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表題作さよなら一顆

座波榛名
27歳,中古金属買取店「百顆」勤務
矢神比呂
30歳,大手飲料メーカー勤務,バツイチ

その他の収録作品

  • またきて一過
  • あとがき

あらすじ

中古金属買取店に勤める座波。心がないと同僚にも言われる座波だが、婚約指輪を売りにいた矢神という無表情の男のことが妙に気になって・・・?

作品情報

作品名
さよなら一顆
著者
一穂ミチ 
イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403523908
3.5

(115)

(23)

萌々

(48)

(22)

中立

(14)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
18
得点
387
評価数
115
平均
3.5 / 5
神率
20%

レビュー投稿数18

小さなひと粒の向こうに

ストーリーにするっと潜りこんでいる様々な知識を吸収するのも一穂先生作品を読む楽しみのひとつなので、7月3日は涙の日だとか『顆』というのが小さな物を数える単位だとか、
座波と矢神の世界に浸りながら初めて知ることがあるのがなんだかすごく嬉しかったです。

店員と客というただそれだけの出会いで、
初対面での矢神はちょっぴり変わっていて印象には残っていたけれど、それでも何もなければ二度と会うこともなかったであろうふたり。
でもその出会いがそれぞれの心に留まっていたことで結果親しくなっていくという展開が、偶然というより運命みたいだったなと思いました。
『運命』だなんて夢見がちな言葉が似合う関係ではないかもしれませんが、
不器用すぎる矢神にはこんな『運命』があってもいいんじゃないかな。と思えたのでした。

ただ、ふたりのセックスはイマイチしっくりこなくて。
少しずつ距離が近付いていくのも座波が惹かれていったのもすごく自然で、そこまでの流れを見ていたら受け攻めがこうなるのもわかるけれど…
なんとなく矢神が「抱かれる」側な感じがしなかったな、と。
というかいつも真面目で一定の静かさをまとう矢神の、熱くなっていく雄の姿をぜひ見てみたかった…。

でも。矢神自身がすごく幸せそうだったので、辿り着いた結末に文句はありません!
座波も結果的にとてもいい方向に変われていて、素敵な出会いになって良かったなと心から思いました。

0

さよなら一顆

矢神が自分に対してのことには反応が薄いのに、他人に対して、世間話でさえ考えたり。
なんで元嫁には出来なかったのかな?
中身はすごくまじめで不器用な人で、愛おしいキャラクター。
座波は人当たりも良いし、もてそうで適当すぎるくらいの遊びの恋愛をしていて、別に不自由なく今を過ごしているのに。
矢神に惹かれるのは無いものねだりなのかな?
お互いが相手に出会って、少しずつ変わっていくような。矢神は人間らしく、座波は恋愛観が変わったり。
矢神は恋愛自体はじめての経験ぽいので、ゆっくり噛み締めながら幸せになるのだろう。
大事にね。

0

どうしてか全然刺さらない

付き合うまでの「さよなら一顆」と、後日談「またきて一過」の二本立て。分量的には一冊の3分の2と3分の1です。思いの外、表題作が短かった印象。

社会人同士のカップルなので楽しみにしていました。
ひょんなことから知り合いになる、勤め先も仕事内容もタイプ(性格)も異なる二人。
ノンケ同士であり、知り合って仲良くなって、友情が恋に発展する展開は唐突に感じ、BL展開だから仕方ないのかなとも思わせられました。
同じ作者の「降ったらどしゃぶり」は、やはり勤め先も仕事内容もタイプも異なる二人の恋の話ですが、もっと丁寧にキャラクターの心情を追っていて、彼らをとりまく環境や普段の生活の空虚さや順調そうに見えての悩みなど、寄り添って読むことができる作品でした。ですが「さよなら一顆」は案に相違してキャラクターの誰にも共感できず寄り添えず、最後まで馴染めなかったです。
メインの二人が他愛ない日常会話を繰り広げ、なんということのない普通の毎日を積み重ねる。そういう意味でとてもリアルです。一穂先生の作品でよく見られる光景で、微笑ましく感じる場面のはず。
だけど、読んでいる私の問題かも知れませんが、どういうわけかまったく響かず、刺さらず、逆に戸惑ってしまいました。
レビューとして、同じ作者とはいえ他作品を引き合いに出すのは正しくないと思うのですが、自分の中で「さよなら一顆」をうまく咀嚼できず、安易に比較して申し訳ありません。
それと、キャラクター造形が挿絵頼みというか、外見の描写がほとんど無くて、イラストを見て初めてこういう容貌なのかと驚いたりしました。特に座波さん。

2

矢神と言う名前が好きになりました

作品内容は、上記を読んでください。

出会った時は、店員と客だったので、二人とも丁寧語で話していたのですが、次に偶然会って飲んでから、榛名は変わらずの口調、比呂はタメ語に変更。でも、どうしても私の中で、それぞれのキャラに話し方が合わなくて、何度となく「あれ?これ誰のセリフ?」と疑問に思うことがありました。
それぞれの設定は、すごく好きです。
榛名は、女性をとっかえひっかえだったのに、比呂に対して先に恋心を抱き、柄になく悩むところとか、比呂は南が明かした日常の姿が堪らなく可愛くて、笑ってしまいました。ボールペンや付箋の話!

前妻に、かわいそうなくらい利用されて捨てられた?比呂ですが、普通の人よりダメージが少なく、だからこそ何か一つでもしがみつかなきゃと思った結果が、子どもの親権問題になってしまったのですね。
もうどうしてよいのか分からなくなっていた時に、会えたのが榛名で良かった!
そして、初エッチがお試しみたいな流れで、えー?!いいの?と(笑)
大まかな話の流れは予想できますが、ちょこちょこした所で、良い方に予想を裏切ってくれるのが楽しい!

ただ、話的には好きですが、キュンとくるかと考えると、萌評価で止まりました。
2人での、飲み以外での日常の絡みが、もう少し欲しかったかなぁと思いました。

0

涙の日に

大好きな作品で今まで何度も読み返していますが
座波くんと矢神さんが出逢った涙の日(7月3日)に、と
思い立ってまた読み返しました。

過去に六股も経験した事がある男なんて
リアルでならイヤでしょうがないはずなのに
そのわりに女に執着しない、優しいのかどうかよくわからない座波くんが
性別以外の共通点なんて何も無さそうな矢神さんに
どんどん心が乱される様子が楽しいのです。
勿論矢神さんは意図的にそうしているわけではないし
いくら矢神さんが他人の機微に多少疎くても
いつだって真剣に接してくれているから
座波くんの戸惑いに共感しつつ
ノンケで女にだらしなかった男の本気の恋にときめいてしまうのです。

攻め視点というのも大好きな要因のひとつですが
あ、こういうところで気になっていっちゃうんだ、
というエピソードの数々が些細なことのようだけど
それ見逃してたらこうはならなかったかもだったり…。
ひとつひとつの出来事の積み重ねが自然で
そつのないタイプだったはずなのに今までになかった感情の波も
すべて矢神さんに向かってしまう気持ちが止められない。

秀逸だったのは床に落とした互いのネクタイのシーン。
そこで一気に性的に意識してしまった座波くんのしんどさがたまりません。

実際いたら、もしかしたら付き合いづらいかもしれないと思ってしまう矢神さんの
長所も短所も座波くんにとっては愛しさや歯がゆさだったりなので
ああもう恋だなぁ、と。

エピソードのひとつに、座波くんの部屋の鍵が
金属疲労で折れてしまっていましたが
この作品の発売数日前に私の以前の車もコレになり
めちゃくちゃタイムリー!と一人で笑ってしまいました。
(私の場合はスペアがあったので大丈夫でしたが)

ホント、物も人も何もかも見掛けだけじゃわからないですよね。
だから面白い(ジャ○ポケ)

草間さんの描かれるスーツ姿の男性はやはり最高で
作品の世界観にとても合っていましたし
夜のまとう雰囲気とか素晴らしい!!

大きな事件ドーン、大きな感動バーンというわけではないのですが
設定と登場するアイテムが活かされていて
心情の変化が非常に大好きな作品です。

6

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