人生まだ諦めていないクズ男と男運のない男

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表題作アケミちゃん

鷹取蒼介、大学中退の前科者
静雄、スナックアケミの手伝い

同時収録作品青い影

その他の収録作品

  • アケミちゃん その後(かきおろし)
  • あとがき
  • おまけ(アケミちゃんプロトタイプ漫画)

あらすじ

前科持ちで、金の無心をしに田舎に戻ってきた蒼介は、家業のスナック「アケミ」で働く元同級生の静雄に再会する。
かつて、女顔をからかい、「アケミちゃん」と呼んでいた蒼介に苦い顔をする静雄。
しかし、エリート家族から絶縁を言い渡された蒼介は、手切れ金を親から受け取るまで、と静雄の家に居着いてしまう。
誰にも言えなかった蒼介の苦悩、初めて知る静雄の過去、お互いを知る時間は短く、蒼介の東京に帰る時は近づき――。

作品情報

作品名
アケミちゃん
著者
丸木戸マキ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリアコミックス
発売日
ISBN
9784861348839
4.1

(132)

(53)

萌々

(55)

(15)

中立

(7)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
17
得点
537
評価数
132
平均
4.1 / 5
神率
40.2%

レビュー投稿数17

まさに昭和メロドラマ

タイトルからして気になりまくっていたこの作品、とっても面白かったです!

閉鎖的な寂れた町のスナックが舞台というところや、まさかの攻めが前科持ちというトンデモ設定。
受けが稼いだ金でパチンコに行くわ、なんだかリアルすぎるクズ男設定が妙にハマる。

そんなクズ攻めと田舎の閉鎖空間で鬱屈した思いを抱える受けと暮らすうちに彼のことを愛しく思い始める展開はなかなか読ませます。
やはり丸木戸先生とても心理描写がお上手…!
最後の展開はおもわずウルっとしてしまいました。
二人が幸せになってよかった。

サブキャラである母親の春子がとてもいい味を出してました。
個人的にはポルノグラファーより好きだったかも。
今後の作品も楽しみにしています。

7

青い影の続編希望です。

表題作の「アケミちゃん」より同時収録作品の「青い影」がとても良かった。
なのでその感想のみ書かせてもらいます。

双子の兄が死に、その残された弟が主人公なのですが、兄は優秀で弟は出来損ないという設定です。
兄の友達から、弟の顔を見てると兄を思い出すから顔を見せるなと言われるのですが、その友達のことを弟は好きなんです。
髪を伸ばしてみたりして印象を変えたりなど、健気な弟に萌えました。

まぁそこまでネタバレしない程度に話すとこんな感じの話です。ありきたりな設定ではありますが、自分は未開拓なジャンルだったので萌えました。

双子攻めとか双子カップルとかで萌えたことがなかったので、対象外なのかと思ってましたが双子の身代わり系ははすごく良かったです!

ただ、終わり方が不完全燃焼で、作者は続きを書きたいと言っていたので、是非ともお願いしたいです!

5

この作品を神と言わずして何が神か

「ポルノグラファー」の続編が出ていたのに今更気付いて購入。
さらに旧作を読み返していたときに、この作品を読んでいないことにも気付いて相当遅れて購入からの読了。
何という作品。
読み終わってしばし惚けました。毒気を抜かれた感じ。

「續・ポルノグラファー プレイバック」で先生が身を寄せたスナックアケミ。
街中元カレ今カレだらけのママ・春子とその息子・静雄の2人暮らし。
そこへ中学の同級生だった蒼介がやって来て…。

田舎町にある大病院の末息子。そこそこ良い東京の大学に入って、人生イージーモードだった蒼介に、突然降りかかった「レイプ魔」という前科。
母の身持ちの悪さのせいで中学ではいじめられ、高校では評判の良い教師を誑かしたとして中退せざるを得なかった静雄。
2人とも悪い「看板」を背負って、田舎で暮らす窮屈さを感じながら、蒼介は「人生をもう一度やり直したい」と前を向き、静雄は母のためにこの町に留まるのが当たり前と思って生きています。

静雄が「續・ポルノグラファー〜」のときより色気を増してます。
謂れのない罪と責任感を被ってなお、ここから逃げようとしない静雄は果たして強いのか弱いのか。表面に漂う脆さや儚さと相まって、強さや弱さよりも「虚無」や「諦観」というのがぴったりくる青年です。ずっと自分に起こる悪いことは何もかも「仕方ない」と思って受け入れてきたような。後ろ向きでもなく、ただそこにいるだけ。
蒼介は悪い意味のボンボンで、ある程度自分の思い通りになる人生を送っていたところで初めての挫折を味わったけれど、「もう一度東京で人生をやり直す」ことで底辺まで落ちた「自分」を救おうという強い意志を持っています。

何もかも正反対の2人です。
そんな2人が蒼介がやり直すためのお金を家から引っ張るまでの間、一緒に暮らして、お互いを知り、相手を見ることで自分と正面から向き合う過程がつぶさに描かれています。まるで映画を観ているかのように、それぞれの心情や変化がすんなりとこころに届いてきました。
周囲の噂による閉塞感、スナックの常連の静雄への態度や、蒼介に対する春子の歯に衣着せぬ言葉、蒼介の母の歪んだ愛情、お互いの未来に対する思い。そういうものが全部、2人に真っ直ぐに届いて、乾いた地面に沁み渡っていくような心境の変化の描写が素晴らしかったです。

春子ママの過去とのリンクも秀逸で、2人の行く先をはっきりと描かず、ただ旅立つ2人を見送る。
クライヴがモーリスと森番の後ろ姿を屋敷の窓から見守る「モーリス」のラストを思い出しました。先は希望に溢れているのか、つらいだけなのか分からない。でもきっと2人でいるだけでしあわせなんだろう、と。

長い。でも全くこの作品の良さは語り尽くせません。
「ポルノグラファー」シリーズの中で一番好きな作品になりました。

同時収録の「青い影」は2年前に亡くなった何もかも万能な双子の兄と出来の悪い弟。その兄とテニスでペアを組み、兄を好きだった同級生の話です。
短い作品ですが、どこへもぶつけられない想いが交錯して、切ない作品でした。

描き下ろしで「續ー」にあった「春子、宝くじが当たる!」の辺りと、その後の2人がちらっと描かれています。
ひとつのことにしか夢中になれない、不器用な蒼介が愛おしい話でした。

「ポルノグラファー」シリーズを読んでからこの作品を読んで、また「續ー」を読むと更にこの作品が好きになります。
むしろそのループから抜け出せなくなって、延々読み続けてしまう危険性が。
ご注意を。

3

閉鎖的で仄暗い雰囲気の中で紡がれる2人の関係性。

小さな田舎街の閉鎖的な雰囲気が大変良かったです。
物語の最後で明かされる2人の家族ぐるみの関係性に、苦々しい感覚を覚えつつもグッときてしまいました……

倫理的な問題を考えれば、蒼介はクズかもしれません。
しかし、静雄に街や過去の呪縛から自由になるという選択肢があることを気付かせ、背中を押したのも蒼介な訳で……
そう考えると、彼を完全悪として捉えることが出来ないように思える点も良いと感じました。

同時収録作『青い影』も大変良かったです。
死んだ双子の兄に片想いしていた男に、兄ではなく自分を見てもらいたいという弟の姿が、とても……

2作共にハッピーエンドとは言えない展開ではありますので好みは分かれるかと思いますが、ダークでシリアスなお話が好きな方にはピッタリだと思います。

1

生き辛い田舎の片隅で…

丸木戸さん、『ポルノグラファー』がとても面白かったので
今回新刊買いさせていただきました!!

それなりに良い大学に入り、イベントサークルに入って
大学生活を謳歌していた蒼介は
飲み会で好きでも無い女とヤッたところ被害届を出され
まさかの前科持ちとなり大学も退学処分。
金も無くなり田舎の金持ちの親に用立ててもらおうと
帰って来たところ元同級生の静雄に偶然会い…。

アケミって、表紙の煙草を吸っている方の名前かと思ってたんですが
彼は静雄という名前がちゃんとあって、
静雄の祖母の代で始めたスナック名なのです。
静雄の母の春子は東京帰りの美人で店はたちまち繁盛し、
静雄が手伝いをしていた事から“アケミちゃん”とからかわれていたのです。
それもなんだか気の毒だな…という序盤ですが
何よりも蒼介のクズっぷりになんとも言えない気持ちに…;;
いくら運が悪かったとは言え、やった事は褒められたものではないし
反省等もするどころか親に金を出させる為に
家の恥になろうが知ったこっちゃねぇって根性がイヤ……。
静雄のお金でパチンコ打ったりとか…勘弁して…。
(ギャンブル駄目なもんですみません)
私にとって好ましくないタイプなんですが
静雄の痛々しい過去を知ってしまい、
ビッチな母でも一人に出来なくて田舎にとどまっている現状に
どうにかしてやりたい気持ちがわいてくるという良いヤツでした。
自分の人生もやりなおしてみせるっていう前向きさが
タフというか図太いというか…ww
本当に静雄が若くから苦労している分常識人でひたむきで
レトロな雰囲気の人情ドラマ、考えさせられるものがありました。

…それにしても静雄の母の春子ときたら…!!!
元カレやら今カレがいすぎ!!!!ww
さすが東京帰りなだけあってしたたかで逞しくて
あれくらいじゃないとお店もやっていられないだろうなって思いましたww

『青い影』
非の打ちどころのない双子の兄が事故で亡くなって2年、
常に兄に比べられていた弟の葉は
いまだに先生にチクチク言われてしまうような
出席日数も怪しい高校三年生。
テニス部で兄と組んでいた真面目な佐原が
線香をあげさせてもらえないかと言ってきて…。

読切りではもったいない程のお話でした!!
佐原が実は兄を好きだったから
葉を見るのがツラかった気持ちもわかるし
顔をまともに見てもらえなかったから
つい「キスしてみれば?俺に」って言った葉にも共感してしまいました。
そのままハピエンとまでいかなくて苦しい!!!
続きをどうか…読ませていただけませんか…!!

漫画は小説に比べて心理描写の詳細がわかりづらい事も
間々あったりしそうですが(語弊があったらすみません)
丸木戸さんの作品は表情と間でとても伝わってきます。
早くも次のコミックスを読みたくて落ち着きません!!
またしても神寄りの萌×2で…!

11

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