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名前を奪われたら、たましいを縛られる。
表紙からして美しい。スマホ電子だと試し読みクリックしない限りこれが大きくは表示されないのか…そう思うと紙の本が売ってるって大事よね。
絵のタッチがたまんないのよね〜
"誰からも誰かに似ていると言われる"っていう設定と蝶の掛け合わせからしてもう大大大好きなんだけど、ストーリーも絵も演出も百点満点だから花丸です!大きい花丸!!可愛い!!!
天花寺くんと平子の関係性の作られ方も好きだし、鈴島と魚住も大好き。四宮先生の作品て一冊の中で登場人物も多く、付き合っている2人も多いのに、過不足なくまとまって満足感がずっしりあるのが不思議。優しい作品なのにこの満足感。和菓子みたいな。
不思議な世界観とテーマでした。BL色はそこまで濃厚ではなく、章の端々に少しずつ挟まれる程度。この作品においてはそれで十分だったと思います。主人公の平子はお人好し且つこれといった特徴のない平凡な学生で、会う人会う人にその人にとって大切な誰かや印象的な誰かと重ねられてしまい、悪い気を引き寄せやすいキャラです。本人もそれを自覚しており、自分自身の意思は周りにとって重要ではないんだと、誰かの面影を重ねられることを抵抗することもなく受け入れて生きています。
そんな性質のおかげでいろんな事件に巻き込まれる平子。しかし、中盤までは自分という存在の曖昧さを甘受していた彼ですが、ある案件で天花寺という少年と出会ったことで、徐々に考えが変化していきます。もちろん祖母に教えられた風習のせいもあるだろうけど、彼自身が自分の存在は軽視していいと思い込んでいるからどんどん面影を重ねられやすくなっていったんじゃないかな。天花寺への想いに気付いて、揺るがぬ自我を確立させたいと平子が望んだ時は、本当に嬉しかったです。
軸となるテーマを支えている「名前」。真の名前を晒すことは確かに弱みを見せることになるのかもしれません。でも、ジブリの某映画じゃないけれど、自分自身を表す名前を大切にすることは、自我を保つのにとても重要なことなんだと思います。本人が望めさえすれば、仰々しい風習を跳ね除けることはいくらでもできる。これからは彼自身の人生をしっかりと歩んでいって欲しいですね。彼のバイト先の事務所の魚住と鈴島の出会いや、天花寺との過去の話も、四宮先生ならではの世界を見せてくれて面白かったです。魚住と鈴島のスピンオフを読みたくなりました。
「銀のくつ」で出会い、この作者さんの作風に惚れ込んでしまい、これを購入してみました。1度目読み終わった時は、「うん、変わってるし面白かったね。」程度だったのですが、ストーリーを知って読んだ2度目、主人公たちの感情に注意して3度目と読むと、この作品の味わいの深さに感動さえもおぼえてしまいました!主人公とそのアルバイト先の2人、縁がとりもつ不思議な世界が素直に優しく描かれています。また読み返しては優しい気持ちになれる作品に出会えて、良かったです。これから、今日は四宮しのさんの他の作品、購入して来ます!
春っぽいもの読みたいなーと本棚をあさって目に止まったこの1冊。
表紙の印象そのままに、優しい雰囲気で描かれる「名前」と「縁」にまつわるちょっぴり不思議なお話です。
“「”呪(しゅ)” とはなんであろう?」
すると晴明は、庭に咲く花を指差して答える。
「あそこに花が咲いているであろう。あれに人が”藤”と名を付けて、みながそう呼ぶようになる。すると、それは”藤の花”になるのだ。それが最も身近な”呪 ”だ」”
このひらひらふわふわとした不思議なお話を読むにあたって、「陰陽師」のこのフレーズを頭に置いておくとだいぶん読みやすいかもしれません。
「名前」を題材にした作品といえば中村明日美子さんの「ダブルミンツ」が真っ先に思い浮かびますが、あれもまさしく「名前」の奇縁に導かれ「名前」の呪いに囚われたみつおとミツオのお話でした。
読み終わった後「名前」についてもう少し調べてみると、昔の人は自分の本当の名前(真名)を明かす相手をごくごく一部の人間に限っていたとか。
これは本作にも繋がります。
実際に想像してみると解るけど、「名前がない」存在というのはなんとも心許ないものです。
それはそのまま、訳あって自分の本当の名前を知らずに生きてきた主人公〔平子〕の存在の不確かさに繋がっていきます。
そんな平子が自分の名前を知る決心をする過程が良い。
自分の名前を知るということは自分をその名前で縛るということ。
名前を呼ぶことは相手の魂に呼びかけること。
名前を知られることは相手に魂を奪われること。
「だから君に俺の名前を知ってほしい。」
そして、途中でサラッと明かされる魚住と鈴島の関係、これもまたこれだけでもう1冊いけたんじゃないかと残念に思うくらい素敵な関係でジワっときました。
会社でヤるような節操のないおっさん達にこんなエピソード用意してるなんて四宮さんずるい!
こういう不思議な出会いをテーマにしたお話っていいですね。
今の季節にピッタリな1冊じゃないかなと思います。
【電子】ebj版:修正-(描かれていない)、カバー下なし、裏表紙なし
ふたりの男の子を守るように千々に飛ぶ蝶たちが
とても美しい表紙。やさしい雰囲気が象徴的です。
四宮しのさんの今作は
摩訶不思議で、どこか狐につままれたような印象を受ける
ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなる奇縁物語です。
”赤ン坊の名前がつかないうちに雷が鳴ると魂が奪われる”
そんな迷信の元に産まれた平子くんは、
隠された名前とちょっと特殊な性質を持つ大学生。
ひょんなことから鑑定・調査事務所のアルバイトをすることになり
依頼による、様々な不思議な現象と共に
”誰か”に重ねられることで、そこに詰まった想いを知っていく。
ある依頼で知り合った年下の少年・天花寺くんとは
以前どこかで出会っている気がしてー?
平子くんはその特殊な性質から、いつも誰かに重ねられては
自分ではない誰かに向けられた想いを受け容れて生きてきたけど、
それはどこか他人事だった。
そんな平子くんが事務所の魚住さんや社長に見守られ
オカルティックな依頼を受けていく中で、
”本当の自分の名前”を知ろうと決意するまでの過程が
蘇る記憶、過去と現在を交錯させながら丁寧に描かれていて、
とても魅力的でした。
必見のクライマックス、未来を跨いだ後の
『魂を半分奪われているような』天花寺くんへの告白シーンが秀逸で、
じわじわ噛みしめるように、この物語が好きだと実感しました。
魚住さんと社長・鈴島さんのお話も非常に読み応えがあり、
直接描かれてはいないものの、魚住さんが人さらいの人魚になって
愛されなかった悲しい子供時代を持つ鈴島さんを
約束通りに攫ったなんて、ロマンティックで素敵...(今はあれだけど笑)
そしてその魚住さんが、実は
平子くんの隠された名前に奇縁を持っていたところもすごく面白い。
ちりばめられためぐりあわせと結びつきが
この物語の醍醐味なのだと、改めて胸に響きました。
犬丸ちゃん視点の描き下ろし番外編もとってもキュートで、
プクッとする天花寺くんにきゅんときました♡
ゆるっとした独特の絵柄に
不思議だけどしっかり練られたテーマとプロット、キャラ設定、
切なさとやさしさ、そしてほっこりBL具合、
そのバランスがとても良い、素晴らしい作品でした。
ほんのりしたオカルティックBLとして、
これからの夏の夜のお供にもおすすめです♪