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汽車よゆけ、恋の路 ~明治鉄道浪漫抄~

kisha yo yuke koi no michi

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表題作汽車よゆけ、恋の路 ~明治鉄道浪漫抄~

鷹男,元人間で祟神だった小さな村の守り神
若友俊次,鉄道局官吏で鉄道反対派説得に村へ,24才

その他の収録作品

  • はるかな街で
  • あとがき

あらすじ

時は明治――鉄道局で働く若友俊次は、官設鉄道に反対する小さな村を訪れる。そこで俊次が出会ったのは、鉄道賛成派・反対派に割れた村の軋轢、そして野趣あふれる端整な面立ちの守り神、鷹男だった。尊大だが憎めない鷹男に、俊次は突然、「おもしろいから嫁にとる」と手籠めにされかけて……!? 蒸気機関車が轟音をあげて走る激動の時代も、人はしなやかに生き、恋をした。ノスタルジック艶恋浪漫、ここに開幕!

作品情報

作品名
汽車よゆけ、恋の路 ~明治鉄道浪漫抄~
著者
久我有加 
イラスト
夏珂 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
発売日
ISBN
9784040663586
3.7

(42)

(12)

萌々

(16)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
11
得点
150
評価数
42
平均
3.7 / 5
神率
28.6%

レビュー投稿数11

久我先生のファンタジーもの!!

極楽村を守る不可思議な存在、鷹男。
柔軟な思考とタフな精神力を持つ俊次。

読み進めて行けばいくほど、俊次ってなんて男まえ!!武術の心得どころか達人の域にある俊次に殴られ蹴られしながらも「…さすが俺の嫁…」と、こりずにやってる鷹男、やけに人間くさい(神?)様です。そんな二人の場の空気が間抜けてしまうやりとりには笑ってしまいました♪
今見ても蒸気機関車の走る姿、そして轟音には圧倒されます。当時の人々は腰が抜けるほど驚いたに違いない!明治、文明開化と共に薄れていった妖だとか不思議なモノだとか…。どこかに紛れてちゃっかり暮らしているのかも?…なんて思ってしまいました♪

4

俊次がかっこよかったです

神様を祀る山にトンネルを掘って鉄道を通す……神様か鉄道か。

人って、信じたいことを信じるんですよね。だから、賛成派の村人たちは、鉄道を推進する政治家や軍人、彼らが連れてきた怪しげな祓い屋を信じようとする。反対していた人たちも、神様の祟りなしに鉄道の恩恵を受けられるかもしれないとなると、これまで頑なに信じていた心が揺らぐ。
そんな中で、常にニュートラルで、常に状況を正しく見極め、村人にとってのベストを一生懸命探ろうとする俊次がかっこいいです。

鷹男はもともと祟り神なのですが、その祟り神となった経緯や、信仰が薄れ村人の心が離れていく、そんな人間の身勝手さを、恬淡と受け入れていて、何だかもう切なくて寂しくて、そりゃ俊次も絆されちゃいますよねえ。
「哀れか。それはもう惚れたってことだな」…至言です。

山に入ってはいけないということだけは確かで、あとは鷹男にも読めない。村人たちは、政治家や軍人に唆され、徐々に信じる心を都合よくねじ曲げていく……読んでて、ハラハラしました。

明治時代、世の中が急激に変わっていく中で、神様を畏怖しながらも世の中の流れに取り残される不安に揺れる村の人たちがリアルに描かれていて、お話の展開も面白くて、BLとして、というよりひとつのフィクションとして楽しめました。

3

ファンタジーだけど懐かしさも感じる

舞台が明治だからなのかノスタルジックな雰囲気が漂う作品でしたね。
タイトルを見たときにこれは好きな作風かもと思っていたので当たりでした。
明治を舞台にした時代が急激に変わる感じが個人的に好きなのです。
尚且つ、そこにファンタジーがプラスされれば好みに決まってます。
たまにそれでも失敗なんてことがあるのですが今回は概ね満足。

内容は祖父が武士で父親が大きな商家に婿入りし本人は鉄道局に入り
小さな村の官設鉄道に反対する住民の説得役で村を訪れる。
しかし俊次は鉄道局の人間でありながら反対派を説得しようという気概がなく
それは面倒だからという事ではなく、反対も賛成もしない中立的な考えで
役人としては変わり者なのです。

全員者は何故かその村に行ってから一人は辞め一人は直ぐに異動をしてしまう。
好奇心が旺盛な俊次はそのことが気になっているのです。
そこで反対派の村長と対峙するのですが、何故か尊重よりも尊大な男がいて、
この男のせいで前任者が二度と村に行きたくない理由だと知る。

この男が攻めになる鷹男で正体は元人間で祟神だったこともある村の神。
はっきり村に人の姿で出てくる神様って言うのも珍しいですよね。
前任者は鷹男を怖がり村へ近づきたくないのですが鷹男はかなり豪胆で
不思議な現象を見ても恐怖より好奇心で驚く前に受け入れている感じです。

そんな俊次を気に入って面白いと、ついには嫁にすると迫られる展開、
鉄道をめぐり村が賛成と反対に分裂し、神である鷹男への信心も薄れる。
新時代の流れに古くからの神が廃れる感じが伝わります。
そこに鉄道を推し進める議員が怪しげな連れを伴い村に来たことで
村に不穏な気配が漂い、鷹男の人間だった時の記憶と俊次がシンクロしたりと
小さな村に起こった官設鉄道と時代の波、そして人間と神様のラブが
うまく合わさったような作品で結構楽しめました。

6

硬軟織り混ぜた歴史ファンタジー

芸人も関西弁も出てこない久我さん作品は初めて読みました!
(舞台は近畿ですが、メイン二人は標準語)
ジャンル的にはファンタジーなのでしょうが、リアルかつノスタルジックな明治時代の描写もお見事。
男前だけど濡れ場では色っぽい受の魅力も健在で、さすがの面白さでした。


時は明治。
鉄道局で働く俊次(受)は、鉄道を通す計画に反対する山奥の村を訪れる。
村の反対派は、山の神・鷹男(パッと見ただの人間)を崇め、トンネルが通る予定の山を守るため鉄道開設に反対していた。
鷹男(攻)は、物怖じしない俊次の態度を気に入り、嫁にすると言い出し…。


俊次(受)は、一人称「僕」で、面倒ごとを押し付けられがちな下っ端の官吏。
しかし、実は柔軟で視野が広く、腕っぷしも強いという男前受です。
鷹男(攻)が俊次にセクハラ→俊次、拳で撃退→鷹男、あまりの痛さに涙目…というお決まりのパターンがツボでした。
大の男が涙目て!

鷹男(攻)は、飄々とした顔でいつも物事の大局を見ているような、食えない男。
変わりゆく時代のなかで人々の信心が薄れ、自身が忘れられても仕方がないと達観している。
元人間で、 大切な人たちを失った過去もある(本人は忘れてますが)。
キツイものを、全然平気そうな顔で背負う哀愁、色気がたまりません!
老成しているようで、俊次には盛りのついた中学生のようになるところが可愛いし、面白かったです。


西洋の文化や思想が流入し、新時代への希望と、古いものが淘汰されていく不安とが混在する明治時代。
先が見えない時代でも、自分の信じるものや大切な人のため皆が精一杯生きているのは現代と同じで、そこから生まれる対立や愛にとても共鳴しました。
恋人になってからのラブも、久我さん作品らしく濃厚で、硬軟バランスのとれた良作だと思います。

5

安定したクオリティの、ファンタジーもの

明治を舞台に、久我さんにしては珍しいファンタジーもの。

どんどん世の中が変化して行く、明治の時代。
士族の祖父を持つ俊次は、幼い頃に出会った鉄道に魅せられ
長じて鉄道局に勤務するようになる。

長い間、天災や疫病と無縁だった山奥の村に鉄道を通す計画が持ち上がるが
抵抗もあってなかなか進まないところに、派遣された俊次。

鉄道敷設を巡って賛成派反対派二つに割れて揺れる村を舞台に
村の守り神・鷹男と、俊次が惹かれ合っていく様と
時代の変化の痛みや軋轢、人々の思惑が描かれて行く。

突然俊次を嫁にすると宣う神様・鷹男の、強くて寂しいキャラもいいが、
こよなく鉄道を愛する鉄道局の職員でありながら、
鉄道敷設を一方的に推進するのではなく、
功罪両面を見据えている俊次の公平さや男前さがいい。

村の人々の言葉や佇まいにも味があり、
リアリティのあるファンジー(って変だけれどw)、
且つ心地よい疾走感もある、安定したクオリティの作品になっている。

その背景には、ビックリさせられた多量の参考文献があるのだろうなぁ……
久我先生!お疲れさまでした。

4

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