男子修道院の神父と天使憑きの異質愛。

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表題作天使憑きの男

幼馴染の神父 高橋慎・28歳
天使憑きの臨床心理士 水谷幸成・27歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

臨床心理士の水谷幸成は、人間の背中に翅が視える。また満月になるごとに人間の心臓を貪りたい衝動に苦しめられていた。その秘密を知るのは、幼馴染で神父の高橋慎だけだ。ある日、幸成は特殊な方法で、生かしたまま慎の心臓を味わってしまう。鮮烈な快楽と充足感。それを境に、幸成はすべての人間が餌にしか見えなくなり、追い詰められていく。幸成を救うため、慎はみずからの肉体を用いた儀式をほどこす。だが、それは神の戒律に背く淫らな行為で――。
(出版社より)

作品情報

作品名
天使憑きの男
著者
沙野風結子 
イラスト
高宮東 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
天使憑きの男
発売日
ISBN
9784813012245
3.4

(13)

(2)

萌々

(4)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
43
評価数
13
平均
3.4 / 5
神率
15.4%

レビュー投稿数4

天使でも悪魔でもなく、不思議な共存関係

「天使憑き」って、天使みたいに清らかな存在ではないんですね。
ただ、天使のような羽があるというだけで、その存在はまるで妖怪!?
喰罪と称して、人間の汚れた魂を栄養分にし、した方もされた方もそれによって快感を得られると言う、何とも幻想的な黒っぽい行為がありますので。
確かそんなモチーフの小説を怪奇小説で見た気がしますが、元来が人であるのに、魂を喰らいつづけると怪物になってしまうことから、人である姿を維持するために行われる行為がセックスになってしまうという。
それを行うのが修道院の神父であり、秘密の儀式がありの、悪魔憑きが登場しいの、幻想小説っぽくなりそうなのが、ライトファンタジーになってるところが沙野さんだな~♪と、、
ただ、主人公が臨床心理であるという仕事柄、偏執的な患者が登場したり、それはきっかけなってはいるのだけれど、そんな部分も両立させているために、多少内容が散漫に感じ、ヌるさを感じてはしまいました。

こういったお話は恋愛云々より、何より設定ありきのものですね。
一度死を体験したものは、羽が見える天使憑きになるという。
そうやって、慎も幸成も子供時分に生還してきたのですが、幸成は天使憑きとなったが、慎は翅無しの人間となってしまう。
人間には、みな昆虫のような翅があるのに、慎にはなく、彼は心に苦悩を抱えると無機物と同化してしまう憑依体質であるという。
慎は天使憑きの存在を知っていたので、施設に幸成が引き取られてきた時に彼が天使憑きであることを知り、彼を守ろうとするのです。
でも、それをしらないまま幸成は成長して。

2人が、そういった幼馴染であるのにいつまでも他人行儀な丁寧語で会話している部分が面白い。
それはエチシーンになると敬語攻めになって、エロ度を増すのに役だっている。
そして慎が感情を表面に表わすのに乏しく、神父である為か世俗に疎い部分もあり、最初のほうで、クスっと笑わせるのが、当人達至って真面目で会話が成立しているので、不思議ちゃんなイメージ(ちょっとトウがたっているが)
幸成がクライアントに襲われたことで、慎も意識して封じ込めていた幸成も知らなかった天使憑きとしての食欲が発生してしまい、それを薄めるために秘跡と称した香油を幸成の体内へ塗油する行為が必要になってしまうのです。
愛情を伴わないのに、セックスの行為を行う。
それについて2人が苦しみ悩む姿というのは必然的に発生するのだが、それは後に訪れる彼等の危機によって解消されるという下りに発展していくのです。
魂を喰らいすぎると怪物になってしまうから、それを止める行為としてのセックスは、慎にとっても人間でいられる(無機物化してしまわない)為の必要な行為であり、持ちつ持たれつの関係なんだという設定は、慎が何者であるのか全く不透明であるので、どうして彼が救われるのかはよくわからない。
多分、好きな人といるということ自体が一度生を手放してしまった慎に生きる意味を与えているっていう捉え方でいいのかな?とも思うのですが・・・

彼等を危機に陥れた悪魔憑き・叶枝と、慎が匿った天使憑き・聖良編で続きのスピンオフがあるようです。
こうした特殊設定のシリーズものって、最初の巻はそれの説明をどうしても細かく入れなくてはならなくなるので、主役カプの恋愛が薄くなってしまう場合が間々あるのですが(これもどちらかというとそうだった)、その分ダーク感漂う悪魔憑きは、すごく楽しめそうな予感がします。(ちょっとイタイかな?)

3

丁寧語の化け物に萌え~

萌えましたっ。
この作品の受け、攻めのどこが良かったのだろうと考えるに、
1:受けについて、人の魂?を食べたがるおっそろしい化け物だ(それを「天使憑き」というのですが)でも本人は本来、内気で清らかな青年で、葛藤がある。
エロいことも「天使憑き」特有の人の罪を喰たい症状を抑えるためだが、攻めにそうさせてしまっている、という罪悪感を抱いていて。でもすごく本人はみだら(っていうか、抑えようにも乱れてしまう)。---これらの二面性がイイ。
2:攻めの神父が セイント:ヘタレ属性だ(?)!!
捨て子のトラウマはありがち~ですが、しつこくなくさらっと描かれているので大丈夫でした。
感情が滅多に揺れない、動じない頑な性格でありながら、トラウマゆえ、凄く弱い一面があり、痛々しくもヘタレた感につながってキャラが立ってると思う。無感動人間なのに受けのことだけは守って来た…というのも、定番かもだけど、イイ。(エロいことにはわりとは強引っていうのもw)。

沙野センセイは、いったいどこから発想するの?というような設定をよく生かして物語にされる、その才能に脱帽です。
天使というからキレイキレイかというととんでもない、人の罪(魂)を喰らいたくてたまらんとダラダラ、ヨダレを垂らす生き物…今までにない「天使」で面白い。攻めの、無機物と同化する感覚の描写も不思議で良かったー。
神評価をしたいところですが、あえてマイナスポイントを書くと、
悪魔憑きについて、伏線の印象が(少なくともわたしには)弱くて、後半での登場を唐突にかんじた。悪魔憑きたちの、天使憑きを憎んでいるという感情だのキャラ設定だのも、どうもハンパ??に描写されてる気がして。スピンオフは計算にいれず、この1冊のみにての完成度を高めることもできたのではと、個人の印象ですが、思ってしまいました。
それでも、数多い沙野先生のご本の中でもわたしにはかなり、良かった!!です!!

2

妖怪天使憑き

天使という言葉のイメージを裏切る妖怪天使憑きのいる世界観の設定がおもしろかった。さすがの沙野さんです。
天使というよりも、人の罪を喰らい快楽を得るというのは吸血鬼に近いかも。
羽根や心臓が性感帯という特殊な状況でのエロスは大変においしゅうございました。

羽なしと天使憑き。
お互いがいないとまっとうに生きていけない相依存気味の二人にはときめかずにはいられません。

今回消化不良気味の敵?の悪魔憑きサイドの話は続編というかスピンアウトがあるそうなので、次はそちらを探して来ようと思います。

0

天使憑きは内なる怪物

ファンタジーとまではいかないけれど、いわゆる「特殊設定」もの。
時代は現代日本。
舞台は修道院。
主人公は、かつてその修道院に併設されていた養護施設で育った2人の幼馴染。
1人は、今は心理カウンセラーをしている幸成。
もう1人は、神父になって今は修道院長の慎。
そして、幸成は「天使憑き」です。
天使とは違いますよ。
天使憑きとは、人間の心臓につく「罪」を餌に食べる存在。
食べ続けると進化し、背中の鳥の羽が可視化して不老不死的になる。
天使憑きは、人間の背中に虫の翅が見えて、胸に手を突っ込んで心臓を掴む=「喰罪」の欲望が抑えられないほど膨らんで…
…というような世界観で物語が進んでいくのですが。

世界観はきっちり構築されていると思います。
しかし、どうしても日本で、カトリック絡みの天使と悪魔の概念、文字通り胸に手を入れて心臓を掴むとか、その世界の中に私が浸れなかった…
また、幸成がクライアントの男にストーカーされるのはまだしも、そいつに自宅に押し込まれレイプ的に襲われたり、何故か都合よく助けに来た慎にその興奮を鎮めてもらう行為の最中に「喰罪」に目覚めたり、というBLありき展開に無理スジを感じてしまった。
結局は慎も空洞を抱えていて…というのもお約束に感じたし、クライマックスは「悪魔憑き」との空中対決みたいなド派手さ。
エロシーンは、もちろん沙野先生ですから表現等素晴らしいのですが。
ファンタジーやちょっとのオカルト風味の特殊設定が好みの方には合うと思います。
幸成が優しくて気弱で清らかな性格、なのに内なる怪物を棲まわせて…的な葛藤はよかったです。

対となる「悪魔憑きの男」は読もうかどうか迷う…

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