眠る兎

nemuru usagi

眠る兎
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神31
  • 萌×222
  • 萌21
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
28
得点
307
評価数
77
平均
4 / 5
神率
40.3%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
車折まゆ 
媒体
BL小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
価格
¥552(税抜)  ¥596(税込)
ISBN
9784344816367

あらすじ

冗談で書いた手紙をきっかけに、高校生の浩一は年上の男と付き合うことになってしまった。お互いに嘘で固めた付き合いだったが……。
出版社より

表題作眠る兎

里見浩一・高校二年生
高橋誠人・高校教師

同時収録作品春の嵐

志田訓章・サラリーマン
柿本高志・サラリーマン

その他の収録作品

  • 冬の日

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レビュー投稿数28

私的に理想的カップル。

すごく面白かった。

何より登場人物がとても魅力的でした。遠藤という女子は嫌な女子って感じですが、それもまたリアル。

遠藤さんはもともと里見をちょっと気にしていたんでしょう。だから待ち合わせ場所に見に行きたいという口実を作って自分に気がある風である事を確かめていたのではないかと思いました。
柿本は里見に対して、高橋の初恋の一ノ瀬と同じ様な気持ちを持っていたのではないかと思います。
無自覚のようですけど。

確かに人をからかうような事はしてはいけないんですが、里見は高橋の脆いところと自分への好意を表す姿、そして同世代とは違う世界にどんどん嵌っていってしまう。
里見は根がとても思いやり深い男だと思います。でなければ、突き放してしまったと思います。
罪悪感だけでは高橋に惹かれることは無かったはず。
そして、とても優しく包容力のある人だと思いました。
里見は高橋が自分の事をとても好きな事が解っていたから、何とか引き留めようとしたのだと思うし、この人を守るために強くなりたいだなんてすごい覚悟だと思います。
音楽室でも高橋の本音を言わせてあげる為にあえて酷い事を言ったように思えました。
もともとそういう気質の里見だからこそ8年後の大人の里見が本当に素敵な大人の男になったんだと思います。

高橋が里見が自分の高校の生徒だと知った時のショックは大きかったと思います。ただでさえ、ゲイである事に負い目を感じていて、初恋の友人が結婚した事を知って一生一人じゃないかと寂しい気持ちだったところ知り合えた好きで好きでたまらない恋人が年齢を偽っていておまけに自分の事を知っていたなんて分ったら騙されたような気にもなったと思います。ここで救いは里見が本当に高橋を好きだった事。
それをちゃんと里見が(ちょっと手段は強引すぎますけど)伝えた事、そしてそれを高橋が信じた事。

柿本に音楽準備室に2人で監禁されてその時の高橋可愛すぎます。
「好き」「あんな子供に君を渡したくない」
このちょっとの素直さが相手の心を救うんですよね。
そうして自分自身も救われるんだと思います。

誰かと共に幸せになるというのは、お互いが共に生きる覚悟が必要なのだと思いました。
男女でももちろんそうですけど、男同士ともなればなおのことです。
高橋も里見もその8年後も共に居てお互いを大切に思い共に生きる覚悟ができていました。
もちろん里見だけでなく高橋も強くなっていました。
人を愛する事で強くなる。とても素晴らしい二人でした。すごく好きな二人です。

みなさんのレビューを見て知りました。これがデビュー作だなんて知らなかった。
びっくりです。

ただひとつ、挿絵がイメージと合わない。里見がえらいおっさんぽくて。
高橋先生に色気がないです。
あくまで、私個人の感想です。

0

切なく甘い余韻

ノンケの高校生・浩一がゲイの高校教師・高橋に惹かれていく心の動きが繊細に自然に描かれていて、とても共感しました。
初めて会った別れ際には地味で内気な高橋の中に思いやりを感じ、二度目は自分とは違う視点でものを見る面白さを感じ、三度目は手に触れたくなって指先だけ握り合い、四度目は怒る高橋に自分への好意を感じて恋心に火がついて。
携帯で気軽にやり取りできない時代だったからこそ、一人で悩んだり、余計に会いたい気持ちが募ったり。会わないと相手を知ることができない。会う時の想いの密度が、とても濃いように感じました。

浩一が同じ高校の生徒と知ってからの高橋の逃げる態度が極端で、タイトルの兎から脱兎のごとく…という言葉を思い出すほどでした。どうしようもなく臆病で弱いけれど、だから浩一は守ってあげたくなるのでしょうね。最後は浩一の親友・柿本の計らいで仲直りできましたが、柿本は二人の生々しい姿を見せられて気の毒でした。

八年後の話「冬日」。高橋は帰省した折、中学時代の想い人で親友だった一ノ瀬と地元で再会します。
片思いが辛くて黙って去った高橋に一ノ瀬が傷つきずっとこだわっていたことを知り、高橋は自分がゲイであること、一ノ瀬を好きだったことを告白します。
その告白の場面よりも、別れ際、一ノ瀬が高橋を抱きしめてキスしたことに、胸が熱くなりました。離婚し、恋愛感情なんて5年くらいしか持たないものだと投げやりに考えていた一ノ瀬にとって、一途な高橋がかつて自分を何年も好きだったことは、温かく胸に沁みたことでしょう。それに、一ノ瀬にとって高橋は、ほかの子と仲良くしてほしくないと思うほどに、特別だったわけで。限りなく恋に近かったのだと、高橋の告白で気づいたのではないでしょうか。一瞬だけ、淡い恋心が一ノ瀬の中にも芽生えたから、高橋に口づけたような気がします。

「春の嵐」は、浩一の親友・柿本の話。浩一と高橋の何年も続く熱愛ぶりにあてられた柿本は、情熱とはどんなものなのか知りたくなって、自分に想いを寄せるゲイの同僚と好奇心で寝てしまいます。頭が良くて切れ者の柿本が、おかしな行動に走った挙句に隠れていた欲望を引き出されてしまい、戸惑うさまが面白いです。恋愛初心者の柿本がどんなふうに変わっていくのか。きっと恋に発展するのでしょうね。

恋の切なく甘い余韻が残る作品でした。

2

この良作が雑誌のデビュー作とは ε-(。・∀・。)ノ...サスガ

私はハマるととことん嵌るタイプ。ゆえに作家買いは、一旦中止するつもりでおりました。もっと沢山の作家先生のいろんな作品に触れたい、そう思い、この一年は何とか乱読に成功しつつありました。ところがここに来てとうとう木原作品にのめり込み、元の木阿弥です。元来、好きな作家先生には傾倒するタチ。ただ今木原作品に夢中で、ちょっと止まらない勢い c(´ー`*)

本作品は木原音瀬先生のデビュー作品(1995年)だそうです。したがって今よりももっとゲイにとっては周囲の目が厳しかった頃の、またケータイもあまり普及していなかった頃の、先生(受)と生徒(攻)のお話。ということで大変楽しみに手に取りました。

目次
・眠る兎(攻め視点)
・冬日(受け視点)
・春の嵐(攻めの親友:柿本視点)

あらすじ
クラスメイトが駅で拾ったゲイ雑誌。みんなで面白半分に鑑賞。文通募集にノリで手紙を書いた里見(攻)。冗談のつもりが「会いたい。待っています」と返事が届きます。親友の柿本に「関わるな」と諭され、無視するつもりでいました。が、まさかの展開でつきあいが始まります。その男は、里見(攻)の通う学校教師の高橋(受)。お互い素性を隠したまま会ううちにだんだんと惹かれ合い…。

面白かったです。とっても可愛らしいお話です。切なく、ちょっぴり泣けますが、痛みはさほどなく、あるとすれば甘酸っぱい痛みでしょうか。「木原作品は痛いから嫌」と敬遠されている方にもお勧めです。

ノンケの里見(攻)が徐々に高橋(受)に惹かれ始め、ゲイになっていく過程の心の動きが、実に丁寧かつ丹念に描かれ、思わず「上手いなぁ…」と呟いてしまいます。最初のうち里見(攻)は、クラスメイトの女性に気がある風でしたが、高橋(受)と付き合い始めてからは全く見向きもしなくなりました。よって女性の描写に抵抗のある方も難なく読めると思います。

里見(攻)は最初から、高橋(受)が職業や名前を偽っていることを知っていました。ところが高橋(受)の方は、里見(攻)が社会人だと思い込んでおり、かつ5歳差を嘆いていました。本当は5歳差どころか10歳差なのに。それゆえ里見(攻)は本当のことが言えませんでした。嫌われたくない一心で。

でもバレてしまうんですねぇ。かくして亀裂が生じました。やっぱり教師と言う立場上、同じ学校の生徒に手を付けたとなると問題ですもんねぇ。ただ問題はそれだけではなく、高橋(受)の自信のない落ち込みやすい性格にもあり、ゲイである高橋(受)をからかい、弄んだと勘違いします。怒り、里見(攻)を拒絶します。

でも里見(攻)は、「本当に」高橋(受)を好きになっていました。すれ違いラブです。若さゆえに里見(攻)は、嫌がる高橋(受)を組み伏せ強引に体を重ねます。この後、いよいよタイトルの「眠る兎」の意味が分かる記述が。
「男はシーツにしがみついて、鼻を啜る。泣きすぎて腫れあがった瞼は真っ赤で、まるで兎が眠っているみたいだった」
そうです!眠る兎とは高橋(受)のことでした。このようにタイトルの意味を探るのも小説を読む上での醍醐味。

仲直りのSEXって言うのはよくあることですが、この場合の高橋(受)には効力がなく、二人は衝突したまま。ハラハラしつつも、最後はハピエンでした。ちょっぴり短かく物足りなかったけど、ご安心ください。まだまだ続きがあります。

高橋(受)視点の「冬日」。8年後のお話ですが、地元に帰省、昔好きだった親友に偶然会った際、カミングアウトをするシーンが良かったです。ゲイだったこと、好きだったこと、苦しくって逃げ出したこと。ノスタルジーを感じました。涙がホロリ。もう一つ、養子縁組をして家族になろうという辺り、目頭が熱くなりました。

最後の里見(攻)の親友、柿本視点の「春の嵐」も面白かったです。最初は、里見(攻)と高橋(受)を柿本の視点で語る恋のお話でした。ところが後半、里見(攻)以上にノンケ中のノンケと思っていた柿本が、後輩の志田に想いを寄せられ陥落。とうとう自身がゲイの道に。あんなに親友と先生の関係を気持ち悪いと思っていたのに…。でも意外と萌えました。何ならもっとずっとこの二人のお話を読み続けたいと思うくらい、本当に楽しかったです。

3

ずっと一緒に

私にとっては木原作品で唯一、学校が舞台で主人公の一人が高校生という珍しい作品です。ものすごく奇を衒った設定ではないし、なんと!鬼畜も人でなしもダメ男も出てきません。ひたすら切なさが心に残る優しいお話…と書くと物足りない印象を受けそうですが、何度読んでもドキドキして面白いと感じます。木原作品は色々読んだつもりでも、一周回ってこういうニュートラルなお話でも面白いというのは新鮮な驚きでした。

表題作では17歳の里見と27歳の高橋の、出会いから恋人になるまでが描かれています。落ちるはずのなかった恋に夢中になる里見が、青臭くてバカで真っ直ぐで、とても愛おしくなりました。高橋みたいに臆病な男には里見ぐらいの強引さが必要なのでしょう。

後日談に当たる「冬日」は一転して高橋の視点で、表題作から8年後の2人が描かれています。大袈裟ではなく、このお話には感動しました。二人の人生のターニングポイントになる日の出来事が淡々と描かれていて、そこには間違いなく二人の人生の時間の流れが感じられて、幸せだなぁ良かったなぁと心から思いました。

さらに2年後を舞台にした書き下ろし「春の嵐」は、里見の幼馴染である柿本の視点で描かれています。主人公以外のキャラクターの視点で進むお話が結構好きなので途中まで楽しく読んでいたのですが…うーん…柿本までそうなるのか、と。個人的には志田とのお話はなんだか余計だったような気がしなくもないような。でも、続きが気になります(正直者)。

3

王道デビュー作

作家さまによるとおそらくデビュー作品。どれがデビュー作だかわからないということは、それまで相当書かれていらっしゃる証拠なのでしょうね。だからか完成度が高いのかもしれません。高校教師と生徒の王道設定。時代もまだケータイが出回っていない頃、出会いのきっかけがゲイ雑誌の恋人募集欄という…。とてつもなく懐かしいんですけど、ストーリーは今でも通用するというか、BLの部分は時代を問わないので全く気になりませんでした。その時代を通って来てますので。。

王道でも引き込まれるのは、キャラクターがツボだから。先生受けが好きでして、この高橋がいじらしくて色っぽいんですよ。相手に不当な仕打ちをされて毅然とNOを突きつけながら、本当は好きすぎて拒否できないの。高橋のほうが大人なのにね。それを浩一も見抜いています。浩一は性欲が旺盛な年頃ゆえまだ指向は定まっておらず、初めて芽生えた自分の感情に戸惑いながら高橋との関係にハマっていった感が強いですが、一途に高橋を求め、彼への思いを少しずつ自覚していく姿が丁寧に描かれていきます。恋愛心理を描くのが上手い。ハイライトは高橋が校舎の階段で落としたチョークケースを浩一が拾うシーン。わたしの中のM要素が疼きました。。。

木原先生が描かれるふつーに甘いえっちシーンにお目にかかれて萌え萌えです。これまで読んできた作品が緊迫状態にある中で致すものが多かったので、新鮮すぎて色々と何かを催してしまうところでした。おほほ。

まだゲイをカムアウトすることが憚られる時代。年の差。忘れられない初恋。親友の存在。そして二人で生きて行くために必要なこととは…。二人の出会いから一緒になるまでの道程を、王道ど真ん中でしっかりと萌えさせていただきました。

2

時代を感じる媒体

不器用で卑屈で人間の負の部分を全面に押し出した受が登場。
嘘で塗り固められた恋の始まりは、今ではなかなか見ることの出来ない出会い方。
好きになる程に嘘が苦しくなり、5歳年下の攻に年齢差で不安を感じてた所に、じつは5歳じゃなくて10歳も年下でした。
しかもアンタが勤めてる高校の生徒でした。
という、体裁を気にしすぎる真面目な受にはもう衝撃の事実。

はじめは面白半分だった攻も、あまりにも純粋で真面目な受にほだされ、ノンケだったのに惚れていく様が、本当に自然に書かれてます。
気がつけば、心ごと持っていかれる恋になっていて驚きました。
良識的で体裁を気にして、大人な自分を理性的に捉えようとする受が、攻を前に完全にそういった壁を崩して、

『あんな子供に、君を渡したくない』

というのは最大の萌え。
萌えすぎて死ぬかと思った!!
木原作品導入には痛み成分が少ないのでオススメです。

3

浩一の成長具合を愛でる!

レビューの為に再読。
展開がわかってても、やっぱり面白い!
『眠る兎』、その8年後の『冬日』、そのさらに2年後の『春の嵐』が収録されています。
この話の見所は、ズバリ、攻めの浩一の成長具合!
最初は、人に流される優柔不断のどうしようもないオコチャマなのですが、受けの高橋と付き合う内に、良い男に成長していきます。
色んな決断をして、着々と進んでいく姿は本当に男らしい!
でも、適度に甘えん坊な所もちゃんとある!
浩一、よくぞ、ここまで育ったわ♪

スピンオフの『春の嵐』もいい!
これの見所は、柿本の人間臭さ!
ソツなく人生の階段を計画通りに進んで行くタイプに見えて、実は方向音痴で途中で方向がわからなくなって途方に暮れる的な……

両方とも毒や癖がなくて、安心して読める作品です!

3

純な兎

興味本意で会いに行ったゲイの男の、意外なほど純粋な想いに冗談だったと言えなくなってしまう高校生。
私もこの受け様の純情さを応援したくなってしまい、ページをめくる手がとまりませんでした。この受け様、年上なのにかわいいんです。攻めがだんだん惹かれていくんですが、それが自然に思えます。
一番のお気に入りのシーンはやっぱり最後の音楽準備室での友人鉢合わせのシーンですね。受け様の行動がとてもかわいいですし、それを突っぱねない攻め様も男前です。
何より友人のコミカルな反応がw
この友人のスピンオフが同時収録されてますが、これもまた美味しいのです。

2

大人しい受の嫉妬深さ

高校教師(受)とノンケ高校生(攻)がゲイ雑誌の掲示板を通じて出会い、恋に落ちます。

個人的な見所は、受が意図的に攻とのセックスを攻の友人に見せつけるシーン。

「いい大人が、身体を使って牽制する」
↑これ、嫉妬深い攻や当て馬にはありがちなアクションですが、受はほとんどやらない気がします。できてもキスマーク程度。

ヤキモチという可愛い言葉では片付けられないドロドロした粘着質の嫉妬心に萌えます。

嫉妬する受というと、崎谷はるひ先生の「ヒマワリのコトバ ― チュウイ」や橘紅緒先生の「私立櫻丘学園高等寮」シリーズの一作目と三作目が印象的です。
怖いくらい嫉妬深い受さん、もっと増えないかなー

0

嘘から出た真

初出が90年代なんですね。
パソコンも携帯も高校生が当たり前に使っていなかった時代のお話。
始まりが出逢い系サイトではなくゲイ雑誌の文通募集というあたりが時代を感じさせますが、二人が出会ってからだんだん惹かれていく過程や友人たちの反応など読んでいくと引き込まれていき古さを感じない作品でした。

クラスメートの遠藤さんがすごく嫌な女を演じてくれました。
手紙を書いて見ようと言い出し(冗談でも書いた里見もバカですけど)実際郵送するし、「本物が見てみたい」というまじめに出会いを求めているかもしれないひとを弄ぶようなことを唆す。
ま、それも実は里見君が好きな乙女心で気を引きたかったようですが。
その頃里見君も本当は遠藤さんに好意を持っていてデート気分でいいなと思ってのですから、どちらかが素直に告白したいてたらあのいたずらはないし、先生は無駄に傷つけられることはなかったけど、その後の結びつきもありませんでしたね。
つまりある意味キューピット役をしていたと言えなくはないんです。
そんなお馬鹿な高校生たちが考えなしにしたいたずらが人生を変えることなったわけです。
それにしてもお互い本気の恋愛も躰の関係も初めての相手で伴侶となって家庭を築くとは理想的なカップルです。

その後の短編『冬日』は穏やかないい話でした。
本編から8年後。
中学時代に好きだったし友人一之瀬に再会し、好きだったからそばにいるのが辛くて逃げだした気持ちを口にできたことでようやくその頃から引きずっていた重荷が消えてよかったです。
急に音信が途絶えてしまことで嫌われたと思っていた友人にとっても心にわだかまっていた過去だったのでお互いにこれからはいい友人関係が再開できるのではないかと思う。
結婚してこれで愛情を独り占めできたと安心して5年後に離婚した一之瀬と、いつか無くすかもしれないと怯えながら無くさない努力をしていた高橋たちのカップルの差が性別にかかわらず長続きするしないの違いじゃないかのかという点とカップル5年サイクル説は考えさせられました。

里見の親友 柿本君は「人の真剣な気持ちを笑うな」と言ってくれたり最後はすれ違ってしまった二人の仲を取り持ってくれたいい友達です。
文庫化で書き下ろされた短編『春の嵐』では、本編から10年ほどたっていて自身も後輩との関係に悩める社会人になっていました。親友のゲイカップルを見ていて何故長続きするのだろうとか何で男同士で付き合えるのかとかどこがいいのかとずっと気になっていたんですね。
そして自分のことが好きらしい後輩が海外転勤する前日についに興味本位に体の関係を持ってしまうのですが、それって10年前に目撃してしまった彼らの仲直りセックスシーンを目撃してしまったトラウマのようです。
生まれたときからの付き合いの幼馴染が養子縁組までしてつながりを深めたいと言い出したことにショックを感じた、というのですがLoveまではいかないまでも友情以上の好きな気持ちがあったんじゃないかなと思いました。
里見が年上の同性に執着心を持ったと知ったときや、高橋を失うかもしれないと思った時の落ち込みぶりを見たとき以上に、いずれは別れるだろうと思っていたのに養子縁組したいという本気を見せられたとき訳も回らず動揺してしまったんだと思います。
そこに付け込んだのか利用されたのだかわかりませんが都合よくいた後輩君と寝てみるという若気の至り(という年齢かどうか微妙ですけど)に行きついたような気がしました。
このあとは、後輩君の執着心と手管しだいというところでしょうが一筋縄ではいかないでしょうね。

イラストの車折まゆさんの絵はちょっと好みではありませんでした。
高校二年の里見くんがアラサーの疲れたサラリーマンに見えて仕方がなかったし、高橋先生は野暮ったい国語教師というより勉強だけはできる要領の悪そうなクラスメートのようでカバー絵ではそっちがどっちかわかりませんでした。
凪良ゆうさんの『全ての恋は病から』の時にはあまり感じなかったのでたまたまだと思いますが。

木原さんの作品は監禁されたり凌辱されたりと心身ともに痛くて救いのない話が苦手なのと重くて深く考えさせられる内容が多いのでおいそれと手を出せないのですが、このデビュー作は木原さん初心者にも読みやすいものだと思います。

3

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