宇宙一ピュアで切ない恋の軌跡 卒業まで関わりたくなかったはずの人間が、毎日会いたい人になるなんて!

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表題作緑と楯 ハイスクール・デイズ

兼古 緑
荻原 楯

あらすじ

宇宙一ピュアで切ない恋の軌跡
卒業まで関わりたくなかったはずの人間が、毎日会いたい人になるなんて!

秀才だけど友達ゼロの緑は、同じクラスの人気者・楯が苦手。学校でも家でもひとりの自分とは違い、誰にでも愛されて当然のような彼に、劣等感を刺激されるから。だが、高校三年生の秋、ふとしたきっかけで楯に恋をして……。愛し愛されたいのに愛を信じられない緑と、どんなときも寛容でマイペースな楯。未来東京に生きる二人の男子高校生が描き出す、じれったくもいとおしいピュアな恋の軌跡。

作品情報

作品名
緑と楯 ハイスクール・デイズ
著者
雪舟えま 
イラスト
紀伊カンナ 
媒体
小説
出版社
集英社
レーベル
集英社文庫【非BL】
発売日
電子発売日
ISBN
9784087441789
4.2

(7)

(4)

萌々

(1)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
30
評価数
7
平均
4.2 / 5
神率
57.1%

レビュー投稿数3

暴走する恋心がいとおしい

物語の舞台は少し先の2055年の未来東京で
今よりも色んなものが少し発展していたり、
変わり映えのない景色が残っていたり…

本書はそんな未来の男子高校生・緑と楯の恋物語です。
秀才で友達のいない緑とクラスの人気者の楯、と正反対な二人。

ある日、緑はひょんなことから楯と言葉を交わしたのをきっかけに
楯が苦手だったにもかかわらず、あっという間に恋に落ちてしまう…
と、あらすじを文章にしてみると、ありきたり感が
滲み出てしまいますが、そうではないのです。

だって、緑の楯への恋はどう考えたってありきたりじゃない。
猛烈で、粘着的で、情熱的で、盲目的。
学校ではいつだって楯を独占できる瞬間を狙っているし、
楯が休日にクラスメイトと遊びに出かけると耳にすれば、
当日偶然を装ってそこへ駆けつけます(怖っ)

緑をそうまで突き動かすのはいつだって楯と一緒にいたい、
楯には自分のことだけを見てもらいたいという思いだけ。

頭の中が楯でいっぱいで、周りからどう見られようと関係ないし、
秀才なのに、楯のことになると暴走して、バカになっちゃう緑。

キラキラ眩しい感情もドロドロした感情も隠すことなく、
まっすぐ楯に向かっていて、赤裸々すぎるくらいの恋心は
みっともなくて、ちょっと気持ち悪いくらい(笑)

でも、そこまでしても楯はなびいてくれないし、
楯の言動ひとつで浮いたり沈んだり、思い通りに
いかない恋はなかなかにしんどそうです。

その分、楯のちょっとしたデレ一つにも大喜びしちゃって、
その瞬間の緑のとろけるような甘さがこちらにも伝染して、
楽しそうだねぇ、と緑から幸福感をお裾分けしてもらって
ニヤニヤしていました。

緑がね、もう乙女すぎてべらぼうに可愛いんです(๑´▿`๑)
初登場時にはマイペースでクールな秀才くんだったのに、
恋に落ちてからは楯との相性占いにハマったり、甘い妄想に及んだり…
その上、恋に不慣れで不器用で、だけど一途で全身全霊を注いだ
一生に一度できるかってくらいの本気の恋なんです。

緑が楯に愛されたい、結ばれたいと願う度、
その切実さに涙が出そうになりました。
楯じゃないとダメ、楯以外はいらないという超ド級の愛は
帯にあるように「宇宙一ピュアで切ない恋」であると同時に
「宇宙一強情な恋」でもあって、それがものすごくいとおしくて。
こんな子に愛された楯も、そんな恋を知ることができた緑も、
幸せだなぁと二人の関係が尊いものに思えました。

私が初めて楯を知ったのは著者の『プラトニック・プラネッツ』でした。
時系列としては高校卒業から数年後で、主人公が楯との出会いによって、
新たな人生を歩み出すというお話でした。
結果から言うと彼女の恋は成就せず、散々親切にしておきながら
彼女の恋心を受け容れない楯が罪な男に思えて仕方なかったけれど、
本書を読んだ今なら、その結末に合点がいきます。
高校生の頃から楯の心にはずっと緑が住み着いていたんだね、と。

今も昔も、楯は変わらずマイペースでつかみどころなく、誰にでも優しい。
そして、自分から何も求めないくせに人を惹きつけずにはいられない男でした。
いつも周りに人がいて、それなのにどこか寂しそうで。
親からの愛に飢える緑とはまた違う意味で孤独を抱えていて、
そんな二人だからこそ、惹かれ合う部分があったのかも…

本書は一般文芸に分類されており、BL小説ではありません。
ただ、個人的には内容は結構がっつりBがLしているように感じました。
ふわふわと甘く切なく、純情な恋ですが、決してプラトニックでもありません。
緑は楯とぶっつながりたい!と欲望丸出しで繰り返し自慰に耽り、
実際につながりもします。

【追記】
読了後、続編とかないのかなと探っていると、二人が登場する短編や
直近の新刊の発売や同人誌があることを知りました°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°ワーイ
すっかりハマってしまったのでこれからも「みどたて」を追いかけて
いきたいと思います♬

3

概念としての『少年』

最初の一文の中にある『~、生徒をしたの名前で呼ぶ主義の担任に、~』という部分を読んだ時に「?」と思ったんです。その後も『おまえいじょうに』とか『すすんだんだろうね』とか連続して違和感のあるひらがな表記が出て来る、出て来る。
そのくせ文章はお上手なのですよ。
比喩とかとてもしっくりくる。
で、思ったんです。「純文くさいなー」って。
……初出が小説すばるでした。

いいえ、ピュアな文学が嫌なわけではありませんよ。
絲山秋子さんとか、一時期夢中になって読んだし。
そしてこのお話も、本来なら苦手だった盾に恋した緑くんの心のつぶやきにはかなりグッとくるものがある。
例えば『同じものを見ても盾と一緒にいれば感じ方が違って、世界が一気に素晴らしいものに変わってしまう』とか『勇気を出せば、勇気を出したあとの世界に行ける』とか、恋によって変わる、あるいは恋を成就させるために変わろうとする緑くんの姿勢は、涙がチョチョ切れそうな位にいじらしい。

おまけに緑くんの家は両親が上手く行ってない。
外では人格者の管理職らしいが、母に暴力をふるう父。
父のキレるポイントを狙った様な発言をする母。
緑くんはこの2人の間に立って、家庭の維持をし続けて来たんですよ。
恋する盾の家は家族そろって仲良し。
おまけに緑の家庭の事情を察知して、配慮した愛情を与えてくれる。
緑に感情移入してこのお話を読むと、自分は薄暗い所に立っていて、日の当たるまぶしい盾を見続けている様な気分になって来るんです。
これが上手い!

ただですね、
個人てきには(表記、真似してみました)この『純文くささ』が、私の自意識に引っ掛かるのですよ。なんか恥ずかしくなってしまう(ごめんなさい)。

それと同時にこの『純文くささ』が「緑くんって概念としての少年だよなー」と思わせるんですよ。24年組の巨匠たちがマンガの主人公にしたような。むしろその中身は少女寄りと言っても良い感じの。

いや、面白かったんです。
本当に面白かったんですけれども、ほぼ最初から最後まで、どこかむず痒い様な恥ずかしさが体中を駆け回っていました。
それもまたよし、なんですけれどもね。

1

愛されたい愛したい相手に出会える奇跡

あらすじを読んだときは、2人の男子高校生のピュアな恋物語なのだろうと思っていました。
でも、物語は『緑』の家族の複雑さと掴みどころがない不思議な『楯』が…あるキッカケから距離をどんどん縮めていく「高校三年生」での『恋』❤︎
学校での2人の距離と楯の家での2人の距離がとても『特別感』があって、そして2人しか知らないお互いのことを共有しているのがイイ感じでした♪

緑の家族の複雑さにはとても胸が痛くて…この寂しさ・悲しさを包み込めてしまえる楯の不思議な優しい包容力が温かかったです( ^ω^ )
緑は、楯のそういう部分に惹かれて恋に落ちたのかなぁ〜と思いました♡

楯への恋を自覚してからの緑の『心の暴走』が全力で必死で、すごく可愛らしいし微笑ましいのに「一旦落ち着いて」と声を掛けたくなるくらい楯への想い一直線で「恋しているな」と伝わってきました!
一方の楯は、緑からの熱い想いが届いているのか否か…。ふわふわしていて何を考えているのか分からない感じだけど、緑のことをしっかりと見ているし気にかけている。
楯の掴みどころがない感じが、緑は振り回されているような(๑´∀`๑)笑

プラネタリウムや美容室…1番はやっぱりお互いに『下の名前で呼び合う』場面が印象的で共感できる部分だったので好きなシーンでした♪
2人の恋はちゃんと結ばれ、お互いに新たな環境で過ごすことになるけれど…2人なら大丈夫だと伝わってくる安心感があるラストでした!!

愛されたい愛したいと思える相手に出会えることは奇跡に近い幸せなことなんだと教えられた物語でしたଘ(੭´ ꒫`)੭̸*
とても可愛らしく、輝いていて心が満たされるような温かな気持ちになりました❤︎

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