もっと優しい人に恋すればよかった。 でも優しい人は、貴方じゃない。

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表題作春へ

受様の父親の後輩で画家 工藤旭
父を亡くし一人ぼっちになった高校3年生 小嶋十希

その他の収録作品

  • あさひのとき

あらすじ

俺は手紙を届けにいく。父さんが昔、渡すことのできなかった大切な人への手紙を??…。高校3年生の小嶋十希は父を亡くし、工藤旭のもとを訪れた。彼はかつて父が恋をした相手であり、十希にとって道標となる絵を描いた、憧れの画家でもあった。しかし、旭は十希が息子だと知ると「帰れ」と拒絶してきて……。雪の降るころ、一通の手紙から始まる恋のはなし。

作品情報

作品名
春へ
著者
朝丘戻 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
シリーズ
春恋
発売日
ISBN
9784861345746
3.9

(64)

(30)

萌々

(14)

(9)

中立

(8)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
10
得点
241
評価数
64
平均
3.9 / 5
神率
46.9%

レビュー投稿数10

しっかり者で可愛い

自分の父親を看病しながら、沢山の生きるすべ、そして父親が想いを寄せた人の話を教えて貰った十希。身近な人の闘病を見守るって辛いことなのに、幸せだったと言い、日々を日記に残していた十希が、本当に優しくてしっかりした子なのだと感じました。
でも、完璧じゃない。潰れそうになった時に、心の拠があったからいられた。それが、『春へつぐ』と言う絵。

『春へつぐ』を描いた旭に惹かれ、来るなと言われながらも、料理を作りに通う十希が可愛くて健気でたまりません!
でも、思うままに突っ走らない。一度考えて行動する姿は、大人びて見える。
人生の分岐点に立った時に、自分はこんなに冷静でいられるかなぁと、色々考えてしまいました。

旭は、ほだされましたね。通い妻みたいな十希の手料理を食べ、自分の作品を理解してくれる。好きになるのは早かったけれど、十希の両親や彼の将来を考えると、踏み出せない葛藤がもどかしく、それを受け入れて離れる覚悟をした十希の潔さがせつない。

結果、離れられるわけないですよね旭。ここからは、ニヤニヤが止まりませんでした。
なんやかんやで、読むと幸せになる朝丘先生の作品は、やはり自分の好みに合っているんだなぁと思いました。

2

「春へ」の朗読CD/Cv鳥海さん

「春へ」のCDですが、ドラマCDではなくダリアさんとリブレさん共同フェアの特典朗読CDです。

「春へ」に出てくる画家の旭が高校生の恋人、十希に「遺言」のような気持ちで声のメッセージを残すという設定です。

冒頭から何を話そうかそわそわする鳥海さんにかわいさを覚えてしまいます。
でも落ち着いたらちゃんと年上で頼りがいがある所を聞かせてくれます。

自分が天国に行き十希の両親に会ったらこう話すつもりだってこと。
(内容は聞いてのお楽しみ)
色々な事情から人間不信になって、絵に対する焦りや不安から落ち込んでいたのを
救ってくれた十希を「特別」だから、離れない。幸せにするという。
旭の十希への深い愛がこちらにも伝わってきます。

極めつけは「泣くなよ・・死んだって俺は幸せなんだから。」

あとは、是非CDを聞いてみて下さい。
これでもだいぶ省いたのですが、十希が聞いている所を想像するとうるっときます。
そして本編「春へ」を読んでもらえるともっと旭の性格がわかり、
どれだけこの告白を頑張ったかがわかると思います。十希もいい子ですよ。

他の方が「攻め視点の話しが聞きたい」と書かれていたので これはぴったりです。

1

こんな大人な高校生っているのかな?

この作家さんのお得意な精神的感動系のストーリーで、深く人間の感情を
きめ細やかに描写しながら読み手に感動を与えて行くような作品でした。
片手間でパパッと読める本ではないけれど、味わい深い作品でした。

全体的にどこかパステルカラーなイメージがありながらも設定はシリアス気味。
受け様の背景もかなり寂しく感じられるのですが、小さな幸せを感情豊かに感じ取る
感受性の豊かな受け様がとても高校生には感じられなくて、相手役が亡き父の友人で
年の差もあるのに何故か同列に感じてしまう事もあるような芸術家。
芸術家って独創的で子供みたいな感性もあるお方が多いからこの作品の攻め様も
まさにそんな雰囲気でしたね。

母を5歳で亡くし、父を癌で亡くした受け様、でも父親との最後はかなり濃密で
父親が悔いを残さないとでも言う感じで最後の時間を受け様と二人で静かに終わらせる
そして、父親の一つだけ心残りを偶然見つけた受け様は父親の為と自分の憧れの意味で
学生時代の年下の友人で、父親が恋かも知れないと告白した事で相手を傷つけ
そのまま謝る事も出来ずに、渡せなかった手紙を亡き父のかわりに届ける受け様。
そこから始まる切なくも苦しくそして穏やかで優しい時間を手に入れると同時に
受け様は子供の頃から大好きだった攻め様の絵と同じように、それ以上に攻め様を
好きになっていくのです。

しかしその思いは攻め様を再び傷つけることだとも理解している受け様。
攻め様は受け様の父親との過去のこだわりで苦しんでいたし、そのせいで同性同士の
恋愛にも必要以上の嫌悪を隠し立てしない程なんです。
そして受け様の気持ちを受け入れる事など絶対出来ないと・・・

過去のしがらみや攻め様自身の過去の傷、現在も続いてる苦悩、受け様は亡き父が
攻め様の幸せを願っていた事もあり、自分が攻め様を幸せにしたいと強く思うように。
でもそれは殆ど夢に近いような思いなのです。
始めから大人びた考えをしている受け様ですが、攻め様と知り合った事で更に大人に
そして、攻め様は大人のフリした子供みたいでしたね。
作品自体が手紙のような形式になっていて、各章のタイトルを繋げていくと
攻め様が受け様の父親で友人だった先輩への手紙にもなっているかなりよく考えられた
文章構成にもなっていて、素直に凄いなぁ~って思ったりもします。
そして読み終えると心の奥がじんわり温かくなる作品でした。

6

景色が情景になる

正直読み始めて、朝丘さん、またやっかいな作品を書いてくださったものだと(汗)
『あめの帰るところ』もそうだったのだが、素直に受け入れてはじめて二人の関係がストンと落ちてくる。
だけど、そこへ行き着くまでに自分の中でクエスチョンマークが飛び交った事実も否めない。
確かに、既に旭の作品を見たときに十希は旭に焦がれる要素を持ち、亡くなった父親からの話により、会ったこともない旭にすでに既知の感覚を抱き、簡単に恋をする要素は備えているわけで。
それにしても、十希は父親が亡くなっても、それが既に5年も前からそのための準備がされてきていて心づもりも出来ていたとはいえ、まだ18歳の、まだ子供なのに、本当に子供っぽいのに老成している部分もあり、泣くのは父親であり自分じゃないと決めている心は痛々しくはないか?
その寂しさが、まだ一人でいる旭を慕う方向へ向いたのでは?とも。

旭は十希の父親の2コ後輩だから年齢的にもう30台半ばくらい?
比較してはいけないが「あめの~」の能登先生より壊れてないけど、彼もまた不器用な大人でした。
母親が浮気して両親が離婚して、それが家庭や結婚観というものにかなり影響を及ぼして同性愛を認められないでいる。
それは十希の父親がはじめて同性を好きと自覚した事を告白してしまったことで、旭が彼を拒絶した理由でもあるのですね。
彼には絵が全てで、絵が自分の分身で、絵が自分自身の表現である。
それを恋人だった女性は認めてくれなかった。
唯一認めて共感して、ずばりと当ててくれたのは子供の十希。
だから十希が旭の特別になりえる要素なのです。

旭のほうが十希より子供っぽい感じがするのですが、「○○バカ」とも言えるような絵がすべての旭には、甘えて甘えさせる、自分を引き上げてくれるただひとりの理解者である十希は、旭に葛藤を産ませながらも、必要欠くべからざる存在になっていく、その過程の表現が実はとても印象的な風景によって語られていく文章が綺麗でした。
その「風景」は「情景」描写なのです。
この情景は、旭と十希の心そのままのような気がします。
ひょっとして、作者さんはこれを表現したかったのかな?と思うほどに(それは旭の絵が情景であることからも明確だとは思うのですが)心情とシンクロした風景になっていたと思います。

十希がただ一途に思うだけじゃない、旭と対等にありたいと思っているのに、旭が正面から向き合ってくれていないことに不満をぶつけるシーン、そして別れはとても切ないものでしたが、完全な拒絶ではなかったのですよね。
だからこそラストの幸せがありました。
番外SSに、年末年始十希が北海道へ行っている間の旭の気持ちの確認が描かれているので、これは必見ですね!
これがあって、はじめて作品の全てのピースがピタっとはまる。

十希の父親が十希宝物を探させる宝探し・・・
ひょっとして、これは十希が旭という存在を宝物にするための父親の作為だったのでは、と錯覚させるほどに感じてしまいました。

なにをどう伝えたらいいのか、非常に考えてしまうのですが、
気持ちと風景とエピソードが絶妙に絡んで生み出される物語、やはり素直に受け入れるべきだな、と、そしてそれに値するお話だったのだと思います。

6

しっとり

しっとりしていていいお話だったと思います。
文章が瑞々しくて、キャラクターに合っていました。
引き込まれて一気に読みきるのではなく、
なる前に一日少しずつ読み進めていったので
最後まで読んで章のタイトルのからくりを知ると
とってもじんわりしました。
途中ちょっとキャラクターが掴みづらかったので
萌×2にしたけど、お話は神評価です。
主人公(受)がしっかりしているからなのか
年の差をあまり感じなかったのが残念だったかな(´・ω・`)

3

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