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読み終えて、やっぱりひのもと作品らしいビターな感じは多分にありながらもこれまでとは違う世界観を感じる事が出来ました。西江彩夏さんの長距離初恋を読んだ時にも感じた初恋の暴走が自らの夢や矜持を意図も簡単に捨て去ってしまう痛さ、相手が大事だからこそ才能や夢を捨てさせてはいけないからこそ一度別れざるを得なくなってしまう若さと稚拙さがありました。広尾の辛辣さはキャラとしても苦手なんだけども、しかし、ひのもとさんらしい(攻)なと思いました。しかし、結局は相当甘いのですよね。けどもそこらが伝わり難さがひのもと作品らしくて好感がもてます。(受)仁科も霞を食って生きてるような変人さがとてもピュアで無垢で面白いけど面倒臭さそうです。この作品含め3作品の全ての(受)×(攻)のキャラで好きだというキャラはいないのですが、なのに3作品全て面白い。面白さはキャラの魅力だけではないんだなと感じ入ります。
ひのもとうみさん3作目は、大学生が主人公。
初雑誌掲載の作品だったものの単行本化だそうで、それに書下ろしでその後が一本入っています。
主人公達の情熱のベクトルがすれ違ってしまった為に起きたちょっと切ない展開、受けとなる人物の恋愛にのめり込む不器用な生き方の姿が少し痛さを感じさせる、
全体的に淡々とした、しかし舞台が大学であるだけに、自分ノイメージする芸大=季節イメージは秋~冬・熱くなくて少し寒い・少し古い建物、といった時代は現代なのに何故かノスタルジックを感じさせるような雰囲気が全編に行きわたった、地味で堅実だけど人間くさい作品だな~という印象を受けました。
そのイメージする雰囲気に金さんのイラストは実にマッチしていたんですよ。
そして、このお話実は読み終わって後からじわじわくる。
番外ペーパーを読んで、すごく彼等が愛おしくなって評価が一段階あがったという、そんな味のある作品でした。
芸大の文芸部3年で詩を書いていきたいと望んでいる幸は、屋上で寝ているところ雨がふってきたからと、見知らぬ男から傘を差しだされる。
その男は実は、厳しいと言われる幸が入っているゼミの、一度も出席したことのないという、留学の為2年留年している同学年の学生・広尾でした。
幸の授業が終わるのを待っていた広尾は、半ば強引に幸を自分の住む寮へ連れてきます。
そこで幸は広尾が彼の事を知っていて興味を持っており、そして幸の詩を褒めてくれたことを大変嬉しく思うのです。
広尾は、何のためらいもなく幸にキスをしかけたりして、二人が恋人になるには時間はかかりません。
しかし、初めての恋にのめりこむあまり授業をサボって広尾の部屋に入り浸る幸。
どんなに広尾が心配しても、苦言を呈しても聞き流すだけで、、、そうしているうちに広尾に突き放されてしまう幸なのですが、もう幸にはどんなに頑張っても言葉が浮かんでこない、詩がかけなくなってしまっていたのでした。
この幸という人物がああ、詩人だなー、というか芸術家肌というか、文筆家肌というか、そういう人に自分が持つある種のイメージを表わしたような人だな、という印象を受けました。
屋上で寝ていて雨にも気がつかない。
結構マイペースで自分の世界がある人?
詩を書いていきたいという気持ちを強く持っていて、多分そればっかりの詩バカというか世界がそれ一筋だった人なんだろうなと想うのです。
だからこそ、何より同じ学生の、自分の道をきちんと見据えて将来何がしたいかビジョンをはっきり持っていることに感心させられた広尾に褒められたことで、特殊な気持ちが幸に芽生え、そして初めての経験に、のめり込んでしまう。
詩を描くことより恋愛が大事になってしまう。
詩を描いている時は、自分に迷いがありながらも、強そうな雰囲気をもっていたはずなのに、一気にヘタレがひどくなってしまう。
一つのものにのめり込んで、まだ両立が上手くできない、ってそんな風を見せるのです。
基本、不器用なんだろうなー。
しかし彼は詩が好きだから、立ち直るのはやっぱり詩でなんです。
書下ろしにおいても、不器用さとヘタレとを垣間見せて、必死になっている幸がちょっと可哀そうだったり、健気な姿に切なくなったりもするのです。
広尾は年上らしく、でもとても大人な人だったと思います。
彼は幸の詩の才能を認めて、それがあるから幸を好きになった。
だから厳しくしても彼に詩を書いて欲しかった。
その応援の仕方が、ちょっと冷たいんじゃないかとも思えますが、実に大人な対応で、乗り越えるのは自分というスタンスを貫きとおしてます。
書き下ろしについてもしかりでした。
准教授が広尾の事を幸のパトロンと呼びますが、まさにそうだと思います。
飴と鞭?www
二人がベタアマなのではなく、ちゃんと自立しようとしている態度に、自分で切り開こうをしている姿に、かなり前向きなお話だったのだと感じさせませした。
派手さもない、甘さもエチの時くらいしかない。
でも、将来の岐路に立っている学生なのですから、こういう展開は自分にはとても好ましいものでしたヨ。
社会人モノにガッツリお仕事が嬉しいのと一緒で、きちんと学生の本分をまっとうしてこれからを考える学生の姿はあるべき姿だと思います。
初読みの作家さんでした。
かなり気の毒な展開に、ハラハラしながら読みました。
主人公の二人は、自分の欲望や欲求に正直で
2歳の年の差とは思えないほど、
かなり価値観にズレがあるように思えたのですが
お互いの努力で歩み寄って行くのでしょうね。
(身体の関係は、さっさと歩み寄ってましたが)
広尾の冷たさも、仁科の痛々しい程の不器用さも
気持ちはわかるけど、読んでいて辛かったです。
フランスでの続編とか出ないのでしょうか?
ちょっと、仁科が可哀そうすぎて、リベンジな話を読みたいです。
芸術家だからこそ。
仁科はいろいろめんどくさい性格で、
だからこそきれいな詩を書いて、
初めての恋に肉欲ごと溺れて、詩の書き方も見失う。
広尾は仁科の詩の才能を愛していて、
でも肉欲に抗えず仁科を抱いてしまったけれど、
自分への恋に没頭して、詩を忘れてしまった仁科に危機感をいだく。
二人とも大学生という、もう子供ではないけど、でも、大人にもなりきれていない。
だからこそ、お互いに足りない物があって、一時離れなければならなかった。
展開にとっても納得がいく。
あと、挿絵が、仁科のキャラとか、とってもイメージが合っている。
金光先生の挿絵って、作品イメージと合っていると感じることが多くて、意外と好き。
暗くて卑屈で不器用な世間知らずだけど、詩の才能だけはある受けの仁科。そんな仁科に興味を持ってグイグイ距離を詰めて体まで奪ってしまった攻めの広尾。
仁科にとっては初めての大恋愛で浮かれすぎて勉強も詩もおろそかにしてしまいます。不器用なので一度に色々頑張れない。自立心が強く将来設計もしっかりしてる広尾はそんな仁科に幻滅し、自分が抱いたためにあいつを駄目にしてしまった…とすがりつく仁科を拒み、距離を置きます。
一度は別れるけど、自分を取り戻しまた詩を描き始める仁科。金ひかる先生の絵は受け攻めはっきりしてるので、振られた時の仁科は確かにダメダメだったけど、なんとも哀れで例えるなら美形ののび太君?結果的にはショック療法で成長できたから良かったけどかなり気の毒でした。
一度目の諍いは仁科にも悪い所あったけど、留学の件でもめたのは確かに広尾も仁科を追い詰めすぎて悪かったと思う。誰もが広尾みたいにしっかりしてるわけじゃないし、仁科がああいう奴だってわかってた事じゃん。叔父の島村先生が言うようにもっと相手の話を聴く態度も学んだ方がいいと思う。相性がいいのか悪いのかよくわからないこの2人はこれからも色々揉めては解決していくのかなと思いました。
書き下ろしペーパーも読んでの感想はやはり、甥の恋人が男でも全く動じず祝福してくれる大人の男の島村先生が1番素敵だと思いました。島村先生スピンオフないのかな?