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俺のこと、見てたでしょ?
虚ろな瞳の高校生、陽向は は思春期で、自分の進路と、おそらく性癖に悩んでいる。
同級生の様に、女の子との恋愛やセックスに興味が持てないし、やりたい事も無い。
コンビニでバイトしていると、なかなかのイケメンに誘われたりもする。それが全然嫌じゃない事に戸惑ってもいる。ジレジレ、モダモダ。
笠原さんは大人で、自重しようとはしてくれている様だけど、結構陽向に執着していて、バイト終わりを待っていたり、学校帰りを待ち伏せしていたりする。ちょっぴり強引なところのあるこの男は、それでも。フラレる事に臆病だったりもするごく普通の男だ。
前後編に分かれた「その手を取れば」は、ツン過多の陽向が迷いながらも一方的に笠原さんを振り回している様にも読めて、「この手の中に」で、そんな大人の笠原さんの視点が描かれている。前半で余裕が有るかの様に見せていた笠原さんの、恋に浮かれていた気持ち。
付き合えてから、陽向を「こちら側」に引きこんでしまったという罪悪感。セクシャリティのことで、笠原さんは辛い思いもしたし、実家とも疎遠になっている。
陽向にはそんな思いをさせたくない、大事にしたい。そんな笠原さんの優しい決意が見えるほのぼのしい後日談。前半の、ツン過多の陽向のデレっぷりの破壊力も凄くて。
笠原さんはタジタジです。可愛い過ぎる陽向。
描き下ろし「この手をつないで」にはイチャつく2人。ずっとリードしていたのは、大人の笠原さんだったけど、この頃には陽向は少しだけ成長していて。自ら手を繋いでくれる。
千葉先生的には、笠原さんは過去最高に悩んだキャラクターらしく、今後、大人になって行く陽向が他所へ目を向けないかヒヤヒヤするという。そんな執着攻めと化した余裕のない笠原さんの姿も見てみたい。残念なのは、描き下ろしではずっと「笹原さん」となっていること。誤字なのか。間が開き過ぎて忘れられてしまったのか。こういうの、BLにはよくあるので、とても残念に思います。
同時収録は、リードしているのが大人という表題作と対になる様な。
「逡巡する春」「夏に途惑う」
今度は大人の男である課長が、臆病過ぎている。キラキラとした若手社員である部下・坂下にグイグイと押されて。戸惑っている。
意識してしまっている。恋をすることすら面倒だと諦めていたのに。坂下の気持ちを受け入れたがっている自分に気付く。春が過ぎて、夏になり。関係は曖昧にしたままのズルい大人の課長が嫉妬を覚えるさまはカッコ悪くて可愛い。
こちらにも2Pの短かい描き下ろしが付いているものの、本編自体も短いので残念。
表題作もこちらも丸っと表題作にしてしまえそうなので。じっくり読みたいですね。
その他もっと短かい、言葉の行き違いでプチ喧嘩するカップル「君しか見えない」
と、ツッコミどころ満載の「真夜中を過ぎた頃」ガチ兄弟と思われる兄・利一は、親の転勤で2人きりで過ごす事になったのをいい事に、夜な夜な弟・宗二郎のベッドに潜り込む。
夢遊病を装っているとはいえ、どんどんエッチな方向に誘っている。宗二郎は誘われるがまま流されつつも、寸止めで自己処理。『いったい、いつ言い出そうかな』と、互いに思っている…というところで、物語も寸止め。いやいやいや、超気になっちゃうんですけども。
2010年の発行ということなので。続きがあるとは思えないのが残念ですね。
「オレが歩くこの先には道なんかないんじゃないかって思う」
高校2年生の陽向(ひなた)。特技もなくて、特に秀才でもない。やりたい事も見つからない。他の友達と違って、女の子に興味がない……
自分が友達と違う事を怖いと思っている。自分が魅せられている世界、そこに行きたくない。「それを認めたらオレは これからどうなってしまうんだろう」
その恐怖感、孤独感をしつこく自分に言い寄ってくる笠原を拒み続ける描写で、外側から表現していると思う。「その手を取れば」世界が変わってしまう…
まだはっきりと誰かに恋してる訳でもなくて、でもみんなとは違っていて。将来・進路の不安と自分は一体誰なのか、という不安。
怖くて怖くて、逃げて。一度離れてみて笠原に惹かれている自分を思い知る。一度認めると今度はとことん一途な可愛い陽向です。
「逡巡する春」「夏に途惑う」
部下から告白されて、迷ったり逃げたりしながらも向き合っていく課長さんの話。この若い男はどうしてこんなに直球なんだ?
「君しか見えない」
大学生?カップルの痴話喧嘩。二人ともちゃんと言いたいことを口に出して言えて、甘く仲直りH。
「真夜中を過ぎた頃」
こういうガチ兄弟ものは初めて読みました。近親地雷の人も、兄弟モノ大好き派も「これは面白い」って思うんじゃないかな。美人お兄さんの襲い受けで、ガタイのいい弟はギリギリの理性で最後の一線を踏みとどまってる?深刻じゃなくて萌えますよ。
千葉リョウコさんの短編集。表題作のみ中篇です。
一度読んだ時はサラっと流しちゃったんですが、改めて読むと結構奥が深い…ような。
社会人×高校生という、歳の差設定。
主人公の陽向は、進路も不確かで自分の性癖についても受け入れられずふわふわと曖昧な毎日を送っている。笠原は自分のセクシャリティを既に認めた立派な大人ですが、そんな笠原の手を陽向はなかなか取れない…。
ずっと優しい態度の笠原が「自分だけがこんな性癖で悩んでると思ったら大間違いだ、馬鹿にすんな」と怒るシーンが印象的でした。
結局、会えなくなってやっと自分の気持ちに素直になった陽向が笠原に告白する…という結末ですが、陽向がもうちょっと芯がしっかりしたキャラクターだったら良かったかな、と思います。
それでも評価を高くしたいのは、最後の「真夜中を過ぎた頃」という短編が非常ーに好みだったから。兄弟モノで設定・展開的にありえない話なんですが、その訳分からなさを省いても何故か萌えた。ここで終わらないで続きが見たいです!
ぼんやりと違和感を噛み殺す事に麻痺してしまっている陽向。
馴れ馴れしいサラリーマンの笠原に対する好意と反する気持ちが社会の秩序の中に上手く収めきれなくなっていきます。
一度は拒絶して逃げても折り合いのつかない感情。
失ってようやく知るそのセクシャリティ。
不安定な10代らしいその先を知る怖さと社会のルールからはみ出てしまう恐怖。
心の葛藤はそれ程多く語られていませんが丁寧に描かれていて、陽向の不安に大丈夫大丈夫とその強情さをほぐしてあげたくなります。
付き合い初めてからの純粋な気持ちに感化されて、笠原までセンチメンタルな大人になってしまってもどかしく進んでいく2人が、最後別人に見えてしまったのが残念。でもそういうのが初めての恋らしい気もして悩みどころです。
「逡巡する春」「夏に戸惑う」
部下の告白にときめきよりもお付き合いの面倒さが先によぎってしまう、それなりに大人な上月課長の葛藤。
のらりくらりと躱しているつもりがだんだん手放せなくなっていくドツボな感じが面白いのですが、上月がノンケなのか元からゲイなのか分からず。
どの程度の重さがあるのか測りきれずもやっとしました。
他「君しか見えない」「真夜中を過ぎた頃」
短編ですが、バカップルと弟とどうにかなりたい兄のお話しです。
それまでが淡々と進んでいく体温の低いイメージなら、この2作品は熱にうかされている状態かもしれません。
単純で動きがある分心残りの無い読み切りとなりました。
ホントの気持ちをなかなか伝えられないCP4組の短編集。
表題作はクセの少ない綺麗な絵が自分のセクシャリティに戸惑う高校生の繊細な心理描写を助けている作品でした。
進路・恋愛を含めた世界に広がりを感じ始めた高校生の陽向(受)は同時にその世界と自分にズレを感じて戸惑っています。
ルールの外側に存在している(と思っている)男同士の恋愛。
その外側に出たらどうなるのか、という不安感とあからさまな好意を示す笠原(攻)に対しての気持ちに揺れる陽向がリアルでした。
耐えきれず自分の気持ちとから逃げようとする頑なな陽向に大人だって怖い、対等に向き合いたいという本音をぶつける笠原が良い!
それまでチャラめの態度だった笠原が『認めること=悪いことではない』と諭し、怒っている姿を見せるにはそれなりの過去と真実があるわけです。
決別の時間が躊躇わず描かれているから冷却期間をおいて流れ出した陽向の気持ちも自然でした。
笠原視点の続編ではツンデレだった陽向のガードがふっ飛んでデレむき出しで可愛くなってます(笑)
大人だって戸惑いもするし臆病な部分もあるんだよ、と手の内を明かすことで陽向も気持ちが楽になることでしょう。
扉絵が続きになっているのも好きです。
◆2作目は部下が上司に熱烈アタックする年の差物語。
粘り強い部下に振り回されて、ゆっくり思い出した『恋』という熱にほぐされていく課長がカッコ悪さも含めて可愛く描かれています。
攻受が逆だと思っていました…あれだけ攻めて攻めて受けかいっっ(笑)
◆3作目は唯一、出来上がってるCPの足りない言葉からのスレ違い。
短いのにテンポよく纏まっています。
◆4作目は夢遊病と偽って弟の寝床に入り込む兄にウッカリ手を出しかけては理性を総動員させトイレに駆け込む弟。
無理な嘘でとぼける兄と寸止めを繰り返す弟がすっごくコミカルで可愛い!
服だって脱いじゃってるんだから存分におやりなさいよ!と言いたい。うずうず。
合体していないのにエロくてこの話が一番ツボww
カバー下に描かれている3作目のCPとコラボしている番外編を読んで「是非とも続編を!」と叫びました~。