俺が泣き虫だってことを、きっときみは永遠に知らないままだろう。

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表題作Heaven's Rain 天国の雨 Limited Edition

藤岡暁天
櫻凜

あらすじ

「人間の幸不幸を学ぶ必要のある者が天使に選ばれる」二十一歳の櫻凜は、バイト先の弁当屋に訪れる会社員、藤岡瑛仁と不毛な関係にある。病弱な凜は瑛仁への想いを最期まで貫こうと考えているが、藤岡にもまた、生涯想い、守ろうとしているものがあった。無言のうちにできたいくつかのルールをもとに続く、すれ違いの関係。そんな折り、瑛仁の弟、暁天が現れて、「兄から手を引いて俺のところへおいで」と凜に告げ……——天使だった男と紡ぐ、永遠に続く幸福への旅路。

初回限定で付録小冊子あり。

作品情報

作品名
Heaven's Rain 天国の雨 Limited Edition
著者
朝丘戻 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
発売日
ISBN
9784861347863
4.3

(125)

(83)

萌々

(25)

(4)

中立

(6)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
16
得点
533
評価数
125
平均
4.3 / 5
神率
66.4%

レビュー投稿数16

幸せのカタチ

ちるちるさんの第5回BLアワードでランキングに入っていた「坂道のソラ」はどうにもこうにもツボに入らず(失礼!)、この作品も読もうかどうしようか悩んだのですが「初回限定小冊子」に惹かれ購入。イヤ、良かった。すごく良かった。

個人的地雷の「不倫」が初っ端から描かれていて、正直この本の厚さも手伝い読み切れるか心配しながら読み始めました。だって値段も厚さも通常のモノと比べ約2倍。手に取るとずっしりとした重みで、正直2冊に分けてほしかったなあとか、そんなことを思いながら読み始めました。けれど読み始めると一気に引き込まれました。

設定は「天使だった男」が出てきたり輪廻転生が描かれていたりとファンタジー要素が強いのですが、それでいてリアリティも非常に高い。それぞれのキャラたちがとても魅力的で感情移入しやすく、そこかしこに撒かれた伏線を上手に回収しながら進んでいくストーリー。文章の構成が非常にお上手で、無理がない展開にページを捲る手が止められませんでした。

現在と過去。
暁天さんと瑛仁さん、そしてリンとの関係。
いつの時代も変わることのない人間関係やその人の持つ本質。
そしてどの時代であろうと、出会って恋に堕ちる二人。
今までありそうでなかった、そんな不思議な空気感のあるストーリーでした。

読む前、あらすじで拝見した「天使だった男」。
だった、ってどういう意味だろうと「?」状態で読み始めましたがその設定の素晴らしさに圧倒されました。

どの時代も病弱で早逝してしまうリン。
そんなリンを愛し、見守る暁天さん。リンのいなくなったその後の人生を送る暁天さんの気持ちを思うと胸が詰まります。
けれど、この二人には他の人には立ち入ることのできない想いがあって、二人だけが理解できる幸せのカタチがあるんだなあとしみじみ思いました。まさに純愛。二人のお互いを思う気持ちに、気づけば落涙している。そんな作品でした。

あと個人的に凄く好きだったのは瑛仁さん。
狡い男ではありますが、ゲイである自分を認められない気持ちや、世間体を気にする思いは当然あると思う。自分を受け入れてくれた明美を大切にしようとする姿は、彼の誠実さを物語っていると思います。
そして明美も。
恋愛感情を抱いてくれることのない男を愛してしまった彼女の切ない恋心に「強い女性だな」と感じました。幸せになってほしいです。

暁天さんとリン。
二人が現世で幸せで過ごせる時間は短いけれど、愛情の深さは時間では測れないものなのだと痛感しました。これからも、いつ、どの時代で出会っても、幸せな二人でいてほしいと願っています。

yocoさんの描かれた表紙もなんとも言えず素敵でした。
若干色のトーンが低いので一見暗い雰囲気ですが、雨上がりのなか、手を繋いで一緒に歩きながら笑顔で見つめあう二人。空には虹がかかっていて。
本編とリンクしたような素敵な表紙でした。

とにかく文句なしの神作品です。

17

苦しさと幸せがつまってる

朝丘戻にしか描けない空気感。
そこには愛しあうことの儚さと苦しさでも尊さがちりばめられている。
この作家以上にそれらを偽りなく赤裸々に愛情と誠意をこめて表現できる
作家はいないでしょう。
今作品はそのテーマを惜しげなく伝えきった渾身の、それこそ魂をこめた作品だと思います。

号泣きしました、なんて安い言葉でこの作品の感想は述べません。
お涙頂戴の辻褄あわせの物語も、綺麗事ばかりのよい話もきらいです。
泣きたいために人が死ぬ話を読むのはもっと嫌いです。
そして朝丘戻はそんな作品は描かない。
長年ずっとこの方の作品を読みつづけてきました。
一度も裏切られたことはありません。
この作品を読めて幸せでした。
幸せな気持ちと愛情がつまってます。
読んで後悔はありません。

16

うまくまとまらないのですが…

ようやく読めました。
まとまった時間が出来たら一気に読みたいと思っていたので。
(ちょっと追記しました)

髭の元天使のおっさん、
なんて響きで、コメディチックだけど、そんなところは微塵もありませんでした、やはり。
公式の特設ページでお試し読みをして続きが気になるなら、ぜひ読んでみてくださいと言いたい本です。
先入観なしに読んでみて欲しいなと思いました。
以下、ネタバレしてます。





もしかしたら奇跡が起こるのか起こるのかと気がつけば、奇跡は起こらずに終わってしまいました。
そうして元天使の彼は来世でリンと出会えることだけを願い、リンの幸せだけを願い。
それが自分の幸せだと言ってのける。
どれだけの覚悟があれば言えるのか思えるのか。
彼はリンがいなくなった後、どれくらい生きたんだろう…。
天寿を全うしなくては来世できっとリンに会えないだろうから。
大切なひとがいない時間をひとりで生きていく事を考えると胸が苦しくなりました。
でも、きっとこれも魂の修行だよって言いながら、生きたんだろうなとも思いました。
そして彼が何故「リン」と呼ぶのかなぁと思っていたけど、リンの魂を愛しているからなんだろうなぁって。

彼等だけでなく彼等を取り巻く人物たちの事も詳細に書かれていたのが印象的でした。
人それぞれに人生があるんだなって。

初回限定版の小冊子はぜひ読んでいただきたいので、小冊子がいつまでついてるのかわかりませんが、気になってるならついてるうちにどうぞと言いたいです。
小冊子で彼等の次の人生が垣間見られて、どうぞたくさんの時間を一緒に過ごしてくださいと思わずにはいられませんでした。
一分一秒でも長く。

yocoさんが好きでyocoさんのイラストに惹かれて読んだのですが、読んで良かったです。
魂を込めて書かれたであろう朝丘先生にもお疲れさまとありがとうを伝えたいです。
タイトルの「Heaven's Rain 天国の雨」もすごくいいタイトルだと思います。「虹」も大切なキーワードですよね。
いろいろと感慨深いです。
後から後からいろいろじわじわきそうです、この本は。
あ、雨の季節にもう一度読みたいです。


13

天使の涙と雨の色

天国は一つではない、という考え方が好きです。人それぞれに天国があるのなら、この作品の顎髭天使もいて、こういう形の生まれ変わりもありえる、と思えてきます。
短命で生きる定めにあるという、櫻凜とかつて天使だった藤岡暁天の、「永遠に続く」物語。
私は結構、話の展開に整合性を求めるといいますか、細部が気になるタイプなのですが、この作品は序盤を読んで気にするのは止めました。決して荒唐無稽だからではなく、天使とは?とか、生まれ変わってもなぜまたサクラリンになるのか?とか、そんな細かい所は重要ではないと感じたからです。
「うたう鳥」の時間軸は現在、今のリンです。心臓に爆弾を抱えながらも、お弁当屋さんでバイトをし、両親の援助を受けつつ、アパートでささやかに自立した生活をしています。リンはゲイでもあり、藤岡暁仁と不倫関係。そして、藤岡の弟、暁天と運命的に出会います。
「天国には雨が降らない」は、前世のリン。やはり心臓が弱く、最期の二週間の話。
死を目前にしたリンは、天使とかけがえのない時間を過ごすのです。この天使が暁天になります。
「しゃぼん玉の虹」は、現在のリンと暁天。二人は結ばれて、前世より長く、濃密な時を一緒に暮らせているのですが、別れの時が近づいている。
リンの心情描写が繊細であり、深く染み入ってきました。リンと暁天、二人が一緒ならもう、何も言うことはないなと、私の最大の感想はこの一言に尽きます。
ささやかな日常が愛おしく思える、優しい作品でした。リンは体は弱いですが、一人称は俺、繊細かつ筋の通った性格が良かったです。
yoco先生の表紙も大変素敵でした。
もっと上手く感じたままに書ければいいのですが、これが限界です。お涙頂戴のチープな作品ではないことは、はっきりと言えます。ボリュームがありますので、読み終えるまで時間が多少掛かりましたが読んで良かったです。

10

何度でも何度でも廻り逢う

予約して楽しみにしていた今作。
時間のある時に、大事にじっくり読もうと思ってましたが、あまりの表紙の美しさに衝動を抑えきれずに一気読み。



はあぁぁぁぁぁぁぁ…………(溜息)



何でしょう、この充溢感。
どんな言葉を選んでも陳腐になってしまうというか、取りあえず読んで良かったです。
輪廻転生ものは使い古されたネタだと思っていても、書き手によってその色は様々で、今回の朝丘さんの転生ネタは胸があたたかくなりたまらない幸福感に満たされました。
幸せの感じ方は十人十色ですが、こういった形が苦手という人も一定数いると思いますので、好き嫌いは分かれると思います。
お涙頂戴だと思うかもしれません。

でも、何度でもリンのことを見つけ出し、愛してしまう暁天と、生まれ変わって記憶をなくしても、やっぱり何度でも暁天に恋をするリンが愛しくて愛しくて。
幾度となく繰り返される輪廻の中で、このふたりの紡ぐ幸せを垣間見ることが出来て、たまらない満足感でいっぱいです。

リンも暁天も尊も、そして明美やるりも、みんな素敵なキャラで好きでした。
転生前も転生後も嫌な奴だなと思ってしまうのが瑛仁なんですが、これもこの人の役割だと思えば納得出来る……というか、こういう人がいても仕方がない。ずるい人間がいることで、物語にリアリティが生れます。

小冊子もボリュームがあり、最後の最後まで丁寧に描かれる二人の様子に
こみ上げてくるものがありました。
読み終わった後でもう一度表紙を眺め、そこに掛かる虹と、キラキラ光る
雫を見ていると、胸が熱くなります。


ずっとふたりが幸せでありますように。
そう願わずにいられないようなお話でした。

8

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