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表題作LOGOS

会社社長の息子 橘
縹(はなだ)、橘の幼馴染

同時収録作品らしゃめん

四郎、商家の養子
エドワード・スミス、イギリス人の貿易商

同時収録作品ココナッツアイス

ケンジ、双子の弟
シンジ、双子の兄、記憶障害

同時収録作品ソレは至極当然のコト

空知(そらち)、2年来の親友
日向ユウヒ

同時収録作品リアル

金子
高津、親友

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

1973年・夏・ボクらは14才だった。
鮮烈な陽射しの中にきらめく、少年たちの、絶望と希望。

コミックJUNE、小説JUNEに掲載時、センセーションを巻き起こした表題作ほか『らしゃめん』『ココナッツ・アイス』『ソレは至極当然のコト』『リアル』を収録。絶好調のONOZUCCAワールド、即ゲットするべし!

作品情報

作品名
LOGOS
著者
小野塚カホリ 
作画
小野塚カホリ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
マガジン・マガジン
レーベル
ジュネットコミックス ピアスシリーズ
発売日
ISBN
9784906011636
4.4

(10)

(7)

萌々

(1)

(1)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
43
評価数
10
平均
4.4 / 5
神率
70%

レビュー投稿数5

ショッキング

4作品プラス超SS1編の収録。

「らしゃめん」
貧しい農家の四男坊が横浜の商家に養子に出され、イギリス人の貿易商と出会って身を持ち崩していく…という話。
話が進むにつれ、どんどん彼の境遇は落ちていく。
M趣味のエドワードに引きずられるようにアヘンをやり、エドワードと共にSMパーティに出て…
しかし賞味期限の切れた彼の行く末は。
少年の転落物語なのか、異国趣味の耽美系ともいえるバッドなエンドです。

「ココナッツアイス」
双子もの。
親の離婚で別れた双子。片割れは事故に遭い記憶障害になって、弟との過去はおろか弟そのものがわからない…
設定は重苦しいけど、兄が忘れているから弟は兄を抱けるのかも、と思った。

「ソレは至極当然のコト」
友達の空知が密かに好きなユウヒ。
空知の彼女は独占欲が強くて、ユウヒは苛立っている。空知が彼女を庇うので、我慢できずにユウヒは空知に告ってしまい…
自爆したユウヒの取った行動は!
ユウヒ…空知にざっくり爪痕を残したね。だからこれでいいんだ。

「LOGOS」
残酷なロードムービー。
少年によるBL版「異邦人」的な。
ある日、幼馴染が父親を殴り殺し、とばっちりで死んでしまった愛犬をスーツケースに入れて、埋葬のために2人でヒッチハイクする。だが…
橘の結末に衝撃を受けました。これは本当に久々の衝撃シーン…
太陽と雲がきらめく海で、縹(はなだ)はこの後どうなったのだろう?

「リアル」
幽霊に告られた男。
怖いんだけど、切なくて…。きっと死の瞬間に金子の事強く想ったんだろうね。


死ネタ多目なのは時代性?
死ぬ話でも別れる話でも、ただ重く暗いわけじゃない。不思議な透明感があります。

1

しゅみじゃないけど、心に残って仕方ない

【らしゃめん】洋妾(らしゃめん)となった青年と西洋人とのSMを絡めた愛憎を描いている。
【ココナッツアイズ】ガチ兄弟:片割れが事故で記憶障害を起こしている双子の話。
【ソレは至極当然のコト】親友のことが死ぬほど好きな男の話。親友には少々イかれた彼女がいて別れを勧めるも聞く耳もたずの親友。男は悩んだ末、呪縛は解かれると言って露出するんです。コート一枚羽織って勃ったものをガバーッとさらす。どうしてそうなるのでしょうか?その後は学校もやめて男娼に…。
露出狂の意図が不明。

【REAL】4ページの超短編。30分前に交通事故で親友が即死したと連絡を受けたのだが、その親友が家にやってきて、告白を…。

【LOGOS】 14歳 幼馴染同士。橘は父親を殺した末、巻き添えを食って死んでしまった飼い犬の死骸をスーツケースに詰めて海へ逃亡しようとする。
それだけでも衝撃なのに、さらに物凄い衝撃が。思わず大きな声で え!?と叫んでしまったほどでした。
最後まで全部ネタバレします。

↓↓







父親殺しの息子・橘は逃亡劇の途中でひき逃げにあい、首だけが事故現場に残される。残された親友・縹は彼の生首を衣類に包んで、犬の死骸が入ったスーツケースを下げて海まで歩いて行き、海辺で彼にキスをする…。サロメみたいだ。呆然。
犬を連れての二人と一匹の旅行は幼い頃、縹がいつか一緒に行きたいねぇと言っていた夢だった。こんな形で実現するとは誰も思っていなかっただろう…。
セックスについて「…ほんとは大人がするんだ 恋人同士がするんだ‥ほんとは!」という橘の叫びが痛々しい。そして逃避行の最中、食物は万引きして調達するのだけど、宿代は橘が身体で払っていたことを縹に知られてしまった絶望。
衝撃のラストで最初はその事実だけを受け止めるのに精一杯でした。でもその後何度か読み返しました。こんな絶望的な話は趣味じゃないし、片方死亡なんて嫌なんです。でも読んでしまうのは何故だろう。
海に到着してからのページ。何故だか奇妙に美しく怖いけど見てしまうという心理に近いです。そしてどうしようもないやりきれなさに満ちていて感情のやり場がない。
橘の絶望を描きたかったとの事ですが、橘よりも生き残った縹のほうが心配になる。けれども1998年の現在、1973年14歳のときだったあの夏を思い出すという回想録という形をとっているので、少なくとも39歳までは生きているんだなぁと。


作家さんの描きたいものがはっきりしているという迷いのない点が素晴らしいと思います。
どれもバッドエンド系です。読む人を選ぶと思いました。らしゃめん、ココナッツアイズ、ソレは至極当然のコトは「しゅみじゃない」
REALは萌萌 LOGOSは評価が難しい。しゅみじゃないけど、心に残って仕方ない。神なのかもしれない。こんなお話は他にないもの。

1

世代はここな筈なんですが。

私はBLという名前が出る前にこっちの世界(笑)に来たので、ちょうど若い頃にこれを読めた世代なんですが、今読むと無理でした。
この作家さん自体が合わないのかも。
絵柄も懐かしいのですが何故かBLだけは古い感じが不得手で、登場人物の行動は理解出来ないし、何となく響きませんでした。
多分、十代、二十代が読まないと分からないのだろうなあ。
らしゃめんは比較的好きですが、最後はああじゃなくてもよかったでしょうし、友達に片想いする話は途中までいい感じなのに何故最後が露出狂??
表題作も行動の理由、犬まで殺して持ち歩く意味、全てが若いからなんですかね?

絶賛されている中、取り残されているお年寄りもいるという事で。
昔に読まなかった事を悔やみつつ。

1

痛い、哀しい、けどやめられない。

正直、ここでなんてレビューしたらいいのかわかんない。
全作通して痛く、ハッピーエンドなんてないわけなんだけど、心に残るものはすごく大きい。
小野塚カホリという人の凄さを知った一冊です。
BLなんだろうか、BLという言葉で片付けていいのかもわからない。

14歳。って、とても微妙な年頃ですよね。
大人でも子供でもない。
どっちつかずだから大人や社会に対して反発しつつも、自分一人では何もできない。
それが悔しくもあり、自分が疎ましくもある。
繊細で、危うい時期ですよね。
表題作『LOGOS』では、そんな14歳の二人が、二人きりで逃避行に出ます。
まだまだ子供で経済力のない二人は、それでも目的地・柏崎に行かなければなりませんでした。
お金がない二人。食べ物は万引きで済ませても、宿代は橘が稼いでいた。
それを知った縹。
「(セックスは)大人がするんだ 恋人同士がするんだ ほんとは!」
橘の痛々しい叫び。ほんとは好きな相手、縹としたかっただろうに、そんな思い全く顔に出さずに。
そんな二人の一度だけのセックス。
最後、目的地の柏崎の海岸で、橘の唇にキスをする縹。橘との回想。
ラストは本当にただただ涙が出てくるだけでした。
「橘の絶望を描きたかった」って先生、これは絶望なんてもんじゃ…
二人の逃避行の理由、橘の宿代稼ぎ。
そして何をするわけでもないけど、側にいるというだけで橘を支え続けた縹。
14歳という子供には荷が重すぎた気がします。
そんな闇の中で二人の愛だけが唯一輝いていたと思います。
必死に二人で生きようとした、そんな二人の涙はとても美しく、悲しかった。
最後の海のシーンがすごく印象的でした。
ちなみに「LOGOS」とはギリシャ語で「神の言葉」という意味があるそう。
神か…そうやって考えるとさらに哀しいな、運命ってこと…?

その他収録作品は、洋妾(らしゃめん)となった日本人と西洋人のSM愛憎劇、双子の近親相姦、彼女持ちの男に迫る男の狂気、死んだ友人からの最後のメッセージなど。
全体的に痛い、暗い、全く幸せな話はございません。
それでも心に強く残るのは、小野塚カホリの心理描写の素晴らしさのせいなのはないだろうか。
正直、みんなおかしい、狂ってる人が多いんだけど、それでもその人の痛いくらいの気持ちが伝わってくる。
なんでそんな行動をとったのかとか、わかるからこそ痛い。痛いし、哀しい。

ちなみにこのコミックスを読んでいる間、私の心の中のBGMは尾崎豊でした。

0

現代BLとは異なる文学BL

70年代のアメリカ映画のようなノリが感じられる作品です。
30代になって改めてこの作品を読むと、あぁ自分にはあの若いころの瑞々しい気持ちがすっかりなくなっているんだなぁって思います。10代とか想像の中でとんどもないことを考えているんだけど、そういう妄想力が、経験を積むごとにやはり現実に近いファンタジーになってきてしまうんですよ。
その点、「LOGOS」の弾け方っていいですね。
1973年夏休み、14歳の2人は、柏崎に向けて旅に出る。お金は持っていないし、あてもない。今、こんな無銭旅行する中学生っているのかな。短い話なんだけど、旅行中の高揚やふとやってくるシリアスなシーンには、ものすごく時間が濃縮されているような気がします。
でも柏崎。今では地震の被害地、原発のイメージで一般的にはどうなの?と思います。実際はひなびた風光明媚な海岸で、実際にそこを知っている私としては、かなりノスタルジーを掻き立てられるのですが、世間ではどういう風に響くのだろうか心配です。
作品を読んでいると、小野塚さんの表現したいぃ~という強烈な意気込みで、作品を書いているのがわかります。
彼女のこの時期にしか生み出せない作品だったんだろうな。それがわかるからこそ、さらに2重にノスタルジックになれるんです!

3

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