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osananajimi yamemashita
100ページ強の電子限定作品なのですが、さすが夕映先生!という感じで、非常に高品質で素晴らしかったです。
幼馴染の終わりと新しく始まる関係、それぞれの答えがしっかりと描かれているので、短いながらも読み応えを感じました。
高校の同級生である奏と広務。
二人は幼馴染でありながら入学後2年間は交流がなく、主に奏が広務を避けている状態でした。
そんな二人が、年に一度の『第九』演奏に向けた合同練習を機に再び交流していく……と、いうお話。
我儘そうにみえて実は気遣い屋な奏は、誠実で真面目な広務のことが好きだという気持ちに気付きます。
だけど、ずっといじめられてきた奏にとって「人と違う」事は恐怖でしかないんです。たとえ相手が広務であっても、男を好きな自分を認められない。
この、かわいくない態度の奏に真っ向から向かっていく広務がかっこいいのよ。
このまま両想い……と思ったら、お互い好きな相手が別にいると勘違いしてしまう展開に──。
好きなのにすれ違っていく二人が、もどかしくて焦ったい。
恋ってどうしてこんなに上手くいかないんだろうという気持ちにさせられて、胸がぎゅうっとなりました。
そして、『第九』の演奏が終わったら告白するという広務。
それを聞いた奏は、だったらそれまでの二ヶ月間「期間限定の片想い」を満喫しようと開き直るのです。
終わりが来ると分かっていながらも、広務を想い続ける奏の姿は切ないです。
『第九』演奏中の奏の心の声に泣いてしまいました。
演奏中もお互いの音を聞いている二人。
終わらないでほしいという思いが分かりすぎるほどに伝わってきて苦しくなりました。
両片想いなのに手探りで歩み寄っていく姿が、焦ったくも応援したくなる作品でした。
奏視点で進んでいくのに、ちゃんと広務の気持ちも読み取れるところがすごいと思います。
思春期の高校生らしい、揺れ動く繊細な心理描写に魅せられました。
変わりゆく中にあって、決して変わらないもの。
17年分の「好き」の熱量を感じ、キラキラな青春に胸キュンさせられっぱなしでした。
エロはほんの少しですが、ムク先生のイラストが良かった。
たぶん、広務はムッツリだと思います!