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表題作神様の庭で廻る

松宮怜(薊),22歳〜25歳,高校の化学教師
大神陽斗,高校生〜大学生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

高校三年の冬、大神陽斗は失恋した。相手は化学教師の松宮怜。大学生になっても松宮への想いを引きずったままの陽斗はある日、10年前に失踪した父親の部屋で一冊のノートを見つける。そこに書かれていたのは悪魔と取引きする方法??。半信半疑で試した陽斗の前に現れた悪魔は、忘れたくても忘れられなかった松宮だった。陽斗は、自分の魂と引き換えに付き合って欲しいと取引きを持ちかけるのだが……。

作品情報

作品名
神様の庭で廻る
著者
綾ちはる 
イラスト
カゼキショウ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778118532
3.2

(34)

(7)

萌々

(9)

(8)

中立

(6)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
7
得点
101
評価数
34
平均
3.2 / 5
神率
20.6%

レビュー投稿数7

逃げては奇跡は起こらない

300ページ近い作品です。全編書き下ろし。
ネタバレだよそれ!と思われる方もいらっしゃるかと思いますので、エンディングに関してのその辺りの個人的な感想は下の方に書かせて頂きました。

教師×生徒、年上攻めの歳の差。
そういう作品をこよなく愛しておりますので、予約購入致しました。
最近では高校生『同士』となると、どうにも自分の薄汚れた感覚を意識させられ「うお!眩しすぎて読めません!」てなことになっておりましたが、やはり片方が大人ですと話が違います。
ふう、やはり教師×生徒は良いです。
そして絶望的に切なかったです。
久々にじわじわと沁み過ぎて、鼻水が出ました(苦笑

**********************
受けの陽斗は高校時代から松宮を恋い慕っていましたが、告白することなく外部受験した大学へ通う19歳。
大学教師だった父親は十年以上前に失踪し、母親は海外で仕事をしているため一人暮らし。

攻めは陽斗の通った私立高校の科学教師、松宮。
新卒で赴任した先で、副担任として陽斗に出会いました。
ヒョロリとした穏やかな風貌は女生徒から人気で、クラスに馴染まない陽斗と旧校舎で過ごす内に親交をあたためます。
**********************

この作品の現在は陽斗は大学生となっているのですが、そこからちょくちょく彼の記憶をなぞるように高校時代へと戻ります。
ただその時は節の始めに『memory』と書かれておりますので、それが出てきたら過去ということで。
章分けもされていますが、それは過去と現在というよりも、現実と虚像という雰囲気です。
あらすじにも『悪魔』と書かれていますのでこちらで書いても差し障りはないかなと思い書きますが、松宮は悪魔の『魂』を持って生まれたという存在です。
ちなみに陽斗の父親は天使の『魂』を持っていました。(遺伝はしません、魂の話なので)
ただその設定自体は良くあるファンタジックなオドロオドロしいものではなく、日常にもしかしたらそういう人間もいるのかも、紛れているのかもしれないね…という気持ちにさせられるように書かれています。
それは『天使』も同様です。
彼らには固有の本来の名前があって、天使には鳥の、悪魔には植物の名前が。
空を自由に舞う者と地を這うもの。
なんだかそんなことを連想し、切なくなります。

多忙な母親の代わりに陽斗を大きな愛情で包み込んでいた父親の突然の失踪で陽斗の心には埋めることのできない空虚が生まれ、いつの間にか孤独というものに慣れた頃。
ベッドで一人で過ごす時に心の中で求め呼ぶ名が父親ではなく松宮の名へと変わり、そんな恋慕とそれが叶うことのない心に再び空虚が訪れます。
卒業後、わざわざエスカレーターではなく外部の大学へと進み、日常にきっとこの想いは埋もれるのだと思いながらも、その想いも心の穴も埋まることはなく、今年二十歳を迎えることとなった今、父親の残したノートを利用し悪魔を呼び出すという行動に出た陽斗。
信じていたわけではない。
ただ一縷の望みで、再び松宮に会うことが出来、少しでも側にいることが叶うならば何にでも縋りたい。
そんな気持ちで呼び出した悪魔。
ただそれが現れてみると悪魔とはその『魂』を持つ松宮で、松宮には過去の痛みが再び伴うことではありました。

途中途中で陽斗の友人の幼い妹・沙帆が登場し、彼らの行く末に多大な影響をもたらします。
個人的には子供はBLに不必要と思ったりしているのですが、彼女は子供ではないんですよね。
こまっしゃくれた子供という意味ではなく、事実として子供ではないのです。
その辺りは読んでみて、ご自分で確認して頂きたいと思います。
そして、陽斗と松宮の過去に本当は何があったのか。
断ち切ったはずの苦しい過去が、なぜ繰り返してしまったのか。

これはあれですね、読み取る人間によっては綾さんが後書きで言われた『今作はもちろんハッピーエンド』というお言葉に、納得出来る方と出来ない方がいらっしゃるのではと思います。
わたしは個人的には後者かなあ。
もちろんこの作品のエンドマークまでを考えるならばハッピーエンドですが、その後にいつか松宮が起こすであろう決断を考えると『一緒にいられて良かったね』とは手放しでは喜べないと言いますか。
特に陽斗サイドは、松宮を苦しめるならば自分が一人で辛い方が良いという思考が多々表現されておりますし。
ただ同様の気持ちを松宮もまた抱えているので、そのあたりに関しては解決されておらず平行線なのだろうと思います。
この瞬間、この時を大事にしていきたいということでしょうが、もう少しご都合主義でも良いから気持ちを救ってほしかったなと。
同作者さんの『イエスタデイをかぞえて』でもこういった特殊な設定が使われておりましたが、そちらは読者の気持ちを最後には救済くださっていたと思います。
しかしながらこの手の胸をギュッと締めつけられる恋心は綾さんでないと表現出来ないのかもしれないと思わされた作品で、切ないけれど二人が少しでも長く一緒にいられると良いな、陽斗が真実に気づかないと良いなとも感じられましたので、神評価とさせて頂きました。
恋情と自己犠牲的な愛情は、また別ものなのだろうなと考えさせられた作品でした。

ちなみに後書きにあります解決されていない裏主人公とは、沙帆のことなのかそれとも猫のことなのか判然としませんが、沙帆は彼女が陽斗へ行った行動に悔恨の情はあったとしても、己の存在や意義に1ミリの疑問も持っていない泰然たる人物に感じました。
それは己の存在ゆえ迷いがないのかもしれませんが、もし沙帆のことを指されていたならばわたしもあのままで着地されているなというのが感想です。
猫の方だとすると謎の回収にわざわざページを割かれたりスピンオフで扱うと、個人的にはこの作品に変な嫌らしさがついてしまいそうかなと思いますね。
それともまさか松宮のこと?

14

冬草

ココナッツさまへ

こんにちは!
あとがきの”裏主人公”、気になりますよね。
わたしは、沙帆のことなのかなあとぼんやり思いました。”大きな課題を抱えたまま終わる”とは、沙帆の”賭け”のことで、最終的に天使である彼女がその賭けの結末を知ることはない・できない、ということなのかなあ、なんて。(でも、松宮にも当てはまるような気はします...)

こちらの作品は、ココナッツさまのレビューをはじめて拝見した時から気になっていて、実際手に取って読んでみて本当に良かったと思っています。ありがとうございました♪

切なかった・・・( ´Д`)

読んだ後にぼうっとしてしまうような作品でした・・・
なんと言っていいか分からなかったんだけど
他の方のレビューで「胸がぎゅっと締め付けられる」
という表現を見て「それだ!」ってなりましたw

設定が特殊だったけど徐々に小出しにしてくれたおかげで
私的には混乱することはなかったです(´∀`)
後半から二人がどうなるのかばかり気になって
長い作品だけど一気読みしました!
攻めの先生が感情に突っ走らないで
自分の生徒のことを考えてあげてるのがよかったな~
仕掛けがいっぱいあってすぐに最初から読み返しました。
これもこれも伏線だったのか~・・・って感じです><

2

はなみなは

ココナッツさま

うわあぁ!初めまして!!
コメントとか普段もらわないのですごい嬉しいです( ´///`)

ココナッツさまの表現勝手に引用させてもらって
すみませんでした・・・m(_ _)m
でも私の気持ちをそのまま言い表してくださっていて
思わず「そうそう!それー!!」ってなってしまいました!

ココナッツさまの言う通り、素敵な作品でしたね~
ドキドキハラハラしっぱなしで読んだ後放心でしたw

BLの話をすることが少ないのでコメントいただけて
しかも同じ作品を好きだと言い合えてすごく嬉しいです!
感動しちゃいました~><
ありがとうございます!!

ココナッツ

はなみなは さま

初めまして、コメント失礼いたしますm(_ _)m

>後半から二人がどうなるのかばかり気になって

わたしもものすごい気になってしまい、実は先にパラっとラストを確認してしまいました。ハラハラに負けました(^^;;
でもその時は本当にパラ見だったので『一緒にいる…良かった〜』なんてノンキに思っておりましたから、ラストに近づくにつれ『嘘!どうなっちゃうのー!』と。
松宮の心とは裏腹の一歩引いていた辺りが、わたしもはなみなはさま同様すごく良かったです。
厚い本ですがその厚さが気にならない素敵な作品でしたね。

神様を、信じますか

初読みの作家さんです。
レビューを拝見して、とても気になっていた作品。
長めの物語ですが、文章は読み易く会話も多いため
一気に読み進めることができます。

父親の書斎で見つけた一冊のノートを手に
大学生の陽斗が取引をするために”悪魔”を呼び出すと、
そこに現れたのは想い人で高校時代の副担任・松宮だった。
魂と引き換えに”付き合ってほしい”と取引内容を話す陽斗だが、
悪魔・松宮に拒絶されてしまう。
でも、どうしても松宮をあきらめられない陽斗は―

人間の愚かで切実な願い、魂と引き換えの悪魔との取引、天使の介入...
ファンタジーを軸にした作品なのですが
現在と”ふたつ"の過去が交錯するように描かれているのが魅力的。
時間軸を行き来するたびに、驚きや胸を突く切なさと共に
現在に至った事実が少しずつ明かされていき
長い物語も読み手を飽きさせることはありません。

父親の失踪、母親の不在という複雑で寂しい陽斗の心に、
まさに魔が差したように入り込む悪魔の甘い誘惑。
一見穏やかでやさしい松宮の、悪魔としての本性の描き方が
きれいなアザミの花にある棘のように生々しく描かれていて、興味深い。
あと、個人的に松宮の嫉妬深さ(猫にまで!)にはかなり萌えました♡
(セックスシーンの描写は一度だけですが、中々濃密でした。)

又、悪魔の甘いささやきに対し、”ちゃんと考えて”と介入してくる
天使・沙帆は、悪魔に魂を引き渡す本当の意味を陽斗に諭し、且つ
陽斗の父親の想いを託された、重要で独特な存在感を見せていて
見た目が可愛らしい子どもというギャップも良かったです。

松宮と陽斗がそれぞれ選んだ結論は
お互いが大切に想い合っているからこそ辿り着いたものだけど
ふたりのこれからの本当の最期を想像すると
完全なハッピーエンドとは言い難く、
切なさややり切れなさが込み上げてきて、複雑な気持ちになります。
沙帆の”賭け”は、希望論にすぎない。
それでもそこにあってほしいと願うのは、
希望という名前を持つ神様の存在なのかも知れません。

ファンタジックなベースながら、
人間、悪魔、天使、魂の意味や意義が象徴的に巧く描かれているし
そういったものを越えたふたりの愛情にも魅せられました。
『神様の庭で廻る』というタイトルも良い。
評価は、希望を込めた萌×2です!

2

ココナッツ

冬草さま

コメントありがとうございます(*^^*)
わたしの意味をなさないレビューで一冊お買い上げ頂けるとは!(*^m^*)

あの裏主人公って、作者さんが誰を主人公に据えているのかによって違うのかなあと思ってまして。
もしもカップル二人ともを主人公と規定しているならば、あれは松宮のことではないのでしょう。
ただ陽斗だけを主人公だとなると、松宮が濃厚なのかなあ…
それか猫(笑
何かの化身とか、考えてしまいました。
沙帆の場合は女の子という時点で、BL作品から外されているのかな。

温もりを知り、孤独を知る

 積読していたので本作の情報はきれいさっぱり忘れていましたが、読後に作品ページを確認してみて購入動機は教師×生徒とヤンデレだったことを思い出しました。
 ネタバレを見ずに読むことをおすすめしたいので、未読の方は読まない方がいいです。

 上記のようなことを書いておいてなんですが、情報ゼロの状態で一章を読み進めるのはなかなか辛かったです。なぜ陽斗が悪魔を呼び出したのかも分からなくて、物語に入り込むまでに時間がかかりました。
 時折回想を挟むので陽斗が松宮を好きになっていった過程は理解できましたが、天使や悪魔といった特殊設定や子供なのにかわいげがない沙帆の登場、そして何より松宮があまりにも陽斗に対して突き放すような態度だったので、いつまでも松宮にこだわる陽斗にまでモヤモヤしてしまいました。
 とはいえ一章の終わりで陽斗と松宮の関係性が分かって感激したので、話の構成としては間違っていなかったと思います。
 ただ、一章はページ数の三分の一以上を占めており、その一章の終わりまで(今思えば途中で松宮が陽斗にただならぬ想いを抱いているような描写はありました)核心にふれられないので、私のような察しが悪い読者にとってはそこに辿り着くまでが少々長すぎたかもしれません。
 でも松宮が恋をした相手が陽斗であることが分かった時は本当に感激しました。

 二章は陽斗の空白の過去編で、松宮と取引きを結んだ恋人関係だったことが明らかになります。
 やきもきしながら一章を読んだご褒美と思いながら二人の恋人としてのひと時を楽しんでいましたが、松宮は悪魔としての役目を果たすために陽斗に甘い言葉を囁いていたのが少し残念だし、松宮が陽斗に恋しているのを自覚してからは陽斗に本当の名前を呼ぶなと言ったり遠ざけ始めるので、結局切なかったです。
 寒いと感じることは寂しいことだと、そして寒くなくなるまでずっと一緒にいると言った陽斗に松宮は無自覚に恋をしますが、陽斗に近づく者全てに嫉妬する一面に萌えました。
 せっかく本格的に甘い関係になろうとしていたのに、陽斗を大事に想う松宮は悪魔としてあるまじき行動をとり、天使である沙帆の協力のもと陽斗の恋人期間の記憶を消すことで悪魔との取引きを強制解除し、陽斗の死後の魂が孤独にならないようにするのです。
 確か三章で、悪魔は前世の記憶がないと言っていたので、松宮にとっての記憶は松宮怜(人間)としての生活が全てと解釈して良さそうですよね。だから孤独だった松宮は、初めて温もり(愛)を与えてくれた陽斗に惹かれたのでしょう。温もりを知ったことで孤独の寒さが辛いことだと身をもって知ったからこそ、愛する陽斗に孤独になってほしくないと願うのは共感できます。
 陽斗との強制的な取引き解除は、悪魔である松宮にとって、これ以上ない愛ある行動だったと思います。しかし切ない。

 以下、本格的なネタバレ注意です。

 本作の疑問は、なぜ同僚の小原の告白には職場恋愛はしないという理由で断り、教え子である陽斗の告白(好きとは言ってないけど)は断らなかったのか。
 自分を好きだと言ってくれる相手なら魂を予約できる好機だと思いそうですが、祖父の一件を踏まえると「悪魔」とじゃないと成立しないんですかね。個人的には松宮が陽斗との時間を人生で一番心地よく感じていたからという説を希望します。
 もうひとつの疑問は、陽斗が記憶をなくした間は本当に取引き解除になっていたのか。
 陽斗は前々から松宮を好きだったので、記憶を消しても松宮への想いは消えてなかったし、松宮も陽斗との思い出の場所へ出向いて感傷に浸るほど陽斗を好きなままでした。
 甘い匂いは魂の腐敗臭だと言われていたけど、記憶を消したら陽斗の腐敗臭は消えていたのでしょうか。
 どんなに想い合っていたとしても、陽斗が松宮の悪魔の名前を忘れてさえいれば取引きは解除されていたと解釈しておきます。
 あと、猫(アザミ)は何者だったのか。私は最初猫が天使(北斗)だと思っていましたが、それは沙帆でした。
 悪魔には縄張りがあると言っていましたが、沙帆が陽斗の友達の妹という関係性を思うと天使にも縄張りが存在する可能性があります。なので猫は別の天使でもなさそうですが、かといってただの猫という風にも見えず、意味を含ませた存在に見えました。
 本作の神様と天使と悪魔は、神様>天使⇔悪魔のような位置付けでしょうか。神様と悪魔ではなく天使と悪魔が対極っぽかったですよね。
 タイトルは「神様の庭で廻る」なので、身も蓋もない言い方をすれば、陽斗も松宮も沙帆もしょせんは神様の手のひらの上で転がされているのでしょう。その神様とは一体。とても安易な考えですが、私は猫だと思っておきます。陽斗は神のご加護を受けているから死後も何とかなる……はさすがにご都合主義にも程がありますかね。
 余談というか願望ですが、北斗が最期に頼った悪魔が松宮の前世で、無意識に記憶を継承した松宮が無意識に陽斗へ近づいていたらおもしろいなと思いました。

 賛否ある終わり方でしたが、最善策がないまま終わったのが現実的で私は良かったと思います。
 むしろ死とは無縁の今が一番幸せなはずなので、現実逃避的な意味でも二人の甘々をもっと見せてほしかったです。
 松宮は陽斗が死ぬ前に自殺して取引き解除することが最善と思っているようですが、さすがに陽斗に気付かれるでしょう。
 沙帆は前世(北斗)の記憶の影響で陽斗を案じているので、沙帆が天使特有の短命でも来世でその記憶が引き継がれ、また陽斗の元へやって来て味方になってくれるような気がします。
 とにかく長生きしてほしい。ただそれだけです。

 おそらく二周目ありきの物語だと思うので、再読したら今よりも評価が高くなるのは間違いないです。
 しかし、あえて初見の感想として「萌」にさせてもらいました。
 少し期間をあけてから、陽斗と松宮の気持ちに寄り添いながら再読したいと思います。  

0

とてもいい話なのに、残念。

惜しい!
ホント、勿体無いです。
こんなにいい話なのに、中盤以降まで作品を読まないと、
この物語の鍵となる謎が解けなかったのは私だけでしょうか?

謎が解けるまで、悶々としながら、読み返しては
見逃しがなかったかどうかチェックしつつ読んだのは、
私だけだったのでしょうか?

   ◆◆   ◆◆   ◆◆


【 謎が解けなかった理由 】

注目したのは「第二章 過去の箱庭」の「二」からです。
(頁数では111ページ)

大学生にはなったものの、
高校の副担任・松宮(攻め)への想いを断ち切れない、主人公の陽斗。
偶然見つけた父親のノートで悪魔を召喚したら、現れたのは松宮でした。
自分の魂と引換に、付き合って欲しいと取引内容を提示した陽斗。
松宮は、自分の本当の名を見つけられたら、取引に応じると言います。

そして、天使と名乗る謎の少女・紗帆の導きによって、松宮の
本当の名を言い当て、ふたりは付き合うことになるのですが……


が!!!!
しかし!!
ここです、ココ!! 注目です!

111頁で、いきなり陽斗は高校生に戻っているのです。
いつも過去の物語が出てくるときは、チャプター名(?)に
「memory」と記入があったのに、ここにはありません。
と、いうことは現実世界ということになります。

しかも、なんと陽斗は松宮と付き合っています。
えええええ!?
何故!?
どうして???

現実世界なのに、いきなり過去(約3~4年位前)に戻った?
悪魔である松宮と取引したのは大学生の陽斗。
そして、そこから付き合いだすのではないの?
何故高校生の陽斗がいきなり松宮と付き合いだすの?
何故時間が巻き戻ったの??
どういう仕組み?

きっと何か見逃したのだと思い、過去の頁を遡ってみましたが、
それらしい記述はありません。
唯一ヒントとなりそうなのは、紗帆の言葉からの「1年前」という
キーワードだけ…。

さっぱり意味が分かりません……o(-ェ-)o

何か見逃しているのかなぁ……。
うーん??


そして、「三章 廻る あるいは仇する」で
やっと謎が解けます。ここが193頁。
しかし、全ての謎が解けるわけではないのです。
時間軸を考えて、やはり3~4年前に時間が戻ったキッカケが
不明のままなのです。


さすがに意味がわからず文章を読むのは悶々とします。
いい話なのに勿体無いと思ったのは、ここの構成というところでしょうか。
話の中盤付近の構成は、読者のことを考えて、
もっと分かりやすく説明して欲しかったと思います。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

謎以外のところのレビューもさらりと。

最初にも言ったとおり、いい作品です。

しかし、次から次へと真実が明らかになっていくという構成は、
作り話がより作り話っぽく、リアリティーが欠けて、また欠けて…という
状態になっていくのを否めませんでした。

具体例を上げると、
「実は、松宮は悪魔だった」
「実は、紗帆は天使だった」
「実は、紗帆は陽斗の父親の生まれ変わりだった」
「実は、取引を無効にする方法があった」
「実は、取引を無効にする方法は3つあった」
「実は、実は、実は、実は、…………」

次々に明らかになる真実。
そして、それがあまりにも作り話っぽい。
「ああ、また、実は……」が出てくるんだろう? とか読みながら
思ってしまうわけです。
ファンタジーのように見せていなくて、実はこの話は
ファンタジーなのではないかと思ってしまうほどでした。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

そして、ラスト。
ハッピーエンドのようで、ハッピーエンドではないと思いました。
陽斗より、先に逝く運命を背負った松宮。
それでしか、これから先の幸せを得ることが出来ない。
これから長い人生、彼らは二人で幸せな人生を
長く長くおくるのかもしれない。

でも、松宮は必ず陽斗を残して、ひとりで先に逝かなければならない。
それで陽斗がどれほど悲しむことか。

長い二人の人生を天秤にかけたら、やはり
二人の長い幸せな人生を惜しむことは出来ない。

しかし………
やりきれないものがあります。

見る人によって、ハッピーエンドなのか
ハッピーエンドではないのか、判断してほしいという
著者の綾ちはるさんの意図もふくまれているのかもしれません。

どうしても寂しさを感じさせる最後でした。


綾さんは、時間軸を考える物語を以前にも著作していますが、
今回は、ちょっと失敗だったかなぁと思います。
あまりにも分かりにくかった…。
謎が分からず、悶々とさせられました。

あと、次々と明らかになる真実については、「またか」という
印象が拭えず、どうしてもリアルからどんどん逸脱してしまう気がして
なりませんでした。



今回は、ちょっと残念です。

次作、期待してます。

11

あやちゅけ

ココナッツさま

こんにちは! コメント有難うございます(*´∀`*)

天使の強制介入によって、陽斗は記憶を消され、また紗帆に
話してもらうことによって松宮の記憶が思い出され……というのは
分かったのですが、「memory」が「上書きされた記憶」という
解釈までは至りませんでした。色々な解釈、本当に面白いですね。
「嘘」ですか。うーん、なるほどです。
ラストは、完全な大団円じゃないと、やっぱり心に何か
引っ掛かりますよね。わたしも気持ちのよいラストが良かったです。

コメント、ありがとうございました!

ココナッツ

あやちゅけさま

こんにちは、あやちゅけさま(*^^*)
やはり毎回お互いの趣味が違っていて、面白いですね!

時間軸が戻ったというよりも、memoryで陽斗が思い出していたかのように書かれた記憶はいわゆる嘘というか、一度高校生の頃に松宮を呼び出していた本来の過去を強制介入した天使によっての消された後、上書きされた行動の記憶でしたよね。
なので、本来の消されてしまった記憶を陽斗が取り戻した時に、まるでそれが時間を巻き戻したかのように書かれていただけかなと。
最初から読者に、『この陽斗のmemoryは実は虚像なのです』とあからさまにわかるように書いてしまうと先を読まなくても良くなってしまうので、ああいう手法を用いられているのではないかとわたしは思いました(*^^*)
作品のページ数が多いので、先が読めるのはNGだったのではないかしら。
ラストに対しての感想はわたしもご都合主義であったとしても、もう少し気持ち良くしてもらえれば良かったなと思いました。

この作品が収納されている本棚

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