• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作君だけが僕の奇跡

倉沢慎吾,23歳,実力派R&Bグループ歌手
武太一郎,31歳,お絵かき教室の先生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

誰とも関わらず静かに暮らしたい――。
ひっそりと『お絵かき教室』を営む、武太一郎のところへ、ある音楽グループからCDジャケット用の絵の依頼が舞い込んでくる。しかし日頃から、子どもたち以外の人間と接することを嫌っている武は、その依頼をすぐに断ってしまう。だが、依頼主は簡単に諦めてはくれなかった。
「引き受けてくれるまで、先生の側を離れない」
突然現れた綺麗な青年、歌手の倉沢慎吾は、強引に人見知りの武に近づき、そのささやかな生活を乱し始める。10歳も年下の慎吾に、為す術もなく心も身体も翻弄されてゆく武だが、ある時、慎吾の重大な秘密を知ってしまい…!!

作品情報

作品名
君だけが僕の奇跡
著者
千地イチ 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
竹書房
レーベル
ラヴァーズ文庫
発売日
ISBN
9784812495612
4.1

(134)

(73)

萌々

(39)

(9)

中立

(0)

趣味じゃない

(13)

レビュー数
24
得点
548
評価数
134
平均
4.1 / 5
神率
54.5%

レビュー投稿数24

極彩色の世界

世界がガラッとガツンとじわじわとひっくり返される奇跡!!
武の絵で、慎吾の歌で世界が色付いていく!

押せ押せの慎吾に怯む武だけども、お互い才能揺さぶられあって、存在が無視できなくて、前に進んでくのがとても良かったです。
読んでるこちらも揺すぶられました!!

甘々ラブラブなとこは少なくても、掴みどこのない武のふにゃりとした笑顔やどうにもならない熱を貯めてく慎吾にキューンとなりました!!

武がよしよし仕方ないなって思うほど、子どもっぽかった慎吾が色を得て、大人に変化してく様も熱くて、見守る周囲の人もとても良い。距離感がステキです!!

慎吾の色覚が弱いことに関するできごとは説明がつかないことだけど、こんな奇跡が起きたことに胸いっぱい!
武の言葉が心強くて、喜びでいっぱいな未来に通じてくよう!!

淡々と、でも情熱いっぱいの疾走感ある文体も心地良くて、清々しい読了感です!

1

色が溢れている表紙絵 

読み終わるのが惜しくて、少しずつ読んだ作品。
凄く感動しました。良い話だった。

武太一郎は、芸術家一家の長男。
才能は有るけど、理解者に恵まれず、自信を持てない画家
倉沢慎吾は歌手。
実は色難で、白黒の世界の中で生きてきた美少年。

モノトーンの世界の中で、唯一武が描く絵だけは、色が分かる。
武が描いた壁に貼られたポスター、
その絵の花の色だけは視えて脳に入ってきた。
・・白黒世界の暗がりの中で光るように、その絵の花の色だは生まれて初めて視える。
・・どんな衝撃を受けたのか、想像できない。

難聴の赤ちゃんが補聴器を付けて
初めて両親の声を聴いて親子で泣いている動画の光景を連想してしまった。

こんな冒頭で始まる二人の馴れ初め。
何故武の絵だけ、色が視えるか謎だけど、
色難の歌手に奇跡を起こした画家は、絆されて美少年歌手の恋人になっていく。

紙本で読んで良かった、何度も読み返したい。

1

鮮やかで素晴らしい世界観

とても素敵なお話で、
読み終わった後の清々しい気持ちは言い表せません。
タイトル通りのお話に目頭は熱くなり、心が震えました。

ちょっと意地悪な訳ありシンガーと、
優しい絵画教室の先生の優しくて愛おしいお話です。
現実とファンタジーが入り混じったような、
不思議な世界観にあっという間に引き込まれました。

ファンタジーと書いたのは、
シンガーの慎吾の目はモノクロの世界しか映し出しません。
そういう病気という設定になっています。
そして、モノクロの世界の中で、
武の作る色だけが鮮やかに映し出されるのです。
現実にはない現象に、ファンタジー要素を感じました、

だだ、二人の心の交流はゆっくりと温かく、
惹かれ合わずにはいられない気持ちはリアルであり、
とても自然なことのように描かれています。

なので、現実とファンタジーが入り混じった世界と感じました。


二人を取り巻く人々も皆温かく、
大切な人たちに囲まれて色を取り戻していく人生……
とても素敵だと感じました。

また、シンガーは幸せと不幸せを糧に歌うという表現の中で、
武が慎吾に与えたいのは幸せの方だとハッキリ伝える場面……
とても胸が熱くなりました。

二人が結ばれる場面も、
武が思った以上に乱れたのが意外ですが良かったです^^
普段、清廉潔白で欲求を抑え込んでる人って、
一度スイッチが入ると止められないのでしょうね。
とても官能的でした。

表紙の彩鮮やかな世界そのままに、
読者の心も色付けてくれる……そんな作品でした。

2

まさに奇跡の出会い

答姐の「あなたの好きなタイトルを教えて」みたいなトピでこの本のタイトルが挙げられていてタイトル買いしました。
読んでみたら「君だけが僕の奇跡」というタイトルが本当にしっくりくる、まさに「奇跡」としかいいようがない出会いが描かれていてとっても良かった。

攻めの慎吾は人気音楽グループのメンバーなんだけど、生まれつき目が悪く色の無いモノクロの世界で生きている青年。

それがある日、街に貼られたポスターに文字通り目を奪われます。
何故なら、そのポスターだけが鮮やかに色づいていたから。

そのポスターの製作者は、絵画教室の先生をやっている武。
絵の才能があるのに、過去のトラウマが原因で絵の仕事は極力引き受けず、ひっそりと、心乱すこともないよう、まるで余生を過ごす老人といった暮らしぶりをしている青年。

そんな武が慎吾たちのライブを聴きに行って、降り注ぐ無数の星屑のような彼らの歌声を全身に浴びて射抜かれたようになるシーンなど、読んでいるこちらの感覚にも強烈に伝わってくる描写がそこかしこに満ちていてます。

色の無い世界で生きていた慎吾と、目立たぬように生きていた武という、ある意味どちらも無味乾燥な世界で生きていた二人が出会い、お互いが産み出す作品が目や、耳を震わせ、心を震わせ、少しずつ彼らの世界が色鮮やかに変革していくんです。
そして相手の音楽や絵に触れて突き動かされるような衝動にかられたり、知らず知らずに影響されていたり、変化した相手の様子に自分が取り残されたような気になったり…… などなどお互いアーティスト魂を持った二人が互いの存在に触発されている様子が本当にいい。

慎吾は数年後に失明してしまうけれど、慎吾を暗闇の世界に置き去りにはしたくないという武の決意によって、慎吾は色ある世界を失わずにいられるだろうと思えるラストが感動しました。

「武が描いた絵にだけ色を見分けることができる」なんて医学的には説明できないし、いろんな偶然が重なるのもツッコミどころになるかもしれないけれど、「奇跡」って本来そういう人智を超えたもんじゃないかなって思います。

4

世界が一変する奇跡

カラフルな表紙が目を惹きます。
沢山のお花や星が散りばめられていて鮮やか。
読後にこの表紙をジックリ見返すと涙腺が緩みます(;///;)

表紙の鮮やかさに反して、ストーリーは色のないモノクロの世界。
けれど時折極彩色がブワッと舞うのです。文字の中に。
その瞬間に色のある世界に生きていられる幸せを噛みしめました。

歌手と絵描き。
色を持たない者と持つ者。
弱さを抱え息を潜めてる中、奇跡と出会い、動く。

ストレートにガツンと心に響くお話でとても良かったです(;///;)
作中で医者が全否定してたように現実ではありえないのですが
こんな奇跡があればこれ以上無い幸せ、まさに運命だなと思いました。


さてさて。
攻めの慎吾は実力派の歌手です。一回り上のメンバーと共に活動中。
視力が弱く、慎吾の世界はどこまでもモノトーンが広がるばかり。
派手な服をよく着てるのですが、そもそも"派手"が見えないので明度で判断してただけという…(泣)
周囲が大人ばかりのせいか気が強く少年っぽさが残る攻めでした。

受けの武はお絵かき教室の先生です。
有り余る才能を家の中に閉じ込め、老いるまでひっそりと生きるだけが彼の望み。
というのも、自分の描いた絵にトラウマを持っていました。
31歳というには若々しさがあまり感じられない受けです(ФωФ)


そんな2人の出会いは武が描いた1枚の絵。
自分の絵を表に出したくはなかったけれど長年の友人の頼みを断り切れずに描いたものでした。
慎吾がその絵を見た瞬間、モノクロの世界に一気に流れ込む極彩色。

不思議なことに、武が描いた絵だけは慎吾の目に色が見えたのです。
描いてる武自身の姿はモノクロなのに武が筆を滑らせる先から溢れる色・色・色。
武の描く絵の虜になった慎吾でしたが、次第に絵だけでなく武自身を想うようになり…。


慎吾が恋愛感情を自覚したキッカケが"苛立ち"だったのが少年っぽいなぁと。
8歳の年の差は大きく、ましてや武は先生をしているので良くも悪くも子供扱いが上手いw
なんの意味も持たない武の優しさが、慎吾にとっては非常に面白くないのですね。

慎吾がギュッと抱きついても武は子供が構われたがってるぐらいにしか思っておらず、
胸の鼓動の違いで悲しくなってる慎吾に萌えました(;///;)
↑このシーンの表現がすごく好き。

で、前半の武は慎吾を子供として扱いあやしてるようなんですが
男と意識してからは態度が一変して子供扱いをしないところがすごく良かった。
子供だと思ってた相手から"雄"を見せつけられて戸惑う姿が良きです///
年の差BLの年上受けのこういうところってほんと萌えますね…!!!

そしてそして…!
初エッチで慎吾がガッツく気持を抑えながら愛撫してるのにニヤニヤ爆発。
自分がウンと年下なのが気になって、余裕ぶった態度をとる年下攻め…!(∩´///`∩)
【冷静に見えるなら、無理してる甲斐がある】の一文がグッときます///

慎吾のモノクロの世界の描写は切なくて泣けました。
とくに夜はすぐ目の前さえも見えない。
武を追いかけたくても追いかけられず
色の欠片を必死に掴もうとする場面は胸が痛かった…。

現実にはありえないような不思議な奇跡。
2人が出会えた巡り合わせが心に沁みます。
慎吾の目に映る色が少しでも長く続くよう願わずにはいられない…。

2

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP