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BLを純粋に楽しむというには背景が重めな内容だけど、こんなに読み応えのあるストーリーに出会える機会はそうそうないと思う。
BLを読んでいるのか、ヒューマンドラマを読んでるのか分からないほど、主人公2人の背景描写が緻密。敵との戦闘シーンは本格派そのもので、無傷で生還しないところや仲間が非業の死を遂げたところなど、凄惨な現場であったことが分かるシーン展開には身震いがしました。
とある島に、調査目的で上陸した特殊部隊員たち。人質解放の名目で乗り込む彼らの生死をかけた任務遂行のシーンはとにかく圧巻です。
映像化するなら、主役がブルース・ウィリスやシルベスタ・スタローンでもおかしくないくらいのストーリーの濃さには引き込まれて読み入ってしまったし、そうした情景描写だけじゃなく、心情描写のアプローチもリアルさがとにかくすごい。昔、ベトナム戦争の生き残り兵士たちがPTSDに悩まされている社会問題を取り扱った番組を観たときの記憶が、思わずこの作品とリンクしました。
仲間を失い、生き残ったネイサンの決して消えない心の傷は、この物語の核心です。自分のせいで亡くなった仲間がいて、深手を負った仲間もいる…それなのに自分は異例の昇進をし、英雄と讃えられるやり場のない気持ちが、ネイサンをますます追い詰めます。
世界はこのミステリアスな島がもたらすであろう莫大な資源利益に取り憑かれており、多くの潜入員の命を奪ってきたこともやるせない。多くの国が多くの人員を投入したいるのに未だこの島を奪還できないことが、一体どれだけの命を無駄にすればいいのかと怒りすら湧きます。
この島を奪われまいと抗戦する相手側は、仲間の命を奪ったいわば政敵ですが、相手方にも事情があり、どことなく憎めない感じが怒りの矛先を曖昧にしてしまうんですよね。実に複雑な感情が渦巻きます。
ネイサンはずっと暗闇の中にいてもがき続けています。
ケンカばかりしていた相手・クレイとの関係が、"あの日"を境に少し変わっていき、クレイへの情欲がいつしかネイサンの救いとなっていく展開は見逃せません。
共に生き残った軍人として同じ経験を共有できる相手というのもあるかもしれませんが、いけすかない相手だったクレイを見る目が変わっていくネイサンの気持ちの変化はこの作品におけるBLの土台でしょう。
荒れたネイサンを何も言わずに受け入れたりと、クレイが何を考えてるのかさっぱりなので、彼がネイサンを好きなのかどうかの判断はこの巻ではできません。次巻以降、その辺りが分かってくると良いのですが…
一体この島なんなん?!っていうのが、とにかくミステリー。
この小さな島によって狂わされていく国や人の行く末はどうなっていくのか、ネイサンはもがき苦しみ続ける暗闇から脱することができるのか、答えが早く知りたいです。もちろんクレイとの関係に進展があるのかどうかは一番の気になりどころです。
今のところネイサン視点で話が進んでいますが、後半のIIではクレイ視点もぜひ!