• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作高潔であるということ

真岸悟
復讐の機会を狙うバイト、25歳
志田智明
税理士、32歳

あらすじ

復讐のため、真岸は志田の税理事務所にもぐりこむ。しかし、志田の不器用な優しさに触れるうち、次第に惹かれていき…!?
(出版社より)

作品情報

作品名
高潔であるということ
著者
砂原糖子 
イラスト
九號 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344818668
3.7

(49)

(14)

萌々

(12)

(19)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
19
得点
178
評価数
49
平均
3.7 / 5
神率
28.6%

レビュー投稿数19

突発的な恋じゃないのがすごく良い

終始暗いモヤモヤが続く。ストーリーはとても面白い。ただ志田のすべてに共感できないし、作品のキモといえる真岸の復讐心を支えるものが謎。でもそれでもストーリーに惹かれるものがあり、自分の中で不思議な位置づけにある作品。

復讐に燃える真岸は、心理描写から窺える性格をみても人間関係をみても、特段変わったところのないキャラに見える。弟と約束したからといって、五年経っても同じ気持ちを保って復讐に臨む原動力が分からない。
もう少し被害者とのつながりの深さがあれば説得力が出たんじゃないかと思う。

志田は事件の加害者。最初は志田視点で描かれることに、加害者に寄り添う形かと微妙な気分になった。これこそ序盤に書かれていたマスコミの手口だし。
同情を誘う描写ばかりだが、個人的に黙って耐えることを美徳とするのが大嫌いなので、志田の不幸に同情できない、自身が呼び込んだ不幸としか思えない。まあ本人に耐えているつもりはないかもしれないが。

そんな感じでキャラへの好感度のない状態で読んでいたのに、二人がくっつくまでのあれこれには心に刺さる部分も多かった。
過去に真岸が志田を見かけたエピソードがあるおかげで、出会って絆されたりヤって情が移ったりしただけの突発的な恋心でないと分かるのがすごく良い。

もうダメになったかと思われた最後の最後、そこまでの状況を作ったのは真岸の方だったけど、やっと自ら手を伸ばす志田が見られて良かった。

他人に嫌われ疎まれ都合よく利用されてばかりの志田は、一つくらい何らかの反論なり反撃なりして欲しかった。真岸に出会うことでそこに変化があればもっと良かったのにな。特に養育費の件はずっとムカついている。

真岸の復讐にこだわる心理は理解し難かったけど、時間経過での感情保持や忍耐強さといった面に目を向ければ、志田には真岸しかいないような気がしてくる。すごく後日談を読んでみたいカップルだと思った。

0

骨太ヒューマンドラマ

ラブっていうより、サスペンス、ヒューマンドラマ的な印象強めでした。
数年前の事件の復讐のため、その対象人物に接触し、観察していくうちに、果たしてこの人が、本当に自分が思っているような人なんだろうか…?と主人公が葛藤する様子が丁寧に描かれていて…適度な緊張感と読み応えがありました。あるべき善意や優しさってなんなんだろ?と考えさせられました。

ただ、主人公(攻め)がそこまで近所の”ジジィ”の復讐にこだわった動機がいまひとつ見えにくかったんですよね。でも、BL的な読み方をすると、なんとなく、これは”ジジィ”の復讐というより、公判の際に忘れられない表情をしていた志田という人物への執着だったのかなと思ったり。そうなると、なんとなく個人的にはしっくりくるんですよね。

脅迫のように送られるメールの謎があるんですけど、これはネタバレなしで後々”なるほど”って思ってほしいかもです。さらに、ちょっと”税理士のおしごと”ものとしても面白かったです。最後に、やはり砂原先生のキレのあるエロ描写は素晴らしいです。

0

気負わずに読んだ方が楽しめるかも。

電子で読みました。挿絵なし。九號さんの絵が好きなので拝めなかったのは残念。

物語は主人公、真岸悟の子供時代の回想シーンから始まる。彼は弟の徹と交わしたとある約束を果たすため、前職を辞し、ある男の税理士事務所で募集されていたアルバイトの面接を受ける。徹の子どもらしい好奇心が縁となって兄弟二人が小学生の頃に慕っていた、隣家のゴミ屋敷に住む「ジジイ」。ある日、車の轢き逃げ事故に巻き込まれ、亡くなってしまう。その加害者が真岸のバイト先の雇い主、志田智明だった。兄弟の約束とは、彼をジジイと同じ目に遭わせてやるという復讐だったのだが…。

真岸は志田と接するようになり、この事故がきっかけでそれまでの安泰な生活を失い、感情すら無意識に殺して生きている男であること徐々に知る。次第に志田へ抱いていた思い込みが払拭されていくのですが、真岸が復讐に徹しきれないのは、彼の記憶の奥底に残っていた志田の姿があったからだというタネがさりげなく仕込まれていました。

真岸の復讐を忘れないようにという五年に及ぶ執念は、法廷で志田の姿を初めて見た時から、既に彼に何かしら惹きつけられるものがあったからなのではないかと思わせます。真岸視点で描写される志田の第一印象がなんとなく色っぽい。志田の方にも大学時代の男子学生との他愛のないエピソードが描かれており、二人が同性なのに惹かれ合う不自然さはあまり感じさせませんでした。(お互い目覚めちゃったってことで。)真岸の人好きのする性格や、脇を固める登場人物のおかげか、深刻になり過ぎず読みやすかったです。孤独な志田がベランダで一人、天体観測をするシーンが印象的でした。

物語序盤は作家さまに抱いていた作風のイメージとはちょっと異なる、意外なトーンのツカミでしたが、最後まで安心して読ませていただきました。うーん、砂原先生の描く濡れ場はツボです。

1

情景が浮かぶ

真岸(攻め)が復讐をするために、志田(受け)に近づくのですが、志田のあまりの不憫さに驚き、復讐する甲斐がないと嘆きます。そして、自分を好きにならせてから捨てることで、復讐しようとするのですが…と、ここまで書いたところで、復讐する理由が人の死じゃなかったなら、コミカルテイストにもできた作品じゃないかと思いました。男が男を好きにならせようとしている時点で、既にちょっと面白い。

でも、読んでいる最中は、そんなに違和感も覚えませんでしたし、笑いもしませんでした。

志田が落ちたおにぎりを買う様を、眺めている真岸の表情が眼に浮かぶような、情景が浮かびながらすんなり読んでいけました。安定の筆力です。

徹底的に不幸な人はいないので、安心して読んでみてください。風で春の訪れを知るような後味だと思いました。

1

罪を憎んで人を憎まず

高潔であろうとするあまり人から疎まれて利用されまくった男の恋物語。読んでいる間は受に同情して泣きっぱなしだったのですが、感想を書こうとしたら受の不幸っぷりが笑えてくる不思議な作品です。萌えたかと聞かれると微妙ですが、心を揺さ振られました。

攻は感受性が強い青年(転職前の臨時アルバイト)。
受はコミュニケーション能力の低い税理士。

攻は幼い頃親しくしていた老人の命を奪った相手(受)に復讐することを誓います。社会人になった攻は不幸のどん底につき落としてやろうと受に近づきますが、受は既に幸せとは縁のない生活を送っていることを知ります。攻は自ら受に幸福を与えてやり、それを奪うという復讐を思いつきます。

受は自分を冷たい人間だと思い込んでいます。自分を捨てた母親や自分に愛情を注がなかった父親を恨んでいないし、浮気した挙句他の男との間に作った子供を養育費目当てで自分の子だと言い張る元妻を責める気もない。しかし、ロボットのように見える受にも心がないわけではなく、誰からも愛されないことに傷ついて苦しんでいます。感受性の強い攻は受の脆い部分にいち早く気づき惹かれていきます。

攻は憎悪と恋心の間で揺れますが、最後は愛が勝つ!罪を憎んで人を憎まず。天国のジジイも可愛がっていた攻の恋が叶って喜んでいることでしょうと勝手に結論づけました。

受についてはこんな無欲な人間いないよ!とツッコミを入れつつ、本当にいたらいいなと思いました。言った者勝ちの現代で生きている身としては沈黙の美徳は目に眩しく映ります。受のネタ元は砂原先生のお父様だそうです。萌え×2と中立どちらにしようか迷ったのですが、あとがきのお父様エピソードに萌えたので萌え×2にしました。

それにしてもレビュー数多いですね。さすが砂原作品。レビュー数が神評価の数を上回っている作品は面白いと感じることが多いです。

1

この作品が収納されている本棚

ちるちる評価ランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP