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表題作魔王様の清らかなおつき合い

峰守重次,IT企業に勤務するサラリーマン,30歳
三城悠真,ゲイバーの店員,24歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

確かに「お友達から」とは言ったけど手も握らないなんて見掛け倒しかよ!!

ヤクザ顔負けの眼光で、高級スーツを身に纏う男から深夜に呼び出し!! しかも愛を告白されてしまった――!? ゲイバー店員の悠真(ゆうま)を待っていたのは、「魔王」と呼ばれるほどコワモテな常連客・峰守(みねもり)だ。「お…お友達からお願いします!」恐怖のあまり遠回しにお断りしたつもりが、まさかの快諾!! 何か裏があるはずだとデートに赴くけれど、行先は動物園や映画館など、健全な場所ばかりで!?

作品情報

作品名
魔王様の清らかなおつき合い
著者
海野幸 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010569
4

(74)

(24)

萌々

(32)

(13)

中立

(5)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
15
得点
292
評価数
74
平均
4 / 5
神率
32.4%

レビュー投稿数15

みんな、ありのままの自分を受け入れて欲しいんだよね

天使のように愛らしい受けと、100人くらい殺ってそうな強面の攻め。
作者さんがおっしゃるには「人は見かけによらないってお話」になるそうです。

これ、本当にその一言で内容を説明出来ちゃうお話なんですよ。
天使のような可愛らしい見た目の受けですが、頭突きで相手の後頭部をカチ割っちゃうような「大人しい」とは対極な性格だし、逆に魔王と呼ばれるほどの強面ながら、小動物や甘いもの好きな優しい性格の攻め。

こう、攻めから告白された主人公がですね、その迫力に恐れをなして「とりあえず友達からお願いします」と遠回しに断った。
しかし攻めは「いいのか?」と素直に喜んだ挙げ句、デートに誘ってくる。
そこでデートを重ねるものの、見た目からは想像出来ない、彼の優しく不器用で誠実な姿を知る。
やがて主人公は攻めを本当に好きなるんですが、何故か一向に手を出して来ない彼にヤキモキしてしまうー・・・。

えーと、こちら、めちゃくちゃ可愛いお話なんですよね。
や、ヤクザの幹部みたいな峰守(攻め)がですね、デートと言えばまるで中学生みたいな健全な場所に行き、甘いケーキを食べ、主人公に体験させたいと小動物との触れ合いコーナーに連れ行く。
そして、お酒を飲みにいけば、頼むのがカシスオレンジ。
こう、あまりのギャップに主人公じゃなくともキュンキュンが止まらないと言いますか。

また、最初こそ断りきれずに仕方なく付き合い始めた悠真(受け)。
おそるおそるデートに臨んでいたのに、いつしか逆に「何故、手を出してこない!?」と、ヤキモキしてるのに笑えちゃうと言うか。
こう、海野作品と言うと、攻めが受けに振り回されてる印象が強いんですけど、今回は逆なんですよね。
完全に、受けが攻めに振り回されてる。
振り回されてるんですけど、そんなジリジリ進む二人の初々しい恋模様が、甘酸っぱいわ可愛いわで、ひたすら萌えまくっちゃうんですよ。
萌えまくちゃうんですけど、実はそれだけじゃ無くて、とても深みがあるし優しいお話でもある所が素敵でして。

えーと、主人公である悠真ですが、しつこいですが天使のような見た目なのです。
で、その見た目にあった大人しくて優しい性格を演じている。
本当は結構ハッキリしたタイプでありながら。
イメージと違うと言われてしまうから。

何だろうな。
人ってどうしても見た目のイメージに引きずられてしまうと思うんですよ。
主人公しかり、攻めしかり。
主人公の場合は特に、幼い時分に母親からその「イメージの強要」をされてしまった。
それ故に、ありのままの自分を出せずについつい「物静かで優しい自分」を演じてしまう。
こう、根底に、本当の自分は受け入れてもらえないと言う恐怖があるんですよね。
多分。

ただ峰守ですが、てか世間が勝手に当てはめるイメージに苦労してきた彼だからこそ、ありのままの悠真を受け止めるんですよね。
カクテルじゃなく日本酒が好きだと分かれば、驚くんじゃなく日本酒を頼めば良かったと言い出してな具合で。
このね、見た目で勝手に決めつけるんじゃなく、そのままの主人公を受けとめてくれる、彼のなんの気負いも無い自然な言動がめちゃくちゃ素敵で。
読んでて、すごく胸があたたかくなるんですよ。

またこれ、オチでの萌え爆発が海野作品の醍醐味だと思うんですけど、今回も素晴らしくて。
や、悠真ですが、店員として接した時の「物静かで優しい」自分に峰守は惚れたと思ってるんですよ。
だからこそ、恋人同士でありながら手を全然出してこない彼に対して、自分から誘う事など出来なかった。
あ~もう、こいつらいい年して焦れる!と読んでたんですよ。
えーと、悠真のトラウマが分かるだけに、ちょっぴり切ない心地なんかになりながら。

が、これ、オチで分かった真相に、もう萌え転がっちゃって。
いやもう、そうだよ!
峰守、そんな薄っぺらい男じゃないよ!!
めちゃくちゃ見る目のあるいい男なんだよ!!!と。

なんかね、ありのままの自分を受け入れて欲しいと願いながら、自分自身が、相手をありのまま受け入れられてないって、よくある事なんじゃないかなぁと。
周囲が勝手に期待する自分に苦しんできた悠真。
でも悠真自身も、実は勝手にイメージした姿を相手に期待していた。
主人公がですね、そこの部分に自分から気付いて行動を起こすのに、めちゃくちゃ感動しちゃって。
こう、可愛いだけじゃなく、本当に深くて素敵な作品なんですよ。
海野先生の良さが前面に出た。
また、そんなあたたかくて深みのあるストーリーに、小椋先生の優しいイラストがベストマッチしていて。
ああ、めっちゃ心に響いて幸せな気持ちにさせてくれる、すごくすごくいい話ーーーー!と。

ちなみにですね、前述通りジレジレのスレ違いをしてるせいで、二人が本当に結ばれるのは最後です。
ここでのエッチシーンに思わず吹いちゃって。
ようやく何の憂いもなく、エッチに臨む二人。
こう、ローションだのゴムだのを枕の下に仕込んであった峰守と、「やる気満々じゃないですか」「君は違ったか?」と妙に真面目にやってるのがツボに入っちゃって。
仲が良いのは素晴らしい事だ。

9

二人の天使

ゲイバーで働く悠真と、そのお店のお客さんの峰守との恋愛と二人の成長のお話。
タイトルに「魔王様」ってありますが、本物の魔王様は出て来ない、現代物のお話です。

悠真は可愛い天使のような見た目のせいで
純真そう、大人しそうと勝手に思われて、ナメられたり下に見られたり幻想を抱かれがち。
実際は気が強くはっきりした性格なのに。
そのことで恋愛や仕事がうまくいかず、恋人と別れ仕事を辞めてしまった時に、ヨシミさん(バーのママ)に手を差しのべられ
ゲイバーで働いています。

峰守は背が高く大柄で、目つきが鋭く寡黙な無表情な男。いつも黒い服を着ていることもあり、悠真のお店のスタッフから陰で「魔王」という渾名で呼ばれています。

峰守から突然の告白を受け、断りきれず友達からと返事をした悠真。
そこから二人の交流が始まるのですが、最初のデートから峰守のギャップが!
動物が大好きで、優しい紳士。全然ガツガツしてないし!
挿し絵の峰守さん、とっても癒し系で良いです!
デートをする度に見た目と全然違う峰守を知って好きが止まらなくなる悠真。

峰守さんを好きになったことで、自分の気持ちに気づきもう一度仕事を頑張ろうと思えた悠真。
そんな悠真を見て峰守も一歩前に進もうと決意します。

また、何故悠真がこんなに人の目を気にしてしまっていたのか。
自分自身の気付きや過去と向き合うことができるように。

恋愛だけじゃなく、心の変化や深いところまで描かれていて
それでいて重くならずに読みごたえがあるのに読みやすいお話でした。

成長した二人が、ほんとの気持ちを話すところとか、念願の初エッチとか、めっちゃ可愛いし好きです。
絵がお話とすごく合っていて、それも良かったです。

8

見た目じゃわからないもの。

海野先生と小椋ムク先生のイラスト。
とても楽しみにしていました。

受け様は、ゲイバーでバイト中の悠真。
可愛らしく天使のような見た目から、侮られたりナメられたり。
恋愛では、大人しそう純情そう、という勝手な理想を持たれた挙げ句、イメージと違う、とフラレたりと、苦々しい思いをしてきた。

攻め様は、ゲイバーの客で、強面で長躯、寡黙な上いつも黒尽くめの格好なので、スタッフの中で『魔王』という渾名をつけられている峰岸。

峰岸から告白され、断ったら何をされるか、という気持ちから“友達から”と返事をしてしまった悠真。
週末に会う約束をして連れて行かれたのは動物園。
魔王な強面の峰岸が、モルモットをそっと抱いたり、強面の自分を知っていて周囲に気を遣っているのを知って、好感度が上がる悠真。
健全な時間に解散となり、峰岸が本当に友達から始めているのに、複雑な気持ちになってしまう。
地団駄を踏みそうな悠真に、笑っちゃいました(^.^)

自分の見た目を気にして、就活に消極的な悠真に、君の見た目は武器にもなる、と背中を押す峰岸。
確かに、短所は長所ともなりますものね。

このままじゃ友達のままだ、とジレジレした挙げ句、悠真がやっと告白しようって時に、元カレが。
峰岸が、ビシッと言ってやったのが、めっちゃスッキリでかっこよかった(≧▽≦)
惚れ直すわ~。

素の自分をさらすのは、見た目とのギャップがあるほど、勇気がいるものなのでしょうね。
見た目通りを期待されて、勝手にイメージと違うってガッカリされたり、そのギャップにきゅんとなったり。

相変わらず、海野先生の書かれる2人にきゅんとなり、我が身を振り返ってみたり。
とても楽しく読ませて頂きました( ´∀`)


イラストは、小椋ムク先生。
口絵の表はコミカルだけど、めくった裏はきゅんでした(^.^)
峰岸の魔王な表情、優しい表情、とってもいい(≧∇≦)b
電話シーンの悠真も可愛くて好きです。

7

めっちゃ好みでした

タイトル(と表紙も)で誤解していて、あらすじ読んだら現代ものかい!と早速読みました。すごい好みで大満足でした。
タイプとしては、「悪い男には裏がある」に近い気がします(こっちも大好き)。

あー、こういう本をたくさん読みたい…
こういう話がたくさんある世界線に行きたい…
(異世界物に食傷ぎみなのにこの希望を書くという矛盾よ)

海野さんの話って毎回ちょっとした謎というか秘密というか、読者にも伏せられてる事柄があったりするのですが、いつも外し気味な自分が今回は見事に当たって嬉しかったです!(皆さんはもしかして簡単に思い当たっているのかもしれないですけどもw)

3

とっても素敵なおつき合い

海野先生は、ひとつのテーマにとらわれず本当に幅広い作風で数多くの作品を書かれている稀有な作家さんだと思うのです。
その中でも、日常の中にあるありふれた物事をBLの中に落とし込みながら丁寧に掘り下げている、こういったテイストのお話が1番好きかもしれないなと感じた1作でした。

「女性は甘いお酒が好き」だとか、「男性はシトラス系の香りが好きだろう」だとか、世間一般に蔓延る謎の決めつけやイメージってありませんか?
金髪から黒髪にした途端に道行く人からぶつかられることが多くなったり、身長の高さや低さだったり…外見の印象で人から態度を変えられた経験はないですか?私はあります。

魔王のような強面で誤解をされやすい峰守と、性格とは異なる柔らかすぎる印象を持たれやすい悠真。
タイトル通り、外見的なイメージから誤解をされやすい2人が清らかなお付き合いをしていく。
きっと怖い人に違いない。きっと優しいに違いない。
こちらの作品は、まさにその無意識の決めつけや分類、己の認識とは異なる他者からの評価という居心地の悪い息苦しさなど、非常にリアルなテーマを扱った作品でした。

口数は少なく目付きは鋭い。威圧感を与えてしまう大きな体躯に、纏う服は黒ばかり。
確かに峰守という人は、世間一般的には怖い人なのかもと思われてしまいそうな人なんですよ。
今作の受けである悠真もそう思っていたところからスタートするわけで。
ただ、このお友達付き合いをする内に印象がどんどん変化していく様がとても初々しいやらかわいらしいやらで仕方がないんです。
峰守という人のギャップにやられること間違いなし。
こんな攻め、愛おしいったらないですよ。

と、2人の焦ったいほどに初々しいお友達お付き合いの中の、なんてことはない食べ物ひとつだったり、作中のあちこちにテーマに沿った小さな仕掛けがさり気なく施されているものですから、悠真視点で楽しく読んでいる内に自然と自分の中にもハッとする気付きがあるんです。
気が付けばいつの間にか海野マジックにかかってしまっているなんて体験が出来たのも面白かったですね。

恋の行方が性急さとは真逆だったのも好みで、すっかり2人のことが好きになってしまいました。
作品全体の雰囲気はコミカルかつかわいらしいもので、笑いありギャップあり萌えありの軽めの読み口で読みやすいです。
けれど、それだけではない深みと優しさがある素敵な作品でした。

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