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言って、イって~官能作家育成中~

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表題作言って、イって~官能作家育成中~

中溝兵衛,官能小説編集者,27歳
楠木恭司,若手文芸作家,21歳

その他の収録作品

  • 言って、イって
  • イくなら一緒にどこまでも
  • あとがき

あらすじ

官能小説編集者の中溝は、ひょんなことから担当することになった若手文芸作家・楠木恭司に頭を抱えている。スランプで崖っぷちに立たされているにもかかわらず、あんまりにもウブでピュア、色恋からはほど遠い――そんな恭司に“ソソる”官能小説を書かせるため、中溝が取った方法とは!?

作品情報

作品名
言って、イって~官能作家育成中~
著者
浅見茉莉 
イラスト
今野さとみ 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
発売日
ISBN
9784040671161
3.3

(18)

(0)

萌々

(9)

(7)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
59
評価数
18
平均
3.3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数7

受けの行動が読めなくて楽しい



SS「言って、イって」 + 「言って、イって ~官能作家育成中~」 + 
SS「イくなら一緒にどこまでも」

全編攻め視点。

受賞作品いらいスランプに陥っている文芸作家・楠本恭司(受け)を担当することになった官能小説の編集の中溝(攻め)が肉体的な恋愛部分がうまく書けないという恭司の面倒をみることになります。
経験のない恭司に実地で教えると、それを吸収して本に昇華してくるのを見て、これからもつきあってやろうと決意します。


この最初の導入のSSを読んでこの本を読むのをやめようかと思いました。
恭司に対する態度に腹が立って。元々文芸の作家がスランプ気味だから目線を変えて官能小説をって感じで預かっている大事な作家に対する態度じゃありません。別に作家に傅けと言っているわけではないのですが、いきなり煙草を加えて「灰皿」って,、お前は何様だ。話し方も完全に上から目線。せめて対等であってほしい。そして、恭司を引き受けたのも自分が狙っている同僚はるかからの要請で、彼女への点数稼ぎという不純な動機。で、実地で教えるからって手を出して(最後までしてないとはいえ)面倒な作家を押し付けられたからこれくらい役得って、仕事を何だと思ってんだ。

とはいえ、受けの恭司がとても面白いので何とか読み進めることができました。
色ごとには全く無知で、でも頑固で納得できないと書けない。だから、セックスシーンとかも実感したいと中溝を頼るのですが、最中はすごく乱れる癖に終わったら冷静に反芻して作品の中に活かすという、このあたりがとても楽しかったです。
なんでも挑戦するので、フェラチオの感覚がわからないからとバイブレーターを舐めたけど感じがつかめないのでやらせろといってみたり、ローターを突っ込んでみたのはいいけど取れなくなったとか、SMを書こうとして手錠を掛けたら鍵が壊れたといってはSOSしたりするのが楽しくて、それを聞いておののいたり、驚いて駆けつける中溝に笑えました。
同じ賞を受賞した先輩作家に構われているのを見ていらいらしたり、自分でもおかしいと思っていながら気が付いていなかったのに、途中、文芸担当のはるかに告白され、もともと狙っていたはずなのにちっともうれしくなくて、それで初めて自分が恭司のことが好きだと気づくのですが、もともと秋波を送られていたからその気になったのに断られて、中溝の振り回されたはるかも気の毒でした。
だからこそ、はじめこそいきなり実地でといって恭司を驚かせた中溝がその後は恭司に振り回されっぱなしなのが楽しくて、最初が最初だっただけにいい気味だと思いました。
特に最後のSMの再現には笑えました。SM自体にあまり興味がないのに恭司に頼まれて、スマートに恭司の意向にあうように頑張る中溝には笑えました。これからも恭司のために頑張るといいと思います

ただ、中溝はSだと認めているし、恭司もM気質ではあるのですが、恭司が中溝を好きになった理由があまりよくわかりません。最初のほうではっきり言ってもらったのが良かったようなのですが、どうみても社会人の仕事相手に対する態度じゃないだけに、なんでこんな奴って思ってしまいました。(こんなに主人公をdisるのは初めてです)

イラストはとてもよかったです。
イラストの片隅にデフォルメされたそれぞれの顔がジト目だったり、げっそりだっり、、その時のそれぞれの感情が如実にでていて楽しさ倍増でした。

0

解らない人って魅力的だよね

電子書籍で読了。挿絵有り(初めての絵師さまですがモノクロページのグレーが綺麗で好きです)

『答えて姐さん』でトンチキBLとしてご紹介いただいた一冊。
このお話、すごく好き!紹介してくださった方、ありがとうございます!

文学賞を取った小説家(楠木くん。大学生)が二作目の重圧に耐えられず筆が滞ってしまったので、スランプ脱出のために同じ出版社の官能小説のレーベルで書くことになったのだけれど、全くもって性的な経験がないのです。担当編集者だった四方田はるかちゃんに気のある中溝(こちらは官能小説レーベルの方の編集者なんですね)は、なんとか楠くんの第二作目をモノにしようとするうちに実地体験をすることになって……という風に、まあ、ある程度、定番っぽい進み方をするのですけれど。
でも、色っぽさが半端ないんです!

何故こんなに楠木くんが色っぽいか考えてみたんですけれど、多分、最初から最後まで攻め視点で書かれているからなのではないかと。楠木くんが何を考えているか、よく解らないんです。
「小説を書くためなら何でもするような子で、もう体当たりなのかな?だとしたらぶっ飛んでいるな。大丈夫かな?」と思っているうちに、目が離せなくなるんですよ。連絡が来れば「ああ、また行き詰まっているのか」と心配になるし、来なければ来ないで「書くことに集中しているんだろう」と思いつつ「また、変なこと(大概はエロ実験)で抜き差しならない状況になってるんじゃないか(実際に抜き差しならなくなって、差されちゃったエピソードがあるので笑えるんですが)」と心配になる。
これだけ気になっていて、見ているのに、相手のことがよく解らない。更に知りたいと思う。もっと近づく。自分を削ってまで描こうとするタイプの作家だとは解るけど、でもやっぱり解らない何かがある。もっと近づきたいと思う。
これ、恋に落ちるのは当たり前だろう!もう、中溝の気持ちが痛いほど解る。
大げさに言えば『恋の本質』がここにある、って感じです。
もっと評価されて欲しいなぁ……

3

軽めだけど面白かった

あんまり重くないだろうなと気軽に手に取りました。
確かに軽くて読みやすいですが、コミカルな描写がきちんと面白くてなかなかよかったです。

DTなのに官能小説家。ストーリー作りのために編集(攻め)が実践しちゃう、という設定。Hに慣れててオラオラ攻めのはずなのに、恥ずかしいヘタレな脳内が読者にもろバレ、っていうのがおかしい。

もう、お幸せに、という感じ。

0

タイトルがヤバイけれど中身は微笑ましいSとM。

浅見さんのご本はさらさらーと読める物が多いですが、こちらweb連載であったため区切りも良く、物足りなさを感じるほど読みやすかったです(苦笑
視点は攻めの三人称。
攻め視点が大丈夫な方で、あまりギッシリとした重い小説が好きでない方にはぴったりかもしれません。

**********************
攻めの中溝は、官能小説編集部の編集者。
ノンケで自信家でS気質な27歳。
恭司の元担当編集者(女性)ともう一歩進展したいがために、恭司を引き受けた腹黒でもあります。

受けは新人賞作家の恭司、21歳。
大学との兼業作家で文芸系期待の新人と言われていましたが、スランプのため今回中溝のところで官能小説に挑戦することに。
**********************

とにかく自分の経験不足(D貞)でまったく官能小説にならない恭司は、中溝に実地練習して貰うことになったのですが、そこまでの展開は短編だったせいもありはやいです。
とにかく書くことに対しては研究熱心なため中溝との行為に夢中になるものの、終わればパソコンへ直行!
その余韻皆無な行動のせいか、視点が中溝ということもあり、イマイチ恭司の心情が伝わりずらいのですよね。
中溝自身もノンケなので、恭司を可愛いとか行為最中の表情にそそられたりとかしながらも、それは気の迷いだと思い込もうとしていますし。
まあソープで出来なかった辺りからは、もう恭司は中溝にそういう意味での好意を持っていたのでしょうが。
いまいち自分の気持ちが(相手のもでしょうが)掴めない中溝には、独占欲が出だしたらもう落ちてるのよ(笑)と言ってあげたい。

男性向け官能小説というものが中心となっているため、その手の話がけっこう会話で出てきます。
男女の物が苦手な方はご注意ください。
わたしはまったく気にならないですが、こういう生々しいのは嫌な方もいらっしゃると思いますので。
プレイなんかもちょっとそっち方面に近いです。
まあ、尿○攻めは男性ならではでしょうが。
書き下ろしのSSは、その尿○攻めも含めかなりSMプレイ風味です。と言っても恭司はドM気質なので痛いではなく、気持ち良いんだもん♡的な感じです。

最後になりましたが、フルールさんの装丁の仕方大好きです。
SHYノベルズさんもそうなのですが、表紙と裏表紙が一枚の絵で繋がっているんですよね。
それが毎回楽しみです。

5

DT、化ける。

 作家と編集者のカプって、一種の職場恋愛なのでしょうが、わりと両者の力関係に差のあるものが多いような気がします。知識や経験に勝る方がどうしても主導権を握って、相手を教え導く、ちょっと師弟モノに近いような。

 先日電子書籍で読んだ市ヶ谷茅さんの「けむにまかれて」は、若手編集者が、かねてより憧れていた海千山千の大作家さんに翻弄されまくるお話で、それはそれで大層面白かったのですが、本作のカプはその逆で、うぶうぶな作家さんが鬼編集者にビシバシしごかれるお話です。あくまで入口の部分では、ですが。

 作家さんは21歳、現役大学生の楠木恭司。1年半前、文芸系の新人賞を取って華々しくデビューしたものの後が続かず、いまや干される寸前の崖っぷち。作家生命を懸けて官能小説に挑戦中なんだけど、肝心のエロ描写があまりにお粗末。担当編集の中溝兵衛(27歳)は容赦なく切って捨ててます。「主人公の親のことなんかどうでもいいんだよ。今後、親が出てきて3Pするわけじゃねえだろ」「チンコのたとえが龍笛って、細いイメージしかないわ。くびれがあるだけリコーダーの方がまだまし」(このいいぐさ、相当痛快です)

 さらに濡れ場の抽挿音でもなんともトンチキな擬態語しか浮かべられない恭司。そもそもDTで、AVも見たことのない恥ずかしがり屋さんに、想像力だけでどうにかしろと言うのも土台無理がある。「お願いです、教えてください」と涙目ですがりつかれ、ゲイではないがSの自覚はしっかりある中溝は、編集者としての使命感、というより自分の中の嗜虐スイッチをONにされちゃって、手取り足取りのイケナイ実地指導に乗り出すことになるのです。

 ところがいざ手を出してみるとこのDTくん、なんだか妙に色っぽくてカワイイ。指を挿れられ、ペニスを扱かれ、素股で射精にまで導かれて喘ぎまくるさまは、何度でも見たいし、もっともっとヤラシイことがしたくなる危うさすらはらむ。なのに事後は、「これで書ける!」とばかりに嬉々として、中溝ほっぽり出してフルチンでパソコンに向かおうとしたりして。その落差というか、いっそアッパレな作家魂というべきか。この時点で中溝は、すでに彼の中に渦巻く得体の知れぬ熱とパワーの虜となっていたのかもしれません。

 もともと中溝はノーマルなので、あて馬として登場するのは美人で仕事のできる同僚の女性編集者だし、「体験ツアー」というふれこみで恭司を吉原のソープへ連れて行ったりと、BL的には地雷に近い展開もあります。でも、ふたりそれぞれ別々の個室で敵娼と向き合ってても、頭の中は相手がいま何してるかでいっぱいで、その上「やっぱり中溝さんじゃなきゃだめ」とかって抱きつかれたら、そりゃもういくらノンケでもほだされますわな。

 「資料」のひとつであるローターを挿れたまま、自力で取り出せなくなった恭司が中溝にSOSを出して、思いっきり痴態に煽られる中溝。この期に及んでようやく自分の恭司に対する感情が担当編集としての使命感をとっくに超えちゃってたことを自覚します。そして正式に初本番になだれこむわけですが、Sの役割も、敏腕編集者の貌もどこへやら、ただもう初めてちゃんと抱く相手へのいとおしさに目が眩んだごくフツーの男になり下がってて、非常に好感が持てました。

 中溝がヘタレるのに反比例して、恭司のほうは化けます。もともとMの素質があったようで、中溝との相性はぴったり。貪欲にいろんなプレイに挑戦し、さまざまな知識も技巧も取り入れて、作家としても恋人としてもその成長ぶりはとどまるところを知りません。買い込んだ「SMエキスパートセット」を全部お試しし終わるまで、中溝はどうやってでもSであり続けねばなりません。そう、Sは「サーバント(しもべ)」のSだから。
 
 
 

3

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