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凄く素敵なお話でした。砂原糖子先生の作品はハズレが無いので安心して読めますね。
こちらの作品も一気に世界観に引き込まれました。
もう玖月が戸明を気になって行く過程、そして偶然に街で見かけてからの咄嗟に取ってしまった行動からの展開にドキドキが止まらないんです。遠いようでいて近い未来って設定も凄く効いていたと思いました。
薬物所持被疑者で監視対象者である戸明との恋は上手く行くのかとか、本当に戸明は犯罪者なのかとか凄く先が気になってページを捲る手が止まらないんです。
更に上手いと思ったのは、戸明の父親の知り合いという人物の存在でした。彼が戸明にトラブルを運んで来ると思ってたんですが、最後の事件に繋がるまでの流れがとても見事でした。
表題作の雑誌掲載作と書き下ろしの「夜明けの月と僕」が収録されているんですが、特に書き下ろしでの戸明の後輩の伊塚を殴ってやりたくなりましたね。あんな鈍感で無神経なヤツの何処が良かったんだろうと…。
このお話が凄く良くて、玖月の所属してる課が凄く面白いんです。戸明は弁護士だし、この2人が関わる事件でシリーズ化してもらいたいです。
これネタバレなしで読んでもらいたいデス。(事件の顛末的な部分)
とりあえず、内容は「最っ高」です。近未来を舞台にしたサスペンスのようでいて、とても情緒的。昨年の小説D+掲載時から好きすぎるんだけど!!って悶えててたので、待望の文庫化!草間先生のイラストもカラーになって、さらに素敵度増し増しでした。砂原先生の淡々と短文でたたみかけてくる、端正で美しい文章が魅力的で、、なんか声に出して読みたくなる表現が多くて(笑)たまりませんでした。
近未来の警察組織で被疑者の監視を行う玖月と、その対象となった弁護士・戸明のラブです。監視という名の覗きから、対象に愛着をおぼえる…という過程にゾクゾクしちゃうんですよね(個人的な性癖ですw)。”覗き”という背徳感からくる大いなるエロティシズムwwを感じまくります。特にね、、二人で会ったあとに玖月が監視室に戻っちゃうんですけど、スケベすぎますよね。
近未来の無機質な雰囲気が背景にありながら、二人の周辺にはとても有機的なモチーフ(犬とか魚とか前時代的な映画館とか…)が対照的におかれている印象をうけました。それがとてもホッとするというか、やっぱり恋愛は有機的なのよ、と思ってしまいました。
ハーフリム眼鏡の弁護士先生受が、”セッ”の場面ではやたらエロくて、”こんなに繊細で淫らな男だなんて”というギャップ萌えの破壊力が素晴らしかったです。作品全体的にストイックな印象があるせいなのか、スケベの官能みがすごかったな~と思いました。さすがの砂原先生です。
ワーカホリックで、心になにか空虚なものを抱えた二人が、他の人がわかりえないところで共感しあうという、なにかしら欠落したままで通じ合い惹かれあう男二人の交流、夜中にはじまったものが、ラストで朝を迎えるという流れも美しくて、ただただ浸っていたいような世界観に圧倒されました。”神”です。
めちゃくちゃ面白い小説でした!
BLとストーリー展開・世界観の面白さの比重に偏りがなくてとても引き込まれました。
2041年の日本。
法律の改定により、被疑者に対して秘密裏に証拠撮影捜査(盗撮)が可能になった時代。
警察官の玖月は24時間映像を監視する監視員として働いています。
様々な被疑者がいる中
限りなく無実に近い真面目な弁護士の戸明にあることがきっかけで、今まで抱いた事のない関心を持つように。
そして偶然街で戸明を見かけて声をかけてしまい、玖月は警察官の身分を隠して交流が始まっていきます。
秘密裏の盗撮だったり近未来のお話ですが、ディストピアSFのようなダークな世界観ではなく
AIや電子機器のテクノロジーが発達しているぐらいの未来感でした。
ディストピア的な倫理観ではなく、人は現代小説の感覚を持っていましたので読みやすかったです。
玖月は感情が乏しくロボットのようだと揶揄される人物なのですが
戸明に対して無自覚なうちに関心を持ち、思いもよらない行動をとってしまったりします。
徐々に自分の変化を自覚し、戸明に対する感情を理解していくのですが、その描かれ方がもう秀逸で。
強引な展開等はなく、自然に恋に落ちていく過程を読ませてくれます。これがほんと自然でリアリティのある心理描写で。
ベテラン作家様だから当然かもしれないのですが、文章で気持ちの変化を伝えられるってほんと凄い!面白い!と読みながら何度も感動しました。
戸明は玖月に監視されている事は知らずに交流しているので、玖月ほどは複雑な心の内というわけではありません。
ですが、彼の苦悩や悲しみを淡々とした日常から少しずつ分かるような描かれ方をしています。
その間に戸明という人物像を分からせてくれるので、感情移入する事ができました。
気が付けば玖月と一緒に監視カメラで戸明を見ている感覚になり、いつの間にか好きになってしまっていました。
この2人が恋に落ちていくのですが、隠し事をしながらのもどかしさもあり。
色々すんなりという訳ではない恋愛なので、ドキドキしたり悲しくなったりと心が揺さぶられました。泣きました。
ほんとに素敵なラブストーリーなのですが
監視カメラや被疑者となってしまった経緯等、ストーリー自体がもうめちゃくちゃ面白かったんです。
ラブ要素がなくてもストーリーだけでも充分面白いと思います。いや、ラブストーリー要素だけでも充分面白いです。
それが合わさるのだから、最高に面白いお話でした!
ほんと読んで良かったです。
作家買い。
作家買いですが、挿絵を草間さんが描かれていると知ってあらすじも拝見せずに予約していました。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
時は2041年。近未来の日本が舞台のお話です。
日本国内で開発された「ポットスプラウト」、通称「ポット」という違法薬物が蔓延し、その薬物依存者による凶悪犯罪が頻発するようになっていた。実はポットが蔓延する前に警察はその存在を知り食い止めることにほぼ成功していた。が、その摘発手段に問題があり不起訴に。結果、国内でポットが蔓延することになってしまったのだった。
凶悪犯罪が起こったことでポットを取り締まるための法が整備され、その法に基づき新たな部署が警察官内に設けられることに。その部署は薬物などの違法なものを用いている容疑者を、24時間監視することができる。要は、容疑者を盗撮することが許されているのだった。
主人公は、その監視任務に就いている玖月。
玖月たちは常に数人の容疑者たちの部屋に取り付けられた監視用(盗撮用)カメラを介して、部屋を見続けている。そんな玖月には、一人気になる人物がいた。
薬物などの違法なことをしているようには見えない、「十六番」と呼ばれる男性。
整然とした部屋で、規則正しく生活している十六番だったが、ある日、彼がそっと泣いているのを目撃してしまう。犯罪者に見えないこと、そして泣いていたこと。容疑者たちはあくまでモニター越しの対象者でしかなかった玖月だったが、その十六番と偶然街中で出会ってしまう。つい、十六番、もとい戸明に声をかけてしまう玖月だったが…?
というお話。
24時間、部屋の中まで監視されていると想像したら思わずぞっとしましたが、玖月という男性は感情の起伏が激しくない。おっとりしているとか優しい、という意味ではなく、監視対象はあくまで容疑者、モニターの中の人物、といった冷静さを持ち合わせた人物で、そのためか盗撮という行動(もちろんこの作品の中では合法なわけですが)にさほど嫌悪感は感じることなく読み進められました。
砂原さんて、なんて言うんですかね。
ミスリードの仕方が凄くお上手なんですね。伏線の回収の仕方が凄いと言ってもいいかも。玖月をはじめとするルーム勤務の警察官しかり、監視対象者しかり、戸明さんしかり。ちょっとした描写とかしぐさ、セリフで物語の奥行きがぐっと広くなる。2041年という時代設定、「ルーム」という警察の新しい部署、24時間部屋の中まで監視されているというバックボーン。少しファンタジー要素がありながらすごく骨太なストーリーでめちゃめちゃ面白かった。
ストーリー自体とても面白いのですが、そこにBL要素を加えるのが戸明さんが泣いていた理由、二人が出会ってしまってからの感情の機微、そしてモニター越しに垣間見る戸明さんの自慰行為。ハラハラドキドキしつつ、少しずつ育っていく二人の相手への感情が、モニター越しで、あるいは直接会話していく二人を介し読者に流れ込んでくる。
特に、濡れ場。
濡れ場、と言うと語弊があるかも。戸明さんの自慰行為をモニター越しに見てしまう玖月ですが、実際に戸明さんと身体を重ねるとき。モニター越しに見ていた時と、実際に身体を触れ合う時の違いが、玖月の感情と共に読者にも伝わってくる描き方が秀逸でした。それは濡れ場というだけではなくって、モニターという無機質なものを介しあくまで監視対象者としてしか見ていなかった「十六番」が、玖月のなかで、「戸明」という血の通った一人の男に変わっていく、その描写も素晴らしい。玖月の中で色がついていく様が手に取る様にわかるのです。
警察官と、その対象者。
という、相反する立ち位置にいる二人の恋は割と早々に実ってしまいます。んー、これで終わりじゃないよね?と思いつつ読み進めましたが、そこから二転三転するストーリー展開がまた素晴らしい。戸明さんは本当に薬物に関わっているのか?彼のクソでクソな(いや失礼)オヤジの過去の因縁が彼を苦しめるのではないか?そうハラハラさせつつ、最後の大団円まで一気に駆け抜ける物語でした。
これねえ、タイトルも素晴らしいと思うんですよね。
ルーム勤務の皆さんが見るのは対象者たちの部屋。ということは、普通に働いている戸明さんの自室の様子を玖月が見るのはほぼ夜なんです。二人の接点は夜。けれど、その夜に月は昇ってー。
んー、深いです。
違法薬物「ポット」による凶悪犯罪。
玖月の過去と警察官になった理由。
清廉で正義感あふれた戸明さんに違法薬物に関する容疑がかかったこと。
全部書き切れませんが、書き切れないほど最初から最後まですべてが繋がり、一つ一つに意味がある。さすがベテラン作家さまと唸らざるを得ない。
そこに草間さんの描かれた挿絵が華を添えるという眼福さ。
何もかもが素晴らしい。特にミステリとか警察ものがお好きな方には超お勧めだと思います。とっても好きな世界観のお話で、違う登場人物(玖月の同僚男性たちが特に好き)たちでスピンオフを書いていただきたいなと思う神作品でした。
近未来の大人なラブストーリー。
舞台設定が地味にドラマチックでした。メインカプの職業は警察官と弁護士で、本来なら接触を許されない二人が恋に落ちてしまいます。
受けは攻めが監視する、モニター越しの監視対象の一人。受けは攻めに自分のプライベートな姿をさらしているのを知りません。捉えようによってはなかなかにエロティックなシチュエーション…。
まるで映画を観ているみたいな心持ちで読み進めていました。作中にも映画を観に行くシーンがあって、イラストもよくて。映画好きなツボをグイグイ押されまくりです。
本作は攻め受け両視点で描かれていく手法がとても効果的で、それぞれの事情を読者が知っている中、二人がどういうふうに接近していくのかがめちゃくちゃ興奮する読みどころとなっています。
キャラ的には情緒未発達で冷めた若者と、優しさゆえにちょっと弱気でナイーブな大人の組み合わせ。表面上は穏やかで儀礼的なやりとりなのに、互いの胸の内にはすでに恋の萌芽が生まれている状況にドキドキです。
受けはたおやかで控えめなタイプですが、真面目で初心なところが可愛いかったり。攻めが年下なので、敬語なのがまた…(←好き)。攻めが受けに胸を撃ち抜かれてしまうきっかけとか、受けの健気な恋心とか、両者とも周囲に気取られないように思いを秘めている感じが大人の恋だな〜としみじみとしました。
書影を拝見した時から楽しみでたまりませんでした。草間さかえ先生のイラストがもう本当に素晴らしくて!カバーイラストの色調がとっても素敵です。深くて暗いブルーが作中に出てくる空やアクアリウムの水の色味を象徴するかのようで、読んでいてイメージが膨らみました。昔は意識していなかったのですが、近年の砂原先生のお話に触れると色彩のインパクトが強いなと感じて楽しみになっています。あと、受けのメガネについてはあとがきを読んで先生ありがとう!ってなりました。わたしもその一人でしたので笑
今回は動物たちがお話をサポートしてくれているようにも感じるけれど、(絶対に猫は外さない笑)、ストーリーをずっと見守っている「月」が作品のモチーフになっているようです。夜に活動する攻めにとって大きな意味のあるものなので、本篇最後の一行に繋がっていくまでの道のりを、是非じっくりと味わってみて欲しいです。