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表題作12時の鐘が鳴る前に(新装版)

傲慢で皮肉屋の元医者
朋也
負けず嫌いの高校生

その他の収録作品

  • 新装版あとがき
  • Short Stories

あらすじ

「服を脱いでサイズを計れ。まず胸からだ」高校生の朋也が家政婦として訪れた、荒れ果てた古い屋敷。そこの主・叶は皮肉屋、傲慢、人ギライと三拍子揃った嫌な男だった!出会うなり「乳首のサイズを計れ」と高飛車な命令。当然反発した朋也だが、だんだん叶の隠れた面を知り、彼に惹かれていって…!?

作品情報

作品名
12時の鐘が鳴る前に(新装版)
著者
ひちわゆか 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
ISBN
9784862632487
4.5

(67)

(49)

萌々

(10)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
19
得点
303
評価数
67
平均
4.5 / 5
神率
73.1%

レビュー投稿数19

優しさや純粋さに強く惹かれて

元医者と高校生の組み合わせで年の差カップルです、一回り以上の差があるのかしら?

3歳の頃産みの親を亡くし、新しい母親に中々馴染めなかった幼い頃、自分を勇気付けてくれた男性の落としていった懐中時計の鍵を巡り、三上という男の紹介で叶と言う男の骨折した足のギブスが取れるまでの間身の回りの世話をすることになった朋也
世話をする相手は皮肉屋で傲慢で人嫌いと三拍子そろった嫌な男だったのです。
会ったその日に朋也に「35点」と点数を付けるわ、金をばら撒いてこれもって家に帰れと追い出そうとする始末。

それもそのはず、叶は朋也を三上の経営する男相手のデリヘル(デリバリーヘルス)で働いている子だと思っていたのです。

しょっぱなから嫌がらせをされるものの、負けず嫌いの正確が災いし、一度引き受けた仕事を途中で投げ出す事は出来ないと叶の家に通い続けるうちに、彼の隠れた優しさに触れ朋也は少しずつ叶を受け入れて行きます。

この話し、叶の優しさや朋也の純粋さにすごく惹かれます。

最初叶の事を皮肉屋で人嫌いと書きましたが、叶は昔から皮肉屋で人嫌いだったわけではないのです、信じていた父の裏切り、それに伴う母親の死。母を助けることの出来なかった自分…叶の心の中には長い間大きな蟠りが解けずにいたのです

そんな叶が朋也と接する事で、苦労知らずだと思っていた彼の隠された苦悩や、彼のまっすぐさに触れて癒され又もとの優しさを取り戻して行くその過程がすごく好きでした。

視点が上手い具合に入れ替わって二人の気持ちが割りと満遍なく判るので過不足なく楽しめる気がします。

しかしいくら思い込み勘違いしていたとは言え、朋也の事をずっと三上の店の子だと思っていて気づかない叶はすごいです(笑
銀行に借金してまでお金を作り、三上に「これで朋也を自由にしてやってくれ」なんて言っちゃったりするんですよ、朋也見てたらそんな事なんてやりっこないって気づくだろ普通?
そんな叶は、早合点やおっちょこちょい以上にかなりのおバカさんとも言えましょう
「恋は愚かというけれど」と言う邦題の歌がありますが、これも相手を思うが故の愚かさです(笑

最後まで投げ出さずに頑張ったいい子には神様がちゃんとプレゼントを考えていてくれるのですよね、朋也には嬉しいおまけが用意されていて見事めでたしハッピーエンド。
ひちわさんの作品ってやっぱりいいなぁと思った一冊でした。

5

傷を抱えて生きる男には弱いんです

これはかなり好きな作品です。ひちわさんの、掛け合いのテンポの良さと、胸を引き絞るような心の痛みと両方楽しめるし、ウケセメワキとキャラクターも魅力的。円陣闇丸さんの挿絵がまた素敵。
そのバランスの良さが素晴らしい。

叶は医者で、広い一軒家に一人で住んでいるんですが、庭は雑草が人の背ほど茂り、家の中は散らかり放題、破けた襖はガムテープで適当にふさいであって、表札も傾いたまんま。
どれだけ叶の心が荒みきっているか、家が物語っている。

そんな家に、バイトで家政婦に行く朋也くんですが、普通の素直で健全な高校生男子で、超のつく負けず嫌い。
できないよな~こんなこと、って言われると、むらむらむらっとやる気が出ちゃうんですね。追い出そうとしてるんならやり遂げてやる!とばかりに家事に励む!

かーわいいんだなぁ。この朋也くんが。
お中元の活きクルマエビこっそり飼育しようとするし(笑)
それを叶がみっけてぜーんぷ茹でて食っちまったら、「自分のものでもないのに勝手に飼おうとしたのがいけなかったんです」( ┰_┰) といいつつ、エビ剥いた殻埋めて墓たてるし。

叶の方は、幸せな家庭が、父の事故死とともに発覚した不倫(というか二重生活だな)で
がらがらと崩れてしまった心の傷がどうしても癒えずに、勤め先の病院も喧嘩して辞めたっきり、自堕落に暮らしている。
自分で立ち直ることができない、ダメなやつですね~。

そんなだめんずの生活に新風を吹き込むのは、もちろん朋也のピュアな一生懸命さなんですけど、それより叶の立ち直りシーンで全部持ってくのは、旧友三上の父!
キタ!父!(笑)

三上父の医院継ぎたいと言った叶を、「うちはドロップアウトした医者の駆け込み寺じゃない」と一喝し、「止まってしまった時計のネジを、もう一度巻きなさい・・・」と諭す。
きっかけを作ったのは朋也くんだけど、トドメを指すのはやはり父!
この父がいなかったら、この作品こんなに大事に読み返さないと思います。

朋也と叶を結びつける時計のエピソードも効いてます。
エピソード自体はちょっとありがちなんだけど。キャン○ィキャン○ィみたいでさ(笑)
でも朋也が叶の家に来るのが偶然じゃなくって必然になる重要なきっかけになってるし、
止まってしまった時計が叶の心を象徴的に表しているし、そのカギは朋也が持っている、ってのも象徴的。

朋也が必死で探している、「忘れられない時計の人」が自分だとは全く気付かず、叶はヤキモチ妬いて朋也襲っちゃうし。
要所要所でストーリーのキーポイントに!

心に痛みを抱えた傲慢攻め様と、ピュアで負けず嫌いな可愛い受け君。そして父!
BLはこうでなくっちゃね♪

4

あらすじに騙されました!

ドロップアウトした医者×負けず嫌いの高校生。足を折った男の家政婦のバイトをすることになった高校生。が、初対面から傲慢で、面接がセクハラつーか、あれは風俗の面接なんで…。こーゆー煽りは好きではないので読まなかったのですが、やっぱり中身はひちわさんでした。
押しかけ家政婦を追い出そうと嫌がらせをする男。でも負けず嫌いの高校生(と男は思ってない)は毎日通う。コメディのシンデレラみたいで楽しかったのですが。
風俗を営む友人が派遣した家政婦なので、勘違いするんですね。でも言動にギャップを感じるころから男の胸は軋みだす。そして、高校生には忘れられない男がいることを知って。
一方、高校生も、隠れた気遣いが気になり、淋しいだろうと考えたり、他の人が昔の彼を評するのをきいて自分だけが嫌われていると思ったり。
ひちわさんの書く人物は、血の通った立体感のある人間。萌えではなく、心の交流に涙するのです。恋愛の予感の後の過去話に、やー泣けた泣けた。
幼いころに出会った人の「いつか、心から自分を好きになってくれる、運命の人に出逢うよ」という言葉を胸に、役に立って好かれたいという想いが高じて負けず嫌いになったり。仲がよかった両親の死と真相をきっかけに世をすねたり。
「時間も、このセーターみたいに、ほどいて編み直すことができればいいのに」。それができないから、もどかしいのだ。焦らされました。
攻が時間を止めていたため、年の差は感じません。BLを超える、素敵な恋愛ものでした。

5

運命の出会いを否定した上で、もう一度肯定する強さ

いったいどんな乳首好きエロ魔人攻めかと思うようなあらすじ文ですが(笑)、トラウマ持ちの偏屈な元医者と、彼の元に家政婦バイトとして通う高校生の、ハートウォーミングな出会いを、コミカルに、でも優しく描いた物語になります。

懐中時計の鍵の落とし主…幼少の頃に一度だけ出会ったその人を探している高校生の朋也(受け)は、ひょんなツテで、足を骨折して不自由している叶(攻め)という男の家へ、ギプスが取れるまでの期間、家政婦バイトとして通う事になります。

この朋也がこれまた非っ常ーにいい子でして、じいちゃんばあちゃん世代には一も二もなく好かれそうな、今時珍しいほどのスレてない好青年。
健気で頑張り屋、でも稀にみる負けず嫌いという点が他の健気さんとは一線を画しています。
時には笑いをも誘うその魅力。やがては叶の冷えきっていた心を、知らず知らず蘇らせていくことになります。

あからさまに朋也を疎んじる叶と、負けじと家事に勤しむ朋也。
そんな二人の意地の張り合いのようなやり取りが、くすくす笑えてたまりません。
朋也の言動が、頑なだった叶の日々をその心ごと掻き乱し、日増しに真っ直ぐな気性の朋也に惹かれていく。その変化が文面からしっかり伝わってきて、思わず頬が緩んでしまうほど。
苛々し、混乱し、呆気にとられ、時には慰められる……エピソードをいくつも積み重ね、恋愛に至るまでの心の過程がちゃんと描かれているので、かなりの年の差・しかも高校生受けという危うさは気にならないのではないでしょうか。
むしろ「こんなガキに…」と眉間に皺を寄せる叶が、可愛く見えたり。

運命の相手というロマンス直球でありながら、叶という傷付いた男の再生物語の側面が、話に奥行きを与えています。
針を止めた懐中時計と同じく、停滞していた叶の時間に、再び時を刻ませた朋也。
挫けそうになっていた幼い朋也を励ました叶の言葉が、後の朋也の土台となり、その12年後に、今度は朋也の存在が叶を掬い上げるという優しい連鎖に、ホロリときました。
脇キャラも役割がしっかりと考えられていて、特に友人三上の父の存在が、導き手として話をピリリと引き締めています。

運命の出会いを否定した上で、もう一度肯定する強さ。
そこがたまらなく好き。
もう何回読んだかというくらい読んでいて、汚くなっちゃった…。でも中身に遜色は無し。癒されます。

タイトルから連想出来るように、あちこちにシンデレラ要素が仕込まれていて、著者の遊び心が楽しいです。笑いのセンスもまたしかり。
書き下ろしも、笑えて、可愛くて、甘くて、ほっこりして。
こんなに短いのに半端なく萌えさせてしまう力量がすごいなあ。

4

最初と最後が素敵です

自分はどうも小説の場合、読む時の気分や体調やら脳味噌状態に左右される事がひじょーーに多いので時間置いて3回位読みなおした作品をレビューしてるんですがこれは何回読んでも導入部分とラストが良いんですよー。
特に導入部分、幼くてアトピー持ちで再婚で義姉と義母が出来たばかりの朋也[受]が廃屋敷で叶と出会うシーンから、舞台一転して高校生になった朋也が寮で友人達と談話シーンへと切り替わりは実にスムーズでいわゆる掴みはオッケー!ドラマで言えば第一話がよく出来てるなーって感じです。
その冒頭シーンはそこで全て描かれてはおらず作中で彼らのやりとりが明らかになっていくのですがその辺も上手い。
朋也がチビではなく年相応か、やや大人びても見える容姿であったり、三上の正体等の小さい伏線もちょこちょこあって、負けず嫌い朋也と叶とのやり合いも読み手を飽きさせません。

あ、エロシーンは最後のみで最初っからエロエロな作品ではないです、この辺はあらすじ的にここチョイスするとこ違うよーー!!ってツッコミたくなりました。
17歳少年相手でしかも初体験なのにこいつ意外にエロいな、叶…と思ってたらちゃんとそこを朋也に指摘されてるし。
予定調和的な部分もあるのですが気持ち良いラストでエンディングが流れる~みたいな。

あとがきにもある様にシンデレラが下地にはなっていますがひと味もふた味も違う捻りも加わって良い味付け仕上げのシンデレラストーリーでした

3

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