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表題作ワンダーリング

藤堂耀九郎(李九耀),カジノオーナー
芦原雪,ディーラー

その他の収録作品

  • ワンダーナイト
  • あとがき

あらすじ

七つの年にラスベガスのカジノで拾われた芦原雪。自分を拾ったシンガポール華人の令輝から徹底的にルーレットを仕込まれ、雪は一流の腕を持つまでになる。厳しい育ての親とは対照的に、“雪”に名前をつけ、無条件に甘やかそうとするのが令輝の腹違いの弟、藤堂だった。雪にはそれが煩わしくて仕方ない。現在は藤堂が社長を務める東京の公営カジノで働く雪だが、どんなに素っ気なくしても藤堂の態度は変わらず…?

作品情報

作品名
ワンダーリング
著者
一穂ミチ 
イラスト
二宮悦巳 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
ノーモアベット
発売日
ISBN
9784403523533
3.5

(118)

(29)

萌々

(39)

(29)

中立

(13)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
15
得点
401
評価数
118
平均
3.5 / 5
神率
24.6%

レビュー投稿数15

ワンダーリング

ノーモアベットのスピンオフで、あっさん(雪)が主役!
ノーモア読んだ時にあっさん(雪)って不思議な人だと、独特の空気感やな…と。
今作は、カジノ舞台でオーナーの藤堂さんと、こじれて、性格ひん曲がった雪(あっさん)のお話。
もう、雪のこじれ方がどーしたらこんなにややこしくなるのってくらいで。
この子に何が起こればLOVEに進展するのかとイライラ、ハラハラ、いや、もう、イラハラですわ。
藤堂さんが大人やったから何とか進展したのかしら?
イラハラしながらも、楽しく読みました。
雪の憎たらしい言動も、慣れると可愛く聞こえる、はい、絆されております。そんなこと言っても、お前は可愛いなって、感じで。
藤堂さんにたくさん可愛がってもらうのだろうと、想像。
妄想が止まらない。

0

東京湾の出島 架空の日本初の公営カジノ

東京湾に浮かぶ日本初の公営カジノ
・・この小説が描かれた当時、誘致有力候補は東京湾に本社を置くテレビ局だったので、興味。
wandering:散歩,放浪

芦原雪:7才の時 令輝が「アメリカで拾った猫」 名づけ親は九耀
勝負の結果が客の匂いでわかる、ディーラー。
父がカジノで消えた日、雪は「黒」を選ぶ。
親からネグレクト、感情を出せない。

李九耀:中華系シンガポール人
父は、正妻が一人、愛人が18人、子供が18人居て、九耀は末っ子。
兄がベガスで拾った雪を甘やかしたい人。
一族から出て一般社会で生きて 様々な差別や嫌がらせを受けている。

李令輝:九耀の14番目の兄。
雪を拾って、ディーラーに仕立てる。
兄の令輝は、賭けの結果を尊重、嘘吐き以外に優しい人。

---
調て分かったけど、この作品はスピンオフで、
シリーズ始まりの主役は、野木沢一哉x小嶋逸。
・・という経緯で、シリーズを読むことになった、沼るシリーズ、面白いから、気を付けて。
一穂さんの作品で関連作が多いものは、補足のシリーズ全部を通しで読まないと楽しめない。

シリーズ メモ:
  2013 winter 2013年/12月  野木沢一哉x小嶋逸
 ノーモアベット 2014/1 野木沢一哉x小嶋逸

★ワンダーリング 2014年/6月 藤堂耀九郎x芦原雪
 Drive Me Crazy 2014/10 藤堂耀九郎x芦原雪
 I Don’t LOVE YOU 2014/8 藤堂耀九郎x芦原雪
 ワンダーウォール 2015/3 藤堂耀九郎x芦原雪

0

時間がゆっくり過ぎていく

一穂ミチさんの作品って、時間の流れが緩やかな作品が多いような気がします。
これもそうで、攻めの藤堂が受けの雪との関係を進展させるまで、そりゃー長い時間をかけてたどり着いてます。
日本に出来たカジノ「NMB」が立ち上がった時から、としてもじわっと進んでいる感じです。

この前のノーモアベット、のスピンオフになるんですが、そういう組み合わせだったのか〜と思いました。雪が、前作での雰囲気と違っていて、表の顔?で出演していたのか!と思うくらい、こちらの雪は藤堂に対する態度が違うんですよね。それが「嫌い」の裏返し。裏と表、カジノを舞台にした作品ならではかも知れません。

なんだかんだ言っても結局二人は好き同士よね、っと読みながら思えてきて、途中からは藤堂に同情したりして(笑)
やっとくっついたか〜ってのが感想です。

0

ハテナがいっぱい

不憫攻め…
雪が辛辣すぎて、これで恋が芽生えるのかって態度。
どうなる?どうなる?と読み進めたら、
え!っってタイミングでおっ始めた。
何がどうなってやる流れになったのか私にはまったく理解できず…乱丁?ってくらい突然で2人の心情を理解するのがとても難しかった。
破れ鍋綴じ蓋??
藤堂だからこそ心を溶かせた?ってことなのか…

ここぞというときのルーレットにも二人の関係にもハラハラしっぱなし。
細やかな描写にドキドキしたんですけどね。

二人の故郷シンガポールは大好きな国なので、地名や名物から情景が浮かんだのは楽しかった。

2

ビター

一穂先生のお話は大好きで、このお話も引き込まれました。が、BLとしてどうかと言われれば、中立。
適度な甘さが好きな私には、少しビターすぎるお話でした。

カジノで働くディーラーとオーナーのお話。ディーラーの雪は昔カジノである男に拾われる。その男の弟である藤堂は、雪を甘やかそうとするが、雪はそれを気に入らずにそっけない態度ばかりをとっているが…。

雪の思考も、藤堂の兄や家族の考えも理解できず、恋愛面も甘さ控えめだったので、私には少し難しく感じました。雪のデレが少なすぎて、むしろ嫌いなんじゃないかと思うほど。藤堂が不憫に感じてしまった。もう少し分かりやすい糖度があれば、萌だったんだけどなー。それでも次々読み進めてしまい、中立にしてはいますが、おもしろかったです。

2

同人誌を知らない人には、ちょっと不親切?

正直、本編よりもこっちの方がまだ面白かった。
前作よりも、主人公二人の関係に焦点が合ってたぶん、
BLとして読みやすかった。
少なくとも藤堂の心情はよく分かった。

けどね……どうも雪の頑なさが、
この話の中だけではよく分からなかった。
なぜにそこまで藤堂を拒否するのか。
なぜに藤堂兄にそこまで従属するのか。
藤堂兄に対しては命を救われたエピソードがありますが、
さらっと描かれていて、
そこもうちょっと詳しく!とつい突っ込み。

途中に絡みのシーンもありますが、
全然甘くなくて、藤堂がちょっと可哀相になってしまった。

多分、一穂さんの中では
雪の複雑だけど藤堂を受け入れている気持ちが
理解できているのだろうけれど、
どうも私にはそれは伝わってこなかった。
投げやりで、どこか諦めきっている感じしかしなくて、辛い。

雪の気持ちが全然藤堂に向いていない感じなのに、
最後の最後で、唐突に藤堂に対する執着を見せるのが分からない。

今回の二人も、前回の二人も、どことなく説明不足な感じがして、
読み切った感が全然しない。

……と思ったら、同人誌で補完していたのですね。
その辺を読んだらすっきりするのかもしれませんが、
どうなんだろう……

前作も今作も、一穂さん的にはきっちりと出来上がっている
キャラクターでストーリーなのでしょうが、
何度も言うように、説明不足感が。

それでもきっちり最後まで読ませてしまうし、
まだ雪のデレの部分を見たいと思う……
というか、もっと雪というキャラクターを知りたいと魅力を感じるので、
辛うじての「萌×1」

3

嫌い嫌い嫌い・・・×4600億の後、やっぱり嫌い?

なんだろう、不思議な書きっぷりというか、
無色透明 って文章じゃないですね。今回のキャラに引っ張られて
こんな書きっぷりになってるのかな?

そもそも電子本サイトで、さわりをよんで、「面白そう!」と
思ってこの本をget。
挿絵は二宮先生。絵が先か、小説が先か というぐらい
(いや、小説が先なんだとは思いますが)
このこまっしゃくれた感じが、最高です。

お話の方は、うーん、単細胞な私には ちょっとくるくる万華鏡のようなお話で
ちょっと速読が難しかったです。
受けさんは、・・・これ、なんなんだ?
クーデレ という単語でまるめてしまっていいのか?
ほんとに傷ついたヤマネコのような・・・
そんじょそこらのクーデレさんじゃないです。
あまのじゃく+ひねくれもの+臆病者 
ぐらいをMIXしている感じでしょうか?

これは攻略無理だわ と思ってたら、
攻めさんもあきらめてまして(笑)
そのままでいい という結論にいたってました。
嫌いと言われる方がうれしいそうで(爆)
4600億年後も嫌い と受けさんは言ってます。
こういう気持ちの表し方、受け止める方が一工夫いりますよね。
この攻めさん、大丈夫かしら と なかなか不安です(笑)
頑張れよ としかいいようがありませんが・・・

受けさん同様、なかなかくせのある本でした。
わかりやすすぎる ゆるーい本よりは、ずっといいですが
もう少しだけ 糖度がほしかった私でした。

3

小説としてはもちろん面白いが・・・

随分前にノーモアベットを読もうとしたがどうしても食指が伸びず、結局表紙に惹かれてスピンオフのこちらを先に。
読む順番は特に問題はありませんでした。
一穂さんの作品の中では珍しくちょっと評価低めです。確かに設定は面白くて、途中スリリングなシーンもいくつかあって、どんどん読み進めていく時のアドレナリンが湧いてくる感じ・・・・はたくさん味わえたと思うのですが結局BLとしては楽しめなかった。
キャラ的に甘いシーンは期待できないのはわかっていたので、それでもその中に見え隠れする甘さとかキュンとする部分がどれだけ見つけられるかな?って思いながら読み進めました。見つけるたびにうれしくて、でもどっぷり自分を投影して読んでしまうか「夢物語」として楽しむかのどちらかでBLを楽しんでいるような若輩者の私にはちょっとまだ早かったのかもしれません(笑)
一穂さんが選択する世界はとにかく幅広くて、読み始めてすぐについていけそうにないと感じる時があるけど、それでもあっという間にそこに読者を連れて行ってくれる。そういう意味では今回も先生の力量が発揮されたところだと思います。藤堂は攻めキャラの中ではかなり上位に入ると思うし、令輝の「見える冷たさ」と「見えない温かさ」が同居したようなキャラクターも好み。完全に個人的に私がBLに求めるものと合致しなかったというだけ。
もし、雪がもっとシンガポールでも愛されていなくて、日本でも孤独に生きていたら(心の中の話ではなく)逆にもっと評価があがっていたかもしれない。
このジャンルとしての評価はこんな感じ・・・・ということです^^

3

この人の小説って解釈が難しい?

『ノーモアベット』に続いて読んだスピンオフ作品。
年の差のあるカップルによくある甘さはなく、ほのかに苦みの効いたビターな味わいに近い気がした。

前作では脇役のこの二人に何気に興味があったものの、いざ読んでみるといくら芦原が素直じゃないまま育った事情があるとはいえ、斜に構えて他人を見る感覚が気になって馴染めなかった。
一方の芦原に心を開いてもらえない藤堂のほうは、<大人の安定した包容力>ってのを何となく感じる事は出来たかな?

芦原のほうが一方的に、藤堂の懐の深さを承知のうえで何とか感情を剥き出しにしてやりたいと波風たてるのに躍起になっているかのように映った。
お互いが相手の気持ちを掴めないのに、特に芦原が素直に心のモヤモヤを出さずに藤堂の感情を引きだそうとする様子で話が進んでいくのは歯痒かった。

そんな中でも藤堂が芦原を見る目は確かで、芦原は拾ってもらった令輝に恋慕しているのではなく、幼い頃に一目惚れした瞬間からルーレットにかいづいている、と勘づいたかのような行動は流石だと感じた。

作中の登場人物の会話については前作ほど誰の台詞か迷う事はなかったし、さりげなく粋だなと感じた部分もあった。

ぐずぐずした展開ではなくメリハリもあるのだが、この人の話って視覚的にフィルターがかかって見える感触というか、作中のキャラクターの感情を掴むのに苦労した。
自分なりに理解できるのが上記の通りで精一杯だ。

まだ二冊しか読んでおらず慣れないってのもあるが正直にいうと、今はまだ一穂さんの小説って通好みの映画みたいに感じてしまって気軽さを感じ辛い。
改めて自分は良くも悪くもベタで解りやすい二時間サスペンスのほうが好きなんだなってのをつくづく実感した。

5

面白かった!

木原さん然り、一穂さんもカタカナのタイトルのものは好みではないんじゃないかと勝手にジンクスにしてたけど、違いました。「ノーモアベット」でスピンオフになるなら社長か芦原のどっちかだろうと思ってましたが、まさかこの二人の組合わせとは。それほど芦原のイメージが違っておりました。アルカイックスマイルで他人には興味がないというのは合ってるけど、自分を大事にしていない人だったんだなあ。社長ももっと飄々として食えない大人といった印象だったのに、こと芦原相手だとこんなにヘタレてしまうのかな。そこがまた魅力でしたね。機内の二人のやりとりが好きでした。

4

良かったです。

「ノーモアベット」は未読です。
レビューを読んで、読んだ気になっていました^^;
本作が面白かっただけに、先作も読んでいたらもっと面白かっただろうな。
先のカップルの2人が割と絡んでいて最初は誰の会話か分らなかったので。

前々・前都知事がプッシュしていた公営カジノ案があったけど、そのカジノのオーナー藤堂とやり手ディーラーの芦原雪の話です。
先のカプもこの2人の仲が他とは違う?と思っていますが、その通り、実は2人は幼馴染みに似た旧知の仲。
「ワンダーリング」は、雪が父親に捨てられたラスベガス~令輝の命令通り各国のカジノで働き~藤堂に辿り着くまでを当て嵌めてのタイトルでしょうか。
雪は、ネグレクト父親がカジノで大負けし失踪した時、藤堂の兄・令輝(レンフィ)に拾われた子供でした。
藤堂は腹違い兄弟の19番目の末子で、雪の名付け親でもあるし、可愛がる対象が欲しかったのもあって、令輝が雪を連れて来る度・雪の噂が耳に入る度に、どんどん気が雪に向いてしまう。
でも、子供でも敏い雪は、如何にも厳しそうなボスの令輝の下で生きていく自分だから、その藤堂のぬるさを危険視してか馴染まないままで袖にされ続ける藤堂なのです(苦笑)゛
藤堂の「雪を可愛がりたい病」は、東京のカジノで共に働きだしても相変わらず^m^
賭博の世界なので暴力的な描写も少しありますが、大方甘々に、ツンvsデレ進行していきます。

賭けごとの高揚感や緊張感や色や音が伝わってくるのは、やっぱり上手い作家さんですね。
それに、3者3様、強いキャラが良いです。
藤堂の雪の世話焼きは根っからだったし、令輝はボスとして傲慢も多いけど、その裏ですっごく頼りになる奴だったり。
令輝に隷属する忠犬・雪がいて、藤堂に尖ってしまう迷い猫・雪がいたり。
順番が違ったけど、先の話のカップルも期待できましたし、今回の2人見たさに「ノーモアベット」を早々に読みたくなりました。
久し振りの一穂先生、また良かったです。

5

盛り上がり部分に

最近、甘々な読み物が続いていたのですがこの作品はなかなかなビターなテイストのお話でした。

どうやら。前作がノーモアベットのようだったのですがその作品を見ていなくてもお話には何ら影響はありませんでした。
カジノの、主にルーレットを作品の軸に置いてらっしゃるのですが
なにぶん自身が見たことも触ったこともないゲームだったのでたぶんすごく盛り上がって面白んだろうなというところにいまいち感情が乗り切れませんでした。
臨場感は伝わってましたが。。。
ちなみに恋愛模様も複雑でこれまたのりきれなかったので自身の評価は中立とします。
ただ、好きな人は好きなんだろうなぁと思いました。

4

運命の輪の果て

いきなり、これ誰?というチャイニーズらしき兄弟の
海外小説のような会話から始まる本作。
兄が猫を拾ってきたというので、喜んで「雪」という名前をつけた弟。
期待に胸を膨らませて見に行くと、そこにいたのは……。
「……これは猫ではありません」……。

「ノーモアベット」のスピンオフ。
前作で魅力的だったカジノオーナーの藤堂と、
これまた面白そうだったあっさんが主人公。
あらすじを見て、主役が藤堂だというのは分かっていたが、
開けてビックリ、お相手は芦原でした。



前作に引き続き、スリリングなギャンブルの高揚感と人間模様が上手くリンクしている。
登場人物たちの(あ、一哉や逸を含めて)ウィットに富んだ会話や行動、
複雑な藤堂の家族の独特の愛情としがらみ、
カジノの華やかな光と 影、
柔らかくしゃれた語り口で描かれる、非日常と日常。


小悪魔的なあっさんこと雪と、本名、李九燿(ジウユー)こと藤堂。
華人財閥の19番目の末っ子で、一族から可愛がられている藤堂が16歳の時に
まるで賭けの景品のように引き取られてきた7歳の雪。

かつては徹底的に無視し、今は無礼且つ冷淡な口しか叩かない雪が
いつどうやって藤堂を愛するようになったのか‥…は、殆ど描かれないが
藤堂にとって、最初から雪が特別だったように
雪にとっても藤堂は未だかつて出会ったことのない、
下手に近寄ったら何かが起きそうな存在だったのだろう。

「この性悪」と言われて、「褒められちゃった」と答える雪が可愛い。
前作での彼は、もっとスラリと大人な印象があったのだが、
この可愛さは、藤堂にだから見せる顔。

一方の藤堂は、懐が広い大人でカッコいいけれど、
実は雪に関しては相当なヘタレだ。


一穂作品のスピンオフは、いつもこうして脇役では見られない顔が見えるのが魅力。
外向きの顔の底にそっと忍ばせた、特別な本当に特別な人にしか見せない顔。
それ覗き見る事ができる読者は、なんと幸せなことだろう!

回る運命の輪、
戻る先は常に貴方……それが定め……、というような関係が
実に現代的な感覚で、そしていつも思いがけない切り口で描かれている。
この作品も、また然り。

ただし、Hシーンの描写は今ひとつ。
力作なのは分かるのだけれど、文字を音読するような感じになってしまう。
美しい描写、面白い描写も散見されるが、一息に気持ちのまま読む流れがない。
そこは些か残念でした。


今回お初に登場の、藤堂の兄の令輝(レンフイ)がまた魅力的。
雪を引き取ってきて、まるで道具のように冷淡に扱っているかのようで
実は誰より雪と藤堂を理解していたのは彼だったのでは?と思わせる。
物語にダークな深みと凄みを加えるこのお兄ちゃん、多分アラフィフ独身。
さて、更なるスピンオフはありやなしや?


最後に。
表紙が(季節外れだけれどw)素敵……、構図や色彩が好みでした♡


※ 初っ端に出て来た「放蕩一代記」の銅版画は、
  読む版画と言われるW・ホガースの作。
  http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/060114/
  こういう細部も一穂作品の魅力になっていると思います。


7

家族の輪

『ノーモアベット』のスピンオフ。
カジノオーナーの藤堂と
ディーラーの「あっさん」こと芦原の話です。

『off you go』の佐伯氏を幼くしたような
芦原のキャラが好みであったこと、
勝負の水面下に描かれる愛憎の迫力に
引き込まれたこと、
楽しいだけではないカジノの暗黒面が描かれていたこと
…等から、個人的に前作より好みでした。


シンガポール系中国人で、大富豪の父が愛人に生ませた
母親違いの兄弟たちと共に育った藤堂(本名は九燿)。
ある日、兄がラスベガスで少年を拾ってきて
名付けを一任された藤堂が彼を「雪」と名付けたのが
芦原と藤堂の出会いでした。

それから現在に至るまで、決して藤堂に懐かない雪。
雪の毒舌と藤堂のツッコミという会話はテンポがよく
反抗期の子供と父親のような微笑ましさがあります。


ひねくれ者な雪には、藤堂の育ちの良さや人の良さが
苛立たしく、優しくされることもプライドが許さない。
自分に名を与えてくれ無条件に優しくしてくれる藤堂の存在は雪にとってとても大きいけれど、生来の天の鬼な性格から
つい意地悪を言ってしまう。
屈折しているようで、たまに見える甘えやヤキモチが
子供のようで可愛いです。

そんな雪に対し、藤堂は
坊っちゃん育ちでまっすぐな自分を曲げるのではなく
正面から勝負を挑む。

それは藤堂のプライド故でもあるが、それ以上に
それが意地っ張りな雪に心を開かせる
唯一の方法だからだと思います。
対等なままではダメで、雪の全人生と言っても過言ではないルーレットで「負ける」ことが、雪が素直になるためには必要だったのだと思います。
雪が飄々とした顔を崩し悔し涙を見せるシーンは
ようやく雪の素顔が見えたという意味で感動的な一方
彼の人生がどれほどルーレットと一体であったか
伝わってきて切なさも感じます。

しかし、この勝負があってこその
後半の二度目の「真剣勝負」だと思います。
育ての親同然の令輝の前で、藤堂を守るため
回転盤を回す雪。
人生を賭けた真剣勝負だが、その根底には彼らの「家族」としての歴史や互いへの揺るぎない信頼が見てとれ
スリリングな描写にゾクゾクすると共に
温かい感動が胸に迫ってきます。


タイトルの「ワンダーリング」は
ルーレットの回転盤や運命の輪を指すだけでなく
疎遠に見えても深いところで繋がっている家族の輪をも
表しているのかもしれない。
雪と藤堂の関係は恋愛というより、昔から無意識に存在した
絆や信頼のような安心感あるもので、
その延長に性愛がある感じです。

濡れ場の表現の回りくどさと、
派手な矯声が雪のキャラと合ってない気がして
色気をあまり感じなかったのが残念ですが
全体的には、人間ドラマとエンタメ感のバランスが良く
二人の親子のような兄弟のような関係も微笑ましく
好きな作品でした。

7

あっさん可愛いぃ!

ノーモアベットのスピンオフ作品です。
あらすじで雪と読んで誰?と思ったけど、あっさんのことでしたか!ノーモアベットでは飄々とした大人なイメージでしたけど、その飄々の裏ではこんなことを考えて、こんなことしてたのね、と驚きでした!
そして前作での藤堂社長に対しての態度はそーゆうことだったのかとか、2人の過去なんかが丁寧に描かれていて良かったです。一哉たちから見たら社長もあっさんもクールな大人だったけど、本当はお互いがお互いに振り回されてる感じやもだもだしてる感じに萌えました(≧∇≦)
なかなか素直にならないあっさんのちょっとした一言に私もぐらっと来ちゃいました!ってかあっさん大人気ないというか…子供?(笑)
この性格だからなかなか甘々な展開にはならないけど、それでも嫌いといいつつもちゃんと藤堂といてくれるあっさんが好きです。

3

この作品が収納されている本棚

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