電子限定かきおろし付
表紙と帯にビビッときて直感で購入したのですが大正解でした。
クラスで他の獣たちに囲まれるトカゲのアオイくんの異質感と妙な色気が繊細に描かれていて、ページを捲るごとに読者の私もアオイくんに惹かれていきました。
いわゆる直接的なエロはありませんが猫のハチがアオイくんの尻尾を触っているシーン全てがもはやエロです。
アオイくんにとってコンプレックスでもあるブルーの尻尾を全肯定してくれるハチ。ハチは純粋にアオイくんのブルーの尻尾が見ていたい。お互い違う理由で惹かれていきます。
お互いの惹かれ方があまりにも純粋で甘酸っぱくてキラキラしていて、涙がこぼれそうでした。
人外モノを多く描かれる作家さま、という認識はありましたが、今回初めてながべさんの作品を手に取ってみました。
んー。
んんー。
何じゃこれ。
めっちゃ良い…!
獣人たちが住まう世界が舞台のお話。
主人公は、猫の獣人の高校生であるハチ。
彼はとにかくルールが嫌い。自分が嫌なものは絶対に嫌。
そんな彼の高校に、一人の転校生が転入してくるシーンから物語はスタートします。
蜥蜴の獣人のアオイという青年は、猫や犬といった「毛」のある獣人たちの中で、毛を持たず鱗があるといったちょっと異なる存在。ゆえにクラスで人気者。珍しいのだ。
ワイワイと騒ぐクラスメートとは対照的にアオイくんに興味がなく関わりを持たなかったハチだったが、ある日、アオイくんのしっぽを偶然見てしまう。
ピカピカの、綺麗な青いしっぽを。
そのしっぽに興味を引かれたハチは、それ以来アオイと共に過ごすことが多くなっていき―。
というお話。
ネコって、見える世界がモノトーンなんですね。そこに、黄色とブルーが見えるだけ。なんだそう。初めて知りました。で、その猫であるハチの目を通して見える世界感が凄い。漫画なので、そもそもがモノトーンなのですが、ながべさんの描き方がお上手なんでしょうね。モノトーンの中に、本当にアオイくんのしっぽが青く煌めいて見える、感じがするのです。
で、各々それぞれの動物らしさが描かれているんです。
ハチは猫なので気まぐれで、揺れるものが好きで、自分の感情に素直。
犬の獣人の友達は協調性や思いやりがある。
狐の獣人は飄々としてて。
そして、アオイくんは、体温がない。
それぞれの特性を生かしつつ紡がれていく世界観は、非常に独特で個性的。お好きな方にはドはまりするであろう、そんな魅力を秘めています。
で、今作品はBLに区分されていますが、身体の接触はありません。
セックスシーンどころかキスさえない。
けれど、ハチ、そしてアオイくんの間に流れる空気感は、紛れもなく「恋」なんですよ。二人が出会い、お互いを知り、そしてすれ違いながらも少しずつ育てていくのは、友情だけではなく、愛なんです。
アオイくんは、ハチが心惹かれてどうしようもない「しっぽ」を常に隠しています。その「しっぽ」を介し、アオイくんの過去の過酷な体験や、トラウマ、そして「アオイ」という青年の中身まできちんと描き切っています。素晴らしいです。
その「しっぽ」が、ハチとアオイくんを繋ぐツールになった、その描き方も素晴らしい。
みんなそれぞれ違いがあって当たり前。
それを認め合い、受け入れ、良いところを見つける。
今作品はBL作品に区分されてはいますが、恋愛とかそういうことだけではなくもっと普遍的なテーマを孕んだ、そんな作品だったように思います。
描き下ろしで、アオイくんが脱皮をするであろう描写が描かれています。
時期が来れば行う脱皮。
アオイくんがハチと出会い、脱皮の時期を迎え、彼を覆っていたものを脱ぐわけですが、それはきっと、身体だけではないんじゃないかな、と。彼の心を固く閉ざしていたトラウマもまた、脱ぎ捨てることができるんじゃないかな。
もう、めちゃめちゃ素敵な作品でした。
この作品の持つ世界観にハマってしまいました。続編とか、スピンオフとか、ぜひとも描いていただきたいと切望しています。
ながべ先生にしか描けない人外。
ただの擬人化ではなく、生き物それぞれの習性、特性がとてもうまくストーリーに生かされていて面白かったです。
登場人(?)物がそれぞれ美しく描かれていて、とくにトカゲの瞳の表情がたまりませんでした。
実物のトカゲの尻尾のあのキラキラブルーを想い描きながら読みました。
トカゲがこんなに健気にかわいく、そして艶っぽく思えるとは。
二人のもどかしいやり取り、ハチの子供っぽい行動が10代!って感じなのも萌えました。
もう少し先まで読みたい…と思えるかわいいカップルでした。
新感覚?猫×トカゲの獣人BL。お初作家さんでしたが、描写の全てが丁寧で、独特の世界観に一気に引き込まれました。
ストーリーの流れだけを見ればベタ中のベタ、王道、いじめられっこがコンプレックスを認めてくれる相手に出会ってトラウマを克服しつつ変わっていく、世に無数にあるやつ。なのに、そこに猫とトカゲの特性が加わることで新鮮味を感じる作品になってました。
猫の目に見えるモノトーンの世界に鮮やかに映える青色のトカゲのしっぽ、獣の中に放り込まれた変温動物の苦悩、トカゲのしっぽの自切エピソード。それらが心に刺さる心理描写と共に描かれていて、すごくすごく良かったです!
ハチの自由すぎるキャラがアオイの救いになっていて、そこもすごく良かった。ハチはたぶん初恋なんだろうな。イケ猫の初恋…萌えます笑。
お気に入りは初めてアオイのしっぽを見たハチのキラキラした瞳と、動くしっぽを捕まえたくてうずうずするハチの猫らしさが見えたシーンです。
とても幸せな読後感で大好きでした。
「ながべさんの絵柄、どこかで見たことがある…」と思っていたら、『とつくにの少女』の作者さんだと知ってスッキリしました。
以前見かけたときはとても緻密な絵で不思議なストーリーが魅力的だと感じましたが、今作も素敵です。
特にトカゲのアオイは健気で何処となく儚くて、とても魅力的なキャラクターでした。
トカゲ好きも相まってなかなか刺さる登場人物(生物?)ですね…。
ながべさんの作品の魅力の一つが生物の個性をキャラクターに反映させている点だと思います。
結構細かいので読んでいて楽しかったです。
この作品が電子書籍で発売されるのを待つ間にながべさんの作品をもう一つ拝読しましたが、今作同様に動物の元々の特性を活かしたキャラクター像がとても面白いです。
もともともふもふ獣人が登場するお話が好きなのですが、可愛いだけじゃない、その種独特の色んな性質もつ獣人たちのお話の魅力を教えてもらいました。
そして爬虫類のキャラクターの良さも知りました。
ストーリーはゆったり・ほのぼのもありながら、ちょっと触れれば割れてしまいそうな繊細な造りで、その落ち着いた雰囲気も良かったです。
静かながらも感情に訴えかけてくる物語なので、たくさんの方に読んでいただきたいです。
おすすめ作家さんの一人としてこれから追いかけていきたいです。