電子限定特典漫画付き
短編集。
私はどれもすごく好きでした!良作揃い。
「友人関係」
読み進めていく過程で、この「友人」和久井の方もバカな奴だと思うんです。
はじめにフったくせに、恋人のできない相原にちょっかいを出し続けて。
でも和久井の行動原理と相原の幼さが見えて来る過程で、物語が反転するような感覚。
フラれて宙ぶらりんな待ちに入ったのは和久井の方…わかりづらくなったのは一種の自業自得?
短いのに複雑なストーリーが成立している所がいい。
歩田川先生の作品の多くに、本命とは違う相手との関係、みたいなのありますね。
このお話もそんな感じ。
でも生々しくないのが「歩田川スタイル」なのかな…
本命への本気はありつつ、泡のような浮気/本気ではない関係がふわふわと浮かんだり消えたりの淡い/あわい(間)。
「双子の頭」
これは怖いな…と思った。
ガチ兄弟もの(双子ではない)で、兄は関係を後悔し止めなければと思っている。
だけど弟は?
私的に、こういうブツ切りの終わり方がすごく良かった。
この後どうなるのか、想像が膨らむ所がいい。
思うに…2通りの展開が考えられる。
①2人は二度と会わない。だけど兄は一生弟に心を縛られている。
②連絡を取り、2人は一線を越える。
その場合、兄は生き続けるのかな?死を選んでしまうような気もするな。
「ひつじ雲」
自分の性癖に気付き集団が息苦しくなった颯太は、幼馴染集団からフェイドアウトした。なのに大学で一番苦手だった蓮と再会してしまう…
蓮の隠した切羽詰まり感がなんか新鮮。
歩田川boysは飄々としてて、こんな顔を晒す子はいなかったから。
「0.8」
好きの気持ちは残ってるけど、行き詰まりやすれ違いを感じて別れようと思ってたけど。
土壇場でやっぱり好きが勝つ?
ていうか、感情に才能への嫉妬や自虐みたいな?プライドみたいな?そんな邪魔な分子が混じり込んでるのね。だからややこしい。
何よりお相手の方にずっと好きがあるじゃない?よっかかるのも悪くないよ。
◆友人関係(表題作)
やっぱりこれが一番好きでした。学生時代に告白されたけど振った和久井と、振られた相原。和久井は振ったにも関わらず、もう何年も相原の傍にいて。その時点で相当の想いがあるのだろうなぁと気付くわけですが、当の相原は、最初に振られた事実がある限り、今更和久井に何と言われようと信じられず受け流してしまうんですよね。
平行線な関係にも愛想を尽かさず、むしろ楽しむ余裕すら感じられる和久井が、相原のことにかけて自分より理解している者はいない、とでも思っているようで、常に相原を見透かしているところに萌えました。あの時振ったからこそ、ここまで長く付き合うことができた。不思議な2人の関係が斬新だけど素敵で、丸々この作品だったら萌2評価にしていたかもしれません。
◆双子の頭
兄弟もので、こちらも弟の樹は表題作の和久井に通ずるものがあったように思います。兄の歩の考えそうなことは、長年付き合ってきたからこそ、先回りして読むことができる。だから、何を言われたって驚かず、どっしりと構えて受け止められる。執着というと負のイメージがあるかもしれませんが、そこまで自分を理解し大きな器で受け入れてくれる相手がいるのって、とても幸せなことでもあるのかも。
表題作が終わって、後半分は違うお話なのか〜全部表題が良かったな…と思っていたら他の3作品も好きでした。短いのに濃かった。
◾︎表題
◾︎和久井×相原 幼馴染
「俺は何があっても友達だから」という、幸せなようで、相手によっては残酷なセリフ。ただ、どちらが残酷だったのか…という構造をしています。
歩田川先生は長い片思いが好きだなぁ。それ程長く思い続ける割には、下が結構ゆるかったりする笑
◾︎双子の頭
兄弟モノがそこまで好きではない私にヒットした実兄弟モノです。しっかりしたラストを見たい方はモヤモヤするかも。星座との絡め方がロマンチック過ぎず、斜に構えた自分のような人間にもじんわり伝わるいい作品でした。
◾︎ひつじ雲
短いのに大満足!!歩田川先生の作品は言葉の掛け合いが心地いい作品ばかりで、こちらもまさにそんな感じ。人を食った話し方をする2人が空を見上げながらあーだこーだ言ってます。
◾︎0.8
別れかけてるお話、大好きなんですよ。別れかけたところで、やっぱり彼が好きだと気づくお話も。その気づき方がまた…愛しさで泣きたくなる。
電子限定おまけ 表題1頁
再読です。
数年前に読み、萌評価を付けたまま未レビューでした。
今なら、萌2評価にします^^;
4話からなる短編集ですが、
執着愛がテーマなんですかね?
相手に強い執着を感じる作品ばかりです。
表題作は、友人関係を続けながらも身体の関係もある二人のお話。
攻めの和久井の相原に対する並々ならぬ執着を感じました。
10年前、和久井に振られた相原ですが、
それからもノンケに告白しては振られ続けること数回。
振られるたびに和久井に身体で慰めてもらうも、
あくまでも二人は恋人ではなく友人で……
和久井がずるいなと思います。
自分に恋人がいる時も相原とセックスしていたり、
決して好きだとは言わない。
だけど、相原の心の中にずっと存在している……
ちょっと怖いくらいの執着と束縛でしたね。
ただ、相原もそれを分かってやっているところがあるので、
お互い様だとも思います。
ストーリー決して奇抜ではありませんが、
世界観や台詞回しが独特で引き込まれます。
ただ、顔のデッサン?が狂っているところがあり、
特にキスシーンは萌えられませんでした。
他3編もとても面白かったのですが、
ガチ兄弟の『双子の頭』の弟の執着心は恐ろしかった……
この二人どうなるの?ってところで終わってしまったので、
続きが読んでみたいと思いました。
嫌いじゃない。嫌いじゃないけど頭が疲れているときや、真夏には合わないな、と夏の盛りに読んだときに思いました。
すっかり涼しくなったので再びこちらを読み返してみました。
和久井と相原は中学生のときからの友人同士で10年来の付き合いがある。そして和久井は相原にとって初恋相手であり、中学のときに告白して振られた過去がある。
相原はゲイでいつもノンケを好きになるけどうまくいかず、振られるたび和久井に慰めてもらっています。
いつしか身体込みで慰めてもらう関係になり…。
実は…という裏側の部分が、読み進めるうちにわかるんだけど、和久井が10年間相原に執着し続けていたことが判明。
和久井は恋人と別れるたびに「別れたんだけど付き合う?」「恋人になる?」と相原に都度聞いてるんだけど、相原は相原でどうせ俺をからかって弄んでいるだけだろうと相手にせず、それをずっと繰り返してきた二人。。。
なんて不毛なんだろう…。二人ともあと少し、あと一歩、腹を割って話せばいいのにそれをせず、微妙な距離感のまま同じところで足踏みしてるなんて。
なにより「付き合う?」「恋人になる?」じゃなくて、「付き合って下さい」「恋人になって下さい」と言わなかった和久井が狡いなぁって思う。
そして「10年前に相原が告白してきたときに付き合っていたら、下手したら殺していたかもしれない」という和久井の言葉にはゾッ。
相原は精神的に幼くて、告白した先に何があるか、付き合うとはどういう事かを理解していないような状態だったので、10年かけて恋人として長く一緒にいられる関係性を築けるまで、機が熟すまで待っていたみたいだけど、「殺されてもいいから10年前から付き合いたかった」という相原が可哀想。
相原にとっては初恋相手の和久井に振られてからこの10年間というもの、好きになったゲイは全て和久井に奪い取られて、仕方ないからノンケ相手に恋するようにしたけど全敗してくすぶり続けた10年間なんだから、俺の10年何だったんだろう…って思いたくなるはず。
それにしても、まぁなんて回りくどいんだろう…。
気力体力がない時に読むと、途中で本を投げ出したくなってしまうんだけど、心に余裕があるときはこの回りくどさも面白く感じるので、季節や体調にモロに左右される一冊といえます。
残り3つの短編も同様です。
答姐の「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」で教えていただいたのが、こちらの作品ですが、また冬になったら読み返してみたいと思います。
教えてくださりどうもありがとうございました。