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とうとう下巻です!
振り切れた狂気が紙面の中でとぐろを巻いていて、どこの1行に目をやっても、息を止めて見入ってしまう!
映像にしたら、彰の死体のあった暗い浜辺の上巻の方が綺麗だと思う。
下巻は、ひたすら赤や黄の体液にまみれていたから!
でも、血生臭さはありますが、愛する事で弱くなる心と守りたいと強くなる心がどこにもここにもあって、胸をギュウと締め付けられるのです!
【背徳のマリア 下】
黒崎結城×黒崎和巳(実兄弟)の幻の愛。
精子×精子→受精卵を作り上げるという神以上の奇跡を、その先まで、弟の体内に着床させた(≒子宮外妊娠)という発想がスゴイ!
オペ看が新米だとか各数値とか上げられていて、文章がリアルだから、有り得ないが前提であっても、迫力に押されます!
和巳に真相を告げられなかったのなら、どこから結城は狂ったのだろう?
兄弟の次世代を作り上げるなんて幻に嵌ったんだろう?
考えたら、エンドレスです。
でも、この話の主人公は、黒崎兄弟でも安藤でもないのだと思います。
聖母マリアがセックスレスで受胎したのがイエスだったような、和巳の中で生きて事件後は保管されている「胎児」が主人公に思えてなりません。
硬派で萌えなど外視している文章と、ラストの和巳の達観した態度が、この凄惨な事件を浄化軟化してくれています。
【背徳のマリア Mary Magdanene】
マグダレナのマリア編。
愛されていたいから言いたくても言えない苦しさが、彰の愛。
安藤には、彰が幸せである為に動く事。
それぞれ我慢している、解放したら愛は死ぬから。
でも、それは違うのに。
彰への集団暴行事件や女性化した自分と本当の自分との葛藤、圭介の母の言動から、彰は後悔と圭介への欲望が膨らみ続けていきます。
そして、彰は自分へ狂気の行動を起こしてしまう!
「お願い!圭介を信じ抜いて欲しい!」(橘の咆哮!)
【背徳のマリア 下】とは違い、文章で泣かせます。
自分の周りの大気に、切なさや苦しさが充満して、咽喉から息を漏らしながら泣きました!
【背徳のマリア 旅立ち】
黒崎和巳編 書き下ろしショート。
兄が残した研究を引き継ぐ決意を胸に北海道へ!
表紙は、前巻では赤ん坊を抱いて俯いていた彰が、この巻では、月の下、顔を上げて微笑んでいます。
ハッピーエンド好きなのに、そうだと思い切れないのですが、この本の全てが自分には傑作でした!
木原音瀬の「WELL」と同様、いやそれ以上に評価を迷う作品。
奇想天外な展開の連続に、また究極のBLに神としましたが
これ読もうと思っている人は相応の覚悟が必要です。
ある種のホラーに近いといってもいい。
圭介もよくドン引きしないで受け入れたもんだ。
まぁ、ぬるい愛だの恋だの言うてるBLが溢れている昨今では
こういうものは出ないと思います。
男性が出産とか、精子と精子混ぜて新しい生命体できるとか、
今まで「オレが女で子供生めたらよかったのに」的なセリフは
あっちこっちのBL本で目にしましたけどね、そういうモーソーを
より具体的に提示するものはなかった。というか、BL界においては
限りなくタブー。
実質的なデビュー作でこういうものを書き上げてしまう綺月先生、
鬼才というべきなのか若気の至りなのか…。
細かいところにツッコミどころは満載すぎるほど満載で、やはり筆の若さが
見えますが、ストーリーの勢いの良さに目をつぶりましょう。
とり歩きさん、ご無沙汰しております。
えぇ…なんていうかね…これは「シュミじゃない」にするか「神」にするかどっちかの作品ですね。
「感動したッ!」とはいえないが、こんなの書ける人そうそういません。
久々に頭がぐるんぐるんしましたw
あ、それとAZptの挿絵、すごくいいですねぇ~。ちょっとこれは芸術的で感動しました。
衝撃的すぎて、読了してから呆然……。
当時だから発表できたようなもので、今の業界事情だったら完全スルーどころか下手したら封印ものだと思う。
ヤンデレなんて可愛い表現すっとばして、もはや妄執とよべるベレル。
表題作の兄弟よりも、個人的には医者カップルの方が好みです。
というか、これダブル主人公で、安藤を通して互いにリンクしてる話ですよね……。
受が自分で腹をかっ捌くとか、もうどうかしてるとしか。
病み度が尋常じゃない感じで、読んでてしんどいのに、結末を知りたくてもつれそうになる勢いで文字を追ってしまいました。
どちらのカップルの話も、片方のひとりよがりな行動が目立つ。
勝手に勘違いして、勝手に恐怖して、相手の気持ちや言葉を信じられずに、ひとり疑心暗鬼になって……というか、ここまで考えてそれってその時点でもう病気だよね。
両想いなのに一方通行という図式は、相手の方が本当は辛いんだよなー……と思うので。
兄弟なら弟が不憫。医者なら攻が不憫。
作中、唯一のオアシス的役割というか、良心的役割を果たしていた(良心というか、不屈の精神力?)安藤が、受を不憫だ不憫だと言いますが、全然不憫には見えないというか、むしろ攻の気持ちを考えると、この自分勝手な受の横っ面張り倒してやりたい。
救いのないラストにも見えますが、見方によっては幸せにも見える。
というか、受にとっては幸せなんだろうという感じ。
ふたりとも幸せには見えないので、読後感は砂を噛んだ感じです。
それでもテーマが深く読ませるだけのものがあったので、BL的な萌は別として評価は挿絵と併せて神です。
表紙とタイトルがとても印象的で、ずっと気になっていた作品。
不妊治療問題+性転換問題+パラサイトイブ+BL=背徳のマリア。
上巻でモヤモヤしたものが下巻で少しは晴れた…かな・・・?というくらいの、もやもやな読後感です。
結局、結城も彰も壊れてしまった。
そばにいる安藤も圭介も、幸せなの????
無いものねだりだもんね。それをどこまで前向きに努力したってないものはない。二人とも恐ろしいくらいに頑張ったと思います。そして手に入れたものに彼らは本当に満足できたのか。精神を崩壊させても、それで本当に幸せなのか。それは彼らにしかわからないけれども。
彰は身体を作り変えたことで間違いに気づいたはずなのに、狂った歯車はどこまでもずれていってしまった。それを止めない安藤も院長もどうかと思ってしまった。そして圭介も。一番ひどいのは圭介かも。鈍いにもほどがあるというか。
お話の展開はどんどんと衝撃的&ひどくなっていって、パラサイトイブのようなSFホラーの様相。いくら天才的な腕と言っても傷跡は絶対に残るわけで、メス入れまくった彰の体は傷だらけでぼろぼろのはず。おそらくあれほどいじっていたら神経痛もかなりのものでしょう。
手に入らないものを必死に欲しがって、文字通り身も心も壊れてしまった彰が哀れでなりませんでした。
そうまでして求めてしまう愛ってなんなんでしょう。
善悪ってなんだろう?と、答えのない問いを思ってしまいました。
BLというより、問題作?だって濡れ場で全然萌えない。綺月作品の濡れ場はどエロいのに哀しいというか痛々しい。シチュとかすごくマニアックなんですけどね。
一人の男をこんなにも狂おしく思い、これほどに破滅的な愛を描いた作品は私は初めてでした。
「背徳のマリア(後編)」 黒崎兄弟の話の続きです。弟を妊娠させる結城の計画は、惨憺たる結果に終わります。
無関係に思われる黒崎兄弟の顛末が、彰に影響してくるのですね。
「背徳のマリア(mary magdalene)」 北海道の診療所に居場所を得て、彼らなりの日々を送っている圭介・彰、と安藤。
もはや夫婦の圭介たちですが、安藤は密かに彰に惚れていまして、そこに私は萌えを見出してました。
知らない人の目から見れば、羨ましい夫婦の圭介と彰。思いが成就して良かったねえ・・・と思いきや、彰はどうしても不安が拭えず、やがて兆した願望、圭介の子供を産みたいということに、凄まじく執着してしまうのです。
そこで繋がるのが黒崎兄弟。結城と同じように彰は実行するも失敗。生命は取り止めたものの、後遺症が残り、以前の彰ではなくなってしまうのでした。
子供に拘らなければ幸せに生きていけたろうに、と思う反面、これが彰だとストンと納得もしてしまう。
男の体に戻り、子供に返った彰と圭介には静謐な愛情を感じました。
ラスト、「背徳のマリア(旅立ち)」は、大人になった和巳が北海道の安藤の元へ旅立つ短編です。
この黒崎和巳は「龍と竜」シリーズにも少し出てきたと思うのですが、とても魅力的で、安藤とのその後が読んでみたくなります。
駄文で長々と書いてしまいました。綺月先生の作品は失礼ながら間違いなく好みが分かれると思われ、合わない方は本当に合わないでしょうが、私は大好きです。