電子限定かきおろし漫画3P付
想い人の背中を押す男の、どうしようもない恋物語 幼馴染みは俺の隣で、あいつのために綺麗になっていく――…
自分の好きな人には他に好きな人がいて、そういう気持ちごと全部を丸呑みしてその人を好きで居るというのが、大好物です。
このお話はまさにそういうお話でした。
国良は子供の頃から幼馴染みの大志のことを可愛いと思っていて、その自分の感情を恋だと認識したかしていないかという状況のときに、大志から「松田のことが好きなんだ」と告白される。
松田への思いを諦めて仕舞い込もうとする大志に焦れて、動画で脅迫するという手段でもって発破を掛け、大志の恋の応援をする国良。
髪の長い子が好き、と言った松田の言葉を信じて、髪を伸ばし続ける大志と、いつか松田とつきあったときのための練習と称してデートを重ねる二人の日々が丹念に描かれています。
もう、国良がとてもいい奴で、読みながら何回も呻きました。
二人ともぴゅあっぴゅあで、こんな可愛らしい二人の恋はとにかく報われるべきだと(大志の恋が報われると国良の恋が報われないけど)祈るようにページをめくりました。
華美な絵柄ではないですが、ふとした瞬間の止め絵に魅力がありますし、丁寧に語られ読ませられます。このときはこうだった、という種明かしも自然で、読み応えがありました。
やさしい作品で癒やされました。
書き下ろしも可愛いです。
髪と罅。罅の部分が読めなくて、ヒビと読むことができてもこの色気のある表紙とタイトルでどんな話なんだろうと気になって購入しました。要するに衝動買いです。
読み進めているうちに切なくて国が表に出さない気持ちや大志の松田への気持ちにしんみりとしましたが、それ以上のハッピーエンドが待っていて大満足でした。
結末まで読んでみれば最初から両片想いのすれ違い物語ではあるのですが、国を失わないために恋をするために好きになった(と勘違いした?)松田のために努力していた大志を大志が好きだと自覚がありながら側で応援して見守り続けた国があっぱれでした。理由をつけて手を出したり、でも最後まではできないという背徳感とか臆病さもとてもよかったです。
高校時代ずっと好きだった松田へのその想いを曖昧なままで終わらせようとした大志に、松田のタイプ通りに髪を伸ばしてその気持ちを伝えにいくよう仕向けた国良。
松田のことを好きだと語る大志を動画に撮って、それを"脅し"の材料にして。
彼がこのまま想いを伝えずに腐ってしまうくらいなら、自分が悪者になってでも掬い上げてやりたいという国良の優しさがとても響きました。
国良自身も自分の気持ちに蓋をしているのに、大志のことを一番に考えてその背中を押している様子には苦しさも感じましたが。
脅しという名の優しさがあったからこそ大志は前に進めたし、結果的に国良も救われたのだと思います。
大志の髪が伸びていくまでの数ヶ月、これまでと同じ関係のままのようで少しずつそのカタチを変えていったふたり。
松田に告白することは叶わなかったけれど、そこに辿り着くまでのふたりの努力と苦しみは無駄では無かったのだと感じられるような結末となっていました。
ゆるく淡々と進んでいくお話の中にふと仄暗い感情が見えたりして、色々な表情を楽しめる作品だったなと思いました。
すごいすごい。
これがデビュー作って本当なんでしょうか?
別名義でも他に出されているのかな?ってくらいにうまいんです。
決して派手さはないけれど、じわりじわりと浸透してゆく。
まるで文学のような、静かで繊細な表現力に囚われてしまいます。
ある日、親友の大志から同級生の松田への恋心を打ち明けられた国良。
それでも大志への想いは何ら変わらず「頑張れ」と応援し続けてきた
国良ですが、高校卒業と同時に松田への恋を諦めようとする大志に
「バラされたくなかったら言う事聞けよ」と脅迫してしまい…。
松田の好みという“髪の長い子”に近づくため、その日から髪を伸ばし始めた大志。
大志の髪が伸びる度、大きくなってゆく国良の気持ちが切なかったです。
伝えたくても、親友だから伝えることのできなかった秘密の恋。
一途で献身的で、これのどこが脅迫関係なのだろう?
国良に髪を切られながら大志が口にした「国とさいごまで恋愛してみたい」。
そうだ、これって最初から最後まで恋のお話だったんだ。
帯の「幼なじみは俺の隣で、あいつのために綺麗になっていくーー」というのを見て購入しました。
この作品はじっくりとネタバレなしで読むのがいいと思います。
国良はどうして脅したのに協力をするのか、大志はどうして松田が好きで国良に相談したのか、さらっと読むとわかりにくいと思うこともあるかもしれません。
読み終わったら、もう一度、言葉や行動の裏を確認するために再読したくなります。これはやっぱりそういうことだよね、と二度目はニヤニヤしながら読みました。
初恋、片想い、理想の相手、思春期の男子たちの不安定で臆病な揺れる想いがよく表現されている物語でした。
タイトルの「髪と罅」罅はひびなんですね。読めなかったので調べました。
髪と罅に象徴される国良と大志のふたりの恋する想いと年月と努力に友情がぐちゃぐちゃになっているのを感じて、爽やかなアオハルじゃないけど、やっぱり青春だなと思いました。
切なくて優しい物語になっています。
ほぼ登場人物はふたりだけです。少し過去の話も出てきますが、ふたりの一年間がゆっくりと語られています。その為、物足りない感じもなく満足の一冊になっています。