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表題作夜叉と羅刹

杜若一鬼、木根商会三代目組長20代
鶴巻鉄二、いびつな幼少期を過ごした高校生16歳

その他の収録作品

  • 古傷

あらすじ

両親に愛されずに育った少年、鉄二。心にあいた穴を埋めるように自傷行為を繰り返す日々は、
やがて他人を刃で切りつけることで満たされる犯罪紛いの倒錯的悦びへとエスカレートしてゆく…。
そんな十六歳の夏、木根商会の若き組長・杜若一鬼と出会った。
冷徹な表の顔とは裏腹に太陽のような笑顔で鉄二を包み込む杜若。ただ彼の傍にいたくて…底なしの愛が欲しくて…
鉄二は木根商会に入り浸るようになり…。凄絶なる究極愛!

作品情報

作品名
夜叉と羅刹
著者
四ノ宮慶 
イラスト
小山田あみ 
媒体
小説
出版社
三交社
レーベル
ラルーナ文庫
シリーズ
虎と竜~灼熱の純情と冷徹な欲情~
発売日
ISBN
9784879198938
3.5

(32)

(9)

萌々

(9)

(6)

中立

(5)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
5
得点
104
評価数
32
平均
3.5 / 5
神率
28.1%

レビュー投稿数5

読み手を選ぶ作品だと…

なんともレビューが書きにくい本なのだろうと…
評価も何にしたら良いのか悩みました。
読んだ後に読み返してしまう本だったので、この評価にしました。

レビューというより、読んで感じた事を書かせてください。
いろんな意味で痛いです。
精神的にも物理的にも。
読む人を選ぶ本だと思います。
甘くない。
甘いだろう部分はあるけど、甘さを感じません…
どちらも強く惹かれ合っているのだろうけど、その想いが通じ合っていないと思いました。
鉄二が人に対して愛とか信じるとかそういう事を知らずに育ってきてしまったからなのか、どんなに杜若が鉄二を受け入れようとしても、いつか父や母のように自分から離れていってしまうかもしれないと恐れているからなのか…
杜若の側にいるという事だけに執着していて、杜若からの想いを受け止められずにいるというか、信じきれてない。
杜若の言葉を聞いているようで、聞いてなく、とにかく杜若の側にいられるようにと勝手に突き進んでいって。
杜若が自分を手放せないようにと。
杜若も鉄二の扱いにくさに困惑していただろうけど、あの鉄二が唯一欲するのが自分だけだというのに、杜若が何度も言うように放っておけなくなったんだろうなぁ…。
鉄二の灰色に染まった過去に自分が少しでも鮮やかな色を差せたらと言っているように。
鉄二のためなら夜叉にもなると言ってましたが、菩薩じゃ…と思わずにはいられないほどの究極の懐の深さを持った人でした。
しかし、このふたり、この先大丈夫なんでしょうか…
鉄二はなんだかよくある名もないチンピラに刺されでもしそうで…
こんなにこの後が心配なカップルもなかなかいないような気がしますね。

健気受けが好きなわたしにとっては鉄二は頭が良くて計算高いところが少し苦手だったかもしれません。
人を躊躇いもせず傷つけるところも。
それでも、窪の言葉じゃありませんが、鉄二がどこまで行くのか見ていたい気持ちにもなりました。
とても複雑な読後感を味わいました。

小山田あみさんの表紙、挿絵は素晴らしかったです!

10

そこまで許すんだ…

愛に飢えて育った子供が手に入れたいと思った男。 確かに情が湧いてどうにかしてやりたいとは思いますが精神的にも肉体的にも痛いなぁ。一鬼が何度も何度も言葉で示しても鉄二は聞く耳持たない(信じようとしない)感じでちょっとイラッとしてしまう。まぁ言葉が届かないから最終的に大事なところを切り落としちゃう事になるんでしょうが(泣くぐらいならやるんじゃないよ!)。そこで初めて一鬼を信じれるわけだから本当に命懸けです。でも一鬼が死ななくてよかったよ。

2

絵師買いなら覚悟を決めて読んだほうがいい

小山田さんの美麗なイラストに惹かれて購入。

こ・・・これは・・・
ものすごく読む人を選ぶ内容だと思います。

自傷他傷を繰り返す病み系の受け鉄二と、鉄二の病んだ愛を丸飲みするように受け入れてしまう攻め一鬼。

奪われる不幸と、与えられない不幸は、よりどちらが不幸か――。

冒頭にそう問いかけられますが、鉄二に与えられたのは母の負の愛情なんですね。
何も与えてもらわなかったわけじゃない。
ただ、与えらえたのは負にしか向いていない愛情。
そして父が与えたものは金だけ。わずかな金ではなくけっこうな金額なんです。
だから鉄二は全く何も与えられなかったわけではない。
学校にも行き、生きていく上で必要なものは持っている。
究極のかまってちゃんと言えばそれまでなんですが、病むには充分な生い立ちではあるのです。
一鬼は弱小ヤクザの若頭。しのぎがうまくいってない金回りの悪いヤクザです。
その一鬼は、鉄二と出会い歪んだ愛しか受け入れられない鉄二に愛を与えるんですね。
それも歪んだ愛を望む鉄二に、そのまま歪んだ愛を・・・
たぶん通常のBL展開だとここで一鬼は鉄二を立ち直らせようとするし、鉄二も立ち直ろうと努力するかもしれない。
でも、鉄二はそうじゃない。とことん病んでるんです。
その闇の部分に一鬼がどんどん引きずられていくような、読んでいてそんな感じがして辛かったです。

そして最後には・・・
ああ痛い・・・ものすごく痛い。
股間が痛い・・・ないはずなのに痛くなる(´;ω;`)

これを究極の愛と言っていいのかどうかはわかりません。
甘かったりエロかったりというBLとしての萌え要素はほぼ皆無です。
BLのラブの部分が完全に歪みきっている内容です。
だから小山田さんの表紙がきれいだと絵師買いする人は、覚悟を決めて読んだ方がいいと思います。
冒頭だけでも受けの鉄二が女性とやってるシーンがあったりで、人によっては萎え要素だらけです。
絵師買いならイラストだけ見て本を閉じるという選択もあるかと思います。
それくらいきつい内容なのです・・・

痛い系のBLは平気な方なんですが、痛いの方向性が私とは違っていたので中立という評価にしました。
でも、好きな人にはたまらないくらい萌える内容かもしれません。

追記:
改めて読み返してみてこれは中立じゃないなと思ったので評価変更です。
後からじんわり萌えてきました。これは後引き小説ですね。
さらっと読んだだけじゃだめなやつでした。
じっくり読むと痛さの中に四ノ宮さんの書きたいものがものすごく詰まっています。
もともとこの路線の作家さんなので、甘いのがお好きな方はやっぱり覚悟を決めて読むのがよろしいかと・・・

12

tnkが、tnkが…

母親から虐待を受けたせいで自傷癖のある高校生・鉄二(受け)は、木根商会組長・杜若(攻め)と出会い、執着するようになる。杜若のそばにいたい一心で弱小ヤクザだった組を経済ヤクザに押し上げ、組にとって自分がなくてはならない存在になるよう心血を傾けていたが、それだけでは満たされず、自分や他人を刃物で傷つけたい衝動に歯止めがかからなくなり…。


病んでる高校生がヤクザの組長に執着し、破滅に向かって一直線、という話です。
とにかく痛いです。読み終えてHPがかなり削られたような気がします。母親に痛めつけられ、捨てられ、忘れられた子供が、自らの肉体を傷つけ、他人の肉体を傷つけるようになり、ヤクザの情婦を切りつけて制裁を受けて…と、展開に容赦がなく、最初から最後まで痛い。
起こる数々の事件も暴力的で、耳やら指やら飛んでっちゃうので、スプラッタ苦手な方は気をつけられたほうがいいかと思います。

作品は圧巻でした。ただ、さっき言ったことと違うとか、そういう箇所がいくつかあり、それは気になりました。中でも何を言われても組に出入りし続けてたのに「普通の高校生活送れ」と言われて突然「僕はもう知りません!」とか捨て台詞吐いて出て行く受け、というシーンにいちばん引っかかりました。自分が無理言って組に出入りしてるのに「知りません!」って言うこと自体もおかしい。何でそんな上からなのか…。
ここから急に大きく話が動いたので、余計に納得いかないというか、ご都合主義的な印象を受けました。

そういう点と、私が個人的に痛い話がそれほど好きじゃないのとで萌評価にしましたが、痛い話、バイオレンスな話、ヤンデレ受けなどがお好きな方にはハマる話ではないかと思います。個人的には、どこかの時点で受けの自傷癖が治ってほしかった。
あと、ラスト近くのtnk事件がエグかったです。30年ほどの腐歴で、ギャグ以外で攻めのtnkがこうなるのを読んだの初めてかも…。

7

痛い話でした

小山田さんの美しすぎる表紙につられ購入してみました。内容をざっくりと。すみません、ネタバレしてます。



夫の関心を引くためだけに、幼い息子の体を傷つけ続けた母親。
それでも、そんな母親に愛してほしくて、自分に笑いかけてほしくて、自ら進んで自傷し続けた息子の鉄二。
自分に無関心な父親、狂った母親から体を痛めつけられ続けた鉄二は、自分の存在価値を見いだせずにいます。そんな彼が唯一安心できる行為が自傷行為であり、また痛みが快楽と直結してしまった鉄二は体中に傷をつけることで精神を保っています。

が、自分の体に傷をつけることには限界があり、そのため人を切りつけるように。

ある日、自分を誘ってきた女性と行為をしている最中に彼女を切り付けるのですが、彼女はヤクザの情婦で。そのヤクザに行為を見つかりボコボコにされてしまうのですが、そのヤクザに彼が属している組の木根商会に連れていかれてしまいます。
そこでその組の組長・杜若に出会うのですが、自傷し続けている体を見られ、問い詰められた鉄二は自分の過去を杜若に話します。
まだ子どもの鉄二の壮絶な過去を知った杜若は、「お前の欲しいものが見つかるまで俺が付き合ってやる」と伝えます。
その言葉にすがった鉄二は木根商会に入り浸るようになり…。

というお話でした。

四ノ宮さんて、なんとなく硬派な話を描かれる作家さまなイメージがあるのですが、この作品も『極道もの』ということもあってか硬派というか非常に男臭いストーリーでした。

鉄二は自分の事も、人の事も、傷付けることを何とも思っていない。『非道』というのとは少し違って、人間らしい感情とか愛情を知らないゆえに、人を思いやるという気持ちが欠如しています。
両親からも、祖父母からも、疎まれ、愛された記憶がない鉄二にとって、大らかに笑い優しい言葉をかけてくれた杜若にどんどん傾倒してくのは理解できるんです。

杜若も、小さい組ながら組長として組員たちを引っ張っていこうとする男気のあるキャラですごくカッコ良い。鉄二を心配し、心を配るナイスガイなのです。

小さい時からのトラウマで心を閉ざした受けに、その受けを大きな懐で受け止める攻め。とてもツボな設定なのですが、いまいちツボに入らなかった、というか。

鉄二の心の傷はすごく良く理解できるんです。
ただ、鉄二のために奮闘する杜若の気持ちが彼には全く伝わらないんですね。
意地になっているわけでもない。
世界で信じられるのは杜若だけと言い切る。
なのに、いつまでも自傷行為が収まらない彼に感情移入できなかった。
鉄二が求めただけ杜若は彼を愛し受け止めてくれるのに、それでも埋まらない鉄二の孤独がいまいち共感できなかった。

そして杜若の方も。
鉄二が16歳の時に出会った二人。まだ子どもだった鉄二が可哀想で、ちょっかいを出しているうちに懐かれてしまって。そこまでは理解できるのですが、そこから鉄二への想いが恋愛感情へと移行していく、その気持ちの変遷が全く分からなかった。
鉄二が自身を傷つけたり他人を傷つけるくらいなら自分を傷つけろという杜若ですが、そこまで鉄二を愛することになった過程が分かりづらいんです。

あと、痛い表現が多く、そこも萎え要素でした。
鉄二の自傷行為も、彼が他人を傷つけても何の良心も咎めないところも。
そして最後の杜若への行為も。
阿部定事件を思い出しましたが、ああいう行為が『愛情』だと共感できないこともあってちょっとなあ、と。

『極道』の世界観は非常にしっかり描き込まれていたように思います。痛い行為もどんと来いな腐姐さまなら楽しんで読めるのかなと思いますが、個人的にはちょっと痛すぎた作品でした。

小山田さんの挿絵はもう神でした。美しすぎる。
鉄二のちょっと壊れた感じも、杜若の極道としての怖さも。表紙もこのお話の世界観がよく表現されていると思いました。

15

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