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知明と慈雨が共に過ごす日々の中でそれぞれに思うことがあり、結果として気持ちが変化していくお話ですが。
ふたりが交わっただけでは生まれなかったであろう感情に、実華子や咲彦や皐月の存在が絶妙に絡まっているのが深くて複雑ですごく面白かったです。
自分に対してどこまでも関心がない親とか、他の男を作って居なくなった彼女とか。
さらりと明かされていく知明に関してのエピソードはなかなかに重かったけれど、それでも腐らずに前に進んでいけるところに彼の器の大きさを感じました。
どんなことに対しても真っ直ぐな人なのでしょうね。
だからこそ慈雨の心も救えたのかもしれません。
彼が何を求めているのか、何に寂しさを感じているのか。
そこに知明が気付いてくれる人で本当に良かった。
慈雨は最初こそ口は悪いし酒ばっかり飲んでいるしで良いところなんて無い気がしたけれど、
強がりの仮面の下に脆さを隠しているのがわかるとだいぶ印象は変わります。
ひねくれ者で子供っぽくて、見える面そのままを受け取ればとても近付きたいとは思えないところばかりだけど、それは自分の心を守るための鎧なのです。
そんな不器用すぎる彼が寂しさで壊れてしまう前に、知明がそこから救ってくれる存在になってくれて良かったと心から思いました。
精神的な弱さが身体にあらわれてしまう慈雨には
知明のような内側から温めてくれる人が必要だったのかもしれませんね。
実華子が繋いでくれた素敵な縁が繋がって、幸せになってくれて本当に嬉しかったです。
知明の親が変なので実華子がどれほど辛く当たられたのかが推し量れて、こんなに可哀想な目に遭って、若くして亡くなったなんててただでさえ思ったのに相手からも言われていたなんて…口の悪い慈雨が悪いのは周りの方だって言ってくれる人で救われていたなら良いのだけど…
結局、慈雨と実華子は自分の相手については仕方がないと、自分が家族になれないって引け目を受け入れてしまっていて、互いの相手を罵ることしかできない
2人一緒にいることでお互いを通して裏切りに憤ったり寂しがることができる
実華子は俺、慈雨は私って思いながら一緒にいたんだろうか
怖くなるくらい酒を飲むけれど、実華子と慈雨は身体は別物だから…
でも、死ぬのは2人にはあがりみたいなことで、一緒だったら良かったのになってくらいだったんだろうな
遺されたらさみしいんだぞって、さみしくしてごめんねって、そんな感じだったのかな
遺されたさみしさを知ったら家に迎え入れた知明を遺すことが怖くなって、慈雨は繊細だよな
失恋したくらいで結婚なんかするだろうかって初めから思ってた
もう二度と誰とも恋しないって思うかなって
本だけ買って調理器具も買わない
そもそも、家で仕事してるのに弁当の本だし
皐月の親が離婚したのが自分のせいって発言とか、ん?て少しだけ引っかかることが終盤に(なるほど)て腹に落ちて行く
そして、謎だけじゃなくてエピソードに意味がついて行くのが見事で余韻もとても面白い
皐月は知明からもらった手紙が実華子に促されて書いた物だと知るのだ
赤い印象的なスーツケースは実華子の物だったのだ
ちあきはモテモテになるんだよって実華子の言葉には意味があって、よくいる子供にそう言うこと言う人のとは違ったんだ
モテモテになって、1番ステキな異性と結婚して父親に…祝福される幸せの中でも更に1番を得るのだって、可愛い甥がそんな幸せの中で生きているって思うことは実華子の慰めになったのだろうか
咲彦がいて慈雨と咲彦を見ているから、知明は皐月のところでこれからも働いていけるんだろうな
食べて、生きている人間は前に進んで行くんだもんな
甘いの食べない子供に買ってくる親、独りよがりなの大人になればなるほどゲンナリするよね
実華子の親や姉みたいなのと慈雨の親
子ども自体に無関心で自分の思う善を微塵も疑わないで責めるのと憐れんで施すの、おんなじだよね
面白かった
家庭の温かさや家族の情と触れ合わずに生きてきた知明。トモアキ、だか親戚中からハブられていた叔母は、ちあき、と呼んで可愛がってくれた。
その叔母の夫から叔母が亡くなったとの連絡を受け、訪ねる。そこには夫だったという慈雨が居た。
知明と慈雨は同居を始め、知明の家庭の問題や慈雨のバックグラウンド、さらには叔母の過去までも知ることになる。
知明が慈雨に惹かれていくところは、少し分かりにくいけれど、穏やかな流れで日々が過ぎていきます。途中、慈雨の元恋人が出てきたり、家族・家庭を持つことの普通さ、男女で付き合う、結ばれることの普通さなんかが思い課題として読み手に提示されているようで、深いなと思いました。
叔母の過去の出来事もちゃんと回収されていて、どちらの想いも選択の結果だけれど、やはり子供を持つことの本能、それを超える愛情、色々あるんだなと考えさせられました。
一穂さんの作品は穏やかな中にグッとくる要素が入ってるな、と思います。
一穂先生の『イエスかノーか半分か』がとても好きなので前知識なしで読み始めたのですが、残念ながら、キャラクターもストーリーも好きになれませんでした。
読んでいて、主人公と優しい叔母の思い出とか、主人公と師匠である料理家との出会いとか、また師匠一家の優しさとか、叔母の看護をしていた時に男が書いた文章とか、色々と素敵だなと思うエピソードは多かったのですが、後々それらが素敵なだけではなくなる(性的な生臭さに関わってくる)のが不快で。
最終的に、この話では性的な臭いを感じさせないキャラクターというのが皆無なのですよね……
美しく気だるげな世界観と性的な臭いというのはマッチするのですが、全員が全員となると、その生臭さが鼻についてくる。
なので、根幹を否定するようではありますが、せめて主人公と亡き叔母の夫はデキちゃわない方がよかったな……と思いました。その方が、美しい話だった気がする。
このお話は端的に言うと、叔母と、叔母の夫だった受けが、傷ついて弱った獣が身を寄せ合うようにして共に暮らしていたという話、だと思うのですが、叔母が死んで文句が言えない状況になってからその間に主人公が入り込むのもなんとなく不快だったし、叔母も、叔母の夫も弱い人だったんだな、というのが後々わかってくるので、その弱さが性的なものと結びつくのが嫌だなあと感じたのもあります。
そして、あくまで二人は可哀想な被害者で、他の人々は二人をいじめた人たち、という配置なのも好きになれなかった。
『イエスかノーか半分か』の受けは、どんなにいじめられてもつらくても泣きながら立ち上がって相手をぶん殴るような人で、そういう強さが好きだっただけに、余計に叔母と叔母の夫(受け)の弱さが好きになれなかったのかもしれない。
叔母と、叔母の夫(受け)が好きになれないと、彼らを愛した人々のことも(その人々自身のことが描かれないこともあって)好きになれないし、主人公のことはさらに好きになれない。そんなふうになってしまうのだなと思いました。
そういえば主人公の母が主人公に全く関心を示さないことへの説明も、叔母の「あんな女には子育てなんかできない」という中傷以外なかったのも気になりました。
実の妹である叔母をいじめた悪いやつなんだから、実の息子にも当たりがきついんだと納得すればいいのかもしれないけれど……なんだかなぁ…
やっぱり一穂ミチさんの表現する女性はいいですね。
そして北上れんさんのイラストも良かったですwwwイメージ通りでしたw
ちょっと今回の受けさんはビミョーでした。
見た目が美形青年。感性が鋭く、翻訳家で勉強量もすごくてちゃんと仕事として成り立っている。そして救いようもなく口が悪い。
うーん、、受けさんに生きた人物像が見える気がしたのですが、それが魅力的かどうかは別で、自分にはイマイチ乗れないタイプでした。
最低に口が悪いデリケートな男性……、要するにキャンキャン吠えまくる小型犬みたいで、なんかなぁ、、。
変なところばかり露悪的なまでにあけすけで、ストレートな性格の攻めさんには素直じゃなくなるという…。
ただこの受けさんは前の男とは中学だかからの付き合いで、捨てられた後もずっと付き合いが続いてるというくらい一途なようなので、新しい男チアキとうまくいかなくても多分その時は可愛くなく縋るんじゃないかな?
その可愛くない縋りつき方、可愛くない「捨てないで!」、可愛くない「ごめんなさい!」可愛くない「戻ってきて!」…ってのはぜひとも見てみたいと思いました。
悩み過ぎて胃潰瘍になって救急車で運ばれて攻めさんを強制的に戻ってこさせるっていうのは反則だと思います。
攻めさんは面倒見が良すぎてついつい受けさんをつけ上がらせてしまいますが、そこから~の攻めさんお怒りモード、受けさん可愛くない縋りつき土下座モードになってくれると!次回作読みたいです!!