お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
BL小説を読んだのは木原音瀬さんが初めてです。
箱の中から読んで、この作品に辿り着きましたが、BL作品を読んでいてこんなにも陰鬱とした気持ちなるのは初めてな気がします。
語り手である杉本和也は、とにかく粗雑な三浦のことが嫌いで、嫌いだけどあっち行けと突っぱねられないまま、友人関係を続けて、引っ越しをしたことでせっかく縁が切れたのに故郷に戻ってきてまた三浦に捕まって家にまで居座られて、本当に本当に嫌いなんだと、友達の小野寺にも心の中でも訴えておきながら、実は絆されて好きになっちゃうんだろうと読み進める途中までそう思っていました。
ところがページがもう少しで終わると言うのに一向に2人の心の距離が縮まる気配がないまま、話が終わりました。読み終わった後、正直疲労を感じました。最後は杉本のほうがやっと三浦の存在を受け入れつつあるような描写がありましたが、それが恋愛感情なのかどうかは謎です。
三浦のほうも、杉本から同じ気持ちを返してもらえる確信はないのに、ずっと杉本にこだわっています。
それは杉本が車椅子を一緒に押してくれた、自分が困っている時に手を貸してくれた経験がずっと印象づいているからなのかなと思いました。
杉本はどうすれば三浦から逃げられるのか、三浦はどうすれば杉本からまた優しくしてもらえるのか、2人の思いが一向に重なる気配がなく、BL的には読んでいて息が詰まりそうになる作品でした。
それでも2人の関係がどうなるのか気になって最後まで夢中になって読んでしまいました。心の余裕がある時におススメだと思います。
この作品はデビュー前から同人誌で発表されていた続き物だそうで、5年がかりの超大作です。内容もみっちり。
重量感もみっちりなので、読んでて半端なく息苦しくなりました。
最近の木原さんの作品ではあまりお目にかかれない、一人称による話展開。
この一人称がやっかいで、攻の三浦が嫌で嫌で嫌で嫌で嫌でもう仕方がないという和也の気持ちがダイレクトに伝わってきます。
タイトルの嫌な奴ははたして誰なのか。
読めば読むほどドツボにはまりこみ、底なし沼に埋まっていくよう。
出口のない和也の思いと同時に、三浦もきっと出口のない思いにあがていてると知ったのは、物語も最後の最後、2ページ部分で。
それまで徹底的に和也の一人称で通してきた話を、そのラストだけ、三浦視点に切り替えたことで、漸く三浦の考えてることを知ることが出来たんですが、このラストがもう痛すぎてしんどい。
夢も希望もないように思わせるラストの展開のちょっとした部分に、自分の気持ちが変化しはじめている和也を見ることが出来て、そこだけが唯一の救いかもしれません。
ここのレビューを読ませていただいて、ある程度内容を理解してから読んだつもりだったのですが、想像以上にズッシリきました…。
甘さの欠片もなく、鬱々しい気分になる作品です。
なぜならBLという恋愛物語の前提である「愛」の姿が見つけられないから。
愛があるのかもしれないけど、とても見えにくく、物語中で明確に示されることはありません。
主人公の和也は子供時代、嫌いなクラスメイト・三浦になぜか気に入られ、付きまとわれる。
和也はそれを正面から拒否することができずに親友のふりを続ける。
三浦は乱暴で自己中心的で、たしかに嫌な奴です。
でも和也にも癖がある。偽善的でプライドが高く、傷つきたくない。
だから三浦を嫌いながらも学生時代は良い友人を演じ続け、社会人になってからは嫌悪感を露わにしつつも決定的に縁を切ることができない。
結果的につけ込む隙を与える。期待させる。
三浦が嫌な奴なら、和也はズルい奴です。
和也が逃げられないのは三浦だけのせいではなく、和也自身の「自分可愛さ」が枷になっているんです。
一方で病的なほど和也に執着する三浦。
和也に嫌われていると自覚していても、離れることができないほど自分を突き動かす衝動。
その正体を、三浦自身も知りません。
「お前は俺に会わないほうがよかったんだろうな」
「俺もお前に会わないほうがよかったんだろうな」
三浦のこの台詞が刺さりました。
何かただならぬもので縛り付けられている二人。
それを愛と呼べるのか甚だ疑問だし、運命と呼べるほど無意識的なものでもない。
明確な答えは出ないまま、絶望と希望の両方をちらつかせながら物語は終わります。
結論はきっと読者次第です。
残念ながら私にはまだ答えが出せません。色々な可能性が想像できます。
二人を雁字搦めにする何とも呼びがたいものに、ゾクッとするようなときめきも感じました。
私が前回読んだ木原作品が「POLLINATION」で、そっちはストーリーも全然違うしこの作品よりずっと救いがあるんですが、読後感は似ている気がしました。
「うっとり」とは違う、問いを投げかけられたような独特の感覚が残るんです。
木原先生の作風なのかな。挑戦的で私は好きです。
こういう物語を書ける作家さんがいるということが感慨深い。
ますますファンになりました。
読了後、ああ・・・今、体調が良くてよかった~と思うばかりでした。
ダメージはありましたが、体が元気だからこれぐらいで済んだ気がします。
この作品の痛さったらないですよ。
これか、木原作品が痛いっての。え?まだまだ?
親の都合で田舎に引っ越した和也は、転校先の小学校で出会った三浦のことを、最初からひどく嫌う。
実際三浦は乱暴で自分本位な、よくいる悪がきなんですけどもね、そんな三浦になぜか気に入られた和也は、そのままずっと高校を卒業するまで懐かれ、つきまとわれます。
でも、そんな羽目になったのは、和也がいい顔したいがばっかりに、きっぱりと拒絶しないから。
結局三浦には告げず、唐突に引っ越して音信不通にしてしまったり、そのくせ友人に頼まれて、またいい顔したくて、会いたくもないのに三浦に会いに行ったり・・・
嫌な奴はいったいどっちさ?と、思わずにはいられませんでした。
多分そう思わせるように書かれているんだろうな。
結局、両者共に複雑な家庭環境で育ったせいもあってか、性格がどこか歪。どっちもどっち。これをBLと言えるのか。
古い作品を読めば読むほど、当時どういう風に受け取られたのかと気になってしまいます。
最後は読み手によって、ハッピーエンドにも取れるかもしれませんが、私には希望の光が全然見えなかったなあ。酷い話です。
三浦が善人だったら、読んだことを後悔したかもしれません。この扱いはほんと可哀相ですけどね、やっぱし三浦も嫌な奴なので、まるっきりは同情できず。
その辺の按配がお上手なんですな~。
国枝さんのイラストが見事に嵌っていたことで、さらに総合点が上がった感じです。
世の中、どーーーーしても気に食わない奴っていうのはいるもんです。
そういえば、ワタクシにも学生時代、どーーーしても気に食わない奴がいたなぁ…。
しかも、結構しつこくつきまとわれていた。
まぁ、ワタクシの場合、大学を卒業したら、その後、音沙汰ないけどね。
これは、大学4年間どころの騒ぎじゃない、それこそ小学生の頃からずっとずっと、嫌いな奴に追い掛け回される不幸な男の物語。
んんー、わかるよ~~~~、もうね、同じ空気吸ってるのも嫌って感覚。
追いかける三浦は執念というか病的です。
しかし、ヘラヘラと表面を取り繕いながらも嫌だと逃げまくる和也も執念。
自分なら、どこかで折れるでしょうね。
この二人、どこがボタンの掛け違いで追う→逃げるの無限ループをたどっているなぁ…とは思っていたんだが、それが大きく崩壊するのが後半。
要するにね、ちゃんとコクってないからでしょうが!といいたくなるんですが、
もうここまで来ると、コクろうが何しようが逃げる側は意地で逃げようとするわけです。
そうなると、それまで和也側の視点に立っていたのが、逆になにも与えようとしない和也を非難したい気になってくるから不思議。
だいたい、なんでそこまで三浦を避けるのか小一時間問い詰めたい気になる。
ラストは、唯一の三浦視点から書かれているわけですが、切ないというよりも、立場の逆転を予感させます。
ハッピーエンドには到底見えない、しかし、ここからが本当の二人の始まりを暗示させるラストが眩しい。