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表題作あやかし蝶と消えた初恋

国吉清十郎,大学生,天然の人たらし
尾瀬朝陽,大学生,重度の昆虫オタク

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

昆虫が好きすぎて周囲から敬遠されがちな朝陽は、高校の時独りだった自分を救ってくれた国吉にずっと片想いしている。だが彼は天然の人たらしで大学では常に人に囲まれ朝陽は毎日嫉妬するばかり。告白しても「知ってる」と笑顔で返されてしまい、もう諦めるべきかと悩む中、国吉の実家の神社で“人の心を食う"という美しい蝶に出会う。いっそこの気持ちを食べてくれたら…すると本当に虫や国吉への興味が無くなってしまい!?

作品情報

作品名
あやかし蝶と消えた初恋
著者
海野幸 
イラスト
Ciel 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784778134297
4.1

(91)

(43)

萌々

(31)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
18
得点
365
評価数
91
平均
4.1 / 5
神率
47.3%

レビュー投稿数18

もう、めちゃくちゃ深くていい話ーーーー!

片想い相手への報われない恋に、苦しむ主人公。
「人の心を食う」と言われる美しい蝶に、いっそこの気持ちを食べてくれたらと願うんですね。
すると、本当に恋心が消え失せて・・・。
と言った、ちょっぴり不思議な現代版ファンタジーになります。

私は海野先生の大ファンでして。
今作も当然チェックを入れた上で、勝手にラブコメを想像して楽しみにしてたんですよ。
や、あらすじ等から、受けの一途な恋心の上に胡座をかいて、好意を当たり前に受け止めていたズルい攻め。
そんな彼が、突然受けから興味を無くされ「え・・・? ええ?」って感じでショックを受ける。
そう、ムカつく攻めが痛い目を見るお話ね!的な。
こういう、要は攻めザマァ、大好きなんだけどー!的な。

が、内容的には確かにその通りなんですけど、実際はラブコメってよりどちらかと言うとシリアス寄りだし結構苦しいお話なんですよね。
でも、めちゃくちゃ深くていい話なんですよー!
なんと言うか、人を好きになるって苦しいし、怖くもあるよね。
でも、とても素敵な事だよねと。

えーと、そもそもですね、主人公である朝陽ですが、重度の昆虫オタクで変わり者なんですよ。
で、周囲から浮いてしまうそんな彼を、唯一受け入れてくれたのが攻めとなる国吉。
ただしこの国吉、誰に対しても平等に「優しい人間」でして、逆に言えば特別な相手が一人も居ないんですね。
こう、朝陽の「大好きだ!」と言う告白に対しても、いつも笑顔で流してって感じで。

で、そんな彼への片思いに疲れてきていた朝陽・・・。

繰り返しになりますが、私は攻めが痛い目を見るのが大好きなんですよ。
気持ちを失ってからの朝陽ですが、奇行が無くなった事で周囲とも上手く付き合え、更に国吉の言動に振り回される事も無くなってと、全てが順調に見えるんですよね。
で、逆に国吉ですが、朝陽から急に相手にされなくなってショックを受けと、その毎日は精彩に欠ける。

普段ならこの展開って大好きでして、意地の悪い喜びに浸ってるハズなんですよ。
ハズなんだけど、今回は読んでてひどく切なくて。
や、何でか考えたんですけど、朝陽の告白を受け流しとズルい事を繰り返してるクセに、国吉の言動って朝陽への深い愛が感じられるんですよ。
どんどん感情を無くして人形のようになって行く朝陽に対して、必死で働きかけ続けてって感じで。

また、海野先生と言うと、しっかり掘り下げた心情描写が素晴らしいと思うんですよね。
国吉の本当の気持ちと言うのは後半で分かりますが、だからザマァ状態の時に嬉しいどころか切なく感じたのか!と。
彼は、思ってたよりずっと不器用だし、臆病だったんだなぁと、ここでガラッと印象が引っくり返ると言うか。
そして逆に、主人公の強さに感嘆すると言うか。

えーと、テーマと言うのがですね、「感情」がある事が幸せか否か?になると思うんですよ。
最初こそ、感情を無くした事が幸せだった主人公。
それが、やがて失ったものの大切さに気付き、後悔する。
何より、大事な人の為に取り戻したいと強く願う。
こう、すごく心を打たれて。
もう、めっちゃいい話ー!
とにかくめちゃくちゃいい話ーーー!

ちなみに、毎回思うけどオチが秀逸でしたよ。
「そう来たか!」と、思わずニヤリとしましたよ。
その後の展開には、萌え転がっちゃいましたよ。
朝陽、それは可愛いすぎるわーーー!と。
そう、気持ちってどんどん溢れ出るものなの!と。

若干、と言うかかなり攻めはヘタレだと思うんですよ。
あと、どちらかと言うと結構切ないと言うか、重めのお話だと思います。
でも、めちゃくちゃ心に響く素晴らしい作品だと思う。
シリアス系が苦手じゃなければ、ぜひ読んで。

20

まずは読んでみるのをおすすめします。とても良かったです。

心の準備が出来なくてなかなか読み始められなかったのですが、読みだしたら止まらない!ハラハラで一気読みでした。

もう序盤の朝陽が泣けて泣けて。コミュ障空気読めない個性的すぎる浮いてるマニアに、笑顔で話を聞いて楽しそうに付き合ってくれる人が現れたんだもん。そりゃあそうなるよね。
国吉が好きすぎて辛いのも可哀想で。
カマキリみたいな国吉に恋をしてしまった朝陽は毎日ずっと国吉のことで頭がいっぱいで視界に入ろうと必死で毎日恋心も更新されて。

こんなに苦しいなら蝶が朝陽の想いを食べてくれたら…。
その後の朝陽が自分の変化に戸惑いはするけど、わりと人並みに青春してて逆に良かったのでは?なんて思っていたら…。

朝陽の変化に苦しむ国吉の本音や事情。
国吉がそんなふうに考えていたなんて…。
朝陽は恋情がなくなってもやっぱり朝陽で。
そんな朝陽だから国吉もどうしても頑張りたくて。

狭い空間でイジメられたら無視されたら、二人のやり方は違ったけど高校で偶然交わって救われましたね。

まるごと受け止めてくれる人がいてくれたら、好きにならずにいられないなあ。

クライマックスから最後までもとっても良かったです。
好きなものがあるから頑張れる、そうだよね!
新たな作品との出会いを楽しみに私も生きてます。

13

コメディな冒頭から一変、恋の切ないさいっぱい

重度の虫オタクの受けと、聞き上手な天然人たらし攻め。受けが長年攻めに片思いしているんだけど、不思議な蝶に受けの心が食べられてしまいその気持ちや、様々なことへの興味関心が薄れていきどんどん無気力状態になってしまう話。

受けにとって攻めは自分の話に付き合ってくれる特別な存在だけど、攻めの周りには他にも沢山の人で溢れていて皆に平等に優しい。攻めはなんて罪な男なんだ…。その割には受けが攻めへの関心を失うと急に追いかけてくるし、何故???って感じだったんだけど理由がわかってくると攻めの状況がとても切ない。

目に見えて受けの気持ちが日々離れていくの見てるのつらいし、攻めの理由もわかるけど、やっぱずるいよ〜という気持ち。

記憶はあるのに、そこに感情を伴わなくなっていく描写がとても印象的だった。最初は脱変人、脱片思い、で日常に支障はないし寧ろ解放されたような気持ちだったのにそれがどんどん恐ろしく思えていく展開が良かった。

そしてちょこちょこ挟み込まれる虫の豆知識も面白かった。アリの巣の崩壊の展示は昨年実際に多摩動物公園でやってましたね。そこに日参する受けの姿がありありと想像出来ました。

10

何かを好きになれる大切さ

昆虫オタクの朝陽は
昆虫と高校からの友達の国吉の事が大好き。
だけど好きオーラを日々出しても、国吉には本気と捉えられなくて切ない片思いをしています。

国吉の家は神社で、裏山があります。
そこで朝陽は光る蝶の群れを発見します。
国吉からその蝶に“心を食われる”と忠告を受けますが
昆虫好きの朝陽は何度も見に行ってしまい、本当に心を食われてしまいます。


明確に心を食われる描写はなく、あやかし蝶も幻想的で怖い感じはないです。

日常から突然少しずつ何かが抜け落ちていく感覚や、好きなものを好きと感じなくなってしまっている朝陽の心の中の世界が丁寧ですごくわかりやすかったです。
記憶はあるので、今までの自分や辛かった葛藤も憶えています。
だからこそ、今までの必死だった気持ちと、空洞になってしまった心の変化が明らかですごく切なかったです。

昆虫や国吉に興味がなくなってしまった事が、すぐに言動に出た朝陽。
大学の同級生や、何より国吉が驚きます。
博愛主義者な国吉は、来るもの拒まず去るもの追わずなのですが、何故か朝陽には必死に今までの気持ちを取り戻してもらおうとします。

必死な国吉と、恋愛感情が全くなくなった朝陽。
今まで朝陽の気持ちに気付かないふりをしていた感のある国吉が、今更必死になっても、、、とは思えない必死で優しい国吉。
ほんと切なかったです。

最初は変化に不便を感じなかったのですが、徐々に心が噛み合わなくなって苦悩する様子も描かれています。
国吉が諦めないでいてくれたことで朝陽は救われて、ほんとに良かったです。

偏りがなく上手く人間関係を築ける事も大切ですが
周りを気にせず何かに夢中になれるって誰にでもできることではないし、強い人だからできることなんだな
と思わせてくれました。

心理描写を深く描かれていてとても素晴らしかったですし、切なさや安堵感、共感を感じられてほんとにいいお話でした。

全体の萌えは少ないかもしれないですが
最後の国吉と朝陽が可愛いくて萌えまくりました!
2回目になりますが、ほんとにいいお話でした。

8

好きな気持ちって大事だよね。

どうなるの〜とページを巡る手が止まらなかったです。
ナルホド、そういうことか。
さすがというか、海野先生やっぱりスゴい(≧▽≦)


受け様は、昆虫が好き過ぎる朝陽。
攻め様は、聞き上手で無類の人たらしの国吉。
高校で出会い、同じ大学に進んで、朝陽は“虫と国吉を発見する目ざとさは右に出るものはいない”と友人達に言わしめている日々。

受け様の朝陽視点で進むお話で、冒頭から朝陽の国吉への愛が濃ゆい。
全身で国吉への愛が溢れてて、もう〜国吉が大好きなんだねぇ、とにっこにこしちゃう( ´∀`)

でも、国吉の方は、来る者拒まず去る者は追わずのスタンスで、朝陽だけでなく、皆に公平平等。

朝陽は、好きだと伝えても流されてしまい、国吉の特別にはなれない、と苦しい想いも抱えている。

そんな中、朝陽は“心を食う”と謂れのある蝶と出会い、本当に好きだという気持ちをなくしてしまう。


朝陽の興味を失って、驚愕と焦燥の国吉の様子に、攻めザマァな気持ちで、ふふふーん、とニヤついてたのですが。
朝陽自身も、自分の中の空洞が悲しく苦しんでいて、攻めザマァを楽しむ気持ちどころではなくなり。
どうなっちゃうの~なんとかなるの~、と私もドキドキハラハラでした(´゚д゚`)

ナルホドな展開に、さすが先生!
朝陽の偏執的であっつい感情を食べた蝶は、さぞ美味だっただろうなぁ、なんて。


“好き”っていう気持ちは、元気やヤル気の元で、明日への活力になるんだよなぁ、としみじみ実感しちゃいました。
私もこれからも好きだという気持ちを大事に、BLを楽しんでいこう└( ^ω^)」


イラストはCiel先生。
表紙から雰囲気あってステキ。
口絵も美しいです(*^^*)

6

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