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表題作ハニーデイズ

佐伯諒一郎,29歳,離れに下宿していた大学講師
坂崎国巳,高校二年生

その他の収録作品

  • スイートビターキャンディ
  • あとがき

あらすじ

兄のように慕っていた諒一郎の、同性とのキスシーンを見てしまった国巳は、そのことがきっかけで自分の気持ちに気づくが…。
(出版社より)

作品情報

作品名
ハニーデイズ
著者
杉原理生 
イラスト
青石ももこ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344820814
2.8

(17)

(0)

萌々

(3)

(9)

中立

(5)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
44
評価数
17
平均
2.8 / 5
神率
0%

レビュー投稿数6

年の差スキー

帯『俺は……先生が好きなんだけど。』

自分はともかく小説は読む時の気分で評価が変わるタイプです。
小説は買って真っ先に読む場合と、積み本にしておいて直ぐには読まず「今は●●さん作品な気分だ~」っていう時に読む本に分かれるんですが杉原さんは後者の典型的作家さんです。
杉原さんの気分だ~~っていう時があるんですね、他に松前さんとかも杉原さんと似た気分の分類に入ります。
こう、素直な感じだけどもどかしくてじれったかったり、気分で無い時に読んだら物足りないけど、気分にぴったりな時はジャストフィットする作風なのです。

これは離れに住む下宿人の大学生のお兄ちゃんと、その家の一人息子の小学生の話で年齢差がまさに年の差で分かりやすく離れてます。
幼い頃は単純に甘やかしたり甘えたり、年頃になって相手が一時でも先生になったりと関係が分かりやすく丁寧に書かれてるので、そこがじれったいながらもある意味真っ直ぐでゆるぎない国巳が強く、そして弱く感情を相手にぶつけていって恋愛感情はゆるがないんだけどその姿勢が少しずつ変わるのが好き。
作中ではタイトルは出てませんがウディ・アレン監督の映画「カイロの紫のバラ」に対する国巳の感想が少年らしく、また彼らしいな、と思います。
この辺は映画を見て監督のエピソードを知っていると、ああそうかとスッと納得。
ちなみに国巳はヒロインが最後に映画を見て幸せな顔になるシーンが一番好きなのですが、自分もそのシーンが一番好きだな~しかもその見ている映画がアステア映画なのがまたいいんだよねーとか本編と関係ない部分で妙に頷いてたり。
立花との過去が壮絶っぽいのが気になりますが、作品の空気的には匂わせる程度で良かったのかも。

冒頭で書いた通り、自分的には読む時の気分を選ぶ作品ですが「杉原さん気分」の時に読むと心地良く作品感を味わえます。
あと挿絵の青石ももこさん、なんと日本に留学中の中国の方なんだそうですが柔らかな万人受しそうな絵柄でかなり好みです。

6

きっかけはキス

12歳の歳の差というのが顕著に出ていて、すごく解りやすかった。
一途に猪突猛進の子供と、ためらいと理性を持つ大人の対比なんだけど、それでも題名のように甘い一冊でした。
こういう子供と大人の歳の差もの、苦手なんですが、これはどうにか自分の中ではクリアできるお話だったと思います。

国巳は家の離れに下宿している諒一郎を小さい頃から慕ってるんだけど、諒一郎が男とキスしているのを見てからそれは恋愛の”好き”に変わり、12歳で一度告白して失恋。
一度距離が空いて、また今回アタックするというお話になっています。
諒一郎が下宿を引き払い、引っ越すこと。
そして、諒一郎が昔付き合っていて別れた彼氏が再び登場することで、国巳が行動を起こしていくのです。

国巳がとにかく真っ直ぐです。
好きなんだから恋人になりたい、率直にその気持ちを伝えます。
でも諒一郎はのらりくらりと、気があるんだかないんだか。
「お前の事は好きだけど、意味が違う」なんて、なんとでもとれるもの言いです。
そのくせ、国巳の一途さに負けてキスしてしまうものだから、国巳が生殺し状態?
諒一郎が元恋人と別れたのは、彼が実家へ戻って結婚してしまうからだったんですが、それを「彼は死んだ」と国巳に言うほどに傷はついていて、恋愛に臆病になっているのかな?とは思うのですが、国巳への態度や言葉が、遠ざけるならはっきりと「君は弟にしか見えない!」と言ってやれば済むことなんだろうけど、そう言わないところが憎たらしいなと思わせるのですよ。

そんなあやふやな態度だから国巳もあきらめきれなくて、元カレ・立花が戻ってきては諒一郎の前に姿を表わし、また国巳を挑発するから、国巳は子供の思考と一途さであきらめきれずに3度めの告白までしてしまう。
諒一郎も本当は欲しかったくせに、国巳の押しに負けたっていう風をとってしまうようなスタンスになっているところ、ほんとうにズルイとおもうんですよね。
でも、そこはやはり色々と経験した大人と、自分の事だけでまだ経験も浅く一直線にしか考えることのできない子供のものの見方の違いというものであれば、素直に受け入れることができる。
理性と直情のせめぎ合いになるのでしょうかね?

『スイートビターキャンディ』でも、一度エチしただけで二度目をしてくれないことを不満に思い不安になる子供と、理性で抑える大人の対比で、題名そのままの展開でした。

国巳には親友の健史というのがいて、それがまた、素直に何でも相談してしまうのです。
この健史が偏見も何もなく、客観的に国巳にアドバイスしている、その存在が不思議で、、、健史は読者代表みたいな存在だな~と思いましたよ。

3

国巳視点だからこそ

このお話、ざっくり言うと、年の差物の基本パターン
「子どもの頃から好きだった隣のお兄ちゃんの理生の糸を天然力でぶち切るお話」
大人の分別だかなんだかで、年上の方が一生懸命年下の方の子を遠ざけようとするのに、年下の方の子は、一途にその壁をぶち破って…
って、このパターンのお話って、割と王道っぽく、よくある展開だけど、ちょっと杉原さんにしては珍しいパンターンだなって思った。

でも、このお話、やっぱり杉原さんだなあって思うのは、終始一貫して「年下の子=国巳」視点で書かれているのあたりがポイントかな。
諒一郎が本当は何をどう思っていたのかは、国巳に対しての言動からしか推し量れない。
読み手は、国巳と一緒になって、諒一郎の気持ちにヤキモキする。
この、ジリジリ、ドキドキが楽しい。


それより、当て馬で登場した立花。
この立花と諒一郎の関係に興味がある。
「いい思い出なんて一つもない」この二人の付き合いってどんなだったんだろう。
淫乱魔性の立花と、暴君諒一郎のドエロ。
杉原作品としてはありえなすぎだけど、こんなスピンオフ、読んでみたい

2

大人と子供だから・・・

実はお話の内容に限ったら中立にしちゃおうかな?って思いましたが、イラストがよかったので萌に留まりました。

大学の先生・諒一郎と彼の下宿先の息子・国巳(12歳年下)の長年の恋が実るまでのお話です。
なぜ、お話の評価が低めかと申しますと、とにかくもどかしすぎる・じれったすぎるからです。
杉原さんはもどかしくもキュンキュンくる作品を得意としている作家さんだと思うのですが、いつもの「キュンキュン>もどかしい」ではなく、「もどかしい>キュンキュン」だったわけです。
年の差カップルというのも珍しいので、どうしても“大人”な諒一郎が守りに入るのと、“結構我が儘なこども”の国巳が攻めに出るのがかみ合わないのは仕方が無いところなのでしょうか。

辛い過去を持っている諒一郎と、諒一郎しか目に入っていない国巳では、たとえ両思いであっても「どの部分を大切にしていくか」という価値観は違うので、あれこれあってやっと結ばれるまでに1冊分を費やしたわけです。
いやーもどかしかった。

国巳の相談相手・同級生の健史と恋のライバル(諒一郎の元カレ)・立花の存在があるので、お話がだらけないで済んでいます。
立花などは、いまどき珍しい“悪役”で、よく考えてみると彼のような人が“普通”に生きている人なんだろうけれど、諒一郎と国巳の間にいるとただひたすら悪役です。
問題は、諒一郎と立花が別れた話は出てきますが、付き合い始めた理由などは明らかにされておらず、ちょっと消化不良気味なところがあるところです。
健史も“よき理解者”すぎてちょっと不満・・・

で、意地悪なおばさん(私)が気になるのは、この先国巳の両親に関係がバレた時に結局諒一郎はどう対処するのかと言うところです。
いっそのこと早々にカミングアウトするのが大人な気もするのですが・・・どうでしょう?

0

攻キャラクターが気分悪くて、最後まで読めないかと思った。

杉原さんの他の作品よりはよかったんですが、所謂『萌え』は皆無です。

こういうほのぼの・焦れ焦れなストーリーは結構好きなんです。好みの分かれそうな国巳(受)も、私は別にダメじゃない。

でも、諒一郎(攻)のキャラクターが私の我慢の限界を遥かに超えていました。こんな鬱陶しい男、絶対に無理です。文字通り耐えられない。読みながらイライラが抑えられませんでした。

私、受はどんなに『ネガティブ・自虐的』でも大抵は平気、それどころか好き要素にさえなり得るのに、攻だとここまで憎いものかと自分でも不思議なくらいでした。

私には『国巳が大事』よりも『自分だいじだいじ』にしか見えませんでしたよ。この上なく『ずるい・セコイ・卑怯な男』でした。ただそれだけ。

私は『ヘタレ』はもうこの上なく好きですが、コイツをヘタレだとは思わないし、絶対にそうは呼びたくないですね。そんないいものじゃなかった。

表題作ラストの展開のあっさり具合には正直ついて行けませんでした。そんなに簡単に崩れるんなら今まで引っ張ったのはなんなんだ、と呆れ果ててしまって。

まぁ、BLとしては無理ですが、いっそ諒一郎に最後まで自分を貫き通すぐらいの気概があればここまで嫌な気分にはならなかったかもしれません。←そうして欲しかったというのではなく、どうせ折れるんなら無駄にゴネてんじゃねぇ!って意味ですので。

あと、諒一郎の元彼・立花もまったく意味不明のキャラクターでした。こんなわけのわからんヤツを中途半端に出してどーすんの!?と完全にシラケてしまいましたね。

『いいひと』ではもちろんないし、だからと言って『敵(邪魔者)』までも行ってない。というかそもそも『当て馬』にさえなってないよ。いや、なんとも半端なといった感じでした。

『年の差(年上攻)』しかも『高校生受』と私の好みのど真ん中なのに、攻キャラクターだけの問題でこんなにツボからずれるんだ、としみじみ考えてしまったくらい楽しめませんでした。杉原さんの作品世界・空気感そのものがまったく好みじゃないのも大きいですが。

もうひとつ、きわめて個人的にですが『受一人称』がものすごく苦手なんですが、杉原さんの『受一人称』はただそれだけではなく地の文と台詞の一人称が違う(地の文『ぼく』、台詞『俺』)のがなんとも言えず気持ち悪くて堪りません。

最後にイラスト。
青石さんは今まで何作か御縁があって、申し訳ありませんがいつも『あんまり・・・』と思っていたんです。でも、この作品は初めて『よかった!』と思いました。絵柄と作品・キャラクターのイメージがピッタリでした。

正直、イラストがいちばんよかったです。

4

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