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英田サキの初期傑作読みきり、新たに書き下ろしを加えて待望の文庫化!!
この作品が初コンビだそうですが、笠井あゆみ さんの挿絵は電子版にはなかった。残念。
2007年発刊の新装版。
英田先生の、耽美風結末の人情ドラマ。
登場する人物ごとの短編集6話で、時系列で並んでいないです。
すべてはこの夜に: JUN掲載 デビュー前 :湊
春宵一刻 : 書き下ろし
優しい夜のなかで
夏の花 : JUN掲載 デビュー前 : 切ない武井の過去
春に振る雪 小冊子
青嵐 :書き下ろし :湊の今
一番古いデビュー前の作品だけど、古さを感じない。
人の基本というか、土台を成す情念を扱っている作品だからかもしれません。
読後の余韻が良かった。
英田先生の作品に登場する人物は、余り外観の美醜にしつこく拘らないのが常で、一度外観容貌について触れたら、その後はあまり触れない。行動や振舞でなんとなく美を感じるように書いてます。
外観に強く拘らない点が、好き嫌いの分かれ目になるのかも。
評価に迷いはありませんでした。傑作ですね。
こういう連作短編、もっと読みたいな~と思いました。
英田先生の簡潔な表現に多くの感情をこめるスタイルは読みごたえがあって、圧倒されっぱなしでした…。
湊への憎しみを抱えて生きてきた加持と、いびつな形でずっと加持を想っていた湊の不器用な愛に痺れます。若さゆえに互いを理解しようとせず、事実を見誤ったまま離別した後、10年を経て運命的に再会した2人の愛憎劇にはドキドキしました。徐々に過去の真実が明らかになって関係性が変わっていく展開に、”なんとかなってー”と祈る読者を裏切るような事件が衝撃的でした。が、そんな状況下において希望が見えるようなラストシーンの表現、文字を追いながら身悶えました。ゆえに、その後の掌編読んだときの幸福感は半端ないです。
武井と陽一は、涙腺崩壊案件です…。彼らの間にあった愛情が、その後の武井の中に確実に息づいていて、湊やそのほか彼に関わった人たちにつながっていくような流れは連作短編の醍醐味です。なんちゅー壮大な愛の物語やねん!と感動しました。憎しみからは憎しみが、愛情からは愛情が生まれるということを改めて実感できる素晴らしい作品でした。
大大大好きな作品で、読むたびに泣いてしまう。
もはや、泣くために読んでるのかも。
文句なしの神作品なのですが、神すぎてこれを基準にしちゃうと神の基準がおかしくなっちゃうので、自分の中では殿堂入りという立ち位置にしてます。
それくらい素晴らしい!
実は旧版も既読なのですが、掲載順序が入れ替わっている本作の方が読みやすい。
そして、小冊子だった『春に降る雪』、描き下ろしの『青嵐』がいい!
旧作のみ既読の方にも是非読んでもらいたい一冊です。
加持と湊の不器用な恋に胸キュンとし、武井と鈴原の切ない恋に涙。
何度読んでも泣ける。分かっているのに泣ける。思い出すだけで泣ける。もうどうしようもないですよ。
BLというカテゴリーには収まらない人間ドラマですよ。
いつも思うんですけど、武井が麻子と鈴原という大切な人を2人も失ったのは、殺人という業を犯したからなんだろうか……と。
でも、そうじゃないといいなと。
だって、人は必ず死ぬものでしょ。
宿命からは逃れられないし、病と戦うのは勝負じゃない。
大切な人のために生きたい、生きてほしいと思うのは欲じゃなくて、愛でしょ?
いつか武井に死が訪れたとしても、きっと怖くないし悲しくないよね。
だって、麻子と鈴原が必ず迎えに来てくれるから。
そう思うと、少し救われる気持ちになるんです。
加持と湊には後悔しないように、今を精一杯生きてほしい。
遠回りした分、たくさん愛して欲しい。
そして、志郎が本作唯一の明るさであり清涼。癒されました。
志郎にも愛する人、愛してくれる人が見つかりますように。
最後に武井が志郎に言った言葉も、重みと深みがありますよね。
あー、もう何回読むんだろう。でも、まだまだ読むぞ!
出会えて良かったと思わせてくれる作品の一つです。
今更ですが、素敵な作品をありがとうございます。
大きく分けて2カップルのお話です。
笠井あゆみ先生の描かれる2カップルがまた最高に素敵でした。
湊×加持
武井×亮一
表題作「すべてはこの夜に」と「夏の花」はプロになる前に書かれた同人誌作品だったそうです。
小説JUNEが初出とのことなので、題材に少し当時の古さが感じられるのは否めないのですが、そんなのは読み進めていくうちに気にならなくなり、どんどんお話の世界と彼らの人生に惹き込まれていきました。
特に武井×亮一のお話は涙なくては読めませんでした。
・・・というよりも武井と亮一の話がメインのような感じもうけました。
(ただ商業BL的にこちらをメインにするのが難しかったのかもしれませんが・・・)
このカップルの話があっての1冊だなと感じています。
湊と加持は同級生で、お互い本心を伝えないばかりに擦れ違い、不幸な別れからの驚きの再会。
すごくわかりにくくて不器用な攻、湊と、情けない面と優柔不断というか流されるというか憶病な、けれど心根の優しい受、加持。
ヤクザな世界に身を置く湊と彼の舎弟も含めた関係には、前半はハードで紆余曲折ありますが、後半は家族とも言える繋がりがあり、恋愛だけではない、優しくて甘いその後の生活にはほっこりします。
そしてそして、問題のもう1カップル。武井と亮一。
過去のお話なので結末はわかっているのだけれども・・・
とても素敵な優しくて切ない恋物語でした。
心がギュっとなって涙なしには読めませんでした。
地雷とか言わずにこれはぜひ読んで欲しいお話です。
人と人とが出会うことの必然を強く感じずにはいられませんでした。
すごく良かったです!
こういう連作短編集のような体裁はとても読みやすい上に、一つの見方だけでない重層的な物語の構成になるので、1冊として深みが出る。
もっとこういう構成の小説が増えてほしいですね。
「すべてはこの夜に」
メインCPの、メインの物語。
英田サキ先生お得意のヤクザ関係。
ヤクザと堅気さん、という英田先生の作品によく出てくる関係性がすでに顕著だと思いました。
愛だけがある関係ではなく、愛と表裏一体の憎しみ、愛と絡み合う憎しみに囚われている2人、という関係性です。
この作品では、そこに怖れも加わる。
攻めの湊は不器用さゆえに何を考えているのか明かさず、受けの加持はひたすら湊を恐れる。
ずっと行き違っていたが、過去の残酷な誤解が解けて遂に想いが通じ合い…というところで加持が湊を狙う銃弾に倒れて、という非常にドラマチックな展開。
「春宵一刻」
冒頭、墓地の場面。
加持は死んでしまったの⁉︎と焦る。
が、大丈夫でした。
すっかり甘々で同居している湊と加持の様子です。
「優しい夜の中で」
加持との出会いを湊視点で。
湊は、生い立ちのせいで感情を表せない、動かせない人間だったが、今は加持によって「幸せ」という感情を知った…
ちょっとセンチメンタルすぎるかも。でも甘さがいいですね。
「夏の花」
ここからが白眉ですね。
湊と加持の物語も良いけれど、この湊の舎弟・武井の過去編は素晴らしく切ない。
殺人で服役し、出所後に死んだ姉の家を訪ねる若き日の武井。
家には姉の夫がいて。
武井はその「姉の夫」に恋する…
この1編は切なくて、結局その人とは死別と分かってるので、余計に切なさと余韻を感じます。
「春に降る雪」
武井の愛しい人・亮一の最期の日々。
ガンに侵され、余命宣告を得て、最後の一瞬まで武井と一緒に過ごす。
悲しすぎます。
「青嵐」
この1編は書き下ろし。
加持が湊から任されたコーヒー店の経営は順調で、早くも2号店も視野に。
2号店は舎弟の志郎に任せようか、という流れになりそう。
志郎も優しい加持が大好きで、湊の帰りが遅い日に加持に招かれて2人で家飲み。
ソファで毛布をかぶって寝ていたら、帰宅した湊が加持と間違えて…⁉︎
ちょっとコミカルであたたかいエピソードで締められます。
英田先生の描く、非情なヤクザの中に流れる「情」の世界。
やっぱり英田先生はこの辺が非常に巧みだと感じました。