永遠に、あなただけを信仰…します

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表題作殉愛

阿久津敬,43歳,OA販売会社の本部長
辻沢朋之,23歳,部下

同時収録作品メビウスの環

松岡雄一,医者
藤崎秋生,医者

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

成長著しい若手社員・辻沢朋之を見守る自分の目に、親愛以上の思いが生まれたことを自覚してしまった阿久津敬吾。妻もあり地位も築き、中年の域に足を踏み入れた男が初めて知る狂おしい愛に、朋之もまた…。
表題作「殉愛」に加え、2人の男の10年にわたる愛執の果てを描く「メビウスの環」も収録。ストーリー・テラー綺月陣の魅力の原点が詰まった幻の作品集!

(出版社より)

作品情報

作品名
殉愛
著者
綺月陣 
イラスト
周防佑未 
媒体
小説
出版社
学習研究社
レーベル
もえぎ文庫
発売日
ISBN
9784059041474
3.9

(22)

(12)

萌々

(4)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
9
得点
83
評価数
22
平均
3.9 / 5
神率
54.5%

レビュー投稿数9

「このような成就」はどうですか

トピ内でお勧めを受け購入しました。「ドロドロが読みたい人に」とのお勧めでしたが、私の印象は「哀しみ」でした。
以下、激しくネタバレです。


BL版「黒い報告書」。
1998年の作品との事ですが、昭和的な匂いが漂ってきます。というのは、昔私が小学生の時(昭和50年頃)、歯医者とかで隠れて読んだ(!)大人の週刊誌、今思うと週刊新潮で全く真っ当な週刊誌なのですが、その有名連載「黒い報告書」を思い出すのです。
「黒い報告書」とは、実際にあった事件が4ページほどの小説仕立てで書かれていて「必ず」濡れ場が入っているんです。スナックママを取り合って近所の公務員が自営のおじさんを刺した、とかそういう事件。
そう、「痴情のもつれ」なんです。
この表題作「殉愛」は今時のBLでは見かけない禁断の愛、的な、許されない愛、的なソースのかかった「痴情のもつれ」事件のあらましなんです。
子供のいない愛妻家の部長と新婚部下のダブル不倫。関係を続けるために部下を広島に単身赴任させ、狭いアパートで逢瀬。部長の妻が浮気を疑って広島まで乗り込んでくる!これが男と女ならほんとに週刊誌的なよくある事件です。
ですが綺月陣さんの筆力は「男と女のよくある話」を「男と男の愛に殉ずる物語」に昇華させてしまう。特に二人が何故か抗い難く惹かれ合い、初めて寝る時の描写。凄い緊張感でページをめくる手は止まらず、まばたきもできなかった…
「失望してください、部長!」
二人のこの初めがあるから、この終焉に納得がいくのです。

「メビウスの環」
残酷な攻めとけなげな受け。
攻め松岡雄一は、大学病院教授の息子藤崎秋生と10年来関係を持っている。そして秋生の妹夏実の婚約者でもある。
夏実に秋生との関係がばれた翌朝、ベッドで夏実が死んでいた。自分は何もしてない…そこに秋生が現れたので、雄一は秋生に泣きついて死体を処理させる。そして逃避行。
雄一は夏実の死や死体遺棄のショックで精神不安定で、秋生に甘えたり酷くしたり。一方秋生は何故だか冷静で、雄一に優しく接する。
途中でどういう流れで物語が進むかなんとなくわかるのだけれど、それでもラスト、秋生の「僕はずっと待っていたんだよ。雄一が僕を、捨ててくれる日を」の言葉は痛々しかったし、雄一の振りかざすナイフその銀色と、森に積もる雪、そして鮮血のくれないが哀しみをもって迫ってくる感覚がありました。
若いちるちるの読者さん達はこういう物語、どう読むのかな…

12

恋愛の最初から終わりまで

98年イマージュクラブ掲載の短編2本を収録した1冊。
最初にネタバレします。。。。
死ネタです。2本とも恋人達は亡くなります。
でもそれは、決して不幸ではなく、不幸を乗り越えた末の幸せなのです。
と、書いてしまうと、じゃあ、死によってしか二人は結ばれなかったの?ではそれじゃあ幸せと言わないのでは?
この本のあとがきに作者さんが言っています。
まさに題名通りに「愛に殉じる」そして「メビウスの環のように終わりのない」
今回のあとがきにつよく胸打たれました。
綺月さん、いい事言ってます。
そんなバッドエンド(一応)物語の一冊ですが、これぞ自分の求めていた作品!
苦しくて切なくて、痛くて、そしてまた苦しくて、思わずその息苦しさに涙がにじむ程の・・・
ある意味、こういった作品はメロドラマの範疇に入るものかもしれません。
もしくは火サスの展開?
だけどヌるいものじゃぁないんです。
彼等の前に立ちはだかるものはそれはそれは厚く彼等を阻むもので。
「バカだなー」と客観的にみてしまえば、確かに彼等はうまく立ち回れていません。破滅へ一直線です。
でも、だからこそ物語になりうる。
今ではこうした死ネタは敬遠されるものだと聞きます。
しかし、年1冊くらいあってもいいじゃないですか。
こうした激しい作品を読みたいと読者は希望するのです。

11

なんとも切なくも美しい愛

これはハッピーなのかアンハッピーなのか・・・
愛に殉じた為に誰もが傷ついてしまった。
でも、理性などこの愛を前にしたらなんと
儚いことだろう。
運命のいたずらのようにダメだと知りながらも
惹かれあう魂をどうする事も出来なかった二人。
それが破滅へと繋がるとしても・・・
う~ん、奥深い作品でしたね。
かなりシリアスになってしまう内容なのですが
明るくお軽い作品好きの私でも惹きこまれます。
どこかで引き返す事も出来たのではないか?
でもそれをしたら心は死んでいたかも知れない。
好きだから共にありたいと簡単に言える年齢でも
立場でもない攻め様とファザコン気味で控えめで
でも内に秘めた情熱は激しい受け様。
受け様が攻め様に信仰と言う言葉を囁いた時
攻め様の存在は盲目的に魂の全てなのだと思いました。
あまりにも強く激しくでも、それ故に悲しい結末。
死んでも尚、攻め様の傍にあり、攻め様もまた
放すことが出来ない、愛とは何処まで深くなるのかと
思わず感慨にふけるような内容でした。

「メビウスの環」も同様のシリアスな内容ですね。
どんなに逃れようとしても逃れられない愛に
捕まってしまった二人のお話でした。
人間の欲深さや身勝手さや切なさが心に刺さるお話。
愛の形も幸せの形も色々あるのだと思ってしまう作品でした。

10

今だからかえって輝ける作品

こういう作品ばかりになると、ちょっとブルーになりますが、
今の時代だったら、ピリッとスパイスになるような作品ですね。
98年の作品ですが、かえって新鮮に思われます。
耽美で湿度たっぷりな雰囲気だけど、小気味良く進んでいく展開
そしてふっと浮遊したような、余韻のあるラストは安定感がたっぷりで
ぶれていません。
「殉教」の最後にストーリーテラー役で出てくる老刑事は、推理モノの最後に出てくる探偵さんのようです。金田一シリーズっぽい余韻もあっていいですね。

5

これは、まさしく火サス、大映ドラマ!

これ、BLなんでしょうか?
いや、男同士の性愛が描かれているので、BLなんですよね。
なんというか、フィクションなのに現実のどこかでこんな事件が本当に起こっていそうな錯覚を引き起こします。
『殉愛』と『メビウスの環』の2つのお話が収録されています。
あとがきによると、1998年の作品らしいです。
思ったより、最近でびっくり。
80年代的な匂いがプンプンしているのでもっと、前のものだと思ってました。
この懐かしい、古臭い感じが、逆に新鮮です。
今どきのBL小説が洗練された映画なら、これは火サス、大映ドラマです。
80年代の匂いに浸りたい人にはオススメです。

3

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