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甘美な異界への誘い――匂いたつかぐわしさにほろ酔う連作幻想譚。
sakura uruwashi sakon no sakura
『左近の桜』シリーズ第3弾です。シリーズ第1弾『左近の桜』と第2弾『咲くや、この花』は、それぞれ全12章で1年分の物語という構成でしたが、本作『さくら、うるわし』は全4章で2年ぶんです。
前二作ほど古典などからの引用は多くないので、解りやすいといえば解りやすいような気もします。しかし幻想文学の雰囲気が更に濃くなり、まるで他人の見る悪夢にひきずり込まれるような読み味。読後しばらくすると、一体何を読んだのか記憶が曖昧になってしまうかも。
前作『咲くや、この花』のラストで柾から「私の手にあまりはじめている」と言われてしまった桜蔵くん。親離れしろと促されるのかと思いきや、なぜか柾の家に下宿することになってしまいました。
柾推しで柾×桜蔵推しの私としては、二人がひとつ屋根の下に住む展開(柾の正妻・遠子さんも一緒だけど)は大歓迎だったのですが、距離近になったらごく普通の親子感が高まり、あれ……もしかして、カプにならない感じ……? まじかー。スンッてなりましたw
でも、そのぶん柾おとうさんの日常という、今まであまり書かれなかった柾の一面が垣間見れたのでよかったです。あの完全無欠のハイスペスパダリおとうさんが老眼を嘆いたり教養レベルが高いだけのオヤジギャグを言ったりしてる! 一周回って新鮮! 着実に老けておられるのがちょっと切ないけれど……。
私は特に第2章と第4章が好きです。この二つの章では、柾の過去の恋愛について少し触れられています。夢の中で、写真でしか知らない二十代の頃の柾に出会い、色めく桜蔵くんw
そして、不慮の事故で亡くした恋人のことを今でも想い続ける柾。なかなか趣深いです。