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作者様の作品を全て読んでいるわけではありませんが、私は今のところ「セカンドクライ」が一番好きです。
作中、大きな事件は特段無いんです。敢えて言うなら、攻めのお兄さんの死。
その一番大きな出来事は既に起こっており、お兄さんの葬儀から話が始まります。
攻めはお兄さんの遺言によって、一人の青年と同居生活をスタートさせます。
”普通の生活”を送るうちに、孤独だった二人の心が少しずつ開かれ、惹かれ合っていく……とても静かで美しい、そしてぬくもりのある物語でした。
慧の想いは恋愛なのかな?と途中疑問はありましたが、彼が初めての夜に泣きそうな顔で言うセリフがその疑問を打ち消しました。
心が温かくなる、幸せな一冊だと思います。
とても悲しいところからはじまるけれど、優しいお話です。
心に深く刺さります。
重い設定もあるので読むのをためらう人もいるかもしれませんが、ぜひ多くの方に読んで欲しいです。
人が人を愛するという事の大切さ、愛情のありかについて深く感じ入りました。
ページをめくるごとに、感情が見えづらかった慧くんに血肉が通っていく様に心が締め付けられました。
読後はこの先ずっと、彼の日常が穏やかで優しいものであり続けますようにとリアルに願わずにはいられない程、私の心に存在し続けてます。
尾上先生の作品が大好きで、草間先生の作品も大好き。
まさに最高すぎる作品なのですが、ストーリーが難しそうでなかなか踏み出せず...
アワードの投票期日ギリギリにようやく拝読しました。
画家と青年、二人の出会いはまさに運命的でした。
表現者のマインドを持ち合わせていないので何とも言えないのですが、何かを描くという行為はアイデンティティと深く結びついていて、それはすなわち己と向き合うことなんだろうなぁと思いました。
アイデンティティに悩まされる画家、アイデンティティが存在しなかった青年。
互いに与え合える関係なんですね...素敵!
過酷な生い立ちで「普通」を知らずに育ったがゆえに、教えられた「枠」から1mmも外れることを許さないロボットみたいな慧(受け)。
こりゃあ恋どころではないな……と思いながら読んでいたけど、思っていた以上にすんなり「恋」になってびっくり。
いや、これは「恋」なのか??
これはヒナの刷り込みみたいなもんなんじゃないかと思ってしまいました。
なんで桂路を好きになったんだろう?そこまで好きになる理由あった?なぜ桂路じゃないとダメなんだろう?と。
だって路がうわぁ!これは誰でも好きになるわぁ!!みたいな魅力溢れるタイプではないし、超辛口評価で申し訳ないのですが、貧乏画家気取りの生活をしてこれたのも実家が極太だからであって……といった感情が湧いてしまってさほど魅力を感じなかったので……。
そして被虐待児で欲しいものがなにも思い浮かばなかった受けなのに、「あなたが欲しい」とはっきり言えるようになったタイミングがやたら早いなと。
私の感覚から言うと、土の中で発芽はしてたかもしれないけど、まだ地上には芽が出ていなかったのに一気に花が咲いた!みたいな感じというんでしょうか。
麒一郎氏とスーパー秘書緒川のおかげで、寸分狂いなく動くアンドロイドちっくな慧が出来上がりましたが、ここに人間らしいブレとか揺れとか感情とかそういうのをプラスしていくのってもっともっと時間がかかるだろうなぁと思っていたので……
(でもお葬式の様子は誰よりもだったので、スイッチが無い人間ではないんでしょう。)
でも早い段階で結論を出したのは、雑誌掲載作品という紙幅制限上仕方ないのかもしれませんね。
後半、桂路に見合いが用意されていると知った慧が、お墓の前で「欲しいものが見つかりました」と言ったシーンの後くらいに「あなたが欲しい」という展開だったら超好みだったなぁ……と。
ようやくここまで言えるようになったのか!!みたいな感慨があったはず。
(一緒に過ごしていくうちに彼と一緒にいる場所が自分の生きていく場所だとわかり、一冊の後半のほうでようやく「あなたが欲しい」と言えるようになったみたいな展開が好みの人間丸出しの感想ですみません。)
とまぁ、前半部分までの評価は「中立」なのですが、後半、書き下ろしの受け視点を読んで「萌」になりました。
とうもろこしの色に絡めて綴られたところは、とてもいいなと思います。
桂路のような掴みどころのないキャラクターは、物語が進むにつれてその相手方に、つまりこの話では慧にだけに内面を見せたり、過去を開示することで、その人物に対する読者の理解も深まり、愛着が生まれるのだと思いますが、今回は紙幅の都合かそこまで書き切れていなかったように感じました。
ですがその点を除けば、人間ひいては社会の多面性のようなものが非常に上手く描き出されており、とても面白い作品だと思いました。
最後のページで完結するのではなく、読後に読者が各々さらに考えを展開していけるような、不思議な余韻の残る作品でもありました。
尾上先生といえば歴史ものやファンタジーのイメージが強くありましたが、本作のような作品も今後また拝読したいです。