すべてが澱んだ景色の中、アンタだけがクリアだった

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表題作カナさん

居酒屋の店員 廣瀬瑞紀
店の常連でバンドのギター カナさん(嘉那裕輔)

同時収録作品ワンマンストーリー

同時収録作品たべものではありません

同時収録作品月翳

同時収録作品外道

彫り師の弟子
刺青のあるアパレル社員 宇陀児

その他の収録作品

  • ワイヤー
  • 嘉那さん
  • あとがき

あらすじ

初めてカナさんに会ったのは、真夜中過ぎの居酒屋の便所。
バンドマンで、自由が服を着て歩いているような、ちょっと目立つ人だった。
俺はと言えば、不満はないけど希望もない、やりたい事も時間もない、カナさんとは違う世界を生きていた。
そんなオレがカナさんの小さな秘密を知ってから、だんだん世界が変わっていってーー…鮮烈な印象を残して駆け抜けて行ったカリスマとその周りの人間模様を描いた表題シリーズ他、レスラーBLや刺青フェチのイチャラブ等、ファン必見、著者のBL集大成!

(出版社より)

作品情報

作品名
カナさん
著者
トジツキハジメ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
発売日
ISBN
9784812483206
4

(72)

(37)

萌々

(17)

(9)

中立

(3)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
26
得点
283
評価数
72
平均
4 / 5
神率
51.4%

レビュー投稿数26

楽屋の落書き

レビュータイトルは一番好きなシーン。

居酒屋バイトのヒロセくんがカナさんと出会って、あっという間にカナさんはいなくなってしまう。それからのお話。

カナさんの置いていったテレキャスを弾きたくてカナさんのバンドメンバーに教えてもらう。
バンドマンになってヒロセが変わっていくわけでもなく、淡々とした日々で、そんなお話の最後の落書き。
こういうのってトジツキさんにしか描けない気がする。

同時収録も一言感想を

「たべものではありません」
たしかに美味しそうw

「月翳」
レベル高い。文豪の翻案作品と言われても納得しそう。

「外道」
これもレベル高いw
贅沢を言えばカラーで見たかった。

総評はトジツキワールド全開な1冊。
中古で購入。お布施したいので電子化待ってます!

0

人が遺す記憶の愛しさと哀しさ、そして影響力。

表題作の「カナさん」シリーズ。
バンドマンのカナさんと居酒屋のアルバイト・ヒロセが出逢い、運命が一瞬くっついたようにほんの短期間での(おそらく恋愛未満の)関係が切ない。
ヒロセはカナさんを「大事な人」とちゃんと認識しているけれど、カナさんはヒロセへの想いを表出する前にスルッと消えるように亡くなってしまう。
ヒロセに愛用のギターを遺してカナさんはこの世を去り、そのギターを持ってバンドメンバーに教えを乞うヒロセ。
カナさんはそこかしこで生きている側の人間に影響を与え続けています。
カナさんの存在が意識に上る度に喪失感もあるけれど、月日を経てその痛みを抱えながらも一歩ずつ前へと進んでいく生きている側の姿がフラットな目線で描かれていて読了後は温かな気持ちになりました。
過剰に演出されていない哀しみや、前を向く確かな力強さがこの作品を安易な「泣ける作品」から遠ざけているように思います。

表題作はバンドの持つ魅力やメンバー内の人間関係がシリアスではなくコミカルにも描かれているので、その辺りも読んでいて楽しい!




「たべものではありません」
「月翳」
「外道」
と他3編も各々持ち味が違って堪能しました。
そのなかでも「月翳」
月翳を読むうちに体に馴染んだものをそっと呼び起こされる感覚に陥り、懐しさといった類いの感情を揺さぶられたので、作品の時代背景がそう感じさせるのかな?と。
けれど、レビューで書いていらした方のお陰で気付きました。
私はJUNEの血脈を感じたから懐しさを覚えたのだと。
私がローティーンの頃に血肉となった物語の数々を呼び起こされました。本当に久々にこうした味わいの漫画を読んだ気がします。
読了後の余韻は静かに広がる波紋のように長く続き、胸に響き続けます。



短編集だと丸ごと「神!」と思えることがあまりないのですが、こちらは一冊通して神評価。
素敵な作品に出会えてとても幸せです。

4

だいっっすきなヤツ

トジツキさん作品の中でもだいっっすきな本です。
BL、死別、バンドものだけどパンクもしくはメロコア(多分)、プロレスだけど新日本プロレスじゃなくて大日本プロレス(多分)、文学、刺青…最高か!!!awesome !!!

物語が違えどセリフ、ナレがどれも秀逸です。小説のような詩のような。
求心力ある言葉の紡ぎ方。
トジツキさんの描く人物からは60kg、70kg?その体型なりの体重がキチンと感じられて好きです。
そしてその重みがおりなす絡みは…クソ萌える!
「ギシッ」に重力がつまってるんだ!
私の心のち◯こ完勃、精神の前立腺が震える。

表題作シリーズもっと読みたかった。
いやいや、もっと伸ばせるし掘り下げられるし広げられるしここからだし!
巻末の「外道」がホントにねぇ、ホント大好き要素満載。
ラブラブゲイカップル最高。
宇陀児くん可愛すぎ格好良すぎでしょうに。
絡み中の刺青エピソードが…鼻血ものです。

ここまで熱く語りましたが、ニッチすぎて萌えながらもいろいろ心配になります。
いや、いいと思います、こんな素敵な作品になって、ひと1人アホほど魅了してるんだから。
トジツキさんにはBL云々抜きで好きなものを好きなだけ詰め込んだモノを描いていって欲しい。
でももうそろそろBLも振り返って欲しい…待ってます!!!

5

シンプルにどストライク。

表題作と短編が三作収録されています。まずカバーから目を惹きつけられずにはいられません。あまり見掛けない鮮やかなブルーグリーン。描かれている男性は、表題作のカナさんです。

「カナさん」は居酒屋でバイトしていたヒロセが、バンドの打ち上げで御用達の常連、カナさんとトイレで出会うところからお話が始まります。カナさんはアマチュアバンドのギターボーカル。彼の存在がバンドそのものの在り方と、ヒロセの人生に静かに影響を及ぼしていく。

バンドもののコミックスは何作か読みましたが、トジツキハジメさんの描くこの作品の雰囲気が自分には一番しっくりきました。(SHOOWAさんの作品もツボだったけど。)アーティスト特有のピリピリ感もなく、破天荒さもなく、バンドを取り巻く環境もなんだか穏やか。だけれど、メンバー内の関係性がやりすぎ感なくきちんと描かれています。サポートで入って来たキヨがカワイイ。ゆーしくんとのやりとりでキヨがネコにデフォルメされちゃうシーンが可愛すぎです。

落ち着いたテンションなのにコミカルな部分もありつつ、テーマは切なくてしっとりと表現されている。で、読者をおいてけぼりにもしない。こういった作風はどストライク。同時収録されている「たべものではありません」はプロレスラーをモチーフにした『注文の多い料理店』のようなシュールなお話で、「月翳」は戦後直後の死者と生者の境界線に佇む男の幻想的なお話。ツボすぎです。あとがきによると、作家さまは最初、小説を書いていらっしゃったということで、どんだけ才能に恵まれてるんだと思いました。

最後に収録されている「外道」は見習い彫り師と歴代師匠が彫った墨を入れた恋人の、エッチシーンのひとコマ。わたしは完全に攻め視点で楽しませていただきました。コワモテの刺青男性が受けって最高です!「カナさん」を読もうか迷っていたところに、このお話関連でオススメいただき、背中を押していただきました。作家さまの萌えの集大成、しかも自分の萌えと全被りということで、出会えて本当に良かった一冊でした。

6

素敵

わたし、トジツキさんの作品を読むのは初めてだったのですが、読み終えての感想は「素敵だ…」の一言に尽きます。
今までトジツキさんの作品を読んでなかったというのも、大した理由はなかったので、どうして今まで読まなかったんだろう!!となんとなく悔しいという気持ちでいます。


アマチュアバンドメンバーを中心とした一連のお話………他の方もおっしゃっていましたが、表題とされている「カナさん」は特別に派手なことをしているわけではないけれど、やりたいことを思いっきりやって、すごく自由で、駆け抜けるように生きてて、「永遠じゃない人生」を謳歌しているのでした。キラキラしてました。巻頭作で亡くなってしまったのですが、存在感はずっと残りました。読み終わっても、です。
正直もっとカナさんがどんな人なのか知りたかった。だけどカナさんの周りにいた人達にとってカナさんはどのような存在だったのか、これは掴むことができるので、これはこれで深みがあるのかな、と…。カナさんという人間がどんなものだったのかということを想像することにおいての、深み…

キヨくんと、ゆーしくん、結局どうなったのかなあ??あのふたりはみててほっこりしました。


レスラー君のはなし………正直初見で「ビジュアル……」と思ったんですけど、読んでいくうちにぜんぜんアリになりました。
デスマッチプロレス?の世界は詳しくわからないですけど、ストーリーを読む上では特に嫌悪感はなかったです。主人公レスラー君はなんだか血生臭ーい世界に住んでるようでしたが、「胃袋掴まれてるから離れられない」だなんて感情に素直でかわいらしいなあと思いました。(笑)餌付けしてるカフェのオーナー君はさらりと、グロテスクな発言を飛び交わせていました。自分の作った食べ物が、他人の血となり肉となることに興奮する…なんだかわからなくもないです。(あれ、変態…?w)自分の仕業で人の体を作りかえているって考えると感覚的には確かに快感なのかも…(笑)

大戦直後を舞台としたお話………これ、わたし好きなタイプのお話ですね……。ふたりの間で恋愛がはじまっていたのかどうかもわからないといったストーリーです。でも、美しかった。若いふたりの間には他者には理解できないような世界があったのだと思います。
主人公が冒頭で「恋心に似た錯覚」と言ったそれは、若さ故の、大人になってからは持ち得ない、なにか特別な感情だったのではないかと思います。主人公はふたりでみた景色の記憶や、自分の中でキラキラとした高槻との「思い出」というものに、大人になってからも恋焦がれていたのではないかと、わたしはそう解釈しました。だから、大人になって訪れた思い出の場所は少し違って見えた……大人になってからも高槻に対しては特別な感情を抱いているのは間違いないと思います、けれど、主人公はきっと終盤に海辺を歩いたとき、高槻自身というより自分は今まで「思い出」に「恋」をしていたのだということを自覚したのではないでしょうか…。わたしの解釈です。人に依ると思います。
そんな、青年たちの間に秘められた、言葉にすることはなかったきらきらしていた感情を、うつくしいと思いました。


刺青のお話………これは、キャラクターに萌えさせていただきました…トジツキさんは、萌えるか萌えないかの絶妙なラインにあるフェティシズム(私調べ)を描くのが得意でいらっしゃるんですね(笑)でも、やっぱり嫌悪感はないのです。設定はずいぶんアブノーマルなはずなのに……ね(笑)。それから、画面がキレイです。わたしが細かい書き込みのある絵柄がすきなのもあるのですが、刺青がテーマであるこの作品ではトジツキさんの絵柄のパワーが最大限に発揮できていると思います。







とりあえず、一読してみて、すっかりトジツキさんの魅力にはまってしまったみたいです。絵柄も好きだし、言葉の選択もわたしにはまっているので、これから既刊のものをどんどん読んでいきたいと思いました(^ω^)

8

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