イラスト付き
お前が欲しい、というこの気持ちは一体なんだ?
父である龍王の鱗を引き取りに来た龍神と蔵元の話。
大学を卒業し、実家の酒蔵の蔵元を継いだばかりの八千穂(受け)は酒造りでの命ともいえる井戸水に変化を感じ不安に思っていた矢先、龍神・蘇芳(攻め)が現れ毎日酒を供えるという約束を違えたため井戸水の元となっている龍王の鱗を回収すると言われるのです。
龍王の鱗など聞いたことがない八千穂は驚くのですが、見つからなければ八千穂を生贄として天界へ連れていくと言われます。
地上は穢れているため長くとどまることはできないとしながらも、蘇芳はしばらくこの地にとどまり龍王の鱗の鱗を探すことにするのです。
代償は八千穂の精気。
龍王の鱗とは、昔雨ごいをしたおり生贄の女性の健気さに心打たれた龍王が自らの鱗をはがして与えたもので、そこから上質な水が湧き出るため、毎日必ずその水で作った酒を供えるようにという約束をしていたのですが、八千穂はその存在を知りませんでした。
初めは傲慢な感じだった蘇芳ですが、素の蘇芳は本当に優しく健気でした。
酒造りのためなら自らを犠牲にしても構わないと訴える八千穂に心打たれた蘇芳はわが身を犠牲にしてでも守ろうとしてくれます。
酒が供えられななかったため龍王の鱗は効力を失い、枯れかけている井戸水。
それを少しでも遅らせるため自分の鱗を使う蘇芳。
まだ未熟な蘇芳の鱗では一日持たすだけで精一杯で毎日鱗をいれなければいけません。はいだ鱗は自力で癒すことはできず、爛れ痛みに苦しむことになるのです。
探しても探しても見つからない龍王の鱗。
日に日にやつれていく蘇芳。
何も知らず蘇芳を心配し精気を与える八千穂。
八千穂は祖父もいない中初めての蔵元で忙しい中、見つからない鱗に弱っていく蘇芳のこと、鱗を持っていかれたら水が枯れるという現実、というたくさんの心配事を抱えながらも精一杯酒造りに販売にと精力的に動き回る姿が印象的です。
お約束ともいえる精気の取り込みですが、神は生殖活動をしないため性衝動がないとのことで、高めるだけ高めてほったらかしなのがちょっとかわいそうでした。
わざと弄んでいるのかとも思ったのですが、実際は本当にわかってなかったようで、性衝動を覚えるようになってしまってどうすればいいのかわからなくてじたばたしている姿は思春期の中学生のようでとても微笑ましかったです。
今回の騒動の原因は倒れてしまった祖父にあるのですが、龍王の鱗については当主のみに伝えられるという掟のおかげで今回の騒動が起きたのでした。
本来なら行われていた継承が行われなかったことで空白期間が生まれたことによる今回の騒動。
龍神の慈悲が再びあるのかと思っていたのですが、今回の騒動をなかったことにしてくれなかったのがちょっと意外でした。
でも、理から外れることをよしとしない龍王としては最大限の譲歩だったのでしょう。
何もかも捨てて八千穂と生きていくことを決めた蘇芳が幸せになることを願っています。
蘇芳だけが他の龍神と違う容姿なのにはきっと訳があると思っていたのですがそれに関しては全く触れられていませんでした。ただの突然変異だったのかな。
何かを達成して銀龍になるのかなとか想像していたのですが違う展開でした。
今作では悪い人は登場しません。
職人気質の杜氏や実家から出て滅多に帰ってこなかった叔父など口の悪い人はいますが、基本みながこの酒蔵のことを想っての行動です。
特に叔父は下戸だったことが実家に寄りつかなかった原因ではないかと思うのですが、仕事の傍ら無償で営業活動を手伝ってくれていました。皮肉気で上から口調だったので初めは乗っ取りとか考えているのかと思ったのですが、彼なりに実家のことを想っての行動のようでした。
彼の息子が酒蔵に興味がるということなので、跡取りとして頑張ってくれるといいなと思いました。
それにしても、八千穂も健気でしたが、蘇芳の健気さには頭が下がるというか驚きです。
健気な受けというのはたくさん読みましたが、これほど受けのために身体を張る
攻めは初めて読んだのではないでしょうか。
感動で泣きそうでした。
でも、実際に死んでしまっては元も子もないので自重してほしいものです。
大事なもののために命を張る健気な攻めに完敗です。
小山田さんの描かれた可愛らしい表紙につられて購入。
四ノ宮さんは時々めっちゃ痛い作品を書かれることがありますが、今作品はこの可愛らしい表紙の通り、優しくって温かなストーリーでした。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は八千穂。
小さいながらも味に定評のある酒蔵・龍之介酒造の跡取り。大学を卒業したばかりで、これからまだまだ修行を積んでいかなくてはならない彼だが、祖父(両親はすでに鬼籍)が急に倒れ、一気に実家の酒蔵の責任者となってしまった。
右も左もわからず、昔から働いて売れている蔵人の清水さんの手を借りつつ酒蔵をまわす八千穂だが、彼には祖父のことだけではなく気がかりな事が。
それは、龍之介酒造の要ともいえる井戸水の味が変わったと感じていること。
祖父のこと、酒造のこと、井戸水のこと。
気にしなくてはならないことが多く右往左往する八千穂だが、ある晩、彼のもとに龍神・蘇芳がやってくる。
蘇芳曰く、井戸水は、かつて蘇芳の父である龍王が安龍家に授けたものだと言うが―。
という、ファンタジー要素モリモリのお話。
水をつかさどる神である龍神。
そして「水」が大切な酒蔵。
「水」という、人が生きていくうえで必要不可欠なものを軸に、蘇芳と八千穂の心の交流を描いていくストーリーです。
龍之介酒造の要である井戸水。この井戸水の変化は、=龍之介酒造の存続にかかわってくるわけで、この井戸水を枯らさないために蘇芳は八千穂にある条件を突きつける。
蘇芳は龍神、というか神であるために非常に不遜な態度を取る男性なのですが、彼がそういう態度を取るのには理由がある。圧倒的な支配者(蘇芳)と、彼の庇護を受ける人間(八千穂)という関係、に見えますが、その裏にある蘇芳という龍神の素の姿に激萌えしました。
この作品は、八千穂視点で進みます。
でも、八千穂の心情というよりは、どちらかというと彼の目を通して蘇芳という龍神の姿が紡がれていきます。
横柄で、偉そうで、けれど優しい神の姿が。
龍之介酒造の経営が上手くいっていないこと。
祖父が倒れたこと。
そして井戸水が枯れてしまいそうなこと。
様々な困難が八千穂に降りかかりますが、ベースとしてはシリアス寄りな内容ではありません。小山田さんの描かれた優しくて麗しい挿絵効果も相俟って、実に温かみのある、優しいお話でした。
龍神×人間の恋、ということで、二人の恋の行方が非常に気になりつつ読み進めましたが、どうなるのかはぜひとも手に取って確認していただきたいです。
正直ストーリーとしてはありきたりというか既視感のある内容です。が今作品の萌えどころはストーリーというよりも攻めさんの素晴らしさに尽きると思います。
健気受け、はよくあれど、健気攻め、は珍しい。
不器用で、一生懸命で、自身にコンプレックスを抱えて生きてきた蘇芳という男性にとって、素直で仕事に一生懸命で、自分のことよりも他人を思い遣る八千穂という青年がどういう風に目に映ったのか。
愛を知り、愛しいという感情を知った蘇芳の深い愛情に、萌え滾りました。
メインCPの2人も素敵でしたが、脇を固めるサブキャラもとっても良かった。
個人的に竜王がお気に入り。彼の若かりし頃のお話とか読んでみたいな。
「水」を介し、生きとし生きるものの優しさと愛情をきっちり描いた、そんな優しい一冊でした。
今回は龍王の子で赤黒い鱗を持つ龍神と酒蔵の新米蔵元のお話です。
龍王の鱗を求める攻様が酒造りに賭ける受様の情熱を知り
種族を超えて受様を大切な相手と定めるまで。
受様の実家は江戸時代から続く蔵元です。
受様の実家の酒造りの始まりは裏山に湧く清水と言され、
古くから使われる井戸は甘く澄んだ水を湛え続けてきます。
受様は幼くして母を、中学で父を亡くしますが、
祖父や蔵人達から惜しみない愛情を受けて育ちます。
農業大学で醸造について学んで今春の卒業後に実家に戻り、
6月には蔵を継ぎました。
しかし、直後に祖父が脳梗塞の発作で倒れてしまいます。
なんとか一命はとりとめたものの意識が戻らないままで
元々の大人しい性格もありなかなか祖父のように
蔵元として蔵を支える仕事ができていませんでした。
今朝も以前から気になりだした古井戸の水の味の変化を
朝食の席で杜氏に訴えるのですが
当時は受様の味覚が鋭い事は認めていても
長年の勘と経験に支えられた彼には"何も感じない"からと
相手にもしてくれません。
けれど受様はそんな杜氏が気づかないほどの
些細な変化でも酒の味に大きく関わってくるはずと
思えてなりませんでした。
その日の深夜、バリバリと言う激しい雷鳴に続いて
地震に似た衝撃に襲われて目を覚まします。
受様が離れの縁側から飛び出すと空に閃光が走り、
轟音が鳴り響き、激しい雨が降り始めます。
万が一、雷が山の木に落ちたら山火事に繋がりかねず
裏庭の井戸をくみ上げるポンプなどの設備に
被害がないかも気にかかり、井戸まで急ぎます。
そして受様が井戸のそばに近づいた時、
夜空を覆い尽くしていた暗雲が徐々に大きな渦を描き、
やがて蜷局を巻いた蛇を思わせる形に変化したのです!!
受様が呆然と空を見上げる先で
漆黒の雲を背に赤黒い鱗の強大な龍が現れたのです。
この龍こそが今回の攻様になります♪
攻様は龍王の子の1人である龍神だと名乗り、
泉が湧き続けるのは龍王が与えた鱗の霊力だと言い、
攻様は龍王の鱗を祀るとやくそくを違えた一族から
鱗を取り元せすために地上に降りてきたと言います。
受様は祠の存在さえ知りませんでしたが
攻様は鱗を返すか、受様自身が龍王の贄となれと
受け様に迫るのです!!
果たして受様は龍王の生贄となる運命なのか!?
龍神である攻様と龍王の加護を得た一族の末裔である受様の
種族を超えた人外ファンタジーとなります♪
受様は鱗が見つからなければ井戸が涸れてしまうと知ると
酒の仕込みができなくなってしまうと焦り、
攻様とともに鱗探しをすることを提案します。
攻様は受様の提案を受け入れ
鱗探しのために地上に降りる事にしますが、
天界のものが地上に長くいると穢れにより霊力を失うからと
泉の水で仕込んだ酒と受様自身の精気を差し出す事を
約束させられるのですよ♪
また受様のペットである金魚2匹を
眷属として人と化して攻様自身の世話をさせつつ、
受様の住む離れを鱗探しのための拠点とします。
こうして攻様を居候(!?)させる事となった受様ですが
鱗を祀る祠の存在さえ知らなかった受様には鱗探しは難しく
龍王の鱗の霊力を受けられなくなった井戸の水は
水位さえ保てなくなっていくのです。
そんな泉の様子に一喜一憂しながらの酒造りと
そんな状況でも酒造りを諦めない受様の様子が
攻様の言動をも変えていく様にワクワクが止まりません。
帯の人物紹介にて2人の関係性は程度予想されるのですが
物語の中核をなす"竜王の鱗"がなかなか日の目を見ず、
受様の実家とは無関係に生きてきた叔父が登場してきて
いろいろ受様にアドバイスし始めたりするのも怪しい!!
四ノ宮先生らしく、
コミカルなシーンとシリアスシーンが絶妙に絡み合って進み
ハラハラ&ドキドキ盛り沢山で楽しく読ませて頂きました。
攻様が眷属にした金魚2匹が可愛いのは想定内でしたが
攻様が受様に黙って自身の霊力を泉に捧げる健気さに
胸キュンで萌え萌えでした ヾ(≧▽≦)ノ
タイトルの「愛しのハニードロップ」を
何故に蜂蜜ドロップ!?って思ったのは私だけですか!?
"ハニー"が美味なる"ドロップ"の意でした(笑)
カバーイラストそのままの優しいお話でした。
どうしても神様が出で来るお話は、残酷だったり理不尽な事があったりするので身構えてしまいます。
初めこそ龍神として現れた蘇芳は横暴に見えましたが、八千穂の蔵元としての覚悟と熱意に絆されて行くのです。
こちらの作品には悪人が誰も出て来ませんでした。勝手に乗っ取りかと思っていた叔父も、強面の杜氏の清水も不器用ながら八千穂や龍之川酒造を思っていてくれてました。
そして何と言っても龍王様!慈悲深くて寛容で蘇芳が父親として慕う気持ちが良く分かりました。
最後の結果にとても満足なのですが、上手く行き過ぎ感が強くてちょっと感動が足りなかったかも…。
でも八千穂に興奮して戸惑う蘇芳が可愛くて、2人の初めてのセックスに興奮しました。
それから無性に日本酒を呑みたくなってしまいます。イケる口の方は好きな銘柄を側に置いてグイグイ行って下さい。
龍神様ということで偉そうな俺様タイプかと思いきや、めっっちゃ自己犠牲な健気攻めでした。
言動は偉そうなんだけど、どんどん印象が変わっていきます。
家業である日本酒を作り続けるために龍神様から与えられた水と井戸を枯らすわけにはいかず、生贄になることを受け入れようとする八千穂(受け)と、そうはさせまいとする蘇芳。
受けの笑顔を守るために、こっそりと(→ここ重要!あくまでこっそりと)自己犠牲を払い続ける攻め。
なんて健気なんじゃ……。
健気な攻めが好きなので、キュンキュンしながら読みました。