イラストあり・電子限定ショートストーリーつき
「善き王子のための裏切りのフーガ」って、なんてオシャレで内容の奥深さを内包したタイトルなんでしょう。
コレは声に出して読みたい。
内容のほうですが。
腐敗した王政のもと、傲慢と噂される第5王子と、その王政を転覆しようと画策する組織の一員との、まさにロミジュリ的ストーリーです。
王子であるシセが、いろいろなことに我慢や諦めをしているんですよ。
立場や境遇から、それは仕方ないこととはいえ、読んでいて切ないし、もどかしい。
でも、萎れているわけではなく、毅然と顔を上げている様子に心打たれます。
そして、そのシセに振り回されながらも惹かれていくルカ。
シセを守ると決めてからのルカの行動力と度胸が、勢いがあって頼もしく感じられたのも良かった。
華やかさはなかったけれど、切ないLOVEをいっぱい感じることができて、秋の読書には最適な1冊でした。
みずかねりょう 先生の挿絵が美麗。
主従もの
[フーガ] 「Fugue」とは、模倣対位法(対位法)による音楽書法および形式。
〈逃げる〉を意味するラテン語fugereに由来する遁走曲
fugere「逃走/駆け落ち/遁走」
・・・題名の「フーガ」の形式通り、揺れるシセとルカの心理描写がおりこまれて展開、そして駆け落ちする物語。
身分を偽り第5王子シセの侍者になったルカは、革命組織が送り込んだ密偵、
王宮の隠し通路を探すことた使命。
ところが、国民の評判と違って、シセは賢王の資質を備えた好人物だった。
隠し通路を見つけたけれど、双方の板挟みになり、常に最後まで揺れるルカ。
一方、シセは達観そして諦観しており、落ち着いている。
四分の三が、伏線仕込みで、残りで一気に伏線回収。
面白い展開だと思うのですが、『いつかあなたに逢えたなら』もそうでしたが、
伏線回収が短いのと描写がそっけない。
「俺を殺してくれないか」という場面は山場の一つですが、あっさり。
これは紙面の都合というより、「何はともあれ何があってもハッピーエンド」がポリシーの著者さんの描き癖なのかもしれない。
電子版書き下ろしに、二人のその後が少しある。
会社勤務の傍らの執筆活動は大変だと思いますが、次作に期待。
「いつかあなたに逢えたなら」に続いて2作目になるそうです。
架空の時代のお話ですが、前作よりはとても良くなっていたと思います。
とても丁寧にお話が作られていて、前作のような荒唐無稽さはありませんでした。
王宮で理不尽な目に遭いながらも弱者たちへの優しさを失わないシセと、自らの使命とシセへの情との板挟みに苦悩するルカの関係に萌えました。
シセが兄王子達にされたこと込みでシセを愛するルカはとても寛容で、優しすぎる男なんです。
それは後にルカの義弟のネスタも言ってました。
だから優しすぎる故にいつも行動がギリギリになってしまうし、生命の危機にも遭ってしまうスパダリにはほど遠い攻めでした。
一方でシセはその生い立ちから諦観に満ちていて、妙に肝が座っている受けでした。
大きな矛盾は感じないけれども王宮から逃亡する際の追手が追い付いた時も、逃げた街で強盗から受けた傷で床に伏して絶体絶命の時も、想像通りの展開だったのが物足りないと言えばそうだったかもしれません。
絵師様もyoco先生に続きみずかね先生なので、片岡先生はとても期待された作家様なのだと思います。次回作に期待したいと思います。
いつか殺すべき人を、愛した。
嘘だと知りながら、愛された。
こんな素敵な帯がついていたので、思わず購入しました。あらすじを読んでみてもいい感じ!嘘と偽りにまみれた切なく甘いラブストーリーは大好きですからね!…と意気込んで読んでみたんですがあまりにも盛り上がらない!!!例えば大きな壁を乗り越えるために前段階として小さな障壁をクリアしていく、なんて言うのは物語のセオリーですが、今作は小さな障壁の連続で山場がなく、全く盛り上がらなかった。物語の道筋もそのためかよくわからないまま終わりました。私としてはそんなにシリアスでもないしむしろ都合良く進んだ、という印象です。
その原因はいろいろあると思うのですが、まず設定が活かしきれていないのでないかと思います。
兄二人に犯されている受け、そして媚薬を盛られて帰ってきた。その受けに断りもなくキスする攻め…え〜デリカシーなさ過ぎでは?まあ受けも嬉しそうにしてたのでいいのですがその時点であまり性行為というものに受けはトラウマは持っていないのだな、と。その後もあまり葛藤もなく自分から体を売ろうしたり…だったらこの設定いるかな??って思ったり。あと王政打倒を掲げ、受けを裏切ってきた攻めですが、その肝心の王政打倒もほとんど描写なく呆気なく終了してしまい、んー!?山場どこ??ってなってしまいました…
納得できないことが重なってこの評価になりました。
みずかね先生ホイホイで購入。タイトルから予想された通りのどシリアスで、もうちょっと軽やかさとか甘さがあった方が好きなため、中立にしました。シリアス好きな方には良いのでは。本編260P超+あとがき。
200年以上国を治めているスワルド王家の第5王子シセ。「王と娼婦の間に出来た、利己的で学が無く、侍者がひと月もたたずに辞めていく王子」という噂を聞いていましたが、訳あって仕えることとなり・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
ヤハド(攻めの義父)、ネスタ(攻めの義弟)、ランヴィル(神父)、アイシス(教会で面倒みている子)、アルマ(第2王子)など他の王子少々。
++攻め受けについて
受けは人生諦めてる感が強い、不憫美人王子さま。王家が民衆のことを考えず悪政を敷いているのですが、それに対抗してどうこうしようなんて考えている訳ではなく、ただひたすら時が過ぎるのを待っているような印象です。兄王子からも手酷い仕打ちを受けてて、なんだかツライなあ。
攻めは打倒王家!と強く思っているようにも、王家に憎しみを持っているようにも思えず、国をなんとか立て直すために・・という程度の意気込みしか感じられず。熱血派!という印象でもないんですよね。
攻め受けとも、すごく淡々としているように読めてしまって、盛り上がりに欠けてしまったんです。酷い目にあっているところで気分が下降線たどる一方で、アゲアゲになるところが無くって。どちらかというとぎゃはぎゃは笑うとか、ニマニマするお話の方が得意なので、今一つシンクロしきれなかったお話でした。うーん。先生ごめんなさい。