生だな…と思ったのは、二人の感情が大人になりきれいない高校生そのものが表現されているところ。
互いを想い合っているのに、すれ違ってしまう。
思春期ならではの思いに「こうすれば上手くいくのに…!」と拳を握りしめる、もどかしさ…。

また苦しい状況になってしまい、路は落ち込んで…それでもまた立ち上がる姿にはこちらまで勇気を貰えます。
心の中で「がんばれー!!」と思わず応援してしまいました(笑)
路がくじけそうになった時に現れたまさかの人物も驚き!

こういうハッピーへ向かっていく展開がすごく大好きなので、読みながらテンションが上がってきます。

―――しかし、その熱を冷ますように次のページをめくると、なんと八年後。
な、何があったんだ…!?と少し戸惑ってしまいましたが、タイトルに「十八と二十六の間に」とあったので、そういうことなんだろうなぁとどうにか自分を落ち着けて読みました。

そこからはもう、路がすごくすごく頑張ります。
森尾への思いや自分の考え方を伝える一言一言が胸に刺さりました。
けれど、それでも過去を捨てれない森尾は拒んで…。
読みながら「何で!!どうして!?」と私も路と同じく叫びそうになりました(笑)

そして気づく。
森尾、お前…ヘタレだったのか…。

とにかく切なくなって喜んで、大切な何かに気づかされて…。
こんなに感情が揺さぶられたのは久しぶりです。

そして特に良かったのが「描き下ろし」です。
その後が描かれているのですが、報われて本当に幸せになった二人と大村との絡みですごく良かったです!!

とにかく読了後は「とてもいい映画を見た!!」という気持ちが強かったです。

2

小冊子の電子化を…!

想いあってるのにすれ違い、好きだからこそ離れようとする二人の関係が切なくてもどかしかったです。

森尾が過去に臼井にしたレイプ発覚により、自分が人とズレていることで路に対しての負い目と後悔に苛まれた森尾が殻に閉じこもってしまい、近づきつつあった路との距離がまた開いてしまいます。

前回は森尾のツンデレに萌えられましたが、今回はほぼ後悔と懺悔で後ろ向き思考になりうじうじ悩んでいるので、仕方ないとはいえ早く覚悟決めて幸せになれよー!と若干いらつきました。笑

だって路はとっくに森尾を許していて、なけなしの勇気で何度も想いを伝えているのに。
一緒にいると路を傷付けてしまうかもしれないから気持ちを受け止められない。
でも受け止められないことがすでに路を傷付けていて…森尾が自分を赦せないのは分かるけど、森尾の言うとおり精神的には路の方がずっと大人で強いです。

森尾がいなくなって抜け殻のようになっている路は、前回もでしたが本当に全てにおいて森尾中心に回ってるんですよね。
路の原動力全部が森尾なので、森尾以外にも何か生き甲斐を見つけてほしいとつい親目線で心配に…。笑
この先二人が一緒にいる限り大丈夫なんでしょうが。

くっつくまでかなりの時間とハラハラ感を味わった割りにくっついた後のラブラブエッチがなかったのはとても不満です。笑
小冊子、ぜひとも電子化して頂きたい。。
カップルになった二人の行く末やラブラブもまだまだ読みたい気持ちがあるので続編を切望します!

1

自分勝手な

それぞれの心の中では決定的にすれ違ったまま、仮初の蜜月を過ごしていた路と森尾だったが、後輩の臼井が路に近づいてきて、、

路は、森尾の気持ちを思い違いしているだけで、自分の恋情は、ずっと、しっかり持ち続けている。
それに比べると、森尾の方は、自分で自分が許せないからって、随分自分勝手な言い草で、ぐずぐず、うじうじ、路を拒んでて、もう、かなりマジで、この森尾ってキャラを罵りたい気分なんだが、
そんな森尾を、ちゃんと説得した路くんに敬意を表して、萌1つプラス。

1

許す人も許さない人も居ていい

レイプ被害者の路と加害者の森尾の恋に決着がつく、『わたしにください』の続編です。

路は森尾のことを許しているので、このまま幸せが続けばと思っていたのですが、そう簡単にいかないのが樋口作品。
まさか、この因果が森尾の過去から続いていたとは……
森尾の過去のクズっぷりが酷い。
14歳の子どもをレイプしておいて、本人はすっかり忘れているとか……クズ過ぎる。

かつての被害者は、今度は加害者に。
まさに、負の連鎖ですね。
臼井が路にしたことは許せないけど、臼井は森尾を許さなくてもいいと思う。
臼井の姿は、もしかしたら路の未来だったかもしれないと思うと、やるせない気持ちになりました。

前を向いて歩き始めた路と、ネガティブ自己嫌悪の森尾。
近付いたと思った2人の道が、すれ違って離れていくのが切なくて切なくて。
道を違えてしまった2人の別離には胸が詰まる思いでした。

償う時間、
未来を掴む勇気、
愛し方、
……「わたしにください」な思いがたくさんありました。

路目線で描かれる後半は、路の一途な想いが浮き彫りに。
強い想いと、森尾を揺さぶる路の叫びに涙が溢れました。
〝愛する資格〟って何でしょうね?
そんなものあるのかな……
きっと、自分自身で自分を許さない限り前には進めないんですよね。
森尾の誠実さが路を苦しめるところが辛いですね。

愛は信じることだと思う。
そして、許し許されること。
傷つけ合ってここまできたけど、きっともう大丈夫だと思えるラストに、胸がいっぱいになりました。
最後まで諦めない路の強さ、成長に感動。

かつてのいじめっ子・大村と路の関係が良かったです。
どうか、臼井にも幸せになっていて欲しいなあ。

森尾が頑なで、最後の最後まで気を抜けない展開にハラハラしてページを捲る手が止まらなかったです。
読ませる力を感じる作品でした。


4

許す強さ、許される勇気

前作を読んでモヤっとしていた部分がスッキリして評価が一つ上がりました。
ただ過去の自分の非道な行いを憎み許せないという攻めの気持ちが強すぎて読んでいて疲弊しました。

崎田の精一杯の告白を森尾に受け入れてもらえず、失恋した悲しみと遠く離れて行ってしまった寂しさに胸が押しつぶされる思いでした。

大人になったいじめっ子大村の反省に対する崎田の慈愛にじんわりと感動しました。

森尾が崎田に対する暴力を反省し、自身の暴力性について恐怖するのは必要なことですが、
崎田をゴミのように扱い傷つけた自分が許せないから崎田の気持ちを受け取るべきではないと
一生一人で生きていくという決意は自分勝手な暴走に思えました。

終盤になっても一向に再会もせず身も心も離れ離れのままでした。
そして漸く再会できても頑固な森尾の気持ちが動かない展開に、このまま結ばれることなく別れるのかと不安になりました。

自分を傷つけた相手を許せる心の強さと、「許されちゃいけない」という思いが一層相手を傷つける行為にもなることなのだとわかった作品でした。

特典小冊子の森尾視点の話は、理解しきれない部分が補われていました。
期間限定でしか入手できないのは大変残念です。
とても大事なところだと思うので必読といっても良いと思いました。

2

取り返しのつかない事

前巻初めでは卑屈で嫌な子だった路が、悲惨な経験を経て、自分自身の事を思い直して、努力して、みんなから愛される子になっていく過程が良い。そこに辿り着くまでは、苦しくて路がトラウマで辛い思いをたくさんするけど、路自身が前向きに頑張るから応援できました。


BL面では、受も攻も、レイプの被害者と加害者で、攻は引け目に感じてるし、受は受で相手の感情を勘違いしてるしですれ違いが多く、お互い認め合うまでが長く感じてしまう。攻の森尾自身が無意識にクズだから、過去に路以外も傷つけてるし、その事で路も傷つけられるしで、大崎みたいに「森尾なんてやめときなよー」と思ってしまった。

でも、取り返しのつかない事をしたからこそ思い悩む森尾も、教師の誘導でクラスメイトにとって取り返しのつかない事をしてしまい、傷つけられて自分を見つめ直した路も、互いに光を感じて惹かれあったんだから、割れ鍋に綴じ蓋なのかもしれない。


悲惨な過去を乗り越える2人が好きな人にオススメしたい本です。

3

過去は変えられないけれど

今回はクラスでも目立つ文武両道な生徒と学級委員長の続編です。

強姦という最低の始まりを乗り超えて共にいる未来を選ぶまでの本編に
攻様視点による恋人になってからの後日談を収録。

前巻にて攻様は親友が大学の指定推薦枠の候補にから除外された事を
逆恨みして、不利な証言をした受様を傷つけるために強姦され、クラス
で孤立し、不良達に目を付けられてどん底な状況に陥ります。

しかし不良達が受様に更なる暴挙を加えようとした現場を目にした攻様
によって難を逃れた受様は自分を変えるための努力をする道を選びます。
そして変わっていく中で自分が攻様に恋をしていた事を自覚します。

対して攻様は不良達の行為で自分が受様を犯した行為を初めて客観視し、
初めて深い罪悪感を抱きますが、改めて接した受様の素直でまっすぐで
優しい人柄に癒され、惹かれていくのです。

しかし、受様は魅力的な攻様の恋の相手になるとは思わず、攻様も自分
を強姦した相手を受様が受け入れるはずがないと思い込み、2人の想い
が重なる事はありませんでした。

そんな中、バスケ部の1年生が受様に告白してきます。受様は好きな相
手がいると断りますが、後輩は強気で受様を口説き続けるのです。

何かと受様に接近を図り、攻様を敵視する後輩を攻様も苦々しく思います
が、受様に何かいう権利もないと見守る事しかできません。一方、受様も
口説き続ける事を止めない後輩の言動の端々に違和感を感じていました。

実はその後輩は中学生の頃に攻様に一方的に組み伏せられた過去があり!?

既刊「わたしにください」の続編にして2人の恋の完結編になります。

攻様にとって受様はクラスメイトではありましたが、大人しく自分との
共通点もない受様はその他大勢の中の1人でしかありませんでした。その
ために親友が陥れられた仕返しとして受様を傷つけるだけの目的で強姦し
て何も感じていなかったのです。

そんな攻様が受様を1人の人間として認めた事から徐々に惹かれていく様
と、攻様への恋を自覚した受様の両片想い状態からどうやって成就するの
か、本作の発売を楽しみにしていました。

受様に想いを告げてくる後輩、攻様に好意を寄せる同級生、攻様の親友、
攻様をズレているというバイの兄等、様々な人との関りで攻様はかつての
何とも思わなかった自分の行為が人を深く傷つけていたという事実に初め
て思い至ります。そんな自分のズレを自覚した攻様は過去の自分を許す事
ができなくなるのです。

自分を許せない人には他人が何を言っても響きません。弱かった自分を許
し前を向いて歩きだし、そんな姿が攻様の心を捕えた受様の言葉ですら、
攻様には届かないのです。どうやったら2人がハピエンを迎えるの!? と
ハラハラし通しで、ラストまで一気読みさせられました (>_<)

人はどこまで傲慢になれるのか。そしてどこまで人に優しくなれるのか。
愛しているから赦せるのか。愛しているからこそ許せないのか。

人の中にある矛盾を追求したお話でもあるのかなと感じました。誰の中に
もあるそんな感情のせめぎあいが、攻様と受様の関係の決着点であり、
非常に深く考えさせられるお話ではありましたが、2人が8年も離れる必要
があったのかしら!? というのが正直な感想です。

初出が古いという事もあり、その当時の勢いや想いの深さを表現する為に
8年という歳月を設定したのでしょうけれど、高校時代(2年秋から3年の冬)
との対比だとしても停滞期間が長すぎるように感じたし、両想いになった
2人のラブラブな絡みシーンがないのも、ちょっと不満なので「萌」とさせ
て頂きました。

特典類はチェックして購入しているので、ラブラブシーンのある小冊子は
入手していますけど、強姦から始まっているからこそ愛あるHで物語を
閉めて欲しかったです。

今回は樋口さんの既刊から『愛の裁きを受けろ!』をおすすめとします。
攻&受の諸設定やシチュが本作カプに似たお話にしてみました。

5

許して、許されること

あ~~~~天才だな~~~~と思いながら後半はずっと泣いてました。

攻めの強姦からスタートした奇妙な関係は、まるで普通の高校生みたいにお互いの両片想いへと変化して、束の間の幸せで楽しい時間を過ごすようになって、でも「どこかズレてる」攻めが、その自覚していなかったズレのせいで、日に日に受けを強姦してしまったことへの罪悪感が大きくなっていくのがどうしようもなく苦しかったです。
受けを傷付ける相手に向ける感情が「同族嫌悪」になってしまうのはめちゃくちゃ苦しいですよね。
過去に攻めに傷つけられた子たちが、仲睦まじくしてる二人を見て「どうしてそれは俺じゃなかったんだろう」となるのも、そういう子たちの気持ちが痛いほど分かるのに「選ばれたのが俺でよかった」と思ってしまう受けも、あまりにも人間らしくて、誰かだけが悪いわけじゃないんだよなと痛感しました。

膨らんだ罪悪感に、他の感情をすべて塗りつぶされて、前にも後ろにも進めなくなってる攻めは、本当に「意気地なし」ですが、それでも、自分がいなくなった後の受けに「楽しい予定でたくさん埋まって欲しい」とスケジュール帳を渡して、約束を守れなかったと花火のムービーを送って、それがたとえ罪滅ぼしでもそういう不器用な優しさを見つけようとしてくれる受けと出逢えて本当によかったね……と思います。

樋口先生の書く受けは本当にいつも強くて美しくて、傷つけられて苦しんで理不尽な思いをしても、いつもで自分で世界を変える努力が出来るから大好きです。
今回も、「ゴミくずみたいにされたって、俺は立ち直って生きてきた!」の一言が最高すぎて、ぼろぼろに泣きました。
傷つけたくないと怯える攻めに、「傷つけられたって、俺は立ち直るから信じて!」と言う美しさよ……

誰だって、人生のどこかで取り返しのつかない失敗をしていて、あの時に戻れたらきっと違う未来を手に入れられたと妄想することをやめられないけど、その行動がなければ開かなかったルートも間違いなくあって、スタートを間違えたからこそ始まった二人の関係も、誰かに許されて、誰かを許して生きていくことを思い出せたことも、大切に思える二人の新生活が幸せであふれているように願うばかりです。

9

2人の「ごめんなさい」でパンクしそう

レイプという事実が二人の恋愛の必要条件だったか否か。

中々ショッキングな仮説だけれども、前巻でうっすらと感じていた疑問。
今巻ではその答えが明らかになります。

とある憤りからゴミ扱いのレイプをした相手、崎田路への罪悪感で彼を観察するうちに恋に落ちた攻の森尾。一度は告白したものの、言葉は届かず、それでも友達として崎田の傍で胸を焦がしては、過去の自分を悔いる日々。

そこへ前巻ラスト近くで登場し、二人をひっかき回していた臼井がまさかの森尾のレイプ被害者その2だったことが判明。被害当時の年齢なんと14歳。
しかもそれを森尾はすっかり忘れており、しれっと同じバスケ部に所属していた…。
ただでさえ、やらかしているのに、攻の過去のあまりのクズっぷりに思わず慄きます。
臼井のあれこれは当て馬感情ではなく、森尾への怨恨・路への同族嫌悪から生まれたものだったようです。

この事実の発覚に、路は多少の混乱はありつつも、片付けの魔法(?)で意外とあっさり苦しみを乗り越えます。

一方最もダメージを負ったのは他でもない元凶の森尾でした。
決定的に自分を許すことができなくなった森尾は、路からの好意を受け取ることなく路の傍を離れました。
好きだから、大切だから、自分みたいな存在が傍にいてはいけないという理由によって。

ここからが、好きだけど絶対に付き合わない攻VS生涯この攻しか愛せない受の8年間の長期戦。

8年間…長いです。
森尾の親友黒田だけでなく、読者としてもそろそろ森尾を許してあげたいタイミング。

とは言え何年経ってもこの攻はどこか愚かなのです。
会う気はないのに完全に連絡を絶つわけでもなく。
再開すれば、ためらいながらもデートを用意する。
告白されれば、後追いのように好きだと告げるけど、自分を許せないから付き合えないと言う。

なかなかの自己中っぷりに最後は路くんがキレました。
そして現実を突きつける。
「レイプがなかったら森尾は自分を好きにならなかった。見向きもしなかった。」
泣きながらそれを認める森尾。

やはり答えはこれでしたか。

だから、二人が結ばれるにはその事実丸ごと、愛も罪も表裏一体にして森尾は永遠に受け止め背負わなければいけない。
それが路の言う、「自分といると森尾を幸せにできない」という言葉。

「自分を許せない攻」と「相手を苦しめても傍にいたいと望む受」。
お互いの勝手な「ごめんなさい」が溢れていて、最後のシーンでは胸がパンクするかと思いました。

が、同時に既にこれが8年かけてたどり着いた、彼らの幸せの形なのでは?とも思いました。
罪だったり、許しだったり、葛藤だったり、躊躇だったり、見方を変えれば愛だったり、偶然だったり。
そういう過去と未来を全部ひっくるめて、森尾と路の幸せと定義しても良いのではないかと。
2人が2人でいることによってしか生まれない複雑な彩りは一言で言えば幸せと呼べるのではないかと。

なので、路はああ言っていたけれども、この物語は十分お互いがお互いを「幸せ」にしているハッピーエンドだと思います。

レイプから回りだした歯車。
自身の卑劣さの自覚、正当化の感情を源に生まれた恋愛感情。
アンビバレンスな行動と態度。
一生モノの悔恨。
どこを取ったってよくあるBLではないです。
でもそこに、少しだけ痛いけれど、ちゃんと心に残るモノがある。
心に響かせるパワーがある。
甘々ハピエンとかそういう既存の面白さとは別の何か。
そういうモノと出会える機会はそうは多くないと思うのです。
そういう希少さをひっくるめて「読み応えのある作品」だと思いました。

15

樋口先生らしい作品ではあるが

上巻にあたる『わたしにください』がしんどすぎて、下巻である今巻は購入後なかなか読むことができなかった。

複雑に絡んでしまった森尾と路の関係が、今巻で解れ、幸せになる姿が読みたい。

その一心で、手に取りました。

DKという、青く、若く、未熟な彼らの成長物語。
今作品を一言で言うならば、そんな言葉になるのだと思います。

路を傷つけてしまったことに、深く後悔し、思い悩む森尾の姿に彼の誠実さを感じる方は多いのではなかろうか。

だがしかし、である。

長い…。

路を愛したからこそ、自分の愚かさと未熟さに気づき、成長していく森尾の描写が、これほど長い文章を必要とするのかと言われたら、個人的には不要かなと思いました。

彼ら二人を取り巻く旧友や後輩も多く登場し、恋愛だけではなくこれからの自分を模索する彼らの姿には応援したい気持ちは湧き上がってきます。が、ぐるぐるする彼らの姿に、いったいいつまでそうしてるつもり…?という感想も出てきてしまった。

上巻であれだけのことがあった森尾と路の関係が、下巻であっさり進んでしまったらそれはそれで興ざめではあるのですが、上下巻(2冊)の分量が必要な内容ではないような…。

樋口先生らしい、というか、先生の原点はここなんだな、という作品で、全く萌えないわけでもないし、読者を惹きつける文章力はさすがだと思うのです。二人の相手を想う愛情の強さにもかなり萌えました。

が、うん。

完全に好みの問題ですね。
スパダリに愛でられる受けさんがドツボの私には、うじうじ、うじうじ、ずーっとうじうじする攻めさんに萌えきれなかったのが残念でした。

11

うーん…私には許せない

受けがひたすら可哀想な上巻は「まあ、BLってこういうジャンルあるよね」とまだ思えたんですが、下巻で攻めが受けをレイプした時よりもっと前に別の後輩にもゲスすぎる事をしていた事が判りドン引きしました。

ネタバレになっちゃうんですが、攻めが16歳の時他の学校の14歳の小柄な少年を弄んでヤリ捨てて(面倒くさくてあんまりよくなかった、の暴言つき)高校で再会しても身長伸びてたから気付きませんでした、むしろそんな事すっかり忘れてましたって…どんだけ外道?多分他の被害者もいるよ?いくら更生しても大人になってハイスペックになったとしても私は許しませんよ(←執念深い)

臼井は確かに受けの路に対してレイプをけしかけたり(未遂)性格は悪いけど多感な時期に攻めの森尾に酷い目に合わされた影響を受けてるせいだと思います。受けも不良生徒からのレイプは辛かったけど攻めからのは元々好きだったからまあ良かった、みたいな感じでなんであんな奴好きなんだ?と思います。将来またあのサイコな部分が出てくるんじゃないかと心配になります。

腐女子的に私が許せるキャラは友人の大村くらいかな。彼も上巻では路への虐めに加わって悪い奴だったけど、8年間路に寄り添ってあげてたし、かなりの美形らしいのにあまりいい恋愛できてない感じがいい意味で気になります。

辛口になりましたが、樋口さんって元々攻めがハイスペックだけどロクデナシっていうパターンが多い作風なので読者との相性なんだと思います。

13

合わなかった

樋口先生好きなんですけど、今回は合わなかったです…いかにも切ない!を全面に押し出した溺愛執着攻めが苦手なのもあると思いますが。

攻めは受けをレイプしてしまった自分自身を許せなくて苦しむんですが、流石に拗らせすぎ…って思ってしまって感情移入できなかったです。
あと高校生から社会人の後半の流れ?が結構雑に感じました。
ただ、ラストの受けの「意気地なし!」には笑ってしまいました笑
よくぞ言ってくれたー!いいぞ!って感じ。

あと!両思いになってからのセッ…がないです!二人でホテルの部屋まで行くのに!
最後両思いセッ…はBL小説の様式美みたいなところがあるのでちょっと拍子抜けしました。
2冊購入の連動特典小冊子に両思いその後(もろもろ込み)があるみたいなんですが、違う書店で買ってしまったのをわざわざ前編買い直すのもな…って感じですし、特典なんて初めにしか付かないんだからちゃんとまとめて欲しかったです。

要所要所グッとくるポイントはあったんですが、攻めが長いことうじうじうだうだしてるのが苦手な人はハマらないかもしれません。

9

どうか森尾が願ったとおり、優しく路を愛し続けられますように

勝手にですが、前巻で一番痛い部分は乗り越えたと思っていました。
何なら、後は巻き返しだけ~♪くらいの浮かれた気分でいたんですよね。
そしたら、想定外に今作もしんどくて「何でなのおおおおっ!」と悶絶する羽目になりましたよ。
もうこれ、あまりに切ないし何より哀しすぎる・・・!
ある意味、前作よりしんどい内容ですよ。

ただ、人を許す事。許される事。そして、愛する事。

もがき苦しみながら二人がたどりついた場所に、すごく心を動かされたし感動もしました。
これ、何で「-十八と二十六の間に-」になんかなぁと思ってましたが、この八年間と言うのは、森尾にとって必要な時間だったんでしょうね。きっと。
この二人を見ていると、愛とはとてつもなく身勝手で、なのにこの上なく純粋で、また救いでもあるんじゃないかと思えてくる。
森尾が神様に願い続けた「欲しかったもの」には、涙が止まりませんでした。

でも、かなりしんどいので、痛いのが苦手な方は最初から避けて下さい。

で、すでに素敵なレビューをあげてくださってるので、個人的に印象深い部分のみ語らせてもらおうと思います。

えーと、今作ですが、前作に引き続き・・・と言うより、更に二人のスレ違いが深刻だったりします。
前作で路をレイプした森尾。
路への想いを素直に認めた事で、逆にひどい罪悪感に苛まれるんですよね。
これが、もう本当に切なくて。
私は攻めザマァが好きなんですよ。
森尾みたいな攻めと言うのは、徹底的に痛めつけてくれていいと思ってるんですよ。
それが、こう、森尾のあまりの自分に対する厳しさに、何かもう「自分を許してあげてよ!」と言いたくなってくる・・・。
森尾にとって路は純粋でキレイな存在で、自分は汚して傷付けてしまうだけと言う、強迫観念にも似た強い思い込みがあるんですよね。

で、路は路で、森尾が自分と居てくれるのは、同情や罪滅ぼしでしか無いと勘違いしている。

スタートがスタートだった為、互いに相手を気遣いすぎて、一歩を踏み出させない状態と言いますか。

また、路のレイプによるトラウマがですね、かなり深刻なんですよね。
似たような状況に陥ると、戻したりマトモに動けなくなってしまう。
いやこれ、そんな路を見る度に、自分を強く責めてそばに居る資格は無いと絶望する森尾。
もうとっくに許しているのに、どうしても自分ではコントロール出来なくて、森尾を心配させる事で自身も傷付く路。

このトラウマって、厄介なんですよ。
普段は忘れてるつもりでも、本当に一瞬でフラッシュバックなんかが起こるんですよね。
身体が覚えてる。
私は足に包丁を落とした事があるんですけど(ネタじゃないです。ガチです)、それ以来、血が一切ダメですもん。
血を見た瞬間、足元からザッと震えが登ってきて失神しちゃうんですよね。
簡単には、忘れられるもんじゃない。
要は何を言いたいかなんですけど、自分の意思でコントロール出来るものじゃないと思うのです。
ましてや、まだ高校生の路がそんな簡単に乗り越えられるものでは無い。
しかし、その路の反応が、森尾を追い詰めてしまう。
こう、あまりに哀しい。
哀しすぎる。
いや、攻めが簡単に許されて受けと幸せになろうものなら「甘いよ!」と腹が立つのに、ここまで自分で自分を責めてると「もういい加減、罪悪感を捨てろよ!」と、今度は許さない事にもどかしくなってくる。
だって、本当に切なすぎるんだって!

で、深く感動したのが、二人がたどり着いた答え。
この二人、深刻なスレ違いを経て、離ればなれになります。
八年もの間。
26才になって、再会した二人の選んだ道ー。

路ですが、森尾と出会った事により、自身の中の愛と深く向き合うんですよね。
路の出した答えは身勝手かもしれないけど、それもまた愛だと思う。
許す事も愛なら、苦しめると分かっていても共に居るのも愛だよ。
いや、正解なんて無くていいし、正しい愛し方なんて分からない。
ただ、信じる事が大切なんだろうなぁと。

どうか、森尾が願った通り、優しく路を愛し続けられますように。

9

やきもきしました


とっても素敵なレビューがあるのでライトに書かせて頂きます。

樋口先生大好きな読者です。
また、電子版は読んだことがありません。
以上を踏まえた上でお読みください!!

前作からの続きなので、やっといちゃいちゃが見れるかな!とワクワクしていたのですが、思いっきりドロップキックを喰らいました。

私が感じたテーマは”許す”
過去の過ちは誰が許すのか。
被害者か。もしくは加害者自身、第三者か。
この”許す”ことが二人の中を引っ掻き回します。
拗れます。

どうしてそういう発想になるの?!という展開が多々あります。
この作品は行動より、心情を大切に描かれていると思います。なので、ふたり(主に攻め)の行動にやきもきさせられます。これは断言します。苦手な方は注意。

序盤は攻めの視点から書かれていますが、始めっからシリアス真っ只中です。受けを好きなのに目を背く事のできない罪の意識、過去に己がしてきた事。
最後は勿論ハッピーエンドですが、心が抉られます。

余談ですが、番外編がとっても欲しい。
綺麗に纏まっているのですが、ふたりのいちゃいちゃがもっと欲しいです。
あと、特典小冊子は是非お手にとって欲しい!
本作品がもっと好きになります!

3

こんな悲しい両想いがあるだろうか…。

「わたしにください」続編。
色んな感情が溢れ取り留めのない文章ですみません。

なんて悲しい両想いなんだろう、と思いました。

私は前作を読んで、2人のすれ違いはスタートで躓いてしまっただけ、誤解を正せばすれ違いも修正できるとライトに捉えていました。けれど森尾の罪意識はそんなもんじゃなかった。こんなに長く強く自分を責め続ける攻めを初めて見たかもしれません。

痛々しささえ感じるほどの罪意識。
どこまでいっても許されようとしない。

愛すれば愛するほど、許してほしくて、許されたくない。
愛すれば愛するほど、自分の犯した罪の大きさを実感し打ちのめされる。

森尾の罪意識に終わりがないのです。崎田がどれだけ言葉を尽くしても、崎田が許しても、森尾自身が自分を許せない以上永遠にループが続く。皮肉なことに崎田を愛し続ける限り、罪も同じようについて回るのですね。

救いはどこにあるのだろうか?
愛とはなにか?許すとはなにか?
森尾と崎田が答えを求め続けた時間がとても切なくてどうしようもなく泣けました。

森尾の兄は
"(森尾は)存在するだけで傷つける側"
"恵まれるということはそれだけ他人を踏みつけることだ"と言います。
今作では森尾が記憶に留めることすらなかった過去が襲ってくるのですね。

森尾が罪の意識もなく送っていた"日常"は、
だれかにとっての"最悪な日"だった。

兄の指摘通り、森尾は無意識に人を傷つけてきました。
(森尾がクズすぎてゾッとする展開だった;;)
そして被害者の復讐・恨み・嫉みの矛先は……。

崎田に恋する前の森尾ならそんな過去を晒されたところで気にも掛けなかったでしょうね…。
けれど崎田に恋をして、崎田を通じて多大な苦しみを痛感して、今は感情を持っている。
因果応報なのですが、自分のクズさを目の当たりにして自分を追い詰めていくのがシンドイです。

そういう点では崎田のほうが強かった気がします。
 前を向く力がある。
 変えようとする努力がある。
でもそう強くなるキッカケを与えたのは森尾なんですよね。

森尾の存在に傷つけられた人もいるけど、助けられた人もいる。
けれど森尾は自分の負の面ばかりに苛まれて気付こうとしないほど拗らせてしまって。
崎田が真っ正面から向き合ってぶつかるのを、森尾は……。

愛=罪
愛が深ければ深いほど罪も深くなる。
こんな悲しい両想いありますか?
なんて大それたモノを抱えてるんだよぅ。

崎田は好きだから許せると言う。
森尾は好きだから自分を許せないと言う。
じゃあどうすれば許されるのか?
一体誰が何を許すというのだろうか?

サブタイトルに『ー 十八と二十六の間に ー』とあります。
ずっと前にも後ろにも動けなかった時間が動き出すまで8年。
動くキッカケとなったのが崎田の怒りだったのが個人的に印象に残りました。

思い返せば崎田は森尾に責めるような感情をあまりぶつけてないのですね。
早めの段階から手放しで許されてしまって森尾自身で自分を詰るほか無かった。

本音でぶつかりあってようやく少し許せたのかな。
タイトルの伏線が回収されて号泣しました。
そういう意味だったのか…!ですよ~(;////;)
ずっと後ろ向きだった森尾から前向きな言葉が聞けて良かったです。

※余談ですが
購入を予定してる方は特典小冊子が付くうちに是非。
本編再会後(崎田視点)の部分を森尾視点で書かれているのでより理解が深まります。
また本編では恋人エッチがないけど(解せぬ!)、その辺りは小冊子で読めました。

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