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とても不思議だけど、心が温かくなる優しいお話でした。
ファンタジーなのかな?
多分そうなんだと思います。
母の急逝で田舎に帰省した綴は、
実家でソラと名乗るキレイな青年に会います。
ソラは綴の従兄弟だというのですが、
綴は全く覚えがなくてーー…
優しくてみんなに慕われるソラですが、
とても不思議な青年で、
気がつくといる!みたいな感じです。
電話もなく住所も不明、字は書けない箸は持てないーー!
これは幽霊?妖?
いろいろな可能性が頭をよぎりました。
綴は頼まれ事を断れないお人好しなサラリーマンで、
いつも仲間にいいように仕事を押し付けられています。
他人のために動けるやさしい子ーーという
亡き父の言葉を支えに生きてきましたが、
本当はストレスがたまってるんですよね。
そんな綴に寄り添うソラ。
いつしかソラが綴の心の支えになっていくのです。
そして、少しずつ昔を思い返す綴は、
父が亡くなった時に居た小さいきつねを思い出します。
ーー母から聞いた言い伝え
〝親を亡くした子どもの所へきつねがやってくる〟
ソラはきつね?
綴もそう思ったと思います。
だけど、この物語に答えはないのです。
唯一、綴が出した答えは描き下ろしで明かされます。
綴は田舎に帰ることを決めるのです……
というより、ソラの側に居ることを決めたのかな。
しあわせだと言い合う二人がとても素敵なラストカットに、
じわりと胸が熱くなりました。
ソラが何者かなんて少しの問題でもないのです。
綴が自分で決断して掴んだ幸せを、
素直に嬉しく思いました。
ソラと綴が自然と愛し合う流れがあり、
意外とソラが積極的に行動します。
〝好き〟とか〝愛してる〟なんて言葉はないけど、
なくても不思議と気持ちが伝わってきました。
「思うがまま」あたりから加東セツコ先生に漂っていたミステリアスな空気感の作風。
今回は不思議かつ優しめなファンタジー系の物語です。
主人公はサラリーマンの橋屋綴。
人の頼みを断れず、いつも他人の仕事のフォローする役回り。いつもいつも彼だけが人の仕事を手伝ったり肩代わりしたり、という状況になっている。
そんなある日、母親が急死した、という知らせが。
急いで帰郷するが、実家には見知らぬ青年がいて…
叔母は従兄弟のソラくんよ、と言うが全く覚えがない綴。
ずっとソラの事を思い出せないまま、なんでも手伝ってくれる穏やかなソラとの時間に心が安らぐ…
ソラとは一体誰なのか。
ソラが何を考えているのか、ソラが何をしようとしているのか。それはなかなか明かされないのですが、そこには不安感や恐怖感はありません。
と言うのもソラから綴に向かって優しさの波動のようなものが感じられるから。
綴をひとりにはしない
そんな決意がソラにあるから。
さて、途中でソラの正体らしきものはわかってきます。多分。
でもこの物語に断定はありません。
綴を見ていつもニコッとしてくれるソラ。
綴にしあわせ、って言って微笑むソラ。
その隣に、いつもどこか寂しげで伏目がちだった綴の、楽しそうな笑顔…
綴とソラがいつまでもしあわせでありますように。
母親の訃報を受け地元に帰った綴は喪主の自分の代わりに色々と世話を焼いてくれる親戚たちの中に見知らぬ青年を見つけるが他の親戚たちには「従兄弟のソラ」だと言われる。
親戚の多い家系だがどうしても思い出せない。
だけど、家に一人で住んでいた母親のもとをしょっちゅう訪ねてきてくれていたことを聞き心を開いていく綴。
遺品整理で家の片づけをする際も何かと忙しい合間を縫ってきてくれていた親戚たちの中で、ソラは毎日のように来てくれる。
母親がいなくなり住む人のいなくなった家の窓を開け換気をし家を守っていってくれてるソラ。
綴は仕事を辞め地元に帰る決意をする。
最後までソラの正体ははっきりとはわからないまま。
綴の過去の記憶であくまでも予想・想像をする範囲。
それでも、物足りなさはなくあたたかさだけはしっかり伝わってくるお話でした。
一種のホラーだとも思うのだ。掴みかけた「何か」はとても不確かで。その不穏さはとても心をざわつかせる。これを深夜読んでいて、その後とても夢見の悪い心地がして。嫌な気分で目が覚めた。ずっと息を詰めていた。
綴はお人好しで、仕事を押し付けられても断れない。それでいて、そんな自分に疲れている。疲弊している。そんな折、母の急逝を受けて、遠く離れた実家に帰る事になる。
母の葬儀を出したり、遺品の整理をするのには叔母や親戚が親切にも世話をしてくれた。その中に従兄弟だというソラと名乗る綺麗な青年が居る。親戚の多い方だと知ってはいたが、綴はソラを思い出せない。
ソラは言う。「大丈夫。絶対に綴をひとりにはしない。」
その言葉と優しい笑顔は 心細い綴をほっとさせてくれた。
こんなに優しくしてくれるのに。やっぱり綴はソラを思い出せない。
昔、遊んだ幼馴染なのか?淡い記憶が薄く呼び戻す。
ソラは何者なのか?
BLあるあるならば。それは、幼ない初恋の筈。
しかし作者は私たちの想像を遥かに超えて来る。
仕事があるので、一旦都心に戻った綴はソラから木の葉をコラージュした絵葉書を受け取る。ソラは携帯を持たない。ソラに会いたい。急な仕事に追われてなかなか帰れないでいたある日。急いで地元に戻った綴は「約束したのに。」と恐ろしい顔で佇むソラを見る。(ここめっちゃ怖かったです!あわや綴が呪い殺されるのかと思ったよ。)
ソラの絵葉書。住んでいる所が不明なこと。ソラは字を書けない。何処からともなく現れる。従兄弟だと紹介されるのに。誰も詳しくは知らない。それを不審に思わない。
そして。ソラは箸が使えない。
この不気味な青年の正体は。やはり謎なのだ。物語的には正体は描かれている。
それでもそれは、不穏で不確かな、心をざわつかせる謎なのだ。
綴はソラの居る場所こそ「還る」場所なのだと信じて、会社を辞めて地元へ帰る。
そしてふたりは「しあわせ」に暮らしました。と 終わるのだけれど、これをメリバと言わずして何て言おう。
加東セツコ先生の強くて美しい瞳のキャラクターが物哀しさを湛えている様で。何だかそれすらも恐ろしくて切ない。
ひとつ気付いた事がある。綴は「オレ」でも「俺」でも無く「おれ」と言う。
そうした理由を聞いてみたい。
