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これで終わりにできると思っているのか?
めちゃくちゃ良かったです。「男の自分は死んだ」というあらすじを読んだ時は、「なんじゃそりゃ」と正直思いましたが。
作者さんの持ち味が、すごく良い形で出てる今作。いい意味で「面倒くさい大人の男の恋愛」です。
内容です。
エリートリーマンで、紳士的な「タチ」の槙。しかし30を目前に、自分の性指向に疑問を抱くように。
そんな疑問を解決するため、偶然知り合った超肉食系エリートビジネスマン・タカシと一夜を過ごしますが、凄まじい快感に自分のアイデンティティ崩壊の危機に。更に数日後、アメリカの本社から帰国した凄腕のコンサルタントとして「タカシ」と再会し-・・・。
こちら、二人ともタチを張れるハイスペックな男達です。
まさにスーパー攻め様と言った、超肉食系で自信に溢れた男・三隅(タカシ)と、完璧に仕事をこなし容姿端麗な紳士的な男・槙。
ずっとキレイ系や可愛い系のネコを抱いてきた槙が、自分の性指向に疑問を持つようになった所からお話はスタート。常に「格好いいタチ」として振る舞う彼は、心から自分を解放してセックスを楽しんだ事が無いんですね。そこで、本当は自分も抱かれたいのでは無いか・・・。でも、醜態を晒すのは恥ずかしいと悶々と悩んだ挙げ句、見ず知らずで抱かれてもいいと思えるような男・タカシと寝るワケですが、思いもよらず職場で再会と言う流れです。
最初はあまりにグダグダ悩んでいる槙に、ややうっとおしさを感じます。良くも悪くも「プライドの高い大人の男」なんですね。自分が組み敷かれるのには抵抗感があるのに、自分が「抱かれる」側だとも明確に理解してしまう。
そんな槙を超強気でグイグイ追い詰める男・三隅。ただ単に強引なだけの男かと思いきや、槙のプライドを決して傷付けない配慮だったり、その上での彼の「殻」を破る鋭い言動の数々。懐の深さを感じさせてくれるんですね。
一度のネコの経験から、自分のアイデンティティを守る為に仕事以上には三隅と関わるまいと逃げ腰の槙。それをかなりの執着具合と強引さで逃がすまいとするハンター三隅。
この攻防にも相当萌えるのですが、更に萌えるのが中盤以降。
こちらの作品はお仕事BLでもあり、その描写が結構面白くて格好いいのです。エリートビジネスマンの二人なので。
そんなおり、三隅達のコンサルティングチームが情報漏洩の疑いをかけられ業務停止の事態になります。
ここからがですね、ホント「神」。
常に自信満々で強気な男・三隅が、初めて「本音」の部分を見せるんですね。もちろん普段と変わりない態度なのですが、彼の意外な健気さだったり、なんでしょうね~。槙に格好いい価値のある男で見られていたいと言う、ここで分かる可愛げ。やせ我慢とプライドを男からとったら何も残らないと言ったりしますが、まさにそんな感じ。
そして、ここから非常に男らしい槙。ふっきれた後の彼は最強でして、「尻で抱いてやる」状態。
「抱く」とか「抱かれる」とか、もうどっちでもいいのです!抱き合う事に意味があるのです!!と、叫びたくなる終盤。
この終盤のエッチシーンも「神」!!
抱いてるのは三隅だけじゃなく、槙も「抱いてあげてる」んです、て感じの甘々エッチなんですね。エロが多めの今作でして、最初の方の槙の「殻」を破るような強引で濃厚なエッチも最高なんですが、この終盤の「尻で抱いてやる」エッチにも萌えまくりました。
大人の男だからこその、面倒くさくてややこしい恋愛。でも、存外可愛らしくもあるのです。ホント、最高でした!
前半の元攻めの受け、槙の葛藤が悩ましくて良い。
仕事にプライドを持っていて且つデキル攻めとしてのプライドもあったけれど、誰かにこの高いプライドをへし折って欲しい。じゃないと前に進めないという悩みを(但し自分の認めた相手に限る)という言葉がつくのにも関わらず全てを攫っていくハイスペック攻め様のタカシが上位の雄として君臨している様が槙にとっても読者の私にとっても堪らなかった!
恋の敵対者が出てくるのではなく、受けの葛藤と恋愛面にスポットが当たってる話なのに仕事面にも力を入れてくれてる描写がよかった。それも受けのプライドに纏わるものが仕事でもあるからなんだろうけどそこがビジネスマンとして対等な男同士で欠かせない部分でもあるのでソコが見たかった私としては大満足。
さらに槙のプライドを傷つけないタカシの(作者様の)言葉選びが素敵。
個人的に「入れてくれると約束するなら〜」って受けが言っても違和感なさそうなフレーズなのに攻めが「入れさせてくれるなら〜」という言葉まわしじゃない所が上手いなぁと思って好ましかった(伝わりますか;;)
情事の面以外でも金銭面の奢る話も…奢られる事に抵抗がある受けはスーパー攻めとして今までかわいこちゃん達に奢ってきたからこそプライドに障ったのだろうけれど、それを加味してサラッと「次は君が払ってくれるといい」と言って対等に扱ってくれるところが本当に受けの矜恃も大事にしてくれてるのだなと思わせてくれた。
槙が『敵わない、だがそう思わせる男だからこそ寝る価値がある』と思うようにタカシの主義も『寝る価値がある相手としか寝ない』と、一見価値という言葉をつかって冷たく聞こえるかもしれないけれど読んでるうちに愛情に裏打ちされた言葉で、その心も身体も一級品の価値をお互いに見出しているんだなとわかって熱くなった。
「挿れて」って言葉は受けから言うだけの言葉じゃないんだな、とあらためて痛感。攻めに懇願させることによって受けの真価がわかる?!
攻めとして葛藤して受けになった槙だったけれど決して男の矜恃を捨てた訳ではなくてラスト『男としての征服欲』を満たされる場面がとてもお気に入り。
尻で抱くって最高だなぁって。増えて欲しい、もっと読みたい^^
作中の一文、『セックスから始って、いつの間にか感情が追いつき、追い越した』これがちゃんと書かれていて大好きなお話の1つになった!
アユムというキャラが若いな〜(苦笑)と思ったけど、すごく物語的にはスパイスがきいていてよかった(笑)
元々バリタチだった槙がかわいいネコたちの前でタチであろうとして疲れてしまい、そこでタチとしての自分に違和感を持ち性趣向を変えてみようと思い立つ。
槙の攻めてとしてのプライドが邪魔をして三隅に惹かれていくのを受け入れられない葛藤が素晴らしい。
相手の三隅もそんな槙の複雑な感情に配慮して強く攻めことはせずに槙が三隅を受け入れるのを待っているのがまさにスパダリ。
槙も三隅が好きという感情を受け入れてから受けだけど攻めのようなカッコよさがあってとても素敵です。
「特別に後ろで抱いてあげます」という槙の言葉がそこらにいるネコではなく自分を抱けるのは貴方だけなんだということを暗にいっているようで素晴らしい。
ハイスペックな大人の恋愛が楽しめる一冊ですね!
メモ
「ハイスペックな彼の矜持と恋」のSSが、著者ブログにおいてある。
春宵 ――『ハイスペックな彼の矜持と恋』SS
http://yueinfo.blog.fc2.com/blog-entry-98.html
独占欲が強くて嫉妬深い恋人
久しぶりに読み返してます。
この人じゃなきゃ嫌だ、となっていく過程がとても好きでにまにましちゃう。
受け様は、誇りとプライドをもって仕事をしている槙。
一方で、その界隈では"初めてはマキ"と言われているような紳士的なタチ専でもある。
でも、三十路を前に、なんだかタチとしての自分に違和感を抱き、"抱かれてみたい"という気持ちを抱える事に。
そんな時出会ったのが極上の男、攻め様の三隅。
三隅との行為が良すぎてもう会わない、と決めた矢先、職場の先輩として再会。
最初は、ぐるぐる悩んでいる槙がめんどくさいっちゃメンドクサイ(´ε`;)
でも、自身のアイデンティティの問題なんだもの、悩まない訳がない。
自分自身にも、仕事や相手にも真面目なんだねぇ。
で、そんな槙をそりゃもう大きな理解と包容力で受け止める三隅。
いやぁ、ハイスペックな彼らのやり取りがいいです(≧▽≦)