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表題作苛烈な王の予期せぬ初恋

ファリド・ル=サザール
28歳、新王
ライリ・バンダーク
20歳、前王の寵童

あらすじ

清廉潔白な苛烈な王×前王の寵童と誤解されている美貌の青年

美貌の元寵童ライリは前王の墓守りとして暮らしていたが、密かに慕っていた新王ファリドと再会し、書見の塔の仕事を与えられる。一方、ファリドは厳格な性格故に臣下から恐れられ、玉座の孤独に倦んでいた。だが、ライリの思慮深い人柄に接して、前王と享楽に耽っていたという噂が誤りだと気づき、居心地の良さを覚えて惹かれるようになる。しかし、ライリが前王を愛していると勘違いし、思いを告げることができずにいた。そんな中、前王の遺産を巡る陰謀が王宮で蠢きだし…?

作品情報

作品名
苛烈な王の予期せぬ初恋
著者
佐竹笙 
イラスト
森原八鹿 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川ルビー文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784041155554
4

(46)

(17)

萌々

(18)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
13
得点
183
評価数
46
平均
4 / 5
神率
37%

レビュー投稿数13

描写のバランスが難しい

前王の寵童と、国のためにと立ち上がり新たに王座についた者。
そもそもの始まりが始まりでしたから、ややシリアスなトーンで進む物語。
序盤〜中盤は甘みも少ないはずなのですが、なぜか彼らが語らう空間には心地が良い空気が漂っているという…
不思議な読み心地の良さがとても好みでした。

お互いに誤解をしたぎこちのない状態の2人が、少しずつ会話を重ねて手探りで交流を深めていきます。
派手さはありませんし、わっと心が浮き立つ展開にもすぐにはなりません。
ただ、この地道な交流の積み重ねがすごく良かったです。
まず一言言葉を交わすところから始まり、二言、三言、やがてそれ以上となっていく。
距離が近づくに連れて、今まで気がついていなかった相手の一面や好ましいところをひとつ、またひとつと見つける姿はまるで自分しか知らない小さな宝探しのよう。
本当に丁寧に細かな心の動きが描かれていて好感が持てました。

前王がライリに遺した言葉と財産をめぐる謎解きのような展開にはわくわくとさせられましたし、妄想力がたくましい攻めには笑みが溢れることも。
うーん…全体的におもしろかったのだけれど、ちょっと評価に悩みます。
というのも、どんなテンションで楽しめば良いのかがわからなくなる瞬間が多々ありまして。
彼らが今何を考えているのかが読み手にだけは分かる両視点で描かれているのはうれしい仕様でした。
攻め視点でファリドのかわいらしい一面を描きたかったのも分かりましたし、実際かわいらしくはあったのです。
ですが、シリアスな中に突然ポンと投入されても「今?」となってしまって乗り切れないところも。
どちらかというと、序盤のシリアストーンの中でじっくりと交流を深めていく2人を眺めている時の方が好みだったのかもしれません。
中盤以降のシリアスとコミカルな描写のバランスが難しかったように思います。

1番好ましかったのは、当たり前に自らが抱く側だと思わず、ライリに寄り添って意思を確認するファリドの言動でした。
初手でこの発言ができる攻めってなかなかいないのでは?
細部は良かっただけに、もっと素直に萌えたかったなあ。

0

胸の中で数匹の猫がにゃあにゃあ


胸の中で数匹の猫がにゃあにゃあ

クーデターを起こすために頑張りすぎて初恋にワタワタしてる新王と元王の寵童

前王の寵童だったライリ(受け)はクーデター後前王の墓守をしながらひっそりと暮らしていました。
そこへ現王のファリド(攻め)がやってきて、王宮の書見の塔の仕事を与えられます。
前王に書見の塔の言葉を与えると言う遺言をもらっていたこともあり、目録を作ってのんびりと半ば幽閉生活を送るのですが、なぜかファリドが度々顔を出すのです。
実直すぎて苛烈な性格になってしまい、気楽に話せる相手のいないファリドにとって、構えて話してこないライリは話がしやすいようで、たびたびそこで寝てしまうようになります。
そんな日々の中、書籍整理が進み、前王の残した遺産のあり方がわかるかもしれない手紙が見つかります。


両視点で話が進むので、とても楽しく読めました。
特にファリド視点は初恋にワタワタする姿がとても楽しかったです。

2人の距離が縮まり、一緒に宝探しをしている時はドキドキしたし、より仲良くなろうとして慣れない冗談を言ってライリを凍らせた時には拗れるんじゃないかとハラハラしたし、ライリが前王からは手を出されてなかったことを知らないため色々なことを想像して悶々とするのは笑えました。
初恋にワタワタしたりモヤモヤしたりウズウズしたり色んな感情を「胸の中で数匹の猫がにゃあにゃあ鳴いてるとか引っ掻いてる」と表現するのが、美丈夫なファリドとギャップがありすぎてかわいかったです。
最後の方は猫じゃなく虎にグレードアップしてるし。


のんびりのほほんとしている時は良かってのですが、前王の隠し財産を狙っている前王の従兄弟のゴバードが絡んできて不穏なことになった時は、ハラハラドキドキしました。
用心深いゴバードは尻尾をなかなか出さないし、向こうが仕掛けてきた時は本当にどうなることかと思いました。自業自得な最期を迎え、2人に危機が去ってホッとしました。
これからはライリの元で心身ともに休んでは国王稼業を頑張ってほしいものです。

ただ、前王が何を考えていたのかとても気になりました。
初めはそれほどひどい王ではなかったようなのに、なぜやる気も無くなり、堕落した王になってしまったのか。
処刑される寸前の前王しか描かれていないので、気の毒に思ってしまう気持ちもあったのですが、隠し財産のカラクリの酷さとかやはり悪辣な王だったのだろうか。
死ぬ前の手記のようなものが読みたかったな。

0

ファリドのギャップ萌え?

面白いけど、心に余裕があるときに読んだ方が良い気がした。悪役の気持ち悪さに耐えなきゃいけない時間が結構長い。ファリドのコミカルな心象風景には、それを中和する役割もあったのかな。電子特典SSは癒やし100%だった。

ライリは最初は掴みづらかった。ライリ視点で健気な善い子っぽい心理描写が綴られているものの、感情の動きがよく分からず。ファリドにずけずけ言っているように聞こえるが、内面では怖がっているようで、どういうキャラ?っていう。

だがファリドとの交流が続くうちに、意思を持つ様子が見て取れるようになり、さらには重要な場面で動いてくれる姿が見れて、ぐっと好感度が上がった。こういう受けがとても好き。意思がある、しかもちゃんと仕事してる、貴重な受け。

ファリドは前王を討った男でありながら、恋愛になるとダメダメ。印象的だったのは、前王とライリのプレイを妄想するシーンの長さ。ファリドの想像はどこまでも続き、これに関しては前王は冤罪なので、怒るファリドに笑ってしまった。

悪役のゴバードは、出てくるたびに不快感を連れてくる。ファリドが穏便に事を進めようとするせいか、やり方がまどろっこしく、どんどん策を弄するゴバードの狙い通りの展開に。そして結局自業自得の自滅はあっけなかった。

作中でも“あっけない最期”と書かれてるので、分かったうえでこういう形にした雰囲気。ファリドの手を汚さず、処刑の二度手間もかけず、さくっと退場させた感じ。
全体的に悪役との戦い方には思うところがいろいろあるが、恋愛重視だとこれくらいが良いのかな。

ライリとファリドは、なんだかんだで気付けばばかっぷる一直線。裸のライリを放って部屋から逃げ出すファリドにはさすがにぽかーんとなったが、あっさり仲直りして、初めて同士でムズムズ微笑ましいことをやっていた。
心に猫を飼うファリドのギャップ萌えにハマれたら、とても楽しく読めそうな作品。

0

対局な立場で出会う2人の恋物語

今回は怠惰な前王を廃した新王と前王の寵童のお話です。

前王の寵童だった受様が忠誠を曲解した攻様に連れ出され
宮廷の権力争いに巻き込まれながらも攻様の唯一となるまで。

受様は田舎の貧乏貴族の6人目の男子でしたが
美少女と見紛うほどの美貌ゆえに金に籠った父に
10才で少年好きな貴族に献上されます。

しかしながらその宴席には前王が忍び出来ていて
受様に目を付けた前王に引き取られます。

前王は即位後10年は善王でしたが
次第に国の統治に興味を無くして享楽に耽る様になり
風紀は乱れ、賄賂が蔓延り、
民は重税に苦しむ日々を送っていました。

放蕩を繰り返す前王の治世を終わられたのは
前王の側近の息子だった攻様の挙兵でした。

攻様はの挙兵を知ると前王に追従していた貴族や愛妾は
攻様側に寝返るか、国を逃げだしますが
受様は前王に寄り添う選び、その忠誠によって
攻様より墓守りを命じられて生き延びます。

墓守りは名ばかりの命でしたが
帰る家もない受様は前王の墓の近くに小屋を建てて
前王の傍で暮らしはじめ、3年の月日が流れます。

受様が緩慢な死を受け入れてもいいように思い始めた頃
王としての孤独を感じ始めた攻様が気晴らしで訪れ
ボロボロな受様に見咎められるのです。

攻様は受様が墓守理をしていたことに混乱と驚きを露にし
受様の献身が前王の忠臣に利用されるかも知りないと
「連れ帰る」と宣言するのです。

果たして受様を連れ帰る攻様の真意とは!?
そして受様を持ち受ける未来とは!?

民を顧みない愚王に寵童として愛がられた受様と
愚王を倒して新王となった攻様の恋物語です♪

受様は寵童時代に攻様に助けられたことがあり
密かに憧れを抱いていたのですが

攻様の母は前王に召し上げられて後宮で自死していたため
前王の寵愛を受ける受様は嫌悪の対象でしかなく
受様の想いは胸の中だけで募っていきます。

一方の攻様は新王として前王の悪政を糺し続け
民の暮らしは如実に良くなるものの
その厳しい姿勢は攻様の周りから人を遠ざけることとなり
受様を恐れながらも物怖じしない受様の存在に
いつしか心惹かれていくのです。

本作は受視点と攻視点が交錯して進んでいくため
それぞれの思い込みというか、思い違いの激しさは
第三者視点の読者をニマニマさせてくれます。

この誤解がどうやって解けるのかと思っていたら
前王の遺産と王位簒奪を狙う前王の従弟が絡んできて
攻様が命を狙われる事となりハラハラ&ドキドキMAX!!

受様が攻様の大切な人となる幕引きまで
とても楽しく読ませて頂きました (^-^)/

0

相変わらず上手い!

佐竹笙先生の作品を読むのはこれで4作目になります。と言っても1年以上空いてしまったんですが、実は今作まであらすじに惹かれなかったんです。そして神、神、萌2と続いて今作ではとうとう萌になってしまいました。

でも相変わらず文章も上手いし構成力も間違いなくあるんです。では、何が私に合わなかったかと言うと作品のトーンが私には暗く感じた事でした。読んでて憂鬱になって来て、なかなかページをめくる手が進みませんでした。全体的に緊張感のあるお話だったと思いました。

惜しいのは攻め受け両視点で書かれているのに、すれ違いに萌えられなかった点です。ファリドの可愛らしさを出すのが遅すぎたのではないでしょうか?でも、それでは「苛烈な王」ではないので加減が難しいですね。

終盤の前王の隠し財産を巡る陰謀とか前王の策略とかは面白かったです。欲を言えばファリドがもっと知力に優れていて武力オンリーではないスパダリだったら私の好みだったかもしれません。不器用で口下手な攻めが好きな方には堪らないお話だと思います。

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