イラストあり・電子限定ショートストーリーつき
美しい挿画と美しい文章で綴られる切ない物語に惹きつけられるばかりでした。
とても切ないのだけれど、読みやすい文体でするすると一気読み。
どの作品を読んでもおもしろく、本当に文章力が高い作家さんだなあと思います。
時間逆行・タイムスリップをしたサスランが、自分を庇って死んでしまったアウスラーフを生かすため、懸命に未来を変えようと奮闘する物語。
キャラクター設定とストーリー構成が見事でした。
皇子と従者という、身分差がある2人のお話はそう少なくはないでしょう。
攻めのことを心から思うがゆえに、自ら身を引こうとする受けもそこまで珍しくはないはずです。
ですが、ここまで献身的で健気な受けは久しぶりに見た気がします。
愛がなにかも知らないまま、美しい髪を灰で隠し、息を潜めるように生きてきたサスラン。
作中で彼はアウスラーフを愛していないと言うのだけれど、読み手からすればその行動のすべてが彼のことを愛しているとしか思えないものばかりなのです。
自分と関わってしまったら再び命を落としてしまいかねないと、アウスラーフとの関わりを断とうとするサスランの姿があまりにも切なくてですね。
どう見ても好意を寄せてくれているかつての恋人に、自分よりも身分の高い令嬢との婚約を勧め、彼らのために美しい花を育て上げようとする。
これを健気と言わずになんと言いましょう。
すべてはアウスラーフを守るためと、心の殺しっぷりが徹底しているからか、いわゆる可哀想な受けっぽさや嫌な健気さがないのがすごい。
心理描写の巧みさがよりやきもきとさせてくれます。
しかしながら、どんなに離れようと行動に移しても、本来の未来とは多少形は違えど、まるで磁石のようにアウスラーフと近付いてしまいます。
そんな中、再びアウスラーフの命を脅かす暗い影もちらつき始め…
と、ここからの展開が読み応え抜群でして…!
いわば、2度目の世界は切なさ度合いでいうとMAXに近いと思うんですよ。
2人の恋模様は読めるのだろうか?と思ってしまうくらい。
ただ、その切ない日々の中に、ちょっとずつ今までとは違うなにかが散りばめられているんですね。
この状態から甘みのある恋愛関係にもっていく手腕と、ふわっと広げた風呂敷を綺麗に閉じる伏線回収の見事さに興奮しました!
はー、なんておもしろいのか…!
心が強い健気な受けと、頭の回転の早さが気持ちよく一途な攻めの組み合わせにピンとくる方はぜひ。
サスランの献身愛はもちろん、アウスラーフの愛情深さにグッときてしまいました。
彼らのバックボーンの複雑さも良いスパイスとなっていて良かったです。
最後まで飽きさせず、夢中になって読ませてくれるうえ、ドカンと特大の萌えが待っている1冊でした。
流行りの逆行ものに弱々主人公を据えてBL仕様にあつらえたもの。せっかく良い設定なのに、いつもの受けといつもの展開で、ありふれたBL小説の一つに感じた。
でもストーリーの練り方や整え方がとても巧く、この作家さんの他の作品を読んでみたいと思った。
サスランはBLの受けでよくいるタイプ。武力も知力も持たず、窮地に立たされれば他の誰かに助けられる。ウジウジするし自己犠牲に走るし頭も回らない、読み続けるのが辛い視点主。思考の範囲が狭いので、逆行前の記憶も上手く使えていない。
アウスラーフは、逆行前の様子はサスランの回想からしか分からないが、逆行後に明確な目的を持って言動を変えたのが良かった。生きる意味を得た喜ばしさと、性格まで変えなければやっていけない皇室の厳しさを見たようで、切なくもある。
逆行(回帰)ものは好きで別ジャンルの作品をよく読むので、内容は使い古されたテンプレな印象。派閥や次期皇帝の座をめぐる争いなどがあり、徐々に記憶の内容から時期がズレ、予測できないことが起こり始める。皇太后が悪役なのもベタ。
山場はBL大定番の誘拐と救出。またか。よくあるストーリーは、キャラが好きになれるか否かが重要。受け受けしいサスランは見ていて楽しくない。
回帰モノ初心者だった頃に読めばわくわくしながら読めたかもしれないが、これは後発なのに既存作の下位互換に見え、先の展開への興味を持てなかった。
各エピソードは全てどこかで見たことのあるものだったが、組み立て方がとても綺麗で、読み応えはあった。愛を知らないサスランと虐待を受けて育ったアウスラーフ、身分も違うこの二人が未来を変えてハピエン。読後感は良かった。
女王のように君臨する皇太后に蛇蝎の如く嫌われて虐待されてきた第一王子・サウスラーフ(攻め)と隠されて育てられた庭師・サスラン(受け)。
2人が出会い恋に落ち、でも第一王子という立場から権力闘争に巻き込まれ悲劇を迎え、そこからの時戻り、サウスラーフを二度と悲劇的な最期を迎えないように巻き戻る前の知識を使って頑張るサスラン(裏でサウスラーフも)の話。
これはネタバレなしで読んだ方が絶対面白いので、感想だけ。
第一王子というのはこの話の中ではイコール皇太子という立場のことのようで、立場的には皇弟です。初めはちょっと混乱しました。
自分の息子が皇帝になる時、自分の夫である先帝と他国の女性との間の息子を第一王子としたことに怒り狂う女王然とした皇太后の行動には嫌悪感しかありません。
そして彼女の魔の手からなんとか逃がそうとするサスランの必死の行動は健気すぎて辛いくらいです。
本当にこの2人はハッピーエンドを迎えることができるのだろうかと何度もハラハラしました。
お互いへの愛情は疑うべくもないのですが、状況がずっと逼迫し続けているので、お話の中に甘さはほとんどありません。
甘い話が好きな私には結構辛かったですが、ずっとハラハラしっぱなしで心臓に悪い、けれどすごく良い話でした。
了、という文字を見てホッとするなんて経験したことのない読了感でした。
そして、最後の方で明かされる事実に驚き、もう一度読み返してみるとまた違う楽しみが味わえますので、ぜひネタバレなしで読んでください。
挿絵効果は絶大
内容のイメージとピッタリ
元庭師のサスランには、秘密の能力が眠っている。
恋人である第一皇子が、自分を庇って皇太后が送った刺客に殺害される。
そのとき、サスランの「時戻しの力」が発現。
4年前にタイムスリップして、愛する皇子を守る為にサスランは智慧を巡らせる。
手嶋サカリ先生の作品は「蟻の婚礼」しか読んだことが無かったのですが、あちらも凄く面白かった記憶があります。
読みやすい文章に魅力的なキャラ、そして設定を活かした展開が凄く卓越してるんです。上手いとしか言えない作家さまで、もっと人気が出ても良いと思いました。
ネタバレ無しで読んで欲しいので極力内容に触れないように感想を書きたいと思います。
アウスラーフを思うサスランがとても健気で、彼を死なすまいと行動するのですが、全てが裏目に出て絶望感を募らせて行く様子がとても切なかったです。
そして、サスランが陰から手助けした影響なのか、前回とは微妙に性格が違って来ているアウスラーフにドキドキして期待してしまいました。
アウスラーフを生かすために彼と恋人になってはいけないと、他の令嬢との婚約を勧めていざ婚約が決まると無情感に襲われるサスランに凄く萌えるんです。
元の結末にならない様に必死に足掻くサスランが健気で、それでもアウスラーフに忍び寄る魔の手が恐ろしいと感じました。
このお話が秀逸だった点はサスランが自分の力について全く知らないところでした。彼の母親がサスランを守る為に何も教えておらず、人と接触しないで極力目立たないようにとしか言い残してないのです。
お話の結末に感動して、yoco先生の挿絵が世界観に合っていて凄く好きな作品になりました。
多くの方にこの作品を読んで欲しいです。
