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目覚めるのも眠りにつくのも、君のそばで。
ナルコレプシーという脳疾患を抱えた少年が主人公です。高井戸あけみさんイラスト(凄くレア)の持つ雰囲気も手伝って、痛々しいほど透明感のある作品でした。
突然眠ってしまう主人公・倉知と、精神的な理由で不眠症に陥っている上木原。対照的な二人はある部分では依存し合い、ある部分では探り合って牽制し合うような不思議な関係です。上木原にはずっと心に秘めている感情があるのですが、物語はあくまでも淡々と進んで行きます。
こういう風に思うことはあまりないのですが、この作品は実写化に向いている気がします。二人は思春期らしい平凡さと繊細さを持っている青少年で、続いていく日常のある日、ある季節、二人の運命が絡み合うような静かな展開が印象的でした。
おとぎ話ではありません(^^)
おとぎ話風にレビューしてみました。
幼い頃に心に傷を負って不眠症になった王子様は、同じく幼い頃に心に傷を負い睡眠障害(ナルコレプシー)のお姫様に出会います
王子様は、お姫様に惹かれますが、自分の心を隠してお姫様に尽くします。
しかし、あるときお姫様がつらい事件に巻き込まれ…
そして、自分の気持ちをお姫様に気づかれた王子様は…
お姫様に押し倒されるのです。めでたしめでたし…
本篇は、おとぎ話ではなく現代の話です。
ナルコレプシーの倉知(受)と不眠症の上木原(攻)は共に高校生です。
お互いに幼い頃に心に傷を負ったけれど、眠くなる倉知と眠れない上木原の病は正反対の睡眠障害です。
子供の頃に受けた傷は本当につらいものですね
でも、2人はそれを受け止めながら前に進もうとしています。
そして話を読んでいると、前に進むためには2人でいることが必要な気がしてきます。
上木原が倉知に幼い頃の辛い出来事を打ち明けた時に、倉知が、
「喬、辛かったな」と言います。
私には、上木原がその言葉で少し救われた気がしました
上木原は、倉知を地の果てまで追いかけるそうです(^^)。
倉知も受け入れたし、辛い目にあった分以上に幸せになって欲しいと心から思います。
イラストは高井戸あけみ先生です。
この話には、ぴったりのイラストです。
小説に惹かれ、イラストに惹かれ、萌えが2になりました。
砂原先生は人の心理描写に優れている作家さんだと思います。
この「スリープ」も病気とトラウマを抱える多感な年ごろの主人公たちの葛藤や苦悩がよく表現されています。
主人公たちは、性的虐待の経験を持ちナルコレプシーを患っている馨と不眠症でPTSDの原因となる過去を持つ喬。
テーマはかなり重いのですが、描写はエグくなく二人の高校生活中心に物語は進みます。
ですが、冒頭から読み進めれば進めるほど澱がたまっていくような感覚に襲われ少々読みにくさを感じました。
それでも彼らが傷つきながらも少しずつお互いの影響を受けて変わっていく過程はとても良かったです。この二人は絶対にお互いが必要なのです。
どうしても気になったのは、馨のいとこの行為で問題解決出来ていないようなあまい形で終わっていることです。犯罪的行為だったと思うので。
そのままでいいのか?と、もやもやとした気持ちのままになってしまったことが残念です。
視点は攻めと受けの両視点です。
内容はかなりディープで、好き嫌いが分かれてしまいそうですが、わたしは良い作品だったなあと思いました。
受けの馨は、性別もあいまいに見える魔性系容姿の高校生。
感情の揺れはばが小さく落ち着いた性格ではあるが、顔立ちに反して毒舌。
攻めの崇は馨と同じマンションに暮らす、クラスメイト。
チャラチャラして見える外見同様に女関係にもルーズだが、つねに馨の側にいる男。
三年ほどのつきあいになるふたり。
普通ならば顔は知っていても知らん顔で通り過ぎていたであろう、タイプの違うふたりが一緒にいるようになったのは、馨の睡眠障害ナルコプレシーと中学の頃の出来事がきっかけ。
ナルコプレシーは、いつでもどこでも突然抗えない眠りに落ちる病気で、馨の場合は眠気だけでなく、感情の起伏で引き起こされる脱力発作のために、つねに笑うということや感情をかきみだすことにブレーキをかけています。
こんなふうに書くとまるで悲劇のヒロインのようですが、なんといっても馨、まったく負けていません口が(笑
まあ、悪くて悪くて笑っちゃいます。
反対に崇は不眠症。
子供の頃襲った事件で、眠れなくなってしまっています。
それでも自分のことより、『退屈だからかまってる』というスタンスを隠れ蓑にし、馨に重荷にならないよう側にいようとする崇は誠実な男なのだろうと思います。
馨の病の原因になったであろう過去のトラウマは、BL作品ではよく見かけるものではありますが、ヘビーですし、同様に崇の不眠症の原因もかなりのものです。
でも、この作品がドロドロの暗っっいものになっていないのは、やはり馨と崇の、強がりであっても病に屈服されていない様子や日常のやりとりの描かれ方かと思います。
わたしはふだん砂原作品は明るめの物しかほぼ読んでいないのですが、こういうシリアス系もひじょうに面白い作家さんなんだなあと再認識しました。
仰々しい病がわざとらしくとってつけたようでない、自然にキャラクターに存在したもののように感じられて、とても良かったです。
シリアスサイドの砂原作品。
テーマが重いので、萌えやBLらしい話が読みたい時にはオススメしません;
へらへらと軽くて腹が読めない攻、上木原。不眠症。
表情も言葉も少なく感情が読めない受、倉知。ナルコレプシー。
ちょっとサスペンス的な要素をベースに置きつつ話が展開していきますが、
たぶんメインテーマは二人が自分自身の気持ちにじりじりと向き合っていくところ。
真逆のようで似ている二人。
相手の気持ちが読めない。それ以上に、自分の気持ちが多分一番わからない。
重いテーマも悲壮感溢れる書き方ではなく、
辛いことも、恋心も、日常も、同等に、淡々と描いている印象でした。
淡々とした雰囲気ではあっても、謎の多い展開なので飽きずに読みやすいのでは。
個人的には、サスペンス要素についてはおおよそ読めていたものの、
メイン二人の関係は全く先が見えなかったので、萎えることなく集中して読めました。
読後感も良いです。
また、シリアスでも濡れ場はちゃんと砂原さんクオリティでした。愛があって、たっぷりと可愛い。
陽の感情で発作が起きやすいと言うカタプレキシーを患ってて、
果たしてセックスは可能なのか…?という疑問は感じたものの、
この病気は人によって症状・度合いが千差万別、
作中では精神的なものも絡んでいるという設定なので…
そこはある程度、本の中のお話と割り切って読みました。
ところで高井戸あけみさんが挿絵って珍しい気がするのですが、読んで納得。
キャラや作品の雰囲気が、高井戸さんのマンガの雰囲気とすごく通じるものがある。
ブレックファースト・クラブシリーズなんかを思い出しました。
高井戸作品が好きな人はこのお話、好きなんじゃないかな。