田規代先生の口絵・挿絵収録
涙涙
先日ハピエンじゃない作品を読んだのですが、結構辛いものがありました。でも無理やりハピエンにするのも違うなぁと思った心に来る作品だったのですが、本作「グッバイ・マイドック」、なるべくしてなったハピエンで素晴らしかったです。上っ面じゃない、心優しい物語で幸せな気持ちになりました。
滅茶苦茶、夏乃先生の作品ぽちりました。
基本的にBLはファンタジーと理解しているものの、獣人ものはほぼ読まないんですが、これはおすすめもあって手に取ってみました。
物語は、飼い主にめちゃくちゃ感謝したワンコ(しかも、保健所での殺処分間際に引き取ってくれた)が、飼い主のピンチに身代わりとなって死んでしまいます。
その後、実は飼い主が死ぬ運命だったので、人間の体を借りて徳を積んで飼い主を助けるという。
まぁ、もうまさしくワンコ攻め(笑)
まんまですが、ストーリーはあまり犬だったことを意識するような感じでもなく最後まで楽しく読めました。エロも犬ベース?で獣っぽい攻めになっているのでお好きな方は楽しめるかなと思います。
ただ、私はやっぱり萌えきれませんでした。
これは個人の趣味の範囲なので、ある意味ほんわか、やさしい感じのお話がお好きな方なら気にいるのではないかなー
もう最初から最後まで涙と鼻水でずびずびでした。
保健所で殺処分になる寸前の所で受の璃人に救われた野良犬のイチ。
人間に対して恐怖心しかなかったけれど、閉ざした心をそっと解して開いてくれた璃人にイチは懐きとても充実した日々を送ります。
けれどそんな日々を過ごす中で、璃人は何者かによるストーカーに狙われ殺されかけてしまうのですが、咄嗟にイチが庇ったことにより九死に一生を得ます。
その代わりにイチは命を落としてしまうのですが、あの世で不思議なことが起こります。
イチは仮の肉体を与えられ善行を積むことにより、本来死ぬはずだった璃人を生かすことが出来ると知りもう一度蘇る、という話です。
私は猫しか飼ったことがないので犬の忠誠心というのはいまいちピンとこないのですが、このお話ではそういった部分が余すところなく描写されていて、もう序盤からずっと泣きっぱなしでした。
イチこと一夏の健気さにずっと喉の奥が熱い。
一夏と出会ったことによって、色をなくしていた璃人の人生が再び彩り豊かなものに変わって行き、掛け替えのない日々を大切に過ごすふたりの姿が切なくて、ぎゅっと胸を搾られるような気持ちでした。
人間として生活する一夏の行動が素っ頓狂だったりするのには思わず吹き出したりと、笑ったり泣いたりが本当に忙しかったです。
こんなに想い合ってるふたりなんだから、何とか最後は幸せになって欲しいと祈るような気持ちで読み進めていましたが、最終盤まで絶望的展開が続くのにはハラハラとしました。
それでも最後の最後、勧善懲悪展開になったのには正直ほっとしました。
人によってはご都合主義と思われるかも知れないし、予定調和と言ってしまえばそれまでなんですが、これだけ辛い思いをした2人なので、この結末には心から安堵しました。
ずっと寂しい人生を歩んできた璃人が、イチと、一夏と出会えたことで夢の方舟を得て、これからの人生ではその方舟にたくさんの思い出と幸せ、新たな人との素敵な出会いを乗せていくのかと想像すると、あたたかいもので胸がいっぱいになります。
既読の「くろねこのなみだ」と細い糸で繋がっている作品でした。前作は人間になった猫、こちらは人間になった犬(イチ)のお話です。それぞれ人間になるプロセスは違いますがファンタジーで、どちらも飼い主を救う存在として描かれてます。
プロローグとエピローグは犬であるイチの一人称、本編は飼い主である璃人の一人称で進みます。評価は前作と同じ「萌x2」ですが、両方の心情が分かるという点で私は今作の方が好きでした。
イチ…もとい一夏は本当に璃人が好きで、大好きで、ワンコ攻というかまさにワンコでした笑 エロ度は「少なめ」になっていますがベッドシーンは複数回あるので「標準的」寄りだと思います。突如現れた年下の奔放なイケメンに翻弄される璃人の様子も楽しかったですが、何より、命に代えても璃人を守ることに誇りを感じているイチに感動しました。方舟の喩えがとても印象的で、思わず自分の人生についても思いを馳せてしまいました。
前作同様、筆致自体はクールなので、特にワンコ好きじゃない方でも楽しく読めると思います。
犬派だとか猫派だとかいう派閥には属しておらず、しかもファンタジーはあまり好んで読まない人間です。
それでも前回のBLアワードの結果を見て以来、1年以上気になっていた。ようやく読むことができました。
イチが一夏になる経緯とか、一夏の期限付きの命が期限付きでなくなるところとかやっぱりファンタジー耐性のない私には少しだけ、のめり込めない部分もありました。
でもイチと璃人が心を通わせていく流れはとても心地よく、一夏と璃人が少しずつ距離を縮めていく間の『人間』と『人間になった犬』のちょっと食い違った会話の数々がほっこりした笑いをくれて、あっという間に読み進めてしまいました。
束の間の幸せな時間。一夏の時間が差し迫っていく中、優しい一夏がどんどん追い込まれていくところは心が痛んだし、『信じたい』と『信じられない』の間で葛藤する璃人の気持ちも痛いほどわかって切なかった。お互いが想い合っていることがわかっているからこその痛みが感じられて。
幼い頃に途方もなく辛い現実から、方舟で航海する妄想をすることでなんとか逃避していた璃人が、大好きな人たちを乗せて本当の航海に出たのでしょう。方舟の行方をいつまでも見守りたいと思いました。
非常に読後感がよく、読みやすい。レビューも少なめだったので、動物モノとかファンタジーとかそういった括りでもし「読まない選択」をしていらっしゃる人がいたら、ぜひ気にせず読んでもらいたいです。
盛り上がりとか自分の萌えのポイントの問題で(^_^;)評価は非常に迷うところでしたが、とても素敵な作品でした。