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2010年発表作品。
特殊で極限の状況に置かれた人間の心理の移り変わりを、限定された時間と空間の中で描いています。
主人公は、病院の救急外科医・松浦。
激務に心も体調もすり減っていたある日、ひとりの青年に刃物で脅されて拉致される。
廃ビルの一室で、銃で撃たれて出血多量になっている男が寝かされていて…
松浦はこの日から重体の毛利、舎弟の祐司との3人でこのビルの一室に監禁されます。
逃げないように祐司と手錠で繋がれて…
兄貴分の毛利に絶対服従の祐司。
無理な診療を強要されて、騒いだり逃げ出すよりもやはり医師として毛利を助けようとハラを決める松浦に、次第に祐司の方が心を開いていく。
と言ってもすぐにBL展開というわけではなく。
DV家庭に育った祐司の女性への歪んだ認識と強い男/毛利に傾倒していく感覚。
幼い頃に病弱で母親に疎まれ、生き延びた今をおまけの時間と捉えている松浦。
それぞれの思考回路や考え/感じ方の癖、心理状態を代わる代わる描いて、逃げ場のない一種の密室の中でどんどん濃密になっていく感情のゆくえを追うような感覚と言っていいのか。
そんな中、毛利は危機を脱し、再び祐司への支配力を強めていきます。
しかしもう祐司は、自分が暴力父に似たのではなくて、逆らわなかった母のようになっていたことに気づき始めていた…
祐司は毛利と松浦のどちらを選ぶのか。
松浦は、平時に戻り事件や祐司を忘れることができるのか。
何より、毛利は松浦を生きて返すのか。
少ない登場人物と限られた場所、その中でのダイナミックな心/人生の転換。やはり剛しいら先生の上手さが感じられます。「萌x2」で。
しいらさんなら安定のクオリティ、と思って読み始めました。
確かに面白い設定で、いたずらにあまあま大団円にならないところはさすがです。
ただ、特に後半、文章がいつもより雑?というか推敲前のような箇条書きのところもあり、あれっと思うところもありました。
救急救命士の受けさま。忙しい毎日に生きるということの感覚が麻痺している。
ある日突然拉致され、怪我をしたヤク○の治療をさせられる。治るまでといずれ取り壊されるという廃屋に監禁される日々。
しかし、自分を拉致した下っ端のユウジは、どこか憎めないところもあり、次第にストックホルム症候群なのか心を通わせるようになる。
お互いに恵まれなかった幼少時代。確かな家族関係を築くことができなかったトラウマをお互いに癒やす存在なのか。。
恋愛というより、お互いを癒やすように寄り添う二人でした。安易に甘い恋愛BLよりずっと読み応えがあってよいです。
ただ、愛じゃなくてもいい、それはそうなのですが、なぜか怪我をしたヤク○、毛利が一芝居打ってユウジを自由にする下りは、ご都合主義に思えてしまいました。
そんな人いないよね、という。。
少し荒さの目立つ作品でした。
受けが一方的に手錠で繋がれて監禁…というのではなく、攻めと繋がれる、というシチュがちょっと変わっていて萌えた。
相手は自分を拉致したヤクザなのに、大怪我をしていると見ると、救急救命医らしくきちんと手当をしてあげる松浦のキャラが絶妙。じつに肝が据わっている。容態が危なくなり薬が必要になると、祐司とふたりで病院に盗みに入ったり、ふたりで手錠を嵌めたまま、街に買い物に行ったり食事をしたり。変な話と言えば変な話だが、どこにも引っかかることなくすんなり読めて引き込まれてしまう。
祐司が乱暴をするわけでも、すぐエロエロになるのでもなく、お互いに一緒に行動したり、会話の積み重ねで相手を理解することによって、徐々に心も繋がっていく…という流れがよかった。
身体を好きなようにされてるうちにいつしか心も…っていう、BLあるあるパターンをあえて外してくれて、じっくりと心理的な歩み寄りを重ねていく過程をしっかり描いてくれているところがとても好き。「ほだされる」ってまさにこういうことを言うんじゃないかな。
お話の中では「ストックホルム症候群」かもと言及されてるけど、相手の生い立ちやトラウマも含め、気持ちに共感して分かり合うっていうのは、そこに愛が芽生えたとしか言いようがないと思う。
ラストは、ちゃんとハッピーエンドになるのかとハラハラしたが、祐司の兄貴分の毛利が実はいいヤツ。読後感は非常に爽やかだった。
救急救命医の松浦はある日やくざの祐司に銃で撃たれた兄貴分を助けろと拉致されて監禁されてしまう。
しかし、監禁されたとしても目の前の患者を助けようとする心とその兄貴分を助けたい祐司の心に触れていつしか積極的に助けようと行動していた。
これはストックホルム症候群なのか?それとも?…
恋に落ちたと言うにはずいぶんなきっかけです。でもストックホルム症候群と片付けるのもちょっと違う。
ふたりは確かに思いあって、そしてお互いを必要としてます。
そんな劇的な出会い。
やくざの醜い面もみせつつも、十分に「男気」が表現されていて魅了されました。
兄貴が最後に見せたふたりに対する態度は、まさに「男気」
この思いには松浦も勝てないのかも。
祐司に対する想いはもちろん松浦とは違いますが、にしてもこれは嫉妬してしまうほどです。
先生は結局犯罪の片棒を担いでしまった訳で、祐司はもしかしたらいずれ捕まるかもしれない。
それでもふたりは一緒にいる離れないと強い想いが伝わり、人を愛すると言うのはそう言うことなのだと、ぐっと来ました!
う~んと下のほうに、アトガキの思いっきりネタバレを書いていますので、ご注意を。
茶鬼さんが先のレビューで仰っていますが、私もこれは、あらすじとか見ずに読んだ方がのめりこめると思います。
というのも、私も予備知識無しで読んで、作品の緊迫感に引き込まれたからです。
なんだろう…、剛しいらという作家さんは、人の感情の流れを個々にキッチリ、寸分の狂いもごまかしも無く描ききってくださいます。
実は「剛しいら」っていう小人さんが何人も居て、みんなで分担してそれぞれのキャラになりきってんじゃないかな?ってくらい(笑)
どのキャラに重きを置いて読んでも、まるで自分自身の心みたいにその感情の変化を追うことが出来るんです。同じ経験をしたことなんて一度も無いのに。
私は初読では、攻め・悠司の感情に引きずられました。
過去の経験から「男になりたい」と願う気持ち、毛利の舎弟になった経緯、妄信的に毛利に従う気持ち、外の世界を垣間見た瞬間流れ出した感情、戸惑い、葛藤、欲……。
そんな感情の変化が、本当に、自分の心のように手に取るように理解できるんです。
で、2度目に読んで、今度は受け・松浦の気持ちに共感しました。
松浦こそ、ストックホルム症候群じゃないかな?とも思えるんだけど、ここでも彼の生い立ちや「生死」にたいするスタンスが、ちゃんと想いを「愛情」に昇華させている気がします。
ストーリーには、ここでは触れたくないかな。
とにかく読んでほしい。
というより、体験してほしい。という感じです。
その代わり語りたいのが!!!アトガキ!!!
いや~、美味しかった★
テーマは「彼らがどうやって手錠を入手したか」について。
ある真面目なおまわりさんは、手錠を使ってみたくて仕方が無い。
けども手錠をかけるような事件なんてそうそう起こらない。
ああ、手錠をかけたい。手錠をかけたい。どんどん膨れる願望。
そんなある夜訪れた絶好のチャンス。
恍惚と手錠をかけるおまわりさん。あぁ、この快感…。
興奮が収まらないおまわりさん。ついでにあんなこととかこんなこととかしちゃったり。
そしてその後、あ~なって、こ~なって、ネットオークションに流出した手錠を、悠司が落札。
――とかだったら楽しいよね~♪
という妄想が掲載されています。
いや~、なんて美味しい設定!
この粗忽なおまわりさんで、1冊読みたいです!
