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数年前、美しい野菜①がピンとこなくてそのままだったのですが、今回松本先生作品をまとめて読もうと思いまして。
て、本作が初BL単行本ということにビックリしました。
もう、序盤、中盤、ラスト…つまり全部、ストーリー作り、漫画が上手すぎる!!(プロの方に失礼だけど)
セリフ少なく絵で読ませるのも好きだし、冒頭から引き込まれる作りが、力量なくしてできない技!とど素人が生意気ながらしびれました。
孤独な子同士がお互いを支えにするようになった、と言ってしまうとそれまでだけど。
その過程、見せ方がすばらしい。
ちょっと私の頭では言葉にできないですすみませんいつものことですが(涙)
一之瀬の目が大きすぎるのが、普通なら私は苦手な範囲なのですが、そうじゃなかった。
かわいいもの。
彼の性格、気持ちが目に表れている。
松原がいじめるのが好きと言っていたのが怖かったんですが(苦手)それは彼の家庭環境などからくるものだとわかり。
一之瀬のことを「怖い」と何度か言うのが、どんどん本気になっていって。
「俺はおまえなんかいなくても生きていける」「生きていける…」
は、そうじゃなくなっていることが怖くなっての言葉で。
そんな松原が素直に気持ちを吐露する場面は泣きそうになりました。
「お前の隣で寝なきゃよかった」
「お前が俺の頬をなでなきゃよかった」
「お前がキスしたいとか言わなきゃよかった」
「お前が…」
海辺で、初めて照れ顔になる。エモすぎ(涙)
「自白する犯罪者ってこういう気持ちなんだろうな」
が松原の気持ちがわかる!となったし、先生上手い!!となりました。
これラストどうなるの?メリバもありえる?とドキドキしたんですが、ハピエンでよかった〜。
でも、彼らの将来は大丈夫だろうかといらぬ心配をしたらば、ちゃんと描いて下さってて。
「2匹の伴侶」で大人の2人が同棲して何年も経っててらぶらぶで。2人とも安定しているみたいで(涙)
一之瀬母もしあわせそうでよかったよかった。
先生の作品どれも好きですが、神作品と思ったのはこちら。この表紙からこの話が出てくるとは浅はかな自分には想像もできませんでした。傷を抱えた少年(二人ともガチで大変な境遇)が癒しあう話といえばベタだし、こういうテーマの作品はよくあると思うのですが感動しました。誰もが抱える心の隙間を静かに丁寧に埋めてくれるような感じと言いましょうか、癒されました。幸せの真髄をサラリと嫌味なく伝えてくれる。エッチもいい・・だんだん松原くんが一之瀬くんに包まれていく感じが伝わってきて癒されました。
あとがきに書かれている松原の「いじわるでよわむし」ってのがまさにです。松本先生は冷静だ。
家庭に問題がある少年と少年の逃避行作品です。松原が徹底的なクズかと思いきや…序盤は徹底的なクズなんですけどね…きちんと救いを持たせる終わり方に安心する。色んな作家さんが描き、色んな帰着点をもつ逃避行作品ですけど、割と王道ながら松本先生の味がしっかりある1冊です。
松原が一之瀬を好きだと認められたこと、家に帰った一之瀬の身に起きた事件に対して、一ノ瀬が松原に助けを求めることができ、また松原がすぐに一之瀬を助けにいけたこと…これが逃避行によって得られたものだなと感じられる、良い構成でした。必要な時間だったんだ。
彼らが落ちきらなかったことがわかる「2匹の伴侶」も素敵です。彼らが松原のアパートの一階の男女のようになる可能性だってあるわけで、それが会計士と花屋のアルバイトとして生きていられることの尊さよ。
塾のアルバイトのドライさが、私は好きです。
表紙のイメージを裏切るような、なかなか重たいストーリーでした。ただし、読後に負の感情を引きずることはなく、どこかすっきりした気分になるような、不思議な作品でした。序盤で、秀才だけどぼっちの一之瀬の好意を利用して、彼を性処理道具のように扱い始める松原。俺様な劣等生と気の弱い優等生の、ちょっと痛い系の恋愛が始まるのかと思いきや、意外にも2人の関係性は早い段階で変化していきます。松原が一之瀬を自宅に招いた時から、2人はお互いの家庭環境など、普通他人には見せたくないと思うようなことを自然と共有する仲になっていくのです。
父親に放任され、食べるものもなく、いつアパートを追い出されるか分からない松原。離婚してから精神を病んだ母親の、許容できる範囲の中でしか生きられなかった一之瀬。そんな環境に不平不満を並べたっておかしくないのに、2人ともそれらに対する愚痴や不安はほとんど口にしない。諦めて受け入れているからでしょうか。父親や母親への情が残っているからでしょうか。私には、子供の自分達にはどうせ足掻いたって何も解決できやしない、と2人が悟っているように見えました。
確かに子供のできることなんてたかが知れている。でも、そんな2人が恋愛をして、この閉塞感溢れる生活から一瞬でも抜け出して、何でもできそう、どこへでも行けそうな気がすると思えたこと。2人の人生の中でかけがえのない経験になったんじゃないでしょうか。一之瀬が母親と対峙した時彼女を押し退けられたのは、松原という好きな人の存在が大きかったんじゃないかと思います。以前の彼なら抵抗しなかったような気もするんです。松原も動転せずに冷静に一之瀬に寄り添えたのは、同じく一之瀬に恋をしたからなんだと思います。閉ざされていた世界からようやく出てこれた子供達。若者らしく、これから恋愛を存分に楽しんで欲しいですね。
B L初コミックスなんですね!
すばらしいです!!
お互いに親に恵まれない、松原と一之瀬。
いつも、熱っぽい目で自分を見ている一之瀬に苛立ちを感じる松原。
半ば無理やり告白させ、セフレ状態に。
松原のためなら、時間もお金も全てを投げ出す一之瀬。
そんな一之瀬を怖いという松原だが、おそらく一之瀬に見捨てられることに怯えているのだろうと思う。
お互い、親の愛に飢えている。
依存しあい、惹かれあっていく。
一之瀬が何故松原を好きなのかは分からないが、松原が一之瀬に惹かれていくのは分かります。
無償の愛情なのでしょう…
でも、松原はキチンと一之瀬の気持ちに応えます。
そして、大人になった2人の幸せそうな姿も描かれています。
それがとても嬉しかった。
危うく脆い2人が、ずっと一緒にいられたという事が分かって良かったと心底思いました。
シリアスだし痛い部分もあるけど、なんて清々しい読後なんでしょう。