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絵本に囚われた魔人×スランプ中の小説家の、不思議な恋の千夜一夜♡
絵本の中からモクモクと現れて、ご主人様の願いを三つ叶えましょう…とベタな「魔人」もの設定に驚きでした。
既に某ランプの魔人BLも存在しますし。
ちょっと二番煎じなの〜?なんて構えながら読み出しましたが、途中からはぐんぐん引き込まれました。
というのも、今回の「主人」となった小説家の來栖佳の造形がいい。
高潔…というのは言い過ぎかも。だけど安易に「金持ちになりたい」とか「とにかく売れたい」とかいう普通に小市民が描く願い事をしないんです。
彼は魔人・シンが現れた時、正にスランプを感じていて、創作に関して迷いや不安の只中にいた。それでも佳は創作、大きく言うと生き方そのものに伴う苦しみを安易に三つの願いの中で叶えようとはしない。苦しくても自分でもがいて答えをつかみ、乗り越えようとしているのです。
しかし、シンは長く人間の姿を続けるのは本当は大変で…
佳が願いをなかなか言わないのはシンを便利に使いたいからじゃない、願いを叶えたら消えてしまうから。自分の元からいなくなってしまうから。
シンがいてくれたから内向的でネガティブな自分から脱皮できた事を自覚し、シンこそが呪いを解いて自由になってほしい、と願う佳。
一方シンも今までの主人たちと明らかに違う佳を敬愛し、愛おしく想っていく。
この2人の切ない両片想いと、小説家・クリエイターのリアルな理想と葛藤についての臨場感あふれる描写が非常に良かった。
魔人と人間の恋。結末はどうなる?
自分よりも相手、自分の命すら差し出しても相手の願い・幸せを…という心こそが鍵だった…それは愛の真理。時空も呪いも超えるのですね。
基本ファンタジーってちょっと苦手なんですけど、本作は日常がベースにあっての不思議が紛れ込むお話だったのでなんとかついていけました。
書き下ろし「人間修行期間」はシン視点。シンから見た佳は可愛らしい恋人なんですね。シンが心から佳を愛し、いくらでも甘やかしてやりたい気持ちがものすごく伝わってきました。
現代作家と絵本の魔人のお話。
秀先生が、こんなトンチキアラブファンタジー?って驚きと、安定のスパダリ攻めがたっぷりと楽しめて、さらに、小説家さんの創作の苦悩が垣間見れるという、楽しみどころが一杯のお話でした。
來栖が、安易にシンに願いごとせずに、しっかり自分で考えて成長していく姿に好感持てるし、魔人のシンも、それが自分に掛けられた呪いとはいえ、主人の願いを叶えることを優先して無茶なわがままを言ったりしない。
とっても気持ちよくハッピーエンドになる作品、楽しかったです。
久々に『ジャケ買い』をしました。
私、小野浜さんの男々しくて(『おおしい』というよりは『おとこおとこしい』と読んでいただきたい感じ)硬い感じの描線がが好きみたいです。
検索したらBLイラストは2作目なんですね。
更なるご活躍を期待いたしておりますので、出版社さま、よろしくです!
秀さんがあとがきで「初のアラブもの」と書かれておりましたが、アラブ要素はないですよね、このお話。主人公のお相手は『絵本の魔人』ですけれども、大スペクタルは無くてむしろ『日常BL』のジャンルではないかと。
ただ、主人公の來栖がスランプ気味のバイオレンス作家なので、その『日常』は、ちょっとばかり特殊なんですけれどもね。
スランプと言っても、量産作家の來栖は書けなくなるんじゃないのね。
書けちゃうんです。
これがね、面白かったのですよ。
納得出来ないものでも、形としてちゃんと作ってしまえる。
「作家さんって職業なんだなぁ……」って、改めて思いました。
でも、作家さんが他の職業と違うのは、そういう状態を続けていくとどんどん擦り切れて行って、いつか読者の求めるものが書けなくなってしまう(かもしれない)ということ。
また、自分が本当に書きたいものがあっても、それが読者の求めるものでなければ『書けない(書いたとしても発表できない)』ということ。
図書館で借りた不思議な絵本から魔人のシンが現れて、お約束の『3つの願い』を言う様に求められるのですけれども、その段になって來栖は『今後、自分がどんな作家としてやっていきたいか』を考えることに直面します。
確かに実際に突き付けられたら即物的な『願い』は出てこないかも。
私が同じ状況に陥ったとしたら、なんか異様におどおどして「世界平和」なんて口走ってしまいそうな気がします。笑っちゃいますが、いや、マジで。
丁寧に、誠実に生きていこうとしたら、人生の喜びは『自分が成し遂げたことを自分で誇りたい』ということに行きつくのですよね。だから、それは他人(たとえ魔人であっても)に叶えてもらうものではない。
このお話を読んで再認識しましたよ。
それと同時に『愛し愛される対象』が側にいるのは、限りない喜び。
前者はひとりで頑張ることだけど、後者はひとりでは出来ないことなんです。
秀さんのお話ってダークな雰囲気のものも多いですが、今作は『白い秀さん』。
このお話が『過分なほどのハッピーエンド』で終わっているのは、長年作家として頑張って来た秀さんから、様々な場所で頑張っている姐さま方に贈られたエールだからだと思うのです。
「なかなか思う通りには行かないかもしれないけれど、頑張れ」と。
「頑張ればきっと、自分も変わるし周りも変わって来るよ」と、励まされた様な気がしました。
今回は絵本に封じられていた魔人とスランプ中の小説家のお話です。
受様が絵本に報じられていた攻様と心を通じ合わせ呪いを解くまでと
攻様よりでの後日談を収録。
受様は幼い頃から極度の内気で本だけが友達でした。沢山の本を読ん
だ受様は学生時代に究極の恋愛である心中ものを書きますが、周りの
評判は芳しくなく、学際の個人誌も受様だけ惨敗が続きます。
卒業間近に半ばやけくそで方向転換して男同士のバイオレンスを書上
げ、総合出版社の「央剛大賞」に応募した事で受様の作家生活が始ま
ります。
なんと応募作が大賞を勝ち取り、書籍化、文庫化、ドラマ化、映画化
と華々しいスタートで小説家となった受様は今年で13年目を迎えます。
筆も早く年に2、3冊刊行し、男性向雑誌の読者コラムや人生相談等も
執筆しますが、テレビ番組の対談等はもってのほかで丁寧にお断りし
ていました。
今日は勇気を出してリアル店舗で話題作を買おうと出向き、ファンだ
という店員からミニ色紙へのサインを頼まれます。書店員にはいたく
喜ばれ、励まされた気分になりますが、新刊台ではベテラン作家や最
近デビューした若手作家よりも堆い自書の山に一抹の不安を感じます。
受様は現在、来月末締切予定で執筆中ですが、連絡してきた担当者に
本の売れ行きを訊ねても「それなりです」という曖昧な答えしかもら
えず、危機感を募らせていたのです。
受様は書きたいという熱も生かしたいと思うキャラクターもまだまだ
沢山ありますが、最近の売れ筋は繊細な感情を取り扱った恋愛や日常
ものでダイナミックな事件も起こらず、誰も死なない物語は、受様に
は手が出せないジャンルのモノなのです。
ここ1,2年は自分の賞味期限が迫ってきているようで、自分の不調を
感じながら、くすぶり続ける思いを昇華しないと原稿も進みません。
そこで受様は悩んだ挙句、翌日は近くの図書館に向かう事にします。
書き出す事は出来てはいるものの、爆発的な力がなく、ずるずるとい
つも手癖で書いてしまいそうですが、新しい本を読むのは怖く、過去
の本ならと図書館を目指したのです。
顔なじみの司書に挨拶し、自書の背をそっとなぞり、あちこちの書架
を巡ります。気になった本をパラ見しては書架に戻していると少しリ
フレッシュした気がします。
何気なく目に入った子供向のコーナーでカラフルな海外の絵本を見て
いると、色あせたセピア色の本が目に入りますが、見慣れない言語の
絵本を見つけ首を捻ります。
受様はその本を借りうけて自宅で謎の文字の翻訳を試みますが、現代
でも未解読の言語といらし合わせても一致しません。受様は読めない
ながらも頭から頁をめくり始めます。20頁ほどの絵本は旅商人か何か
の話のようで、終わりの頁の片隅に小さな渦巻き模様を見つけた受様
は何気なく指で渦巻きをなぞるのですが・・・
突然その渦の中からもやもやとした白い煙が立ち上ったと思うと、煙
は空中で黒い神に褐色の肌に見事な胸襟を持つ上半身裸の美丈夫へと
変わっていったのです!!
空中で無造作に胡坐をかき、伸びをした男はまだ眠たそうな顔でゆっ
たりと微笑んで受様に声を掛けてきたのです。
数百年ぶりの目覚めだ。お前が新しいご主人様か。
おはよう、よい目覚めをありがとう。
男は絵本に閉じ込められていた絵本の魔人で、呼び出した者に仕える
運命で、主人の願いを3つ叶えると言います。この魔人こそが今回の
攻様ですね♪
攻様は人殺し、その気の無い相手を振り向かせる、死人を蘇らせる、
願い事を増やす以外なら何でも叶えてやると言い、300年ぶりなので、
今回はオマケてもう1つサービスしてやるから願いを言えと迫ります。
果たして攻様は本当に願いを叶えてくれる魔人なのか!?
そして受様は何を攻様に願うのか!?
秀先生の新作はカバーイメージから童話「アラジンと魔法のランプ」
を下敷きにしたアラビアンなラブコメ系ファンタジーかと思いきや、
作家生活13年目を迎える受様がスランプの中でもがき、人間関係に悩
みながら作家活動に邁進するとてもリアルなお話でした。
受様はおっかなびっくり「新刊の重版」を願います。すると攻様が指
を鳴らして金色の煙を立ち上らせると、いきなり受様のスマホが鳴り、
担当から新刊の売れ行きが好調で重版が決まったと伝えられます。
攻様は金持ちになりたいとか、絶世の美女を侍らせたいとか、人気作
家になりたいとか、わかりやすい願いの選択肢を並べます。しかし生真
面目な受様は絵本の出どころとか、攻様が絵本に封じられた理由などが
気になる上に、安易に願いを口にできません。
そこで攻様は受様の願いを叶えるまで家事全般、童貞のな受様の性的な
世話までしつつ、受様宅に居つく事になります。攻様は適応能力とコミ
ュ力の高さで3日程度で現代日本の生活に馴染みます。
そして受様の今と作家としての希望と理想を理解し、引っ込み思案だっ
た受様の目を外にと向けさせていくのです。そんな攻様に受様も次第に
心を開き、惹かれていくのですが、魔人である攻様は長く絵本から離れ
続けていると魔力を失い、強制的に絵本に戻ってまた長い年月を本の
中で過ごすしかない事を知る事となるのです。
絵本から解放された攻様が「3つの願いを叶える」ために受様に仕える
という当初の関わり方はラブコメぽいのですが、徐々に攻様に惹かれ
ていく受様が自分ではなく、攻様の幸せを願うようになっていくと段々
と御伽噺と現実の垣根がなくなっていき、大団円を迎えるまでドキドキ
万歳でとても楽しかったです♪
元々出版業界で働いていた作家さんなので業界描写に臨場感があります
が、作家である受様の仕事に対する葛藤がとてもリアルです。たぶん先
生ご自身のお仕事に対する真摯な思いが反映された結果のリアリティな
のかなと思えて、さらに興味深く読ませて頂きました。
もうちょっと2人のその後が読みたいですね。続編希望です (^O^)/
心優しい魔人と心優しく臆病な大人の、まるでお伽話のような大人の甘いラブストーリーです。
表紙とあらすじから、魔人といえば…と、えろえろなものを勝手に想像してしまっていたんです。
想像してた内容を良い意味で裏切る、じんわりと胸があたたかくなるようなとても優しいお話で、ああ読んで良かったなと思える素敵な作品でした。
メインキャラクターは、ランプの魔人ならぬ絵本の魔人シンと、デビュー13年を迎えスランプに陥っている小説家の佳。
以下、ざっくりとしたあらすじです。
ある日、スランプ中の佳が気分転換に訪れた図書館で古びた絵本と出会います。
どうにも気になった佳は家に持ち帰ることに。
日本語ではない、けれど他国の文字とも違う…
不思議に思いながら何気なく絵本をなぞると、突然煙が立ち上がり美しい褐色の魔人が現れ
「お前が新しいご主人か。おはよう、よい目覚めをありがとう」
と、物語は始まります。
さて、読み終えての感想を。
シンも佳も本当に優しい魔人と人間なのが随所に見えて、読んでいて終始心地が良かった。
「早く願いを言え!」とは言わず、「気の長いご主人だと分かった。深く理解したいから側にいたい」「寂しそうに見えるが、今の俺にはまだ口出しをする権利はない。だったらせめて寝食は近くありたい」と、無理矢理押し付けることなく、さり気なく日常の中に自然と溶け込んでいくシン。
正直、こんなに優しく包容力のある魔人は見たことがなかったです。
本当にさり気なく、するっと佳を包み込んでしまいます。
スランプを抱えながら、あれほど頑なに外界との接触を拒み、自分の中の陰鬱とした城に籠もっていた佳。
シンと共に過ごす日々の中で良い刺激を受け、一歩また一歩と外の世界へと踏み出して行くのが見どころのひとつかなと思います。
ある程度の年齢になると、なんとなくこのままじゃ良くないと思っていても行動が出来なかったり、今まで守りに入っていたものをぶち壊して新しいことにチャレンジするのって本当に勇気がいることだと思うんです。
小さな何かがきっかけで人生は豊かになるのかもしれない。
シンの影響は少なからずあるものの、一歩踏み出したのは佳自身の選択で…彼の前に進もうとする姿と、溢れ出る優しさが眩しくて好きでした。
SNSを流し見しながらの虚無感もわかるなあと思いました。
一方、魔人となってから数百年。
故郷をとうに失い、人々の願いをひたすらに叶え続け、絵本に戻れば1人きりで永遠の時を生きて来たシン。
数多の願いを叶えても、自身の願いは叶うはずもなく、皆一様に願い事を3つ言っては去っていくだけ。
誰も胸の裡を聞いてくれることが無いまま、すべてを諦めていたシンを佳だけが呪いと暗闇の世界から救ってくれた。
佳が成長をするだけではなく、シンも佳に救われるという、どちらか一方だけではないのがこのお話の素敵なところだなと思います。
本編終了後のシン視点での番外編が幸せそうですごく良かった。
このままずっと、人としての命が尽きるその日まで幸せに生きてほしくなる2人でした。
あとがきで先生も仰っていましたが、またこの関係性でぜひ読んでみたい…!
そして、佳の職業が小説家ということで、作家ならではの苦悩や葛藤が丁寧に描かれていて、個人的にはここがものすごく読み応えがあって面白かったですね。
紙や電子、各々の作風や流行り廃り、売れる売れない等。
若手もベテラン作家もそれぞれ悩みを抱え、もがきながら必死に新しい作品を生み出している…
いつも楽しく読ませて頂いている作品達も、作家さま方がそうやって魂を込めて書かれているのだろうなと想像し、改めて物語を読める幸せとありがたみを感じました。
小説が読めるって本当に素晴らしくて幸せなことです。