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表題作ペーパー・バック(2)

同時収録作品Overtour他

静良時,新聞社整理部所属
佐伯密,新聞社外報部所属

同時収録作品Overtour他

弓削圭輔,新聞社香港支局勤務
鳥羽一束

同時収録作品Tiny Boat他

西口諫生,新聞社政治部勤務
名波碧,国会速記者

同時収録作品The cloud of unknowing

和久井冬梧,新聞社外報部勤務
有村望,真秀製薬勤務

その他の収録作品

  • Overtour
  • Ninna Nanna
  • Tiny Boat
  • キャノンボール
  • その他掌編
  • ハネムーン
  • プレムーン(あとがきにかえて)

あらすじ

一束と圭輔、密と良時のその後。「is in you」「off you go」の番外編を中心に紡ぐ新聞社シリーズ掌編集2巻。

作品情報

作品名
ペーパー・バック(2)
著者
一穂ミチ 
イラスト
青石ももこ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
is in you
発売日
ISBN
9784344836235
4.5

(72)

(52)

萌々

(15)

(2)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
9
得点
328
評価数
72
平均
4.5 / 5
神率
72.2%

レビュー投稿数9

佐伯氏祭?

明光新聞社シリーズの同人誌再録集、第2巻。
こちらは『off you go』のエピソード中心です。

表紙の佐伯氏には誰やお前!と叫びたくなりましたが(そもそも青石さんの絵のタッチが、個人的に本シリーズのイメージと少し違うかもしれません。『off you go』の表紙のセンスは大好きですが。)、書き下ろしまで読み終えると、こんな穏やかな表情も悪くはないなと思えてきました。

再録分は全て既読でしたが、改めて読み始めると、やはり佐伯密というキャラクターの面白さ、リアルかつ叙情的な物語世界の豊かさに引っ張られ一気読み。

密と良時と十和子。
清濁入り混じる世界で、奇妙な純愛で結ばれた三角関係を保ちながら歳を重ねてきた三人の姿には、何度読んでも涙腺を刺激されます。
だからこそ書き下ろし「ハネムーン」で密が三人で暮らす未来を語るシーンには沁みるものがありました。
実現されるかはともかく「ずっと遊んでようぜ」という幼き日の約束に対する一つの答えとして、とても素敵な言葉だと思います。

再録分のエピソードはどれも素晴らしいですが、個人的に最も好きなのは『キャノンボール』の「僕と不良と校庭で」。
記者とヤクザの癒着疑惑、という強烈な掴みから緊張感ある展開を経て、最後は若き日の爽やかな思い出に着地するラストになんとも言えない余韻が残ります。

書き下ろし「ハネムーン」は、良時が密とクロアチア…ではなく金沢を旅行する話。
初めての二人旅が、密に「行っちまえ」と告げられた思い出の地というのが何とも良いです。
気心の知れた男同士の遠慮のない掛け合いが相変わらず楽しく、やはりこの二人好き☆

あとがきにかえて…の書き下ろし「プレムーン」は、20年前、良時のいる金沢を訪れた密が十和子に電話をかける話。
密の繊細さを誰より理解し、
『私は寂しくない』
と言い切る十和子の聡さと美しさが印象的です。
密のラストの捨て台詞と、「ハネムーン」での良時とのじゃれ具合との落差には、ニヤけつつもホロリとさせられました。

本書の紹介文に「パズルのピースが集まっていくような」とありますが、確かに様々な視点・時間軸から紡がれる一篇一篇が大変面白く、これらを踏まえて本編を読み返すとまた新たな発見が。
ファンとしては、パズルが永遠に完成しないことを願うばかりです。

13

尽きない想い

集録作中、書き下ろし以外は既読だったが
それでもまとめて読むと、感無量という感じだった。
作者が述べているように、「佐伯さん祭り」(笑)、
新聞社シリーズの中でも、off you goの二人の分量多しです。

西口が佐伯を表して「エッジの効いた性格」という場面があるが
off you go自体がエッジの効いた作品だと思う。
こういう優しく遣る瀬無くも非常に鋭い感覚は
一穂作品に共通するものではあるが、特に際立つこのシリーズ。

それぞれの短編の味わいは、これはもうお読みいただくしかないが
過去に未来に、彼らの思いや行動が描かれていく。
本編で語られなかった部分が語られ、本編のその後も語られ、
読者の知ることができる彼らの人生が厚みを増していく。


個人的に非常に好きなのは、一束が香港から出張で来て
本社で良時、密、十和子と一同に会す(!)「Overtour」、
宿命とも言える絆に涙が止まらなかったのは、「Tiny Boat」、
そして良時の只者じゃなさが見える「僕と不良と校庭で(二千なん年)」
(キャノンボールより)

書き下ろしは、かつてoff you go!と言った土地
二人の運命が大きく動いた金沢への、中年二人のハネムーン。
うふふきゃははという雰囲気の中にも散りばめられた
切なさの破片が彼ららしい。

評価は神としか言いようがない作品集だが、
挿絵に関しては個人的にはミスマッチ感が拭えない。
単体でみるとなかなか素敵なのだとは思うのだが
作品に対する思い入れが強すぎるせいか、
違う感がぬぐえないのがとても残念です。



<追記/収録作品一覧>

同人誌:Overtour
    Ninna Nanna
    Tiny Boat
    キャノンボール
    
その他掌編:is in love
      おはようからおはようまで
      green eyed little monster
      the other side of off you go
      アナザグラフィカ(2012 Summer)
      The cloud of unknowing(2014 spring)
      たたかいすんでひがくれて(2014Winter)

書き下ろし:ハネムーン 
(あとがきにかえて):プレムーン

 (同人誌、無配本などのレビューはすでに書いているので
  詳しい内容や感想は割愛いたします。)

8

雀影

追伸
ちなみに、私の佐伯イメージは福山○治さんが近い感じです。
基本的に最近の若い子の前髪バラバラカットが好きじゃないので、特にこの本の表紙の佐伯には違和感が強かったです。
「佐伯、お前そんなに若作りするキャラじゃないだろ!」って。

雀影

こんばんは、雀影です
アナザグラフィカのこと、教えて下さってありがとうございました。
ステノグラフィカ内とは、記憶にほとんど残っていなかったけど、教えて頂いたお陰でなんとなく思い出しました。
ありがとうございました。

表紙の密さんにびっくり

こんな穏やかな表情で良時の胸にぴったりと寄り添う密。あのひねくれ者がここまでラブな空気飛ばしちゃっていいんでしょうか?同人誌作品集って素晴らしい。

私は一穂さんの作品の中で密というクセのあるキャラクターが一番好きなので大満足でした。前回のペーパーバック1も良かったですが、私にとっては少し密不足という感じだったので。

短編・中編ばかりですがおなじみのあの新聞社関連のキャラばかり登場するのでファンは楽しめると思います。冒頭の方のお話では密の元彼・今彼・元妻がバッティングします。それでも全然動揺しない密・・ほんと罪な男だなあ。でも憎めないんだけど。

ラストの「ハネムーン」は書き下ろしだそうですが甘甘すぎて悶絶しました。40代男達の海岸でふざけてキャッキャウフフアハハな感じが読めて本当に幸せでした。最凶のひねくれ者と彼を心から愛する永遠の王子様みたいな密・良時のカップルが大好きです。

十和子と婚約したばかりの頃の20代の密と良時とか大きなぬいぐるみ持ったカラーの密とか素敵な挿し絵もたくさん見られて大満足の一冊でした。

5

人生が浮かび上がりました。

佐伯と吉時、そして十和子…の奇妙な三角関係にまつわるエピソード多めの番外編集。もう「BL」とは言えないようなエピソードも混ざっているのですが、それを含めてなんだかたまらない。
自分がもしもこの3人の少し近くにいる部外者だったとしたら、まず理解できないであろう関係性ですが、本人達の中では必然性と運命とに導かれた関係で。
長いスパンで少しずつ行きつ戻りつしながらエピソードを積み重ねる感じが大好きです。

元々、こういう風に時を遡ったりしながらエピソードを積み重ねる描写の作品って好きなんだよな……と自分がこれまで読んできた作品たちを想起したりもしました(※BLに限りません)。

本編を読んだ人で、この番外編たちを読んでいない人がいたら「是非読んで!」とお勧めしたい、そんな作品集でした。

4

読み終わりたくないよう…

佐伯密にこんなに入れ込むとは思いもせず…
挿絵に躊躇していた頃の自分が懐かしい。
今では、漫画、小説読み漁っている身でありながら、佐伯密がお気に入りの受け第1位ですし静良時がお気に入りの攻め第1位です………
もう、最近では朝起きる度に、あ〜佐伯さんは今日の新聞でどんなことにちゃちゃいれたのかな、とか、良時は今日の新聞どんな風に作ったのかな、とか。(良時だけなぜか呼び捨てなんですよね…笑)
そんなことばっか考えてます。

なので、その位に入れこみすぎていて、この作品を読み終えるのが寂しくて寂しくて仕方なかったです。
気晴らしにペーパーバッグを読みながら数日違う作家さんのお話を読んでみたり、漫画だけに留めてみたり。
けれどもう頭のどっかに彼らが住み着いているんですよね。
勿論、そこには十和子の存在もあり。

こうして、あの時のこの人の気持ちはこうだったのか、とか、違う側面から本編を読み返せるのって本当に楽しくて幸せでワクワクして。

それを佐伯密のお話として読めて本当に感無量です。

どれも印象深いお話だったんですけれど、
入院している時のモズのお話。
あれ、すごく佐伯さんらしくて胸がぎゅっとしました。
「自分が賢くも強くもないって
そう、俺の半分くらいは痛感してみろ。」
そう言いながらの独白のシーン。

そんなふうに感じながら、一心に十和子と良時のことを汚さないようにしている佐伯さん。

そこにどんな影も落ちていいはずがない。

そうやって言い切れるし、そうあるために自分がすべきことをわかっているし、汚かったり残酷だったり後始末だったり、そういう立場に立つことを寧ろ安心しているみたいにも感じて。

はぁ〜〜〜〜〜相も変わらずの不毛っぷり
不毛すぎる潔さと献身と健気っぷり
性格と口が悪いせいで伝わらないけど、この人こそ健気の鑑だと思うんですよ………

いずれにせよ、佐伯密が好きすぎる私には本当に大切な1冊になりました。

2

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