イラストあり
ニコ視点で描かれている前半部分は榮を想うキラキラな気持ちごと切なさに包まれている感じで、
『ニコール』として振る舞う姿や閉鎖的な世界で肩身狭く暮らしている様子にも苦しさが募ります。
榮に対する想いだけがニコを動かす原動力なのに
それが彼に伝わらないだけではなく、
ほかの誰かを想っている感情をそばで浴び続けるだなんて、なんて悲しい片想いなんだろうか…。
ニコにとって何もプラスにならない恋に見えて
応援したい気持ちにはなれないな、と思ったほどでした。
でも榮視点になった後半部分、ニコの気持ちが離れそうになったときに客観的に彼の本心を知ることができて
長い時間好きでいたから諦められないわけではなかったとわかるとまた見方もかわったな、と。
恋に正しいも間違いもなくて、これまで過ごした友達としてのふたりの時間もかけがえの無いもので。
変化していくもの、何も変わらないものの中で
自分自身で世界を選択していくふたりの日々を見守れたのが嬉しかったです。
とても素敵なお話でした。読み終わって優しくてあったかい気持ちに。それでも前半の「泣かないでニコール」は本当に切なかったです。受けのニコが健気で一途で、苦しいくらいでした。
ニコには本当に共感できるし、応援したいし、ニコ視点のお話は盛り上がって心が動くんですけど、途中、攻めの榮視点のお話に変わります。そこで少しだけ現実に戻されるというか、トーンダウンしてしまったような印象がありました。それでも後半はとても良かったです。
凪良ゆう先生のお話を読むのは2冊目ですが、本当に読みやすいので数時間で一気に読んでしまいました。他の本も読んでみたいですね。
自身のセクシャリティに悩んでオネエキャラを演じて自衛していた学生時代。
そして卒業後、上京して就職し、夢にまで見た二丁目デビューも果たした二コール。
仕事は忙しくて、ミスもするし怒られるし不満だらけだけど、投げ出さずに続けている。
初恋の彼とは思いを伝えられないまま親友を続けていて、彼には一緒に住んでいる恋人がいる。
学生時代が「泣かないで二コール」、上京後が「人生は薔薇色、ではない」、その続編、視点変えの「愛しの二コール」という3本の連作短編集です。
二コールは素直で真面目で、はっきり言いたいことを言えない性格なので「がんばれ」と思うし、どちらかというと目線は彼を応援する二丁目のマスターとか常連客と同じで、若い一生懸命な子をぬるく見守る感じで読みました。
だから二コールの恋も、当初は応援していたのですが、どうも上手く寄り添えなかったのは、初恋王子である榮の心変わりのせいかもしれないです。
このお話、なんとなくファンタジーだけど、心理描写はリアルなんです。凪良先生ですから、とても描写が丁寧です。
だから、榮が別の子を好きになって、その子と両思いになって一緒に暮らしていることも、まあそうだよな、と思えるのですが、その後、その恋が冷めて別れて二コールに猛アタックしても、どうもぴんと来ない。良かったね、と思えない。
最終話の「愛しの二コール」が榮視点なのに、榮の気持ちに寄り添えず、むしろ素直に榮の気持ちを受け入れられない二コールに共感したりして、どうも釈然としないまま本が終わった感じでした。
榮は悪い子じゃないんですけど、なんだろうな。
二丁目のバーに二コールが榮を連れて行った時に、マスターや常連客が榮を取り囲んだシーンがとても楽しかったです。やはり私は彼らと同じ気持ちなんだな、と改めて思った次第です。
あらすじを読んで、オネエキャラを演じるゲイの高校生のお話で切なくなったり萌えられたりするのかなぁって少し心配はありましたが、全くの杞憂でした。
前半はめっちゃ切なくて、後半にいくほど愛しい気持ちになれました。
ニコの片思いが長いので焦れますし、ニコが可哀想になって涙も出ちゃったりしますが、榮が彼氏と別れてからは軽い攻めザマァな展開もあり、ニコの長年の片思いが成就した時には胸熱でした。
初Hの攻防戦も面白かったですし、その後の濡れ場も幸せ感MAXで満足でした。
田舎でのマイノリティとしての生きづらさを描いた描写はかなり切ないですね。
お年寄りにとって固定概念を覆すってことは相当難しい事だと思いますし、保守的な世界のなかで自分だけが良ければ良いっていう問題でもないのでやはりゲイだったりすると都会に出ていくしかないのかなぁ、と。
作家買いです。
凪良ゆう先生の文章は本当にすっきりとしていて読みやすいなあと思いました。
平易な表現を使ってくださるのに繊細な感情の機微が伝わり、心に響きます。
田舎の情景、温かさ、悪気のない異質なものへの残酷な排他的言動、…ああ本当に辛い。
榮に救われたニコ、負けない気持ちをもらったニコ、どうしても優しすぎるニコ、いろんなニコが健気で一途で本当に愛おしい。
お互いの感情のピークがすれ違ってしまうという展開にうちのめされました。
凪良先生。。。泣
なんとか幸せになってほしい!
そんな願いからか一気に読み切りました。
優しく爽やかな読後感でとても満たされました。